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特別清算等の見直しに関する要綱

(注) 文中のa,b,c・・・の記号は,原文においてそれぞれ丸数字の1,2,3・・・と表記されています。


平成17年2月9日
法制審議会総会決定

(前 注) この要綱では,特別清算及び会社の整理に関する事項のうち,商法及び非訟事件手続法に規定されている事項のみを取り上げている。

第1部 特別清算

第1  管轄
 1  原則的管轄
  特別清算開始申立事件は,会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所が管轄するものとする。
 2  管轄の特例
  (1)  子会社の管轄の特例
 会社の総株主の議決権の過半数を有する法人について特別清算事件,破産事件,再生事件又は更生事件が係属している場合には,当該会社についての特別清算開始の申立ては,当該法人の特別清算事件,破産事件,再生事件又は更生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。
  (2)  連結子会社の管轄の特例
 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律第1条の2第1項に規定する大会社について特別清算事件,破産事件,再生事件又は更生事件が係属している場合には,当該大会社の同条第4項に規定する連結子会社(当該大会社の直前の決算期において同法第19条の2又は第21条の32の規定により当該連結子会社に係る連結計算書類が作成され,かつ,定時総会において当該連結計算書類が報告されたものに限るものとする。)についての特別清算開始の申立ては,当該大会社の特別清算事件,破産事件,再生事件又は更生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。
  ※ 参照条文  非訟事件手続法第136条前段,破産法(平成16年法律第75号。以下「新破産法」という。)第5条第3項及び第5項
  (注 1) 2(1)の「子会社の管轄の特例」については,子会社が単独で,又は親法人及び子会社が共同で,他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には,当該他の株式会社を親法人の子会社とみなすものとする(新破産法第5条第4項参照)。
  (注 2) の「管轄の特例」を設けることに伴い,特別清算開始の命令があったときは,その後の清算に関する事件は,特別清算事件が係属する地方裁判所が管轄するものとする。また,清算に関する事件を取り扱う裁判所は,同一の会社につきの「管轄の特例」による特別清算開始の申立てに基づき特別清算開始の命令があった場合において,当該清算に関する事件を処理するために相当であると認めるときは,職権で,当該清算に関する事件を特別清算事件が係属する裁判所に移送することができるものとする。

2 記録の閲覧等の制度
 特別清算事件に関する文書の閲覧等の制度及び支障部分の閲覧等の制限の制度を整備するものとする。
  ※ 参照条文  新破産法第11条及び第12条

3 最高裁判所規則への委任
 法律に定めるもののほか,特別清算の手続に関し必要な事項は,最高裁判所規則で定めるものとする。

第4  特別清算開始の申立て
 1  特別清算開始の原因
 裁判所は,次に掲げる事由のいずれかがあるときは,申立てにより,特別清算の開始を命ずることができるものとする。
  a  清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があると認めるとき。
  b  会社がその財産をもって債務を完済することができない状態にある疑いがあると認めるとき。
 2  申立権者
 債権者,清算人,監査役又は株主は,特別清算開始の申立てをすることができるものとする。
 3  清算人の申立義務
 会社がその財産をもって債務を完済することができない状態にある疑いがあるときは,清算人は,特別清算開始の申立てをしなければならないものとする。
 4  疎明
  (1)  特別清算開始の原因の疎明
 債権者又は株主が特別清算開始の申立てをするときは,特別清算開始の原因を疎明しなければならないものとする。
  (2)  債権の疎明
 債権者が特別清算開始の申立てをするときは,その有する債権の存在をも疎明しなければならないものとする。
 5  手続費用の予納
  (1)  手続費用の予納
 特別清算開始の申立てをするときは,申立人は,特別清算の手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならないものとする。
  (2)  不服申立て
 費用の予納に関する決定に対しては,即時抗告をすることができるものとする。
  (3)  費用の負担
 特別清算開始の命令があったときは,特別清算の手続の費用は,会社の負担とするものとする。
 6  取下げの制限
 特別清算開始の申立てをした者は,特別清算開始の命令前に限り,当該申立てを取り下げることができるものとする。ただし,後記第5の特別清算開始前の処分(後記第5・1cの処分を除く。)がされた後は,裁判所の許可を得なければならないものとする。
  ※ 参照条文    商法第431条第1項及び第2項,非訟事件手続法第138条ノ15において準用する同法第135条ノ26,第135条ノ27第1項前段及び第135条ノ29,新破産法第22条第2項及び第29条
  (注 ) 裁判所が職権でする開始命令の制度(商法第431条第1項),監督官庁の通告の制度(同条第3項において準用する同法第381条第2項)及び手続の費用の仮支弁の制度(非訟事件手続法第138条ノ15において準用する同法第135条ノ28)は,廃止するものとする。

第5  特別清算開始前の処分
 1  会社の財産の保全処分等
 裁判所は,特別清算開始の申立てがあった時から当該申立てについての裁判があるまでの間においても,必要があると認めるとき(cの処分にあっては,緊急の必要があると認めるとき)は,債権者,清算人,監査役若しくは株主の申立てにより(cの処分にあっては,会社の申立てにより)又は職権で,次に掲げる処分をすることができるものとする。
  a  会社の財産の処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分
  b  会社の株主の名義書換の禁止
  c  会社の発起人,取締役,監査役又は清算人(以下「役員」という。)の責任に基づく損害賠償請求権につき,役員の財産に対してする保全処分
 2  他の手続の中止命令
 裁判所は,特別清算開始の申立てがあった場合において,必要があると認めるときは,債権者,清算人,監査役若しくは株主の申立てにより又は職権で,特別清算開始の申立てにつき決定があるまでの間,次に掲げる手続の中止を命ずることができるものとする。ただし,aに掲げる破産手続については破産手続開始の決定がされていない場合に限り,bに掲げる手続についてはその手続の申立人である債権者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限るものとする。
  a  会社についての破産手続
  b  会社の財産に対して既にされている強制執行,仮差押え又は仮処分の手続(一般の先取特権その他一般の優先権がある債権に基づくものを除く。)
  ※ 参照条文    商法第432条及び同法第433条において準用する同法第383条第1項
  (注 1) の「会社の財産の保全処分等」については,弁済禁止の保全処分に違反した場合の効力(新破産法第28条第6項参照)等につき,所要の規定を整備するものとする。
  (注 2) の「他の手続の中止命令」については,即時抗告(新破産法第24条第4項及び第5項参照)等につき,所要の規定を整備するものとする。

6 特別清算開始の条件
 裁判所は,特別清算開始の申立てがあった場合において,特別清算開始の原因があると認めるときは,次のaからdまでのいずれかに該当する場合を除き,特別清算の開始を命ずるものとする。
 a  特別清算の手続の費用の予納がないとき。
 b  特別清算によっても清算を結了する見込みがないことが明らかであるとき。
 c  特別清算によることが債権者の一般の利益に反することが明らかであるとき。
 d  不当な目的で特別清算開始の申立てがされたとき,その他申立てが誠実にされたものでないとき。
  ※ 参照条文    非訟事件手続法第138条ノ15において準用する同法第135条ノ27第1項後段,新破産法第30条第1項第2号
  (注 ) 裁判所は,特別清算の開始を命じた場合には,遅滞なく,その旨を官報に掲載して公告しなければならないものとする(非訟事件手続法第138条ノ15において準用する同法第135条ノ32において準用する同法第133条ノ2第4項参照)等,特別清算において裁判所がする公告は,官報に掲載してするものとする(新破産法第10条第1項参照)。

第7  特別清算開始の効力
 1  効力を受ける債権の範囲
 会社に対するすべての債権は,特別清算の効力を受けるものとする。ただし,特別清算のために生じた債権,特別清算の手続の費用の請求権及び一般の先取特権その他一般の優先権がある債権については,この限りでないものとする。
 2  相殺の制限
 破産手続における相殺の制限と同様の内容(新破産法第71条及び第72条参照)の規定を設けるものとする。
 3  他の手続に対する効力
  (1)  特別清算開始の命令があったときの他の手続の中止
 特別清算開始の命令があったときは,破産手続開始の申立て,会社の財産に対する強制執行,仮差押え若しくは仮処分又は財産開示手続(民事執行法第197条第1項の申立てによるものに限る。以下(1)において同じ。)の申立てはすることができず,破産手続(破産手続開始の決定がされていないものに限るものとする。),既にされている会社の財産に対する強制執行,仮差押え及び仮処分の手続並びに財産開示手続は中止するものとする。ただし,一般の先取特権その他一般の優先権がある債権に基づく強制執行,仮差押え,仮処分又は財産開示手続については,この限りでないものとする。
  (2)  特別清算開始の命令が確定したときの他の手続の失効
 特別清算開始の命令が確定したときは,特別清算開始の命令により中止した手続は,特別清算の関係においては,その効力を失うものとする。
  (3)  担保権の実行手続等の中止命令
   a  裁判所は,特別清算開始の命令があった場合において,債権者の一般の利益に適合し,かつ,その手続の申立人に不当な損害を及ぼすおそれがないものと認めるときは,清算人,監査役,債権者若しくは株主の申立てにより又は職権で,相当の期間を定めて,会社の財産につき存する担保権(企業担保権を含む。)の実行手続又は既にされている会社の財産に対する一般の先取特権その他一般の優先権がある債権に基づく強制執行の手続の中止を命ずることができるものとする。
   b  裁判所は,aによる中止の命令を発する場合には,aの手続の申立人の意見を聴かなければならないものとする。
   c  裁判所は,aによる中止の命令を変更し,又は取り消すことができるものとする。
   d  aによる中止の命令及びcによる変更の決定に対しては,aの手続の申立人に限り,即時抗告をすることができるものとする。
   e  dの即時抗告は,執行停止の効力を有しないものとする。
  ※ 参照条文    商法第433条において準用する同法第383条第2項及び第3項並びに第384条並びに同法第456条第1項において準用する現行破産法第104条(破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成16年法律第76号。以下「整備法」という。)による改正後の商法第456条第1項において準用する新破産法第71条及び第72条),非訟事件手続法第138条ノ15において準用する同法第135条ノ37

第8  清算人
 1  公平誠実義務
 特別清算が開始されたときは,清算人は,債権者,会社及び株主に対し,公平かつ誠実に,清算事務を処理する義務を負うものとする。
 2  清算人の解任及び選任
  (1)  解任
   a  裁判所は,清算人が清算事務を適切に行っていないとき,その他重要な事由があるときは,債権者若しくは株主の申立てにより又は職権で,清算人を解任することができるものとする。
   b  清算人を解任する場合には,当該清算人を審尋しなければならないものとする。
   c  清算人を解任する裁判に対しては,即時抗告をすることができるものとする。
  (2)  選任
   a  清算人が欠けたとき,又は清算人の増員の必要があるときは,裁判所が清算人を選任するものとする。
   b  清算人を選任する裁判に対しては,不服を申し立てることができないものとする。
 3  清算人に対する報告命令及び調査
 裁判所は,いつでも,清算人に対し,清算事務及び財産の状況の報告を命じ,その他清算の監督のために必要な調査をすることができるものとする。
 4  清算人の行為の制限
  (1)  清算人は,商法第445条第1項各号に掲げる行為(最高裁判所規則で定める額以下の価額を有するもの及び裁判所が許可を要しないものとしたものに関する行為を除く。)その他裁判所が指定する行為をするには,裁判所の許可を得なければならないものとする。
  (2)  裁判所は,監督委員を選任して,(1)の許可に代わる同意をする権限を監督委員に付与することができるものとする。
 5  債務の弁済
  (1)  会社の債務は,その債権額の割合により弁済しなければならないものとする。ただし,特別清算のために生じた債権,特別清算の手続の費用の請求権又は一般の先取特権その他一般の優先権がある債権については,この限りでないものとする。
  (2)  (1)にかかわらず,清算人は,裁判所の許可を得て,少額の債権又は担保権の被担保債権その他その弁済により他の債権者を害するおそれがない債権について弁済をすることができるものとする。
  ※ 参照条文    商法第434条から第436条まで,第438条第1項及び同条第2項において準用する同法第423条第2項,非訟事件手続法第137条前段,新破産法第75条第2項後段並びに第78条第2項及び第3項,民事再生法第41条第1項,第54条第1項及び第2項並びに第120条第2項
  (注 1) の「清算人の行為の制限」に関する監査委員の同意の制度及び債権者集会の決議の制度(商法第445条第1項及び第2項)は,廃止するものとする。
  (注 2) の「清算人の行為の制限」については,監督委員に対する監督等(民事再生法第57条参照),数人の監督委員の職務執行(同法第58条参照),監督委員による調査等(同法第59条参照),監督委員の注意義務(同法第60条参照)及び監督委員の報酬等(同法第61条参照)につき,所要の規定を整備するものとする。
  (注 3)1 の「清算人の行為の制限」については,清算人が許可等を得ないでした行為の効力(商法第445条第3項参照),営業の全部又は重要な一部の譲渡等につき株主総会の特別決議を不要とする特例(同条第4項参照)及び裁判所の必要的許可の制度(民事再生法第42条第1項及び会社更生法第46条第2項参照)等につき,所要の規定を整備するものとする。
   2  清算人は,営業の全部又は重要な一部の譲渡等の許可の申立てをする場合には,あらかじめ,知れている債権者の意見を聴取し,裁判所に対し,その内容を報告しなければならないものとする(非訟事件手続法第138条ノ6において準用する同法第132条ノ2第1項参照)。
   3  営業の全部又は重要な一部の譲渡等の許可については,労働組合等(会社の使用人の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合,会社の使用人の過半数で組織する労働組合がないときは会社の使用人の過半数を代表する者)の意見聴取の制度(新破産法第78条第4項,民事再生法第42条第3項,会社更生法第46条第3項第3号)を設けるものとする。
  (注 4) 5(2)の裁判所の許可による弁済について,許可の申立ては清算人全員でしなければならないとの規律(非訟事件手続法第138条ノ6において準用する同法第132条ノ2第1項)は,廃止するものとする。

第9  債権者集会
 1  書類提出及び意見陳述のための債権者集会
 清算人は,会社の財産の現況についての調査が終了し,かつ,財産目録及び貸借対照表を作成したときは,遅滞なく,債権者集会を招集して,当該債権者集会に対して,会社の業務及び財産の状況の調査書,財産目録並びに貸借対照表(以下において「調査書等」という。)を提出し,かつ,清算の実行の方針及び見込みに関して意見を述べなければならないものとする。ただし,債権者集会に対する調査書等の提出及び意見の陳述以外の方法で当該調査書等及び当該意見の内容を債権者に周知させることが適当であると認めるときは,当該債権者集会を招集しないことができるものとする。
 2  1以外の債権者集会
  (1)  清算人による招集
 清算人は,清算の実行上必要があると認めるときは,債権者集会を招集することができるものとする。
  (2)  少数債権者による招集
   a  債権の申出をした債権者その他会社に知れている債権者の総債権の10分の1以上に当たる債権を有する者は,会議の目的となる事項及び招集の理由を記載した書面を清算人に提出して,債権者集会の招集を請求することができるものとする。
   b  aの請求があった後遅滞なく債権者集会の招集の手続がされないとき,又は請求があった日から6週間以内の日を会日とする債権者集会の招集の通知が発せられないときは,請求をした債権者は,裁判所の許可を得て,債権者集会を招集することができるものとする。
 3  債権者集会の指揮(議長となるべき者)
 債権者集会は,裁判所が指揮するものとする。
 4  決議
  (1)  議決権
   a  議決権を行使させるかどうか及びいかなる金額につき議決権を行使させるかは,各債権について,清算人が定めるものとする。
   b  清算人が定めた議決権の行使の許否又は金額につき当該債権を有する者又は他の債権者が異議を述べたときは,議決権の行使の許否又は金額は,裁判所が定めるものとする。
   c  議決権の行使の許否又は金額についての裁判に対しては,不服を申し立てることができないものとする。
  (2)  代理人による議決権行使
   a  債権者は,代理人をもってその議決権を行使することができるものとする。
   b  aの債権者又は代理人は,代理権を証する書面を会社に提出しなければならないものとする。
   c  bの代理権の授与は,債権者集会ごとにしなければならないものとする。
  (3)  可決要件(協定の決議を除く。)
 債権者集会の決議を要する事項を可決するには,
   a  債権者集会に出席した議決権を行使することができる債権者の過半数の同意
   及び
   b  債権者集会に出席した議決権を行使することができる債権者の議決権の総額の2分の1を超える議決権を有する者の同意
   がなければならないものとする。
 5  担保権者の取扱い
 会社の財産につき特別の先取特権,質権,抵当権又は商法の規定による留置権(以下において「担保権」という。)を有する債権者については,次のように取り扱うものとする。
  (1)  少数債権者による招集
 担保権の行使によって弁済を受けることができる債権額は,少数債権者による招集の要件である「総債権」及び「債権」の額(2(2)a参照)に算入しないものとする。
  (2)  招集の通知
 担保権の行使によって弁済を受けることができない債権額があるかどうかにかかわらず,債権者集会の招集を通知しなければならないものとする。
  (3)  議決権
 担保権の行使によって弁済を受けることができる債権額については,議決権を行使することができないものとする。
  (4)  債権者集会への出席等
 債権者集会又は債権者集会を招集した者は,担保権者を債権者集会に出席させて,その意見を求めることができるものとする。この場合において,債権者集会にあっては,これをする旨の決議を経なければならないものとする。
  ※ 参照条文    商法第439条第1項及び第2項,同条第3項において準用する同法第237条第3項,第439条第4項,第440条,第441条,第442条第1項において準用する同法第239条第2項及び第4項並びに第442条第1項において準用する現行破産法第179条第1項(整備法による改正後の商法第441条ノ2第1項),非訟事件手続法第138条ノ8第1項及び第138条ノ9
  (注 1) の「決議」については,議決権の不統一行使の制度(商法第239条ノ4及び第339条第1項参照)を設けるものとする。なお,議決権の不統一行使がされた場合の可決要件のうち頭数(4(3)a参照)の数え方については,再生手続と同様の考え方(整備法による改正後の民事再生法第172条の3第7項参照)を採るものとする。
 また,債権者集会に出席しない債権者が書面又は電磁的方法によりその議決権を行使する制度(商法第321条ノ2及び第321条ノ3参照)を設けるものとする。
  (注 2) の「決議」については,債権者集会の決議につき特別の利害関係を有する者の議決権の行使を禁止する規定(商法第442条第1項において準用する現行破産法第179条第2項。整備法による改正後の商法第441条ノ2第2項)及び無記名式の債券を有する者は債権者集会の会日から1週間前に債券を供託しなければ議決権を行使することができないとの規律(商法第442条第1項において準用する同法第321条第2項)は,廃止するものとする。

第1 0 調査委員
 1  調査命令
 裁判所は,会社の財産の状況を考慮して必要があると認めるときは,清算人,監査役,債権の申出をした債権者その他会社に知れている債権者の総債権の10分の1以上に当たる債権を有する者若しくは6月前から引き続き総株主の議決権の100分の3以上に当たる株式を有する株主の申立てにより又は職権で,次に掲げる事項について,調査委員による調査を命ずることができるものとする。
  a  特別清算開始に至った事情
  b  会社の業務及び財産の状況
  c  会社の財産の保全処分をする必要があるかどうか。
  d  会社の役員の責任に基づく損害賠償請求権につき,役員の財産に対して保全処分をする必要があるかどうか。
  e  会社の役員の責任に基づく損害賠償請求権の査定の処分をする必要があるかどうか。
  f  その他特別清算に必要な事項で裁判所が指定したもの
 2  調査委員の報告
 調査委員は,による調査の結果を裁判所に報告しなければならないものとする。
  ※ 参照条文    商法第452条第1項,同条第2項において準用する同法第388条及び第453条,非訟事件手続法第138条ノ15において準用する同法第135条ノ41第1項
  (注 1) 調査委員の報告徴収権及び物件検査権(商法第452条第2項において準用する同法第390条第1項)等につき,所要の規定を整備するものとする。
  (注 2) 執行官又は警察官の援助の制度(商法第452条第2項において準用する同法第390条第2項)は,廃止するものとする。

第1 1 裁判所の処分等
 1  裁判所の処分
 裁判所は,清算の監督上必要があると認めるときは,債権者,清算人,監査役若しくは株主の申立てにより(cの処分及びeにあっては,会社の申立てにより)又は職権で,次に掲げる処分をすることができるものとする。
  a  会社の財産の処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分
  b  会社の株主の名義書換の禁止
  c  会社の役員の責任に基づく損害賠償請求権につき,役員の財産に対してする保全処分
  d  会社の役員の責任の免除の禁止
  e  会社の役員の責任に基づく損害賠償請求権の査定
 2  会社の役員の責任の免除の取消し
  (1)  会社は,特別清算開始の命令があった場合には,会社が特別清算開始の申立てがあった後又はその前1年以内にした役員の責任の免除を取り消すことができるものとする。会社が不正の目的によりした免除についても,同様とするものとする。
  (2)  (1)の取消権は,訴え又は抗弁によって,行使するものとする。
  (3)  (1)の取消権は,特別清算開始の命令があった日から2年を経過したときは,行使することができないものとする。当該役員の責任の免除の日から20年を経過したときも,同様とするものとする。
  ※    参照条文 商法第437条及び第454条第1項各号
  (注 1) aの「会社の財産の処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分」については,弁済禁止の保全処分に違反した場合の効力(新破産法第28条第6項参照)等につき,所要の規定を整備するものとする。
  (注 2) eの「役員の責任に基づく損害賠償請求権の査定」については,損害賠償請求権の査定に対する異議の訴え(商法第454条第3項において準用する同法第394条及び第395条参照)等につき,所要の規定を整備するものとする。

第1 2 協定
 1  協定の申出
 清算人は,債権者集会に対して,協定の申出をすることができるものとする。
 2  協定による権利の変更の内容
 協定による権利の変更の内容は,債権者の間では平等でなければならないものとし,不利益を受ける者の同意がある場合又は少額の債権について別段の定めをしても衡平を害しない場合その他債権者の間に差を設けても衡平を害しない場合は,この限りでないものとする。
 3  担保権者等の参加
 清算人は,協定案の作成に当たり,必要があると認めるときは,会社の財産につき一般の先取特権その他一般の優先権,特別の先取特権,質権,抵当権,商法の規定による留置権又は企業担保権を有する債権者の参加を求めることができるものとする。
 4  協定の可決要件
 協定を可決するには,
  a  債権者集会に出席した議決権を行使することができる債権者の過半数の同意
  及び
  b  議決権を行使することができる債権者の議決権の総額の3分の2以上に当たる議決権を有する者の同意
  がなければならないものとする。
 5  協定の不認可要件
 裁判所は,協定が可決されたときは,次に掲げる事由がある場合を除き,協定認可の決定をしなければならないものとする。
  a  特別清算の手続又は協定が法律の規定に違反し,かつ,その不備を補正することができないものであるとき。ただし,手続が法律の規定に違反する場合において,当該違反の程度が軽微であるときは,この限りでないものとする。
  b  協定が遂行される見込みがないとき。
  c  協定が不正の方法によって成立するに至ったとき。
  d  協定が債権者の一般の利益に反するとき。
 ※ 参照条文    商法第447条,第448条第1項,第449条及び第450条
  (注 ) 協定の認可又は不認可についての利害関係人の意見陳述権(民事再生法第174条第3項参照。なお,非訟事件手続法第138条ノ10第2項において準用する同法第135条ノ19第2項において準用する同法第135条ノ16第1項参照)等につき,所要の規定を整備するものとする。

第1 3 特別清算の終了
 1  特別清算の終結
 裁判所は,次に掲げる場合には,清算人,監査役,債権者,株主又は調査委員の申立てにより,特別清算終結の決定をすることができるものとする。
  a  特別清算が結了したとき。
  b  特別清算の必要がなくなったとき。
 2  破産手続開始による特別清算の終了
  (1)  職権による破産手続開始の決定
   ア  裁判所は,次に掲げる場合において,会社に破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは,職権で,破産法に従い,破産手続開始の決定をしなければならないものとする。
    a  協定の見込みがないとき。
    b  協定の遂行の見込みがないとき。
    c  a及びbのほか,特別清算によることが債権者の一般の利益に反するとき。
   イ  裁判所は,次に掲げる場合において,会社に破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは,職権で,破産法に従い,破産手続開始の決定をすることができるものとする。
    a  協定が否決されたとき。
    b  協定不認可の決定が確定したとき。
  (2)  特別清算の終了
 (1)による破産手続開始の決定があったときは,特別清算は終了するものとする。
  ※ 参照条文    商法第455条及び同法第456条において準用する同法第399条
  (注 ) 2(1)の「職権による破産手続開始の決定」に基づく破産手続における特別清算の手続の費用の請求権等の財団債権化(非訟事件手続法第138条ノ13)等につき,所要の規定を整備するものとする。

第2部 その他

1 会社の整理
 会社の整理の制度は,廃止するものとする。

第2  その他
 1  会社法制の現代化に伴い,所要の規定を整備するものとする。
 2  その他所要の規定を整備するものとする。