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答申(民事再生手続(仮称)に関する要綱)

平成11年8月26日

法務大臣 殿


法制審議会会長
答        申



 諮問第41号については,現在,倒産法部会において審議中であるが,和議に関する制度の部分につき,別紙のとおり答申する。






(別紙) (注)原文は縦書きです


  民事再生手続(仮称)に関する要綱
 民事再生手続
 
 目的
 経済的に窮境にある債務者について、その債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整することにより、債務者の事業又は経済生活の維持再生を図るための手続を新たに設けるものとする。
 
 定義
 この要綱において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによるものとする。
 再生債務者 経済的に窮境にある債務者であって、再生手続により、その事業又は経済生活の維持再生が図られるもの(再生手続開始の申立てがあった者を含む。)をいう。
 再生債務者等 管財人が選任されていない場合にあっては再生債務者、管財人が選任されている場合にあっては管財人をいう。
 再生手続 再生債務者と再生債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整するため、この要綱に定めるところにより、多数の再生債権者の同意を得、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等によって、再生債務者の事業又は経済生活の維持再生を図る手続をいう。
 再生計画 再生債権者の権利の全部又は一部を変更する条項その他の百四十六に規定する条項を定めた計画をいう。
 再生債務者財産 再生債務者が有する一切の財産をいう。
 再生債権 再生債務者に対して再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権その他この要綱に特に定める請求権(共益債権又は一般優先債権であるものを除く。)であって、再生手続開始の決定があったときは、この要綱に特別の定めがある場合を除き、再生手続によらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができないものをいう。
 共益債権 百十二に規定する請求権その他この要綱に特に定める請求権で、再生手続によらないで、再生債権に先立って、随時弁済するものをいう。
 一般優先債権 一般の先取特権その他一般の優先権がある債権(共益債権であるものを除く。)であって、再生手続によらないで、随時弁済するものをいう。
 開始後債権 再生手続開始後の原因に基づいて生じた財産上の請求権(共益債権、一般優先債権又は再生債権であるものを除く。)であって、再生事件の係属中又は再生計画で定められた弁済期間中(その期間の満了前に、再生計画に基づく弁済が完了した場合及び再生計画が取り消された場合を除く。)は、弁済し、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができないものをいう。
 
 外国人の地位
 外国人又は外国法人は、再生手続に関し、日本人又は日本法人と同一の地位を有するものとする。
 
 外国で開始した再生手続の効力
 外国で開始した再生手続は、この要綱に特別の定めがある場合に限り、日本国内にある財産及び日本国内で開始した再生手続について、効力を有するものとする。
 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)により裁判上の請求をすることができる債権は、日本国内にあるものとみなすものとする。
 
 再生事件の管轄
 再生事件は、再生債務者が営業者であるときはその主たる営業所の所在地、外国に主たる営業所を有するときは日本における主たる営業所の所在地、営業者でないとき又は営業所を有しないときはその普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄するものとする。
 1による管轄裁判所がないときは、再生事件は、再生債務者の財産の所在地(債権については、裁判上の請求をすることができる地)を管轄する地方裁判所が管轄するものとする。
 1及び2にかかわらず、株式会社の発行済株式の総数の過半数に当たる株式又は有限会社の資本の過半に当たる出資口数を有する法人について再生事件が係属している場合には、当該株式会社又は有限会社についての再生手続開始の申立ては、当該再生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。法人が発行済株式の総数の過半数に当たる株式又は資本の過半に当たる出資口数を有する株式会社又は有限会社について再生事件が係属している場合における当該法人についての再生手続開始の申立てについても、同様とするものとする。
 1及び2にかかわらず、法人について再生事件が係属している場合には、当該法人の代表者についての再生手続開始の申立ては、当該再生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。法人の代表者について再生事件が係属している場合における当該法人についての再生手続開始の申立てについても、同様とするものとする。
 1から4までにより二以上の裁判所が管轄権を有するときは、再生事件は、先に再生手続開始の申立てがあった裁判所が管轄するものとする。
 
 再生事件の移送
 裁判所は、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で、再生事件を次に掲げる裁判所のいずれかに移送することができるものとする。
 再生債務者の主たる営業所又は事務所以外の営業所又は事務所の所在地を管轄する地方裁判所
 再生債務者の住所又は居所の所在地を管轄する地方裁判所
 五2に規定する地方裁判所
 五3又は4に規定する地方裁判所
 五3又は4により前号の地方裁判所に再生事件が係属しているときは、五1又は2に規定する地方裁判所
 
 任意的口頭弁論等
 再生手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができるものとする。
 裁判所は、職権で、再生事件に関して必要な調査をすることができるものとする。
 
 不服申立て
 再生手続に関する裁判に対しては、この要綱に特別の定めがある場合に限り、その裁判につき利害関係を有する者は、即時抗告をすることができるものとする。その期間は、裁判の公告があった場合には、その公告が効力を生じた日から起算して二週間とするものとする。
 
 公告等
 この要綱の規定によってする公告は、官報に掲載してするものとする。
 公告は、掲載があった日の翌日に、その効力を生ずるものとする。
 この要綱の規定によって送達をしなければならない場合には、4に規定する場合を除き、公告をもって、これに代えることができるものとする。
 この要綱の規定によって公告及び送達をしなければならない場合には、送達は、書類を通常の取扱いによる郵便に付してすることができるものとする。
 4に規定する場合における公告は、一切の関係人に対する送達の効力を有するものとする。
 3から5までは、この要綱に特別の定めがある場合には、適用しないものとする。
 
 再生手続に関する登記等
 再生手続に関する登記及び登録について、所要の規定の整備をするものとする。
 
一 再生手続の終了等に伴う破産宣告等
 破産宣告前の再生債務者について、再生手続開始申立棄却、再生手続廃止、再生計画不認可又は再生計画取消しの決定が確定した場合において、裁判所は、破産の原因たる事実があると認めるときは、職権で、破産法(大正十一年法律第七十一号)に従い、破産の宣告をすることができるものとする。
 1による破産の宣告があった場合における破産法第一編の規定の適用については、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める裁判又は行為は、その前に支払の停止又は破産の申立てがないときは、支払の停止又は破産の申立てとみなすものとする。
 再生手続開始申立棄却、再生手続廃止若しくは再生計画不認可の決定又は再生計画取消しの決定(再生手続の終了前にされた申立てに基づくものに限る。)が確定した場合 再生手続開始決定、再生手続開始によって効力を失った整理若しくは特別清算の手続におけるその手続開始の命令又は詐欺破産の罪に該当することとなる再生債務者(法人である場合には、その理事又はこれに準ずる者)若しくはその法定代理人の行為
 再生計画取消しの決定で前号に掲げるもの以外のものが確定した場合 再生計画取消しの申立て
 破産宣告後の再生債務者について再生計画認可の決定の確定により破産手続が効力を失った後に百八十三若しくは百八十四による再生手続廃止又は再生計画取消しの決定が確定した場合には、裁判所は、職権で、破産法に従い、破産の宣告をしなければならないものとする。この場合には、同法第一編の規定の適用については、再生計画認可の決定の確定によって効力を失った破産手続における破産の申立ての時に破産の申立てがあったものとみなすものとする。
 1又は3により破産の宣告がされた場合には、共益債権(再生手続が開始されなかった場合における四十七2及び百十三3に規定する請求権を含む。5において同じ。)は、財団債権とするものとする。
 破産宣告後の再生債務者について再生手続開始申立棄却、百八十一から百八十三までにより再生計画認可決定の確定前にされた再生手続廃止又は再生計画不認可の決定の確定によって破産手続が続行された場合も、共益債権は、財団債権とするものとする。
 
二 専属管轄
 この要綱に規定する裁判所の管轄は、専属とするものとする。
 
三 事件に関する文書の閲覧等
 利害関係人は、裁判所書記官に対し、この要綱(この要綱において準用する他の法律を含む。)の規定に基づき、裁判所に提出され、又は裁判所が作成した文書その他の物件(以下この項及び十四において「文書等」という。)の閲覧を請求することができるものとする。
 利害関係人は、裁判所書記官に対し、文書等の謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができるものとする。
 2は、文書等のうち録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しないものとする。この場合において、これらの物について利害関係人の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならないものとする。
 1から3までにかかわらず、次の各号に掲げる者は、当該各号に定める裁判のいずれかがあるまでの間は、1から3までによる請求をすることができないものとする。ただし、当該者が再生手続開始の申立人である場合は、この限りでないものとする。
 再生債務者以外の利害関係人 二十三1による中止の命令、二十四1による禁止の命令、二十七1による保全処分、二十八1による中止の命令、五十一1による処分、七十五1による処分又は再生手続開始の申立てについての決定
 再生債務者 再生手続開始の申立てに関する口頭弁論若しくは再生債務者を呼び出す審尋の期日の指定又は前号に定める裁判
 
四 支障部分の閲覧等の制限
 次に掲げる文書等について、利害関係人がその閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下この項において「閲覧等」という。)を行うことにより、再生債務者の事業の継続に著しい支障を生ずるおそれ又は再生債務者の財産に著しい損害を与えるおそれがある部分(以下この項において「支障部分」という。)があることにつき疎明があった場合には、裁判所は、当該文書を提出した再生債務者等(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人。以下1及び2において同じ。)、監督委員又は調査委員の申立てにより、支障部分の閲覧等の請求をすることができる者を、当該申立てをした者及び再生債務者等に限ることができるものとする。
 三十八1、三十九1、五十三4、七十一1(七十七1において準用する場合を含む。)又は七十五3ただし書の許可を得るために裁判所に提出された文書等
 五十九2により調査委員がする調査の結果の報告及び百十八2又は3により再生債務者等又は監督委員が裁判所にする報告に係る文書等
 1の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで、利害関係人(1の申立てをした者及び再生債務者等を除く。3において同じ。)は、支障部分の閲覧等の請求をすることができないものとする。
 支障部分の閲覧等の請求をしようとする利害関係人は、再生裁判所に対し、1に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、1の決定の取消しの申立てをすることができるものとする。
 1の申立てを却下した決定及び3の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 1の決定を取り消す決定は、確定しなければその効力を生じないものとする。
 
五 民事訴訟法の準用
 再生手続に関しては、特別の定めがある場合を除き、民事訴訟法の規定を準用するものとする。
 
六 最高裁判所規則
 この要綱に定めるもののほか、再生手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定めるものとする。
 
七 手続開始の申立て
 再生債務者に破産の原因たる事実の生ずるおそれがあるときは、再生債務者は、裁判所に対し、再生手続開始の申立てをすることができるものとする。再生債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときも、同様とするものとする。
 1前段に規定する場合には、再生債権者も、再生手続開始の申立てをすることができるものとする。
 
八 破産等の申立義務と再生手続開始の申立て
 他の法律によって法人の理事又はこれに準ずる者がその法人に対して破産又は特別清算開始の申立てをしなければならない場合においても、再生手続開始の申立てをすることを妨げないものとする。
 
九 疎明
 再生手続開始の申立てをするときは、再生手続開始の原因たる事実を疎明しなければならないものとする。
 再生債権者が、1の申立てをするときは、その有する再生債権の存在をも疎明しなければならないものとする。
 
十 再生手続の開始原因の推定
 再生債務者について、外国で開始した破産手続、再生手続その他これらに準ずる手続(以下「外国倒産処理手続」という。)がある場合には、再生手続開始の原因たる事実があるものと推定するものとする。
 
十一 費用の予納
 再生手続開始の申立てをするときは、申立人は、再生手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならないものとする。
 費用の予納に関する決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 
十二 手続開始の条件
 次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならないものとする。
 再生手続の費用の予納がないとき。
 裁判所に破産手続、整理手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
 再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。
 不当な目的で再生手続開始の申立てがされたときその他申立てが誠実にされたものでないとき。
 
十三 他の手続の中止命令等
 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続の中止を命ずることができるものとする。ただし、二に掲げる手続については、その手続の申立人である再生債権者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限るものとする。
 破産手続、整理手続又は特別清算手続
 再生債権に基づく強制執行、仮差押え若しくは仮処分又は再生債権を被担保債権とする留置権(商法(明治三十二年法律第四十八号)の規定によるものを除く。)による競売(二十四、二十六及び三十六において「強制執行等」という。)の手続で、再生債務者の財産に対して既にされているもの
 再生債務者の財産関係の訴訟手続
 再生債務者の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続
 裁判所は、1による中止の命令を変更し、又は取り消すことができるものとする。
 裁判所は、再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、1の二により中止した手続の取消しを命ずることができるものとする。
 1による中止の命令、2による決定及び3による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 4の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
 4に規定する裁判及び4の即時抗告についての決定は、当事者に送達しなければならないものとする。
 
十四 強制執行等の包括的禁止命令
 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、二十三1による中止の命令によっては再生手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、すべての再生債権者に対し、再生債務者の財産に対する強制執行等の禁止を命ずることができるものとする。ただし、事前に、又は同時に、二十七1による再生債務者の主要な財産に関する仮差押え若しくは仮処分、五十一1による監督委員による監督を命ずる処分又は七十五1による保全管理人による管理を命ずる処分をした場合に限るものとする。
 1による禁止の命令(以下「包括的禁止命令」という。)が発せられた場合には、再生債務者の財産に対して既にされている強制執行等の手続は、中止するものとする。
 裁判所は、包括的禁止命令を変更し、又は取り消すことができるものとする。
 裁判所は、再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、2により中止した強制執行等の手続の取消しを命ずることができるものとする。
 包括的禁止命令、3による決定及び4による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 5の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
 包括的禁止命令が発せられたときは、再生債権については、当該命令が効力を失った日の翌日から二月を経過する日までの間は、時効は、完成しないものとする。
 
十五 包括的禁止命令に関する公告及び送達等
 包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定は、公告し、かつ、再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人。以下1及び2において同じ。)、知れている再生債権者及び再生手続開始の申立人に送達しなければならないものとする。この場合において、再生債務者に対する送達については、九4及び5は、適用しないものとする。
 包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定は、再生債務者に対する送達がされた時から、効力を生ずるものとする。
 二十四4による取消しの命令及び二十四5の即時抗告についての決定(包括的禁止命令を変更し、又は取り消す旨の決定を除く。)は、当事者に送達しなければならないものとする。
 
十六 包括的禁止命令の解除
 裁判所は、包括的禁止命令を発した場合において、強制執行等の申立人である再生債権者に不当な損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該再生債権者の申立てにより、当該再生債権者に対しては包括的禁止命令を解除する旨の決定をすることができるものとする。この場合には、当該再生債権者は、再生債務者の財産に対する強制執行等をすることができ、包括的禁止命令が発せられる前に当該再生債権者がした強制執行等の手続は、続行するものとする。
 1による解除の決定を受けた者に対する二十四7の適用については、このうち「当該命令が効力を失った日」とあるのは、「二十六1による解除の決定があった日」とするものとする。
 1の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 3の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
 1の申立てについての決定及び3の即時抗告についての決定は、当事者に送達しなければならないものとする。
 
十七 仮差押え、仮処分その他の保全処分
 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合には、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、再生債務者の業務及び財産に関し、仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができるものとする。
 裁判所が1により再生債務者が債権者に対して弁済その他の債務を消滅させる行為をすることを禁止する旨の保全処分を命じた場合には、債権者は、再生手続の関係においては、当該保全処分に反してされた弁済その他の債務を消滅させる行為の効力を主張することができないものとする。ただし、債権者が、その行為の当時、当該保全処分がされたことを知っていたときに限るものとする。
 裁判所は、1による保全処分を変更し、又は取り消すことができるものとする。
 1による保全処分及び3による決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 4の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
 4に規定する裁判及び4の即時抗告についての決定は、当事者に送達しなければならないものとする。この場合においては、九3は、適用しないものとする。
 
十八 担保権の実行としての競売手続の中止命令
 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、再生債権者の一般の利益に適合し、かつ、競売申立人に不当な損害を及ぼすおそれがないものと認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、相当の期間を定めて、五十1に規定する再生債務者の財産の上に存する担保権の実行としての競売の手続の中止を命ずることができるものとする。ただし、その担保権によって担保される債権が共益債権又は一般優先債権であるときは、この限りでないものとする。
 裁判所は、1による中止の命令を発する場合には、競売申立人の意見を聴かなければならないものとする。
 裁判所は、1による中止の命令を変更し、又は取り消すことができるものとする。
 1による中止の命令及び3による変更の決定に対しては、競売申立人に限り、即時抗告をすることができるものとする。
 4の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
 4に規定する裁判及び4の即時抗告についての決定は、当事者に送達しなければならないものとする。この場合においては、九3は、適用しないものとする。
 
十九 手続開始の申立ての取下げの制限
 二十三1による中止の命令、包括的禁止命令、二十七1による保全処分、二十八1による中止の命令、五十一1による処分又は七十五1による処分がされた後は、裁判所の許可を得なければ、再生手続開始の申立てを取り下げることができないものとする。
 
十 再生手続の効力発生の時期
 再生手続は、その開始決定の時から、効力を生ずるものとする。
 
十一 開始と同時に定めるべき事項
 裁判所は、再生手続開始の決定と同時に、再生債権の届出をすべき期間、再生債権の調査をするための期間及び百十九1の債権者集会を招集する場合には、当該債権者集会の期日を定めなければならないものとする。
 
十二 開始の公告等
 裁判所が再生手続開始の決定をしたときは、直ちに、再生手続開始決定の主文及び三十一により定めた期間及び期日を公告しなければならないものとする。
 再生債務者、知れている再生債権者及び再生手続開始の申立人には、1に規定する事項を記載した書面を送達しなければならないものとする。五十一1、六十一1又は七十五1による処分がされた場合における監督委員、管財人又は保全管理人についても、同様とするものとする。
 1及び2は、三十一により定めた期間及び期日に変更を生じた場合について準用するものとする。ただし、再生債権の調査をするための期間の変更については、公告することを要しないものとする。
 
十三 抗告
 再生手続開始の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 二十三から二十七までは、再生手続開始の申立てを棄却する決定に対して1の即時抗告があった場合について準用するものとする。
 
十四 開始決定の取消し
 再生手続開始の決定をした裁判所は、これを取り消す決定が確定したときは、直ちにその主文を公告し、かつ、三十二2に規定する者にその主文を記載した書面を送達しなければならないものとする。
 
十五 再生債務者の地位
 再生債務者は、再生手続が開始された後も、その業務を遂行し、又はその財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)を管理し、若しくは処分する権利を有するものとする。
 再生手続が開始された場合には、再生債務者は、債権者に対し、公平かつ誠実に、1の権利を行使し、再生手続を追行する義務を負うものとする。
 1及び2は、六十一1による管財人による管理を命ずる処分がされた場合には、適用しないものとする。
 
十六 他の手続の中止等
 再生手続開始の決定があったときは、破産、再生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立て又は再生債務者の財産に対する強制執行等はすることができず、破産手続及び再生債務者の財産に対して既にされている強制執行等の手続は中止し、整理手続及び特別清算手続はその効力を失うものとする。
 裁判所は、再生に支障を来さないと認めるときは、再生債務者等の申立てにより又は職権で、1により中止した強制執行等の手続の続行を命ずることができ、再生のため必要があると認めるときは、再生債務者等の申立てにより又は職権で、担保を立てさせ、又は立てさせないで、中止した強制執行等の手続の取消しを命ずることができるものとする。
 1によって効力を失った手続のために再生債務者に対して生じた債権及びその手続に関する再生債務者に対する費用請求権並びに2によって続行された手続に関する再生債務者に対する費用請求権は、共益債権とするものとする。
 
十七 訴訟手続の中断等
 再生手続開始の決定があったときは、再生債務者の財産関係の訴訟手続のうち再生債権に関するものは、中断するものとする。
 1に規定する訴訟手続について、百1(百二2及び百六3において準用する場合を含む。)又は百九十6(百九十四1において準用する場合を含む。)による受継があるまでに再生手続が終了したときは、再生債務者は、当然に訴訟手続を受継するものとする。
 1及び2は、再生債務者の財産関係の事件のうち再生債権に関するものであって、再生手続開始当時行政庁に係属するものについて準用するものとする。
 
十八 再生債務者の行為の制限
 裁判所は、再生手続開始後において、必要があると認めるときは、再生債務者が次に掲げる行為をするには裁判所の許可を得なければならないものとすることができるものとする。
 財産の処分
 財産の譲受け
 借財
 四十六1による契約の解除
 訴えの提起
 和解又は仲裁契約
 権利の放棄
 共益債権、一般優先債権又は四十九に規定する取戻権の承認
 別除権の目的の受戻し
 その他裁判所の指定する行為
 1の許可を得ないでした行為は、無効とするものとする。ただし、これをもって、善意の第三者に対抗することができないものとする。
 
十九 営業等の譲渡
 再生手続開始後において、再生債務者等が再生債務者の営業又は事業の全部又は重要な一部の譲渡をするには、裁判所の許可を得なければならないものとする。
 裁判所は、1の許可をする場合には、知れている再生債権者の意見を聴かなければならないものとする。ただし、百十一2の委員会があるときは、その意見を聴けば足りるものとする。
 裁判所は、1の許可をする場合には、再生債務者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、再生債務者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合がないときは再生債務者の使用人その他の従業者の過半数を代表する者(以下「労働組合等」という。)の意見を聴かなければならないものとする。
 三十八2は、1の許可を得ないでした行為について準用するものとする。
 
十 営業の譲渡に関する株主総会の決議に代わる許可
 再生手続開始後において、株式会社である再生債務者がその財産をもって債務を完済することができないときは、裁判所は、再生債務者等の申立てにより、当該再生債務者の営業の全部又は重要な一部の譲渡について商法第二百四十五条第一項に規定する株主総会の決議に代わる許可を与えることができるものとする。ただし、当該営業の全部又は重要な一部の譲渡が事業の継続のために必要である場合に限るものとする。
 1の許可(以下この項において「代替許可」という。)の決定は、株主に送達しなければならないものとする。
 2による送達は、株主名簿に記載された住所又は株主が再生債務者に通知した住所にあてて、書類を通常の取扱いによる郵便に付してすることができるものとする。
 3により書類を郵便に付して発送した場合には、その郵便物が通常到達すべきであった時に、送達があったものとみなすものとする。
 代替許可の決定に対しては、株主は、即時抗告をすることができるものとする。
 5の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
 
十一 開始後の権利取得
 再生手続開始後、再生債権につき再生債務者財産に関して再生債務者又は管財人の行為によらないで権利を取得しても、再生債権者は、再生手続の関係においては、その効力を主張することができないものとする。
 再生手続開始の日に取得した権利は、再生手続開始後に取得したものと推定するものとする。
 
十二 開始後の登記及び登録
 不動産又は船舶に関し再生手続開始前に生じた登記原因に基づき再生手続開始後にされた登記又は不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)第二条第一号の規定による仮登記は、再生手続の関係においては、その効力を主張することができないものとする。ただし、登記権利者が再生手続開始の事実を知らないでした登記又は仮登記については、この限りでないものとする。
 1は、権利の設定、移転若しくは変更に関する登録若しくは仮登録又は企業担保権の設定、移転若しくは変更に関する登記について準用するものとする。
 
十三 開始後の手形の引受等
 為替手形の振出人又は裏書人である再生債務者について再生手続が開始された場合において、支払人又は予備支払人がその事実を知らないで引受け又は支払をしたときは、その支払人又は予備支払人は、これによって生じた債権につき、再生債権者としてその権利を行うことができるものとする。
 1は、小切手及び金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする有価証券について準用するものとする。
 
十四 善意又は悪意の推定
 四十二及び四十三の適用については、三十二1による公告(以下「再生手続開始の公告」という。)前においてはその事実を知らなかったものと推定し、再生手続開始の公告後においてはその事実を知っていたものと推定するものとする。
 
十五 共有関係
 再生債務者が他人と共同して財産権を有する場合において、再生手続が開始されたときは、再生債務者等は、分割をしない定めがあるときでも、分割の請求をすることができるものとする。
 1の場合には、他の共有者は、相当の償金を支払って再生債務者の持分を取得することができるものとする。
 
十六 双務契約
 双務契約について再生債務者及びその相手方が再生手続開始当時共にまだその履行を完了していないときは、再生債務者等は、契約を解除し、又は再生債務者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができるものとする。
 1の場合には、相手方は、相当の期間を定め、その期間内に、契約の解除をするか又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を再生債務者等に催告することができるものとする。この場合において、再生債務者等がその期間内に確答をしないときは、1による解除権を放棄したものとみなすものとする。
 1及び2は、労働協約には、適用しないものとする。
 1により再生債務者の債務の履行をする場合において、相手方が有する請求権は、共益債権とするものとする。
 破産法第六十条の規定は、1による契約の解除があった場合について準用するものとする。この場合において、同条第一項中「破産債権者」とあるのは「再生債権者」と、同条第二項中「破産者」とあるのは「再生債務者」と、「破産財団」とあるのは「再生債務者財産」と、「財団債権者」とあるのは「共益債権者」と読み替えるものとする。
 
十七 継続的給付を目的とする双務契約
 再生債務者に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、再生手続開始の申立て前の給付に係る再生債権について弁済がないことを理由としては、再生手続開始後は、その義務の履行を拒むことができないものとする。
 1の双務契約の相手方が再生手続開始の申立て後再生手続開始前にした給付に係る請求権(一定期間ごとに債権額を算定すべき継続的給付については、申立ての日の属する期間内の給付に係る請求権を含む。)は、共益債権とするものとする。
 1及び2は、労働契約には、適用しないものとする。
 
十八 双務契約についての破産法の準用
 破産法第六十一条、第六十三条及び第六十六条の規定は、再生手続が開始された場合について準用するものとする。この場合において、同法第六十一条第一項前段及び第六十三条第一項中「破産宣告」とあり、並びに同項及び第六十六条第一項中「破産ノ宣告」とあるのは「再生手続開始ノ決定」と、同法第六十三条第一項及び第二項中「破産債権者」とあるのは「再生債権者」と、同法第六十六条第二項中「破産者」とあるのは「再生債務者」と、「破産財団」とあるのは「再生債務者財産」と、「破産債権」とあるのは「再生債権」と読み替えるものとする。
 
十九 取戻権
 再生手続の開始は、再生債務者に属しない財産を再生債務者から取り戻す権利に影響を及ぼさないものとする。
 破産法第八十八条から第九十一条までの規定は、再生手続が開始された場合について準用するものとする。この場合において、同法第八十八条及び第九十一条第一項前段中「破産宣告」とあるのは「再生手続開始ノ決定」と、「破産者」とあるのは「再生債務者(保全管理人カ選任セラレタル場合ニ於テハ保全管理人)」と、同法第八十九条第一項本文中「破産ノ宣告」とあるのは「再生手続開始ノ決定」と、同項ただし書並びに同法第九十一条第一項後段及び第二項中「破産管財人」とあるのは「再生債務者(管財人カ選任セラレタル場合ニ於テハ管財人)」と、同法第八十九条第二項中「第五十九条」とあるのは「要綱四十六1及2」と読み替えるものとする。
 
十 別除権
 再生債務者の財産の上に存する特別の先取特権、質権、抵当権又は商法の規定による留置権を有する者は、その目的である財産について、別除権を有するものとする。
 別除権は、再生手続によらないで、これを行使することができるものとする。
 
十一 監督命令
 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、監督委員による監督を命ずる処分をすることができるものとする。
 裁判所は、1の処分(以下「監督命令」という。)をする場合には、当該監督命令において、一人又は数人の監督委員を選任し、かつ、その同意を得なければ再生債務者がすることができない行為を指定しなければならないものとする。
 法人は、監督委員となることができるものとする。
 2に規定する監督委員の同意を得ないでした行為は、無効とするものとする。ただし、これをもって、善意の第三者に対抗することができないものとする。
 裁判所は、監督命令を変更し、又は取り消すことができるものとする。
 監督命令及び5による決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 6の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
 
十二 監督命令に関する公告及び送達
 裁判所は、監督命令を発したときは、その旨を公告しなければならないものとする。監督命令を変更し、又は取り消す旨の決定があった場合も、同様とするものとする。
 監督命令、五十一5による決定及び五十一6の即時抗告についての決定は、当事者に送達しなければならないものとする。
 九4及び5は、監督命令に関し、公告及び送達をしなければならない場合については、適用しないものとする。
 
十三 否認に関する権限の付与
 再生手続開始の決定があった場合には、裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、監督委員に対して、特定の行為について否認権を行使する権限を付与することができるものとする。
 監督委員は、1により権限を付与された場合には、当該権限の行使に関し必要な範囲内で、再生債務者のために、金銭の収支その他の財産の管理及び処分をすることができるものとする。この場合においては、七十三1及び2を準用するものとする。
 裁判所は、1による決定を変更し、又は取り消すことができるものとする。
 裁判所は、必要があると認めるときは、1により権限を付与された監督委員が訴えの提起、和解その他裁判所の指定する行為をするには裁判所の許可を得なければならないものとすることができるものとする。
 三十八2は、監督委員が4の許可を得ないでした行為について準用するものとする。
 
十四 監督委員に対する監督等
 監督委員は、裁判所が監督するものとする。
 重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、監督委員を解任することができるものとする。この場合においては、その監督委員を審尋しなければならないものとする。
 
十五 数人の監督委員の職務執行
 監督委員が数人あるときは、共同してその職務を行うものとする。ただし、裁判所の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができるものとする。
 
十六 監督委員による調査
 監督委員は、再生債務者及びその代理人並びに再生債務者の理事、取締役、監事、監査役、清算人及びこれらに準ずる職務権限を有する者に対し、再生債務者の業務及び財産の状況につき報告を求め、再生債務者の帳簿、書類その他の物件を検査することができるものとする。
 
十七 監督委員の注意義務
 監督委員は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならないものとする。
 監督委員が1の注意を怠ったときは、その監督委員は、利害関係人に対し、連帯して損害を賠償する責めに任ずるものとする。
 
十八 監督委員の報酬等
 監督委員は、費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができるものとする。
 監督委員は、その選任後、再生債務者に対する債権若しくはその株式を譲り受け、又は譲り渡すには、裁判所の許可を得なければならないものとする。
 監督委員は、2の許可を得ないで2に規定する行為をしたときは、費用及び報酬の支払を受けることができないものとする。
 1による決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 
十九 調査命令
 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、調査委員による調査を命ずる処分をすることができるものとする。
 裁判所は、1の処分(以下「調査命令」という。)をする場合には、当該調査命令において、一人又は数人の調査委員を選任し、かつ、調査委員が調査すべき事項及び裁判所に対して調査の結果の報告をすべき期間を定めなければならないものとする。
 裁判所は、調査命令を変更し、又は取り消すことができるものとする。
 調査命令及び3による決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 4の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
 4に規定する裁判及び4の即時抗告についての決定は、当事者に送達しなければならないものとする。
 
十 監督委員に関する規定の調査委員への準用
 五十一3、五十四、五十五本文及び五十六から五十八までは、調査委員について準用するものとする。
 
十一 管理命令
 裁判所は、再生債務者(法人である場合に限る。以下この項において同じ。)の財産の管理又は処分が失当であるときその他再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続の開始の決定と同時に、又はその決定後、再生債務者の業務及び財産に関し、管財人による管理を命ずる処分をすることができるものとする。
 裁判所は、1の処分(以下「管理命令」という。)をする場合には、当該管理命令において、一人又は数人の管財人を選任しなければならないものとする。
 裁判所が管理命令を発しようとする場合には、再生債務者を審尋しなければならないものとする。ただし、急迫の事情があるときは、この限りでないものとする。
 裁判所は、管理命令を変更し、又は取り消すことができるものとする。
 管理命令及び4による決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 5の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
 
十二 管理命令に関する公告及び送達
 裁判所は、管理命令を発したときは、3に規定する場合を除き、次の事項を公告しなければならないものとする。
 管理命令を発した旨及び管財人の氏名又は名称
 再生債務者に対して債務を負担する者及び再生債務者の財産の所持者は、再生債務者に弁済し、又はその財産を交付してはならない旨
 管理命令は、3に規定する場合を除き、当事者並びに再生債務者に対して債務を負担する者及び再生債務者の財産の所持者で知れているものに送達しなければならないものとする。
 裁判所は、再生手続開始の決定と同時に管理命令を発したときは、再生手続開始の公告には、1に掲げる事項をも掲げなければならないものとする。この場合においては、三十二2の書面に、1に掲げる事項をも記載し、これを再生債務者に対して債務を負担する者及び再生債務者の財産の所持者で知れているものに対しても送達しなければならないものとする。
 管理命令を変更し、又は取り消す旨の決定は、公告し、かつ、当事者並びに再生債務者に対して債務を負担する者及び再生債務者の財産の所持者で知れているものに送達しなければならないものとする。
 六十一5の即時抗告についての決定(4に規定する決定を除く。)は、当事者に送達しなければならないものとする。
 2は、管理命令が発せられた場合において、再生手続開始の決定を取り消す決定が確定したときについて準用するものとする。
 九5は、管理命令に関し、公告及び送達をしなければならない場合については、適用しないものとする。
 
十三 管財人の権限
 管理命令が発せられた場合には、再生債務者の業務の遂行並びに財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した管財人に専属するものとする。
 
十四 管理命令が発せられた場合における再生債務者の財産関係の訴え
 管理命令が発せられた場合には、再生債務者の財産関係の訴えについては、管財人を原告又は被告とするものとする。
 管理命令が発せられた場合には、再生債務者の財産関係の訴訟手続で再生債務者が当事者であるものは、中断するものとする。
 2によって中断した訴訟手続のうち再生債権に関しないものは、管財人においてこれを受け継ぐことができるものとする。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができるものとする。
 2によって中断した訴訟手続のうち、再生債権に関するもので九十九、百、百二又は百六により提起され、又は受継されたものは、管財人においてこれを受け継がなければならないものとする。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができるものとする。
 3及び4の場合においては、相手方の再生債務者に対する訴訟費用請求権は、共益債権とするものとする。
 
十五 再生債務者による訴訟手続の受継
 六十四2によって中断した訴訟手続について六十四3又は4による受継があるまでに再生手続が終了したときは、再生債務者は、当該訴訟手続を当然に受継するものとする。
 六十四2によって中断した訴訟手続について六十四3又は4による受継があった後に再生手続が終了したときは、当該訴訟手続は、中断するものとする。
 2の場合においては、再生債務者において当該訴訟手続を受け継がなければならないものとする。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができるものとする。
 1は六十四3又は4による受継があるまでに管理命令を取り消す旨の決定が確定した場合について、2及び3は六十四3又は4による受継があった後に管理命令を取り消す旨の決定が確定した場合について準用するものとする。
 
十六 行政庁に係属する事件の取り扱い
 六十四2から5まで及び六十五は、再生債務者の財産関係の事件で管理命令が発せられた当時行政庁に係属するものについて準用するものとする。
 
十七 数人の管財人の職務執行
 管財人が数人あるときは、共同してその職務を行うものとする。ただし、裁判所の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができるものとする。
 管財人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りるものとする。
 
十八 管財人代理
 管財人は、必要があるときは、その職務を行わせるため、自己の責任で一人又は数人の管財人代理を選任することができるものとする。
 1の管財人代理の選任については、裁判所の許可を得なければならないものとする。
 
十九 再生債務者の業務及び財産の管理
 管財人は、就職の後直ちに再生債務者の業務及び財産の管理に着手しなければならないものとする。
 
十 郵便物の管理
 裁判所は、通信事務を取り扱う官署その他の者に対し、再生債務者にあてた郵便物を管財人に配達すべき旨を嘱託することができるものとする。
 管財人は、再生債務者にあてた郵便物を受け取ったときは、これを開いて見ることができるものとする。
 再生債務者は、管財人に対し、その受け取った2の郵便物の閲覧又は当該郵便物で再生債務者財産に関しないものの交付を求めることができるものとする。
 裁判所は、再生債務者の申立てにより又は職権で、管財人の意見を聴いて、1に規定する嘱託を取り消し、又は変更することができるものとする。
 再生手続が終了したときは、裁判所は、1に規定する嘱託を取り消さなければならないものとする。管理命令が取り消されたときも、同様とするものとする。
 
十一 管財人の行為に対する制限
 裁判所は、必要があると認めるときは、管財人が三十八1に掲げる行為をするには裁判所の許可を得なければならないものとすることができるものとする。
 管財人は、裁判所の許可を得なければ、再生債務者の財産を譲り受け、再生債務者に対し自己の財産を譲り渡し、その他自己又は第三者のために再生債務者と取引をすることができないものとする。
 1及び2の許可を得ないでした行為は、無効とするものとする。ただし、これをもって、善意の第三者に対抗することができないものとする。
 
十二 管理命令後の再生債務者の行為等
 再生債務者が管理命令が発せられた後に再生債務者財産に関してした法律行為は、再生手続の関係においては、その効力を主張することができないものとする。ただし、相手方がその行為の当時管理命令が発せられたことを知らなかったときは、この限りでないものとする。
 管理命令が発せられた後に、その事実を知らないで再生債務者にした弁済は、再生手続の関係においても、その効力を主張することができるものとする。
 管理命令が発せられた後に、その事実を知って再生債務者にした弁済は、再生債務者財産が受けた利益の限度においてのみ、再生手続の関係において、その効力を主張することができるものとする。
 四十四は、1から3までの適用について準用するものとする。この場合において、「三十二1による公告(以下「再生手続開始の公告」という。)」とあるのは「管理命令の公告(再生手続開始の決定と同時に管理命令が発せられた場合には、三十二1による公告)」と読み替えるものとする。
 
十三 管財人の任務が終了した場合の義務等
 管財人の任務が終了した場合には、管財人又はその承継人は、遅滞なく裁判所に計算の報告をしなければならないものとする。
 1に規定する場合において、急迫の事情があるときは、管財人又はその承継人は、後任の管財人又は再生債務者が財産を管理することができるに至るまで必要な処分をしなければならないものとする。
 再生手続開始の決定を取り消す決定、再生手続廃止の決定若しくは再生計画不認可の決定が確定した場合又は再生手続終了前に再生計画取消しの決定が確定した場合には、十一1により破産の宣告をすべき場合を除き、管財人は、共益債権及び一般優先債権を弁済し、これらの債権のうち異議のあるものについては、その債権を有する者のために供託をしなければならないものとする。
 
十四 監督委員に関する規定の管財人等への準用
 五十一3、五十四及び五十六から五十八までは管財人について、五十八は管財人代理について準用するものとする。
 
十五 保全管理命令
 裁判所は、再生債務者(法人である場合に限る。以下この項において同じ。)の財産の管理又は処分が失当であるときその他再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の決定をする前でも、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、再生債務者の業務及び財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができるものとする。この場合においては、六十一3を準用するものとする。
 裁判所は、1の処分(以下「保全管理命令」という。)をする場合には、当該保全管理命令において、一人又は数人の保全管理人を選任しなければならないものとする。
 保全管理命令が発せられたときは、再生債務者の業務の遂行並びに財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)の管理及び処分をする権利は、保全管理人に専属するものとする。ただし、保全管理人が再生債務者の常務に属しない行為をするには、裁判所の許可を得なければならないものとする。
 3ただし書の許可を得ないでした行為は、無効とするものとする。ただし、善意の第三者に対抗することができないものとする。
 裁判所は、保全管理命令を変更し、又は取り消すことができるものとする。
 保全管理命令及び5による決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 6の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
 
十六 保全管理命令に関する公告及び送達
 裁判所は、保全管理命令を発したときは、その旨を公告しなければならないものとする。保全管理命令を変更し、又は取り消す旨の決定があった場合も、同様とするものとする。
 保全管理命令、七十五5による決定及び七十五6の即時抗告についての決定は、当事者に送達しなければならないものとする。
 九4及び5は、保全管理命令に関し、公告及び送達をしなければならない場合については、適用しないものとする。
 
十七 監督委員に関する規定等の保全管理人等への準用
 五十一3、五十四、五十六から五十八まで、六十七、六十八、七十一、七十二並びに七十三1及び2は保全管理人について、五十八はこの項において準用する六十八により選任される保全管理人代理について準用するものとする。
 六十四(4を除く。)及び六十五1から3までは、保全管理命令が発せられた場合及び保全管理命令が効力を失った場合について準用する。
 
十八 再生債権となる請求権
 再生債務者に対し再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権は、再生債権とするものとする。
 次に掲げる請求権も、再生債権とするものとする。
 再生手続開始後の利息の請求権
 再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権
 再生手続参加の費用の請求権
 
十九 再生債権の弁済の禁止
 再生債権については、再生手続によらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができないものとする。ただし、2及び5の再生債権について、再生債務者等が裁判所の許可を得て弁済をする場合は、この限りでないものとする。
 再生債務者を主要な取引先とする中小企業者が、その有する再生債権の弁済を受けなければ、事業の継続に著しい支障を来すおそれがあるときは、裁判所は、再生計画認可の決定が確定する前でも、再生債務者等の申立てにより又は職権で、その全部又は一部の弁済をすることを許可することができるものとする。
 裁判所は、2による許可をするについては、再生債務者と2の中小企業者との取引の状況、再生債務者の資産状態、利害関係人の利害その他一切の事情を考慮しなければならないものとする。
 再生債務者等は、再生債権者から2の申立てをすべきことを求められたときは、直ちにその旨を裁判所に報告しなければならないものとする。この場合において、その申立てをしないこととしたときは、遅滞なくその事情を裁判所に報告しなければならないものとする。
 少額の再生債権を早期に弁済することにより再生手続を円滑に進行することができるときは、裁判所は、再生計画認可の決定が確定する前でも、再生債務者等の申立てにより、その弁済をすることを許可することができるものとする。
 
十 再生債権者の手続参加
 再生債権者は、その有する再生債権をもって再生手続に参加することができるものとする。
 破産法第二十四条から第二十九条までの規定は、再生債務者について再生手続が開始された場合について準用するものとする。この場合において、同法第二十四条、第二十五条、第二十六条第一項本文、第二十八条及び第二十九条本文中「破産ノ宣告」とあり、並びに同法第二十四条、第二十五条及び第二十八条中「破産宣告」とあるのは「再生手続開始ノ決定」と、同法第二十四条、第二十五条、第二十六条第一項、第二十八条及び第二十九条ただし書中「破産債権者」とあるのは「再生債権者」と、同法第二十四条中「各破産財団ニ対シ」とあるのは「各再生手続ニ於テ」と、同法第二十六条第三項中「破産者」とあるのは「再生債務者」と読み替えるものとする。
 
十一 再生債権者の議決権
 再生債権者は、次の各号に掲げる債権についてはそれぞれ当該各号に定める金額に応じ、その他の債権についてはその債権額に応じて、議決権を有するものとする。
 再生手続開始後に期限が到来すべき確定期限付債権で無利息のもの 再生手続開始の時から期限に至るまでの期間の年数(その期間に一年に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。)に応じた債権に対する法定利息を債権額から控除した額
 金額及び存続期間が確定している定期金債権 各定期金につき前号に準じて算定される額の合計額(その総額が法定利息によりその定期金に相当する利息を生ずべき元本額を超えるときは、その元本額)
 再生手続開始後に期限が到来すべき不確定期限付債権で無利息のもの、金額若しくは存続期間が不確定である定期金債権、金銭の支払を目的としない債権、金銭債権でその額が不確定であるもの若しくはその額を外国の通貨をもって定めたもの、条件付債権又は再生債務者に対して行うことがある将来の請求権 再生手続開始の時における評価額
 1にかかわらず、再生債権者は、七十八2に掲げる請求権及び九十に規定する請求権については、議決権を行使することができないものとする。
 
十二 別除権者の手続参加
 別除権者は、その別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分についてのみ、再生債権者として、その権利を行うことができるものとする。ただし、五十1に規定する担保権によって担保される債権の全部又は一部が再生手続が開始された後に担保されないこととなった場合には、その債権の当該全部又は一部について、再生債権者として、その権利を行うことを妨げないものとする。
 
十三 再生債権者が外国で受けた弁済
 再生債権者は、再生手続開始の決定があった後に、再生債務者の財産で外国にあるものに対して権利を行使したことにより、再生債権について弁済を受けた場合であっても、その弁済を受ける前の債権の全部をもって再生手続に参加することができるものとする。
 1の再生債権者は、他の再生債権者が自己の受けた弁済と同一の割合の弁済を受けるまでは、再生手続により、弁済を受けることができないものとする。
 1の再生債権者は、外国において弁済を受けた債権の部分については、議決権を行使することができないものとする。
 
十四 代理委員
 再生債権者は、裁判所の許可を得て、共同して又は各別に、一人又は数人の代理委員を選任することができるものとする。
 代理委員は、これを選任した再生債権者のために、再生手続に属する一切の行為をすることができるものとする。
 代理委員が数人あるときは、共同してその権限を行使するものとする。ただし、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りるものとする。
 裁判所は、代理委員の権限の行使が著しく不公正であると認めるときは、1の許可を取り消すことができるものとする。
 
十五 報償金等
 再生債権者若しくは代理委員又はこれらの代理人が再生に貢献したときは、裁判所は、これらの者に対して、再生債務者財産から適当な範囲内の費用を償還し、又は報償金を支払うことを許すことができるものとする。その額は、裁判所が定めるものとする。
 1による決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 
十六 相殺権
 再生債権者が再生手続開始当時再生債務者に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が再生債権の届出期間の満了前に相殺に適するようになったときは、再生債権者は、その期間内に限り、再生手続によらないで相殺をすることができるものとする。債務が期限付であるときも、同様とするものとする。
 破産法第百三条及び第百四条の規定は、1の相殺について準用するものとする。この場合において、同法第百三条第一項前段並びに同法第百四条第一号及び第三号中「破産宣告」とあるのは「再生手続ノ開始」と、同条第一号中「破産財団」とあり、並びに同条第二号本文、第三号及び第四号本文の規定中「破産者」とあるのは「再生債務者」と、同条第二号及び第四号中「破産ノ申立」とあるのは「破産、再生手続開始、整理開始若ハ特別清算開始ノ申立」と、同条第二号ただし書及び第四号ただし書中「破産宣告ノ時」とあるのは「破産宣告、再生手続開始、整理開始若ハ特別清算開始ノ時」と、同条第三号及び第四号本文中「破産債権」とあるのは「再生債権」と読み替えるものとする。
 
十七 届出
 再生手続に参加しようとする再生債権者は、三十一により定められた再生債権の届出をすべき期間(以下「債権届出期間」という。)内に、各債権の内容及び原因、議決権の額その他最高裁判所規則で定める事項を裁判所に届け出なければならないものとする。
 別除権者は、1に規定する事項のほか、別除権の目的及び別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額を届け出なければならないものとする。
 
十八 届出の追完等
 再生債権者がその責めに帰することができない事由によって債権届出期間内に届出をすることができなかった場合には、その事由が消滅した後一月以内に限り、その届出の追完をすることができるものとする。
 1に定める期間については、民事訴訟法第九十六条第一項本文の規定は、準用しないものとする。
 債権届出期間経過後に生じた再生債権については、その権利の発生した後一月の不変期間内に、届出をしなければならないものとする。
 1及び3の届出は、再生計画案について決議をするための債権者集会を招集する旨の決定又は再生計画案を書面による決議に付する旨の決定がされた後は、することができないものとする。
 1、2及び4は、再生債権者が、その責めに帰することができない事由によって、届け出た事項について他の再生債権者の利益を害すべき変更を加える場合について準用するものとする。
 
十九 届出名義の変更
 届出をした再生債権を取得した者は、債権届出期間が経過した後でも、届出名義の変更を受けることができるものとする。
 
十 罰金、科料等の届出
 再生手続開始前の罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金又は過料で再生債権であるものについては、国又は公共団体は、遅滞なくその額及び原因を裁判所に届け出なければならないものとする。
 
十一 時効の中断
 再生手続参加は、時効中断の効力を生ずるものとする。ただし、再生債権者がその届出を取り下げ、又はその届出が却下されたときは、この限りでないものとする。
 
十二 再生債権者表の作成
 裁判所書記官は、届出があった再生債権及び九十四3により再生債務者等が認否書に記載した再生債権について、再生債権者表を作成しなければならないものとする。
 1の再生債権者表には、各債権の内容及び原因、議決権の額その他最高裁判所規則で定める事項を記載しなければならないものとする。
 
十三 再生債権の調査
 再生債権の調査は、九十二2に掲げる事項について、再生債務者等が作成した認否書並びに再生債権者及び再生債務者(管財人が選任されている場合に限る。)の書面による異議に基づいてするものとする。
 
十四 認否書の作成及び提出
 再生債務者等は、債権届出期間内に届出があった再生債権について、その内容及び議決権についての認否を記載した認否書を作成しなければならないものとする。
 再生債務者等は、八十八による届出又は届出事項の変更があった再生債権についても、その内容及び議決権(当該届出事項の変更があった場合には、変更後の内容及び議決権)についての認否を1の認否書に記載することができるものとする。
 再生債務者等は、届出がされていない再生債権があることを知っている場合には、当該再生債権について、自らが認める内容その他最高裁判所規則で定める事項を1の認否書に記載しなければならないものとする。
 再生債務者等は、三十一により定められた再生債権の調査をするための期間(以下「一般調査期間」という。)前の裁判所の定める期限までに、1から3までにより作成した認否書を裁判所に提出しなければならないものとする。
 4により提出された認否書に、1の再生債権の内容又は議決権についての認否の記載がないときは、再生債務者等において、これを認めたものとみなすものとする。当該認否書に2の再生債権の内容又は議決権の一方についての認否の記載がある場合における他方についても、同様とするものとする。
 
十五 一般調査期間
 届出をした再生債権者(以下「届出再生債権者」という。)は、一般調査期間内に、裁判所に対して、九十四1及び2の再生債権の内容又は議決権並びに九十四3により認否書に記載された再生債権の内容について、書面で、異議を述べることができるものとする。
 再生債務者は、一般調査期間内に、裁判所に対して、1に掲げる再生債権の内容について、書面で、異議を述べることができるものとする。ただし、管財人が選任されている場合に限るものとする。
 一般調査期間を変更する決定は、再生債務者、管財人及び届出再生債権者に送達しなければならないものとする。
 3による送達は、書類を通常の取扱いによる郵便に付してすることができるものとする。
 4によって書類を郵便に付して発送した場合においては、その郵便物が通常到達すべきであった時に、送達があったものとみなすものとする。
 
十六 特別調査期間
 裁判所は、八十八による届出又は届出事項の変更があった再生債権について、その調査をするための期間(以下「特別調査期間」という。)を定めなければならないものとする。ただし、再生債務者等が九十四2により認否書に当該再生債権の内容又は議決権についての認否を記載している場合は、この限りでないものとする。
 1本文の場合には、特別調査期間に関する費用は、その再生債権を有する者の負担とするものとする。
 再生債務者等は、特別調査期間に係る再生債権について、その内容及び議決権についての認否を記載した認否書を作成し、特別調査期間前の裁判所の定める期限までに、これを裁判所に提出しなければならないものとする。
 届出再生債権者は、3の再生債権の内容又は議決権について、再生債務者(管財人が選任されている場合に限る。)は、3の再生債権の内容について、特別調査期間内に、裁判所に対して、書面で、異議を述べることができるものとする。
 九十五3から5までは、特別調査期間を定める決定又はこれを変更する決定がされた場合について準用するものとする。
 
十七 再生債権の調査の結果
 再生債権の調査において、再生債務者等が認め、かつ、調査期間内に他の再生債権者の異議がなかった再生債権については、再生債権の内容又は議決権の額(九十四3により認否書に記載された再生債権にあっては、その内容)は、確定するものとする。
 裁判所書記官は、再生債権の調査の結果を再生債権者表に記載しなければならないものとする。
 1により確定した再生債権については、再生債権者表の記載は、再生債権者の全員に対して確定判決と同一の効力を有するものとする。
 
十八 再生債権の査定の申立て
 再生債権の調査において、再生債権の内容について再生債務者等が認めず、又は他の再生債権者が異議を述べた場合には、当該再生債権(以下「異議等のある再生債権」という。)を有する再生債権者は、その内容の確定のために、当該再生債務者等及び当該異議者(以下この項、百及び百二において「異議者等」という。)の全員を相手方として、裁判所に査定の申立てをすることができるものとする。ただし、百及び百二の場合は、この限りでないものとする。
 1本文の申立ては、当該再生債権に係る調査期間の末日から一月の不変期間内にしなければならないものとする。
 1本文の申立てがあった場合には、裁判所は、決定で、異議等のある再生債権について、その内容を定めるものとする。
 裁判所は、3の決定をする場合には、異議者等を審尋しなければならないものとする。
 1本文の申立てについての裁判は、当事者に送達しなければならないものとする。この場合においては、九3は、適用しないものとする。
 
十九 査定の申立てについての裁判に対する異議の訴え
 九十八1本文の申立てについての裁判に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に、相手方を被告として、再生裁判所に異議の訴えを提起することができるものとする。
 1の訴えの口頭弁論は、1の期間を経過した後でなければ開始することができないものとする。
 同一の債権に関し1の訴えが数個同時に係属するときは、弁論及び裁判は、併合してしなければならないものとする。この場合においては、民事訴訟法第四十条第一項から第三項までの規定を準用するものとする。
 1の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、1の裁判を認可し、又は変更するものとする。
 
 異議等のある再生債権に関する訴訟の受継
 異議等のある再生債権に関し再生手続開始決定当時訴訟が係属する場合において、再生債権者がその内容の確定を求めようとするときは、異議者等を相手方として当該訴訟を受け継がなければならないものとする。
 1の場合において、異議者等が数人あるときは、これを共同訴訟人とするものとする。
 九十八2は、1の場合について準用するものとする。
 
一 主張の制限
 異議等のある再生債権について、九十八1本文の申立て、九十九1の異議の訴えの提起又は百1による訴訟の受継があった場合には、再生債権者は、再生債権者表に記載されている当該再生債権の内容及び原因であって、九十七2による調査の結果の記載がされているもののみを主張することができるものとする。
 
二 執行力ある債務名義のある債権等に対する異議の主張
 異議等のある再生債権のうち、執行力ある債務名義又は終局判決のあるものについては、異議者等は、再生債務者がすることのできる訴訟手続によってのみ、異議を主張することができるものとする。
 九十八2、九十九3、百1及び百一は、1の場合について準用するものとする。この場合において、百1のうち「再生債権者」とあるのは「異議者等」と、「異議者等」とあるのは「再生債権者」と読み替えるものとする。
 2において準用する九十八2の期間内に1による異議の主張がされなかった場合には、異議者等が再生債権者である場合には当該異議はなかったものとみなし、異議者等が再生債務者等である場合には再生債務者等においてその再生債権を認めたものとみなすものとする。
 
三 再生債権の確定に関する訴訟の結果の記載
 裁判所書記官は、再生債務者等又は再生債権者の申立てにより、再生債権の確定に関する訴訟の結果(九十八1本文の申立てについての裁判に対する九十九1の訴えが、九十九1に定める期間内に提起されなかった場合又は却下された場合には、当該申立てについての裁判の内容)を再生債権者表に記載しなければならないものとする。
 
四 再生債権の確定に関する訴訟の判決等の効力
 再生債権の確定に関する訴訟についてした判決は、再生債権者の全員に対して、その効力を有するものとする。
 九十八1本文の申立てについての裁判に対する九十九1の訴えが、九十九1に定める期間内に提起されなかった場合又は却下された場合には、当該申立てについての裁判は、再生債権者の全員に対して、確定判決と同一の効力を有するものとする。
 
五 訴訟費用の償還
 再生債務者財産が再生債権の確定に関する訴訟(九十八1本文の申立てについての裁判を含む。)によって利益を受けたときは、異議を主張した再生債権者は、その利益の限度において共益債権者として訴訟費用の償還を請求することができるものとする。
 
六 罰金、過料等についての不服の申立て
 九十による届出があった請求権については、九十三から百五までは、適用しないものとする。
 1にかかわらず、1の請求権の原因が審査請求、訴訟(刑事訴訟を除く。)その他の不服の申立てをすることができる処分である場合には、再生債務者等は、その請求権について、当該不服の申立てをする方法で、異議を述べることができるものとする。
 九十七2は九十による届出があった請求権について、九十八2、百1、百一、百三及び百四1は2による異議について準用するものとする。
 
七 債権者集会の招集
 債権者集会は、再生債務者等若しくは百十一2の委員会の申立てにより又は職権で、裁判所が招集するものとする。知れている再生債権者の総債権について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる再生債権者の申立てがあったときも、同様とするものとする。
 
八 債権者集会の期日の呼出し等
 債権者集会の期日には、再生債務者、管財人、届出再生債権者及び再生のために債務を負担し又は担保を提供する者があるときは、その者を呼び出さなければならないものとする。この場合における期日の呼出しは、呼出状の送達によってするものとする。
 1にかかわらず、議決権を行使することができない届出再生債権者は、呼び出さないことができるものとする。再生手続開始の決定と同時に百十九1の債権者集会の期日が定められた場合において、三十二2前段により送達を受けた者についても、同様とするものとする。
 債権者集会の期日は、労働組合等に通知しなければならないものとする。
 裁判所は、債権者集会の期日及び会議の目的である事項を公告しなければならないものとする。ただし、三十二1により期日の公告がされた場合における百十九1の債権者集会については、この限りでないものとする。
 債権者集会の期日においてその延期又は続行について言渡しがあったときは、1、3及び4は、適用しないものとする。
 
九 債権者集会の指揮
 債権者集会は、裁判所が指揮するものとする。
 
十 債権者集会における議決権
 再生債務者等又は届出再生債権者は、債権者集会の期日において、届出再生債権者の議決権につき異議を述べることができるものとする。ただし、九十七1によりその額が確定した届出再生債権者の議決権については、この限りでないものとする。
 1ただし書に規定する議決権又は1本文の異議のない議決権を有する届出再生債権者は、その確定額又は届出の額に応じて、議決権を行使することができるものとする。
 1本文の異議のある議決権を有する届出再生債権者については、裁判所が議決権を行使させるかどうか及びいかなる額につき議決権を行使させるかを定めるものとする。
 裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、いつでも3による決定を変更することができるものとする。
 再生債権者は、代理人をもってその議決権を行使することができるものとする。
 
十一 債権者委員会
 裁判所は、三名以上の再生債権者をもって構成する委員会がある場合には、利害関係人の申立てにより、当該委員会が、この要綱の定めるところにより、再生手続に関与することを承認することができるものとする。ただし、次に掲げる要件その他最高裁判所規則で定める要件のすべてを具備する場合に限るものとする。
 再生債権者の過半数が当該委員会が再生手続に関与することについて同意していると認められること。
 当該委員会が再生債権者全体の利益を適切に代表すると認められること。
 裁判所は、必要があると認めるときは、再生手続において、1により承認された委員会(以下「債権者委員会」という。)に対して、意見の陳述を求めることができるものとする。
 債権者委員会は、再生手続において、裁判所、再生債務者等又は監督委員に対して、意見を述べることができるものとする。
 裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、いつでも1による承認を取り消すことができるものとする。
 
十二 共益債権となる請求権
 次に掲げる請求権は、共益債権とするものとする。
 再生債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権
 再生手続開始後の再生債務者の業務、生活並びに財産の管理及び処分に関する費用の請求権
 再生計画の遂行に関する費用の請求権。ただし、再生手続終了後に生じたものを除く。
 五十八1(六十、七十四及び七十七1において準用する場合を含む。)及び八十五1により支払うべき費用、報酬及び報償金の請求権
 再生債務者財産に関し再生債務者等が再生手続開始後にした資金の借入れその他の行為によって生じた請求権
 事務管理又は不当利得により再生手続開始後に再生債務者に対して生じた請求権
 その他再生債務者のために支出すべきやむを得ない費用の請求権で、再生手続開始後に生じたもの
 
十三 開始前の借入金等
 再生債務者又は保全管理人が再生手続開始の申立て後再生手続開始前に資金の借入れ、原材料の購入その他再生債務者の事業の継続に欠くことができない行為をする場合には、裁判所は、その行為によって生ずべき相手方の請求権を共益債権とする旨の許可をすることができるものとする。
 裁判所は、監督委員に対し、1の許可に代わる承認をする権限を付与することができるものとする。
 再生債務者又は保全管理人が1の許可又は2の承認を得て1に規定する行為をしたときは、その行為によって生じた相手方の請求権は、共益債権とするものとする。
 
十四 共益債権の弁済等
 共益債権は、再生手続によらないで、随時弁済するものとする。
 共益債権は、再生債権に先立って、弁済するものとする。
 共益債権に基づき再生債務者の財産に対し強制執行又は仮差押えがされている場合において、その強制執行又は仮差押えが再生に著しい支障を及ぼし、かつ、再生債務者が他に換価の容易な財産を十分に有するときは、裁判所は、再生債務者等の申立てにより又は職権で、担保を立てさせ、又は立てさせないで、その強制執行又は仮差押えの中止又は取消しを命ずることができるものとする。
 裁判所は、3による中止の命令を変更し、又は取り消すことができるものとする。
 3による中止又は取消しの命令及び4による決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 5の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
 
十五 一般優先債権の弁済等
 一般優先債権は、再生手続によらないで、随時弁済するものとする。
 優先権が一定の期間内の債権額につき存在する場合には、その期間は、再生手続開始の時からさかのぼって計算するものとする。
 百十四3から6までは、一般優先債権に基づく強制執行若しくは仮差押え又は一般の先取特権の実行としての競売について準用するものとする。
 
十六 開始後債権の取扱い
 開始後債権について弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)は、再生事件の係属中又は再生計画で定められた弁済期間中(その期間の満了前に、再生計画に基づく弁済が完了した場合及び再生計画が取り消された場合を除く。)は、することができないものとする。開始後債権に基づく再生債務者の財産に対する強制執行、仮差押え及び仮処分の申立てについても、同様とするものとする。
 
十七 財産の価額の評定等
 再生債務者等は、再生手続開始後(管財人については、その就職の後)遅滞なく、再生債務者に属する一切の財産につき再生手続開始の時における価額を評定しなければならないものとする。
 再生債務者等は、1による評定を完了したときは、直ちに再生手続開始の時における財産目録及び貸借対照表を作成し、これらの謄本を裁判所に提出しなければならないものとする。
 裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、評価人を選任し、再生債務者の財産の評価を命ずることができるものとする。
 
十八 裁判所への報告
 再生債務者等は、再生手続開始後(管財人については、その就職の後)遅滞なく、次の事項を記載した報告書を、裁判所に提出しなければならないものとする。
 再生手続開始に至った事情
 再生債務者の業務及び財産に関する経過及び現状
 百三十四1による保全処分又は百三十五1による査定の裁判を必要とする事情の有無
 その他再生手続に関し必要な事項
 再生債務者等は、百十七2及び1によるもののほか、裁判所の定めるところにより、再生債務者の業務及び財産の管理状況その他裁判所の命ずる事項を裁判所に報告しなければならないものとする。
 監督委員は、裁判所の定めるところにより、再生債務者の業務及び財産の管理状況その他裁判所の命ずる事項を裁判所に報告しなければならないものとする。
 
十九 財産状況報告集会等
 再生債務者の財産状況を報告するために招集された債権者集会においては、再生債務者等は、百十八1に掲げる事項の要旨を報告しなければならないものとする。
 1の債権者集会(以下「財産状況報告集会」という。)においては、裁判所は、再生債務者、管財人又は届出再生債権者から、管財人の選任並びに再生債務者の業務及び財産の管理に関する意見を聴かなければならないものとする。
 財産状況報告集会においては、労働組合等は、2に規定する事項について意見を述べることができるものとする。
 
二十 否認権
 次に掲げる行為は、再生手続開始後、再生債務者財産のために否認することができるものとする。
 再生債務者が再生債権者を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時再生債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでないものとする。
 再生債務者が支払の停止又は破産、再生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立て(以下この項から百二十二までにおいて「支払の停止等」という。)があった後にした再生債権者を害する行為及び担保の供与又は債務の消滅に関する行為。ただし、これにより利益を受けた者がその行為の当時支払の停止等があったこと又は再生債権者を害する事実を知っていたときに限るものとする。
 前号の行為であって再生債務者の親族又は同居者を相手方とするもの。ただし、相手方がその行為の当時支払の停止等があったこと及び再生債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでないものとする。
 再生債務者が支払の停止等があった後又はその前三十日以内にした担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、再生債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が再生債務者の義務に属しないもの。ただし、債権者においてその行為の当時再生債務者が他の再生債権者との平等を害することを知ってした事実を知らなかったとき(その行為が支払の停止等があった後にされたものである場合にあっては、支払の停止等があったことをも知らなかったときに限る。)は、この限りでないものとする。
 再生債務者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為
 1は、再生債務者が九十に規定する請求権につき、その徴収の権限を有する者に対してした担保の供与又は債務の消滅に関する行為については、適用しないものとする。
 
二十一 手形債務支払の場合の例外
 百二十1は、再生債務者から手形の支払を受けた者がその支払を受けなければ手形上の債務者の一人又は数人に対する手形上の権利を失う場合には、適用しないものとする。
 1の場合において、最終の償還義務者又は手形の振出を委託した者が振出の当時支払の停止等があったことを知り、又は過失によって知らなかったときは、五十三1により裁判所が権限を付与した監督委員又は管財人は、これらの者に再生債務者が支払った金額を償還させることができるものとする。
 
二十二 権利変動の対抗要件の否認
 支払の停止等があった後権利の設定、移転又は変更をもって第三者に対抗するために必要な行為をした場合において、その行為が権利の設定、移転又は変更があった日から十五日を経過した後悪意でしたものであるときは、これを否認することができるものとする。ただし、登記及び登録については、仮登記又は仮登録があった後にこれらに基づいて本登記又は本登録をしたときは、この限りでないものとする。
 1は、権利取得の効力を生ずる登録について準用するものとする。
 
二十三 執行行為の否認
 否認権は、否認しようとする行為につき、執行力のある債務名義があるとき、又はその行為が執行行為に基づくものであるときでも、行うことを妨げないものとする。
 
二十四 支払停止を知ったことに基づく否認の制限
 再生手続開始の申立ての日から一年以上前にした行為は、支払停止の事実を知ったことを理由として否認することができないものとする。
 
二十五 否認権行使の効果等
 否認権の行使は、再生債務者の財産を原状に復させるものとする。
 百二十1の五に掲げる行為が否認された場合において、相手方は、当該行為の当時善意であったときは、その現に受けている利益を償還すれば足りるものとする。
 再生債務者の行為が否認されたときは、相手方は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができるものとする。
 再生債務者の受けた反対給付が再生債務者の財産中に現存する場合 その給付の返還を請求する権利
 再生債務者の受けた反対給付によって生じた利益が再生債務者財産に現存する場合 共益債権として、その現存する利益の返還を請求する権利
 再生債務者の受けた反対給付によって生じた利益が再生債務者財産に現存しない場合 再生債権として、反対給付の価額の償還を請求する権利
 3の二の場合において、再生債務者の受けた反対給付の価額が再生債務者財産に現存する利益より大であるときは、相手方は、反対給付の価額と現存する利益との差額についても、再生債権者として、その償還を請求する権利を行使することができるものとする。
 再生債務者の行為が否認された場合において、相手方がその受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、相手方の債権は、これによって原状に復するものとする。
 
二十六 転得者に対する否認権
 次に掲げる場合には、否認権は、転得者に対しても、行使することができるものとする。
 転得者が転得の当時、それぞれ、その前者に対する否認の原因のあることを知っていたとき。
 転得者が再生債務者の親族又は同居者であるとき。ただし、転得の当時、それぞれ、その前者に対する否認の原因のあることを知らなかったときは、この限りでないものとする。
 転得者が無償行為又はこれと同視すべき有償行為によって転得した場合において、それぞれ、その前者に対して否認の原因があるとき。
 百二十五2は、1の三により否認権の行使があった場合について準用するものとする。
 
二十七 否認権の行使
 否認権は、訴え又は否認の請求によって、監督委員(五十三1により裁判所が権限を付与した場合に限る。)又は管財人が行うものとする。
 1の訴え及び否認の請求事件は、再生裁判所が管轄するものとする。
 1に規定する方法によるほか、管財人は、抗弁によっても、否認権を行うことができるものとする。
 
二十八 否認の請求
 否認の請求をするときは、その原因たる事実を疎明しなければならないものとする。
 否認の請求を認容し、又はこれを棄却する裁判は、理由を付した決定でしなければならないものとする。
 裁判所は、2の決定をする場合には、相手方又は転得者を審尋しなければならないものとする。
 否認の請求を認容する決定は、当事者に送達しなければならないものとする。この場合においては、九3は、適用しないものとする。
 
二十九 否認の請求を認容する決定に対する異議の訴え
 否認の請求を認容する決定に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に、再生裁判所に異議の訴えを提起することができるものとする。
 1の異議の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、否認の請求を認容する決定を認可し、変更し、又は取り消すものとする。
 否認の請求を認容する決定を認可する判決が確定したときは、その決定は、確定判決と同一の効力を有するものとする。1の異議の訴えが、1に定める期間内に提起されなかった場合又は却下された場合も、同様とするものとする。
 
三十 否認対象行為に関する訴訟に対する参加等
 五十三1により監督委員に対し特定の行為につき否認権を行使する権限が付与された場合において、否認権行使に係る相手方(以下この項において「相手方」という。)及び再生債務者間の当該特定の行為(以下この項において「否認対象行為」という。)に関する訴訟が係属するときは、百二十七1にかかわらず、監督委員は、否認権を行使して、当該訴訟の目的である権利又は義務に係る請求をするため、相手方を被告として、当事者としてその訴訟に参加することができるものとする。
 監督委員が当事者である否認の訴え(否認の請求を認容する決定に対する異議の訴えを含む。)が係属する場合には、再生債務者は、否認対象行為に関する請求(当該訴えの目的である権利又は義務に係るものに限る。)をするため、相手方を被告として、当事者としてその訴訟に参加することができるものとする。
 2に規定する場合には、相手方は、当該訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、再生債務者を被告として、否認対象行為に関する訴え(当該訴訟と目的である権利又は義務が同一であるものに限る。)をこれに併合して提起することができるものとする。
 民事訴訟法第四十条第一項から第三項までの規定は1及び2の訴訟の当事者、それらの訴訟に参加した者並びに3の訴えの被告とされた再生債務者について、同法第四十三条の規定は1及び2による参加の申出並びに3による訴えの提起について、同法第四十七条第二項及び第三項の規定は1及び2による参加の申出について準用するものとする。
 
三十一 否認権行使の期間
 否認権は、再生手続開始の日から二年を経過したときは、行使することができないものとする。否認しようとする行為の日から二十年を経過したときも、同様とするものとする。
 
三十二 詐害行為取消訴訟等
 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条の規定により再生債権者の提起した訴訟又は破産法の規定による否認の訴訟が再生手続開始当時係属するときは、その訴訟手続は、中断するものとする。
 1により中断した訴訟手続は、五十三1により権限を付与された監督委員又は管財人においてこれを受け継ぐことができるものとする。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができるものとする。
 1の訴訟手続について2による受継があるまでに再生手続が終了したときは、その訴訟を提起した再生債権者又は破産管財人は、当然にその訴訟手続を受継するものとする。
 1の訴訟手続について2による受継があった後に再生手続が終了したときは、6に規定する場合を除き、その訴訟手続は中断するものとする。
 4の場合には、1の訴訟を提起した再生債権者又は破産管財人は、その訴訟手続を受け継がなければならないものとする。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができるものとする。
 1の訴訟手続について2による受継があった後に百三十三1によりその訴訟手続が中断している場合において、再生手続が終了したときも、5と同様とするものとする。
 2の場合においては、相手方の再生債務者に対する訴訟費用請求権は、共益債権とするものとする。
 
三十三 否認の訴え等の中断及び受継
 次の各号に掲げる裁判が取り消された場合には、当該各号に定める訴訟手続は、中断するものとする。
 監督命令又は五十三1による裁判 監督委員が当事者である否認の訴え若しくは百二十九1の異議の訴えに係る訴訟手続、監督委員が百三十1により訴訟に参加した場合における監督委員及び相手方間の訴訟手続又は監督委員が受継した百三十二1の訴訟手続
 管理命令 管財人が当事者である否認の訴え若しくは百二十九1の異議の訴えに係る訴訟手続又は管財人が受継した百三十二1の訴訟手続
 1によって中断した訴訟手続は、その後監督委員が五十三1による権限を付与された場合又はその後管財人が選任された場合には、その監督委員又はその管財人においてこれを受け継がなければならないものとする。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができるものとする。
 
三十四 法人の役員の財産に対する保全処分
 裁判所は、法人である再生債務者について再生手続開始の決定があった場合において、必要があると認めるときは、再生債権者若しくは再生債務者等の申立てにより又は職権で、再生債務者の理事、取締役、監事、監査役、清算人又はこれらに準ずる職務権限を有する者(以下この項から百三十七までにおいて「役員」という。)の責任に基づく損害賠償請求権につき、役員の財産に対する保全処分をすることができるものとする。ただし、再生債権者の申立ては、管財人が選任されていない場合でなければ、することができないものとする。
 緊急の必要があると認めるときは、裁判所は、再生手続開始の決定をする前でも、再生債権者若しくは再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより又は職権で、1本文の保全処分をすることができるものとする。ただし、再生債権者の申立ては、保全管理人が選任されていない場合でなければ、することができないものとする。
 裁判所は、1又は2による保全処分を変更し、又は取り消すことができるものとする。
 1若しくは2による保全処分又は3による決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 4の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
 4に規定する裁判及び4の即時抗告についての決定は、当事者に送達しなければならないものとする。この場合においては、九3は、適用しないものとする。
 
三十五 損害賠償請求権の査定の申立て等
 裁判所は、法人である再生債務者について再生手続開始の決定があった場合において、必要があると認めるときは、再生債権者若しくは再生債務者等の申立てにより又は職権で、役員の責任に基づく損害賠償請求権の査定の裁判をすることができるものとする。ただし、再生債権者の申立ては、管財人がいない場合でなければ、することができないものとする。
 1の申立てをするときは、その原因たる事実を疎明しなければならないものとする。
 裁判所は、職権で査定手続を開始する場合には、その旨の決定をしなければならないものとする。
 1の申立ては、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなすものとする。職権による査定手続の開始も、同様とするものとする。
 
三十六 損害賠償請求権の査定に関する裁判
 百三十五1の査定の裁判及び百三十五1の申立てを棄却する裁判は、理由を付した決定でしなければならないものとする。
 裁判所は、1の決定をする場合には、利害関係人を審尋しなければならないものとする。
 百三十五1の査定の裁判は、当事者に送達しなければならないものとする。この場合においては、九3は、適用しないものとする。
 
三十七 査定の裁判に対する異議の訴え
 百三十五1の査定の裁判に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に、再生裁判所に異議の訴えを提起することができるものとする。
 1の訴え(3の訴えを除く。)は、これを提起する者が、役員であるときは百三十五1の申立てをした者を、百三十五1の申立てをした者であるときは役員を、それぞれ被告としなければならないものとする。
 職権でされた査定の裁判に対する1の訴えは、これを提起する者が、役員であるときは再生債務者等を、再生債務者等であるときは役員を、それぞれ被告としなければならないものとする。
 
三十八 査定の裁判に対する異議の訴えの弁論及び裁判
 百三十七1の訴えの口頭弁論は、百三十七1の期間を経過した後でなければ開始することができないものとする。
 百三十七1の訴えが数個同時に係属するときは、弁論及び裁判は、併合してしなければならないものとする。この場合においては、民事訴訟法第四十条第一項から第三項までの規定を準用するものとする。
 百三十七1の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、査定の裁判を認可し、変更し、又は取り消すものとする。
 査定の裁判を認可し、又は変更した判決は、強制執行に関しては、給付を命ずる判決と同一の効力を有するものとする。
 
三十九 査定の裁判の効力
 百三十七1の訴えが、百三十七1の期間内に提起されないとき、又は却下されたときは、査定は、給付を命ずる確定判決と同一の効力を有するものとする。
 
四十 担保権消滅の許可等
 再生手続開始当時再生債務者の財産の上に五十1に規定する担保権(以下この項及び百四十四において「担保権」という。)が存する場合において、その財産が再生債務者の事業の継続に欠くことのできないものであるときは、再生債務者等は、裁判所に対し、当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付して当該財産の上に存するすべての担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができるものとする。
 1の許可の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならないものとする。
 担保権の目的である財産の表示
 前号の財産の価額
 消滅すべき担保権の表示
 前号の担保権によって担保される債権の額
 1の許可の決定は、2の書面とともに、当該書面に記載された2の三の担保権を有する者(以下この項から百四十五までにおいて「担保権者」という。)に送達しなければならないものとする。この場合においては、九3は、適用しないものとする。
 1の許可の決定に対しては、担保権者は、即時抗告をすることができるものとする。
 4の即時抗告についての決定は、担保権者に送達しなければならないものとする。この場合においては、九3は、適用しないものとする。
 2の三の担保権が根抵当権である場合において、根抵当権者が3による送達を受けた時から二週間を経過したときは、根抵当権の担保すべき元本は、確定するものとする。
 民法第三百九十八条ノ二十第二項の規定は、1の許可の申立てが取り下げられ、又は1の許可が取り消された場合について準用するものとする。
 
四十一 価額決定の請求
 担保権者は、百四十2の書面に記載された百四十2の二の価額(以下「申出額」という。)について異議があるときは、百四十2の書面の送達を受けた日から一月以内に、再生裁判所に対し、担保権の目的である財産(百四十二において「財産」という。)について価額の決定を請求することができるものとする。
 百四十1の許可をした裁判所は、やむを得ない事由がある場合に限り、担保権者の申立てにより、1の期間を伸長することができるものとする。
 1による請求(百四十二から百四十四までにおいて「価額決定の請求」という。)をする者は、その請求に係る手続の費用として再生裁判所の定める金額を予納しなければならないものとする。
 3に規定する費用の予納がないときは、再生裁判所は、当該請求を却下しなければならないものとする。
 
四十二 財産の価額の決定
 価額決定の請求があった場合には、再生裁判所は、当該請求を却下する場合を除き、評価人を選任し、財産の評価を命じなければならないものとする。
 1の場合には、再生裁判所は、評価人の評価に基づき、決定で、財産の価額を定めなければならないものとする。
 担保権者が数人ある場合には、2の決定は、担保権者の全員につき百四十一1の期間(百四十一2により期間が伸長されたときは、その伸長された期間。百四十四1において同じ。)が経過した後に、しなければならないものとする。この場合において、数個の価額決定の請求事件が同時に係属するときは、事件を併合して裁判しなければならないものとする。
 3に規定する場合には、2の決定は、価額決定の請求をしなかった担保権者に対しても、その効力を有するものとする。
 価額決定の請求についての決定に対しては、再生債務者等及び担保権者は、即時抗告をすることができるものとする。
 価額決定の請求についての決定又は5の即時抗告についての決定は、再生債務者等及び担保権者に送達しなければならないものとする。この場合においては、九3は、適用しないものとする。
 
四十三 費用の負担等
 価額決定の請求に係る手続に要した費用は、百四十二2の決定により定められた価額が、申出額を超える場合には再生債務者の負担とし、申出額を超えない場合には価額決定の請求をした者の負担とするものとする。ただし、申出額を超える額が費用の額に満たないときは、その超える額に相当する部分の限度で、再生債務者の負担とし、その余の部分は、価額決定の請求をした者の負担とするものとする。
 1により再生債務者に対して費用請求権を有する者は、その費用に関し、百四十四1により納付された金銭について、他の担保権者に先立ち弁済を受ける権利を有するものとする。
 百四十四4の場合には、1の費用は、1にかかわらず、再生債務者の負担とするものとする。この場合においては、再生債務者に対する費用請求権は、共益債権とするものとする。
 
四十四 価額に相当する金銭の納付等
 再生債務者等は、百四十一1の期間内に価額決定の請求がなかったとき、又は価額決定の請求のすべてが取り下げられ、若しくは却下されたときは申出額に相当する金銭を、百四十二2の決定が確定したときは当該決定により定められた価額に相当する金銭を、裁判所の定める期限までに裁判所に納付しなければならないものとする。
 担保権者の有する担保権は、1による金銭の納付があった時に消滅するものとする。
 1による金銭の納付があったときは、裁判所書記官は、消滅した担保権に係る登記又は登録の抹消を嘱託しなければならないものとする。
 再生債務者等が1による金銭の納付をしないときは、裁判所は、百四十1の許可を取り消さなければならないものとする。
 
四十五 配当等の実施
 裁判所は、百四十四1による金銭の納付があった場合には、3に規定する場合を除き、配当表に基づいて配当を実施しなければならないものとする。
 1の配当を受けるべき者は、担保権者とするものとする。
 担保権者が一人である場合又は担保権者が二人以上であって百四十四1により納付された金銭で各担保権者の有する債権及び百四十三1により再生債務者の負担すべき費用を弁済することができる場合には、裁判所は、当該金銭の交付計算書を作成して、担保権者に弁済金を交付し、剰余金を再生債務者等に交付するものとする。
 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第八十五条及び第八十八条から第九十二条までの規定は1の配当の手続について、同法第八十八条、第九十一条及び第九十二条の規定は3による弁済金の交付の手続について準用するものとする。
 
四十六 再生計画の条項
 再生計画においては、再生債権者の権利の全部又は一部を変更する条項並びに共益債権及び一般優先債権の弁済に関する条項を定めなければならないものとする。
 債権者委員会が再生計画で定められた弁済期間内にその履行を確保するため監督その他の関与を行う場合において、再生債務者がその費用の全部又は一部を負担するときは、その負担に関する条項を定めなければならないものとする。
 百五十六1による裁判所の許可があった場合には、再生計画の定めによる資本の減少に関する条項を定めることができるものとする。
 3により資本の減少に関する条項を定める場合には、再生債務者が発行する株式の総数についての定款の変更に関する条項をも定めることができるものとする。
 
四十七 再生債権者の権利の変更
 再生債権者の権利を変更する場合には、再生計画において、債務の減免、期限の猶予その他の権利の変更の一般的基準を定めなければならないものとする。
 再生計画の条件は、再生債権者の間では平等でなければならないものとする。ただし、少額の再生債権又は七十八2に掲げる請求権について別段の定めをし、その他これらの者の間に差等を設けても衡平を害しない場合は、この限りでないものとする。
 九十に規定する請求権については、再生計画において減免その他権利に影響を及ぼす定めをすることができないものとする。
 再生計画によって債務が負担され、又は債務の期限が猶予されるときは、特別の事情がある場合を除き、再生計画認可の決定の確定から十年を超えない範囲で、その債務の期限を定めるものとするものとする。
 再生債務者又は第三者が、再生計画の定めによらないで、ある再生債権者に特別の利益を与える行為は、無効とするものとする。
 
四十八 届出再生債権者等の権利に関する定め
 百四十七1の場合には、再生計画において、百四十七1の一般的基準のほか、届出再生債権者及び九十四3により認否書に記載された再生債権者の権利のうち、変更されるべき権利を明示し、かつ、百四十七1の一般的基準に従って変更した後の権利の内容を定めなければならないものとする。
 1の再生債権者で、再生計画によってその権利に影響を受けないものがあるときは、その者の権利を明示しなければならないものとする。
 
四十九 担保の提供及び債務の負担に関する定め
 再生債務者又は再生債務者以外の者が、再生のために担保を提供するときは、再生計画において、担保を提供する者を明示し、かつ、担保権の内容を定めなければならないものとする。
 再生債務者以外の者が債務を引き受け、又は保証人となる等再生のために債務を負担するときは、再生計画において、その者を明示し、かつ、その債務の内容を定めなければならないものとする。
 
五十 未確定の再生債権に関する定め
 異議等のある再生債権で、その確定手続が終了していないものがあるときは、再生計画において、その権利確定の可能性を考慮し、これに対する適確な措置を定めなければならないものとする。
 
五十一 別除権者の権利に関する定め
 別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分が確定していない再生債権者があるときは、再生計画において、その債権の部分が確定した場合における再生債権者としての権利の行使に関する適確な措置を定めなければならないものとする。
 1の再生債権者が有する根抵当権の元本が確定している場合には、その根抵当権の被担保債権のうち極度額を超える部分について、百四十七1の一般的基準に従い、仮払に関する定めをすることができるものとする。この場合においては、1の債権の部分が確定した場合における精算に関する措置をも定めなければならないものとする。
 
五十二 資本の減少等に関する定め
 再生計画によって株式会社である再生債務者の資本を減少するときは、減少すべき資本の額及び資本減少の方法を定めなければならないものとする。
 再生計画によって再生債務者が発行する株式の総数についての定款の変更をするときは、その変更の内容を定めなければならないものとする。
 
五十三 再生計画案の提出時期
 再生債務者等は、債権届出期間の満了後裁判所の定める期間内に、再生計画案を作成して裁判所に提出しなければならないものとする。
 再生債務者(管財人が選任されている場合に限る。)又は届出再生債権者は、裁判所の定める期間内に、再生計画案を作成して裁判所に提出することができるものとする。
 裁判所は、申立てにより又は職権で、1又は2により定めた期間を伸長することができるものとする。
 
五十四 再生計画案の事前提出
 再生債務者等は、百五十三1にかかわらず、再生手続開始の申立て後、債権届出期間の満了前に、再生計画案を提出することができるものとする。
 1の場合には、百四十八及び百五十に規定する事項を定めないで、再生計画案を提出することができるものとする。この場合においては、債権届出期間の満了後裁判所の定める期間内に、これらの事項について、再生計画案の条項を補充しなければならないものとする。
 
五十五 再生のために債務を負担する者等の同意
 百四十九に規定する債務の負担又は担保の提供についての定めをした再生計画案を提出しようとする者は、あらかじめ、再生のために債務を負担し、又は担保を提供する者の同意を得なければならないものとする。
 百五十一2に規定する仮払の定めをした再生計画案を提出しようとする者は、あらかじめ、当該定めに係る根抵当権を有する者の同意を得なければならないものとする。
 
五十六 裁判所の許可
 百四十六3及び4に規定する条項を定めた再生計画案を提出しようとする者は、あらかじめ、裁判所の許可を得なければならないものとする。
 裁判所は、株式会社である再生債務者がその財産をもって債務を完済することができない場合に限り、1の許可をすることができるものとする。
 1による許可は、株主に送達しなければならないものとする。この場合においては、四十3及び4を準用するものとする。
 1による許可の決定に対しては、株主は、即時抗告をすることができるものとする。
 
五十七 再生計画案の修正
 再生計画案の提出者は、裁判所の許可を得て、再生計画案を修正することができるものとする。ただし、再生計画案について決議をするための債権者集会を招集する旨の決定がされ、又は再生計画案を書面による決議に付する旨の決定がされた後は、この限りでないものとする。
 
五十八 再生債務者の労働組合等の意見
 裁判所は、再生計画案について、労働組合等の意見を聴かなければならないものとする。百五十七による修正があった場合における修正後の再生計画案についても、同様とするものとする。
 
五十九 決議の時期
 裁判所は、再生債権の一般調査期間が終了し、かつ、財産状況報告集会における再生債務者等による報告又は百十八1の報告書の提出がされた後でなければ、再生計画案を決議に付することができないものとする。
 
六十 再生計画案の排除
 裁判所は、再生計画案について百六十四2の一、二又は四のいずれかに該当する事由があると認める場合には、その再生計画案を決議に付することができないものとする。
 
六十一 債権者集会における再生計画案の決議
 再生計画案の提出があったときは、裁判所は、百六十二により書面による決議に付する場合及び百八十一の二により再生手続を廃止する場合を除き、その再生計画案について決議をするための債権者集会を招集しなければならないものとする。
 1の場合には、あらかじめ、再生計画案を記載した書面又はその要旨を百八1に規定する者(百八2前段に規定する者を除く。百六十二2において同じ。)に送達しなければならないものとする。この場合においては、九十五4及び5を準用するものとする。
 再生計画案の提出者は、再生債権者に不利な影響を与えない場合に限り、1の債権者集会において、裁判所の許可を得て、再生計画案を変更することができるものとする。
 再生計画案を可決するには、議決権を行使することができる再生債権者で出席したものの過半数であって、議決権を行使することができる再生債権者の議決権の総額の二分の一以上の議決権を有するものの同意がなければならないものとする。
 4に規定する可決の条件の一が成立した場合又は議決権を行使することができる再生債権者で出席したものの過半数であって、その者の議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者が期日の続行に同意した場合には、裁判所は、再生計画案の提出者の申立てにより又は職権で、続行期日を定めなければならないものとする。
 再生計画案の可決は、1の債権者集会の第一期日から二月以内にされなければならないものとする。
 裁判所は、必要があると認めるときは、再生計画案の提出者の申立てにより又は職権で、6の期間を伸長することができるものとする。ただし、その期間は、一月を超えることができないものとする。
 
六十二 書面による決議
 裁判所は、再生計画案の提出がされた場合において、相当と認めるときは、再生計画案を書面による決議に付する旨の決定をすることができるものとする。
 1の決定をした場合には、その旨を公告し、かつ、百八1に規定する者に対して再生計画案を記載した書面を送達するとともに、議決権を行使することができる再生債権者に対して再生計画案に同意するかどうかを記載した書面を裁判所の定める期間(以下この項において「提出期間」という。)内に提出すべき旨を記載した書面をも送達しなければならないものとする。この場合においては、九十五4及び5を準用するものとする。
 再生計画案に同意するかどうかについて記載した書面を提出期間内に提出した議決権を行使することができる再生債権者の過半数であって、議決権を行使することができる再生債権者の議決権の総額の二分の一以上の議決権を有するものの同意があるときは、再生計画案を可決する旨の決議があったものとみなすものとする。
 百十2、3及び5は、書面による決議における議決権について準用するものとする。この場合において、百十2のうち「1ただし書に規定する議決権又は1本文の異議のない議決権を有する届出再生債権者」とあるのは「1ただし書に規定する議決権を有する届出再生債権者」と、「その確定額又は届出の額」とあるのは「その確定額」と、百十3のうち「1本文の異議のある議決権を有する届出再生債権者」とあるのは「届出再生債権者でその議決権が確定していないもの」と読み替えるものとする。
 1の決定をした場合において、百七に規定する者が提出期間内に再生計画案の決議をするための債権者集会の招集の申立てをしたときは、裁判所は、1の決定を取り消して、百六十一1の債権者集会を招集しなければならないものとする。
 
六十三 再生計画案が可決された場合の法人の継続
 清算中若しくは特別清算中の法人又は破産宣告後の法人である再生債務者について再生計画案が可決された場合には、社団法人にあっては定款の変更に関する規定に従い、財団法人にあっては主務官庁の認可を得て、法人を継続することができるものとする。
 1に規定する主務官庁の権限は、政令の定めるところにより、その全部又は一部を国に所属する行政庁に委任することができるものとする。
 1に規定する主務官庁の権限に属する事務は、政令の定めるところにより、都道府県の知事その他の執行機関において、その全部又は一部を処理することとすることができるものとする。
 
六十四 再生計画の認可又は不認可の決定
 再生計画案が可決された場合には、裁判所は、2の場合を除き、再生計画認可の決定をしなければならないものとする。
 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をしなければならないものとする。
 再生手続又は再生計画が、法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。
 再生計画が遂行される見込みがないとき。
 再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。
 百八1に規定する者及び労働組合等は、再生計画案を認可すべきかどうかについて、意見を述べることができるものとする。
 再生計画認可の決定又は再生計画不認可の決定があった場合には、百八1に規定する者に対して、その主文及び理由の要旨を記載した書面を送達しなければならないものとする。
 4に規定する場合には、4の決定の主文を労働組合等に通知しなければならないものとする。
 
六十五 再生計画認可の決定等に対する即時抗告
 百六十四1又は2の決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 議決権を有しなかった再生債権者が1の即時抗告をするには、再生債権者であることを疎明しなければならないものとする。
 2は、1の即時抗告についての裁判に対する十五において準用する民事訴訟法第三百三十六条の規定による抗告及び同法第三百三十七条の規定による抗告の許可の申立てについて準用するものとする。
 
六十六 再生計画の効力発生の時期
 再生計画は、認可の決定の確定により、効力を生ずるものとする。
 
六十七 再生計画の効力範囲
 再生計画は、再生債務者、すべての再生債権者及び再生のために債務を負担し、又は担保を提供する者のために、かつ、それらの者に対して効力を有するものとする。
 再生計画は、別除権者が有する五十1に規定する担保権、再生債権者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び再生債務者以外の者が再生債権者のために提供した担保に影響を及ぼさないものとする。
 
六十八 再生債権の免責
 再生計画認可の決定が確定したときは、再生計画の定め又はこの要綱の規定によって認められた権利を除き、再生債務者は、すべての再生債権につき、免責されるものとする。ただし、九十に規定する請求権については、この限りでないものとする。
 
六十九 届出再生債権者等の権利の変更
 再生計画認可の決定が確定したときは、届出再生債権者及び九十四3により認否書に記載された再生債権を有する再生債権者の権利は、再生計画の定めに従い、変更されるものとする。
 1に規定する再生債権者は、その有する債権が確定している場合に限り、再生計画の定めによって認められた権利を行使することができるものとする。
 
七十 再生計画の条項の再生債権者表への記載等
 再生計画認可の決定が確定したときは、裁判所書記官は、再生計画の条項を再生債権者表に記載しなければならないものとする。
 1の場合には、再生債権に基づき再生計画によって認められた権利については、その再生債権者表の記載は、再生債務者、再生債権者及び再生のために債務を負担し、又は担保を提供する者に対して、確定判決と同一の効力を有するものとする。
 2の権利で金銭の支払その他の給付の請求を内容とするものを有する者は、再生債務者及び再生のために債務を負担した者に対して、再生債権者表の記載により強制執行をすることができるものとする。ただし、民法第四百五十二条及び第四百五十三条の規定の適用を妨げないものとする。
 
七十一 届出のない再生債権等の取扱い
 再生計画認可の決定が確定したときは、次の各号の再生債権は、百四十七1の一般的基準に従い、変更されるものとする。
 再生債権者がその責めに帰することができない事由により債権届出期間内にその有する再生債権の届出をすることができず、かつ、その事由が八十八4に規定する決定前に消滅しなかった場合における当該再生債権
 前号の決定後に生じた再生債権
 再生債務者が知りながら認否書に記載しなかった再生債権
 1の三による変更後の権利については、再生事件の係属中又は再生計画で定められた弁済期間中(その期間の満了前に、再生計画に基づく弁済が完了した場合及び再生計画が取り消された場合を除く。)は、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができないものとする。
 再生計画認可の決定が確定した場合には、九十に規定する請求権についても、2と同様とするものとする。
 
七十二 別除権者の再生計画による権利等の行使
 再生債権者が五十1に規定する担保権を有する場合には、その行使によって弁済を受けることができない債権の部分が確定した場合に限り、当該部分について、再生計画の定めによって認められた権利又は百七十一1による変更後の権利を行使することができるものとする。ただし、その担保権が根抵当権である場合において、再生計画に百五十一2による仮払に関する定め及び精算に関する措置の定めがあるときは、その定めるところによるものとする。
 
七十三 再生計画により資本の減少等がされた場合の取扱い
 百五十二1により再生計画において資本の減少を定めたときは、再生計画の定めによって、資本の減少をすることができるものとする。
 1の場合においては、商法第二百十二条第二項、第三百七十六条第二項及び第三項並びに第三百八十条の規定は、適用せず、同法第三百七十七条第一項において準用する同法第二百十七条第二項に定めた事件は、再生裁判所が管轄するものとする。
 百五十二2により再生計画において再生債務者が発行する株式の総数について定款を変更することを定めたときは、定款は、再生計画認可の決定が確定した時に再生計画の定めによって変更されるものとする。
 
七十四 中止中の手続の失効
 再生計画認可の決定が確定したときは、三十六1により中止した手続は、その効力を失うものとする。ただし、三十六2によって続行された手続については、この限りでないものとする。
 1によって効力を失った破産手続における財団債権(破産法第四十七条第二号に掲げるものを除く。)は、共益債権とするものとする。
 
七十五 再生計画不認可の決定が確定した場合の取扱い
 再生計画不認可の決定が確定したときは、確定した再生債権については、再生債権者表の記載は、再生債務者に対し、確定判決と同一の効力を有するものとする。ただし、再生債務者が債権調査において、その記載に対して異議を述べなかった場合に限るものとする。
 1の場合には、再生債権者は、再生債務者に対し、再生債権者表の記載により強制執行をすることができるものとする。
 
七十六 再生計画の遂行
 再生計画認可の決定が確定したときは、再生債務者等は、速やかに、再生計画を遂行しなければならないものとする。
 監督委員が選任されている場合には、当該監督委員は、1に規定する再生債務者の再生計画の遂行を監督するものとする。
 裁判所は、再生計画の遂行を確実にするため必要があると認めるときは、再生債務者等又は再生のために債務を負担し、若しくは担保を提供する者に対し、再生計画の定め若しくはこの要綱の規定によって認められた権利を有する者、異議等のある再生債権でその確定手続が終了していないものを有する者又は別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分が確定していない再生債権を有する者のために、相当な担保を提供させることができるものとする。
 民事訴訟法第七十六条、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、3の担保について準用するものとする。
 
七十七 再生計画の変更
 再生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で再生計画に定める事項を変更する必要が生じたときは、再生手続終了前に限り、裁判所は、再生債務者、管財人、監督委員又は届出再生債権者の申立てにより、再生計画を変更することができるものとする。
 1により再生債権者に不利な影響を及ぼすものと認められる再生計画の変更の申立てがあった場合には、再生計画案の提出があった場合の手続に関する規定を準用するものとする。ただし、再生計画の変更によって不利な影響を受けない再生債権者は、手続に参加させることを要せず、また、従前の再生計画に同意した者が、変更計画案について決議をするための債権者集会に出席しない場合には、これに出席し、かつ、変更計画案に同意したものとみなし、変更計画案に同意するかどうかについて記載した書面を提出しない場合には、変更計画案に同意したものとみなすものとする。
 百六十五及び百六十六は、再生計画変更の決定があった場合について準用するものとする。
 
七十八 再生手続の終結
 裁判所は、再生計画認可の決定が確定したときは、監督委員又は管財人が選任されている場合を除き、再生手続終結の決定をしなければならないものとする。
 裁判所は、監督委員が選任されている場合において、再生計画が遂行されたとき、又は再生計画認可の決定が確定した後三年を経過したときは、再生債務者若しくは監督委員の申立てにより又は職権で、再生手続終結の決定をするものとする。
 裁判所は、管財人が選任されている場合において、再生計画が遂行されたとき、又は再生計画が遂行されることが確実であると認めるに至ったときは、更生債務者若しくは管財人の申立てにより又は職権で、再生手続終結の決定をするものとする。
 再生手続終結の決定は、その主文及び理由の要旨を公告しなければならないものとする。
 
七十九 再生計画の取消し
 再生計画認可の決定が確定した場合において、次の各号のいずれかに該当する事由があるときは、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができるものとする。
 再生計画が不正の方法により成立したこと。
 再生債務者等が再生計画の履行を怠ったこと。
 再生債務者が三十八1若しくは三十九1に違反し、又は五十一2に規定する監督委員の同意を得ないで五十一2の行為をしたこと。
 再生債権者は、再生計画認可の決定に対する即時抗告をした場合、1の一に該当する事由があることを知りながら、若しくは過失により知らないで再生計画認可の決定に対する即時抗告をしなかった場合、1の一に該当する事由があることを知った時から一月を経過した場合又は再生計画認可の決定が確定した時から二年を経過した場合には、1の一に掲げる事由を理由とする1の申立てをすることができないものとする。
 1の二に掲げる事由を理由とする1の申立ては、再生計画の定めによって認められた権利の全部(履行された部分を除く。)について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる権利を有する再生債権者であって、その有する権利のうち履行期限が到来したものの全部又は一部について履行されていないものに限り、することができるものとする。
 裁判所は、再生計画取消しの決定をしたときは、直ちに、これを当事者に送達し、かつ、その主文及び理由の要旨を公告しなければならないものとする。
 1の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 再生計画を取り消す決定は、確定しなければ効力を生じないものとする。
 再生計画を取り消す決定が確定した場合には、再生計画は、その効力を失うものとする。ただし、再生債権者が再生計画によって得た権利に影響を及ぼさないものとする。
 百七十五は、4の決定が確定した場合について準用するものとする。
 
八十 破産宣告がされた場合の取扱い等
 再生計画の履行完了前に、再生債務者について破産宣告がされた場合には、再生計画は、その効力を失うものとする。ただし、再生債権者が再生計画によって得た権利に影響を及ぼさないものとする。
 百七十五並びに破産法第三百三十八条、第三百四十条及び第三百四十一条の規定は、1の場合について準用するものとする。
 
八十一 再生計画認可前の手続廃止
 次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、職権で、再生手続廃止の決定をしなければならないものとする。
 決議に付するに足りる再生計画案の作成の見込みがないことが明らかになったとき。
 裁判所の定めた期間若しくはその伸長した期間内に再生計画案の提出がないとき、又はその期間内に提出されたすべての再生計画案が決議に付するに足りないものであるとき。
 再生計画案が否決されたとき、若しくは決議のための債権者集会の第一期日から二月以内若しくはその伸長した期間内に再生計画案が可決されないとき、又は百六十二1の決定があった場合において百六十二3に規定する同意を得ることができないとき。
 
八十二 債務を完済することができる場合の手続廃止
 再生債務者が債権届出期間内に届出をしたすべての再生債権者に対する債務を完済することができることが明らかになった場合には、再生計画認可の決定の確定前は、裁判所は、再生債務者、管財人又は届出再生債権者の申立てにより、再生手続廃止の決定をしなければならないものとする。
 1の申立てをする場合には、申立人は、再生手続廃止の原因たる事実を疎明しなければならないものとする。
 1の申立てがあった場合には、裁判所は、再生債務者、管財人及び届出再生債権者(2の申立人を除く。)に対し、その旨及び意見があれば裁判所に申し出るべき旨を通知しなければならないものとする。
 裁判所は、3の通知を発送した後一月以上を経過した後でなければ、再生手続廃止の決定をすることができないものとする。
 
八十三 再生債務者の義務違反による手続廃止
 次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、監督委員若しくは管財人の申立てにより又は職権で、再生手続廃止の決定をすることができるものとする。
 再生債務者が二十七1による裁判所の命令に違反した場合
 再生債務者が三十八1若しくは三十九1に違反し、又は五十一2に規定する監督委員の同意を得ないで五十一2の行為をした場合
 再生債務者が九十四4又は九十六3により裁判所が定めた期限までに認否書を提出しなかった場合
 1の決定をする場合には、再生債務者を審尋しなければならないものとする。
 
八十四 再生計画認可後の手続廃止
 再生計画認可の決定が確定した後に再生計画遂行の見込みがないことが明らかになったときは、裁判所は、再生債務者等若しくは監督委員の申立てにより又は職権で、再生手続廃止の決定をしなければならないものとする。
 裁判所は、1による決定をする場合には、最高裁判所規則で定める方法により、利害関係人の意見を聴かなければならないものとする。
 
八十五 再生手続廃止の公告等
 裁判所は、再生手続廃止の決定をしたときは、直ちに、その主文及び理由の要旨を公告しなければならないものとする。
 1の決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 百六十五2は、2の即時抗告並びにこれについての決定に対する十五において準用する民事訴訟法第三百三十六条の規定による抗告及び同法第三百三十七条の規定による抗告の許可の申立てについて準用するものとする。
 1の決定は、確定しなければその効力を生じないものとする。
 再生手続廃止の決定を取り消す決定が確定したときは、再生手続廃止の決定をした裁判所は、直ちに、その旨を公告しなければならないものとする。
 再生計画認可の決定が確定した後にされた再生手続の廃止は、再生計画の遂行及びこの要綱の規定によって生じた効力に影響を及ぼさないものとする。
 百七十五は、百八十一、百八十二1又は百八十三1による決定が確定した場合(再生計画認可の決定が確定した後に百八十三1の一又は二による決定が確定した場合を除く。)について準用するものとする。
 
八十六 外国管財人との協力
 再生債務者等は、再生債務者について外国倒産処理手続が係属する場合には、外国管財人(当該外国倒産処理手続において再生債務者の財産の管理及び処分をする権利を有する者をいい、再生債務者を含むものとする。以下同じ。)に対し、再生債務者の再生のために必要な協力及び情報の提供を求めることができるものとする。
 1に規定する場合には、再生債務者等は、外国管財人に対し、再生債務者の再生のために必要な協力及び情報の提供をするよう努めるものとするものとする。
 
八十七 外国管財人の権限
 外国管財人は、十七1前段の場合には、再生債務者について再生手続開始の申立てをすることができるものとする。
 外国管財人は、再生債務者の再生手続において、債権者集会に出席し、意見を述べることができるものとする。
 外国管財人は、再生債務者の再生手続において、裁判所の定める期間内に、再生計画案を作成して裁判所に提出することができるものとする。この場合においては、百五十三3を準用するものとする。
 
八十八 相互の手続参加
 外国管財人は、再生債務者についての外国倒産処理手続において債権の届出をした再生債権者(自ら再生債務者の再生手続に参加した者を除く。)を代理して、再生債務者の再生手続に参加することができるものとする。ただし、当該外国の法令によりその権限に属するものとされている場合に限るものとする。
 再生債務者等は、再生手続における届出再生債権者(九十四3により認否書に記載された再生債権を有する者を含み、自ら外国倒産処理手続に参加した者を除く。)を代理して、再生債務者についての外国倒産処理手続に参加することができるものとする。
 2の場合には、再生債務者等は、その代理する届出再生債権者のために、外国倒産処理手続に属する一切の行為をすることができるものとする。ただし、届出の取下げ、和解その他の届出再生債権者の権利を害するおそれがある行為をするには、当該届出再生債権者の授権がなければならないものとする。
 
八十九 簡易再生の決定
 裁判所は、再生債務者等が提出した再生計画案がある場合には、債権届出期間の経過後一般調査期間の開始前に限り、再生債務者等の申立てにより、再生債権の調査及び確定の手続を経ないで当該再生計画案について決議をするための債権者集会を招集する旨の決定(以下「簡易再生の決定」という。)をするものとする。この場合には、一般調査期間に関する決定は、その効力を失うものとする。
 1の申立ては、届出再生債権者の総債権について裁判所が評価した額の五分の三以上に当たる債権を有する届出再生債権者が、書面により、1の再生計画案について同意し、かつ、九十二から百六までに定める再生債権の調査及び確定の手続を経ないことについて同意している場合に限り、することができるものとする。
 1の申立てをする場合には、再生債務者等は、労働組合等にその旨を通知しなければならないものとする。
 裁判所は、1の申立てがあった場合において、1の再生計画案について百六十四2の一、二又は四のいずれかに該当する事由があると認めるときは、当該申立てを却下しなければならないものとする。
 
九十 簡易再生の決定の公告等
 簡易再生の決定があった場合には、百八1から4までにかかわらず、その主文、再生計画案について決議をするための債権者集会の期日及び百八十九1の再生計画案を公告するとともに、これらの事項を記載した呼出状を百八1に規定する者に送達しなければならないものとする。
 1に規定する場合には、1の債権者集会の期日を労働組合等に通知しなければならないものとする。
 百八十九1の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 3の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
 簡易再生の決定を取り消す旨の決定が確定した場合には、簡易再生の決定をした裁判所は、遅滞なく、一般調査期間を定めなければならないものとする。この場合には、九十五3から5までを準用するものとする。
 簡易再生の決定が確定した場合には、三十七1又は3により中断した手続は、再生債務者等においてこれを受け継がなければならないものとする。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができるものとする。
 
九十一 債権者集会の特則
 簡易再生の決定があった場合には、再生計画案について決議をするための債権者集会においては、百八十九1の再生計画案のみを、決議に付することができるものとする。
 裁判所は、財産状況報告集会における再生債務者等による報告又は百十八1の報告書の提出がされた後でなければ、1の再生計画案を決議に付することができないものとする。
 1の債権者集会に出席しなかった届出再生債権者が百八十九2に規定する同意をしている場合には、百六十一4の適用については、当該届出再生債権者は、当該債権者集会に出席し、かつ、百八十九1の再生計画案について同意したものとみなすものとする。
 3は、百八十九2に規定する同意をしている届出再生債権者が、1の債権者集会の開始前に、裁判所に対し、当該同意を撤回する旨を記載した書面を提出したときは、適用しないものとする。
 
九十二 再生計画の効力等の特則
 簡易再生の決定があった場合において、再生計画認可の決定が確定したときは、すべての再生債権者の権利(九十に規定する請求権を除く。)は、百四十七1の一般的基準に従い、変更されるものとする。
 簡易再生の決定があった場合には、九十二から百六まで、百四十八、百五十、百五十四2後段、百五十九、百六十、百六十一1及び2、百六十二、百六十八から百七十まで、百七十一1及び2、百七十五(百七十九8、百八十2及び百八十五7において準用する場合を含む。)、百七十六3及び4並びに百七十七は、適用しないものとする。
 1に規定する場合における百七十二及び百七十九3の適用については、百七十二のうち「再生計画の定めによって認められた権利又は百七十一1による変更後の権利」とあり、及び百七十九3のうち「再生計画の定めによって認められた権利」とあるのは、「百九十二1による変更後の権利」とするものとする。
 
九十三 同意再生の決定
 裁判所は、再生債務者等が提出した再生計画案がある場合には、債権届出期間の経過後一般調査期間の開始前に限り、再生債務者等の申立てにより、再生債権の調査及び確定の手続並びに再生計画案の決議を経ないで再生計画を認可する旨の決定(以下「同意再生の決定」という。)をするものとする。この場合には、一般調査期間に関する決定は、その効力を失うものとする。
 1の申立ては、すべての届出再生債権者が、書面により、再生債務者等の提出した再生計画案について同意し、かつ、九十二から百六までに定める再生債権の調査及び確定の手続を経ないことについて同意している場合に限り、することができるものとする。
 1の申立てをする場合には、再生債務者等は、労働組合等にその旨を通知しなければならないものとする。
 裁判所は、1の申立てがあった場合において、1の再生計画案について百六十四2の一、二又は四のいずれかに該当する事由があると認めるときは、当該申立てを却下しなければならないものとする。
 裁判所は、財産状況報告集会における再生債務者等による報告又は百十八1の報告書の提出がされた後でなければ、同意再生の決定をすることができないものとする。
 同意再生の決定があった場合には、その主文、理由の要旨及び1の再生計画案を公告するとともに、これらの事項を記載した書面を百八1に規定する者に送達しなければならないものとする。
 1の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
 7の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
 同意再生の決定が確定したときは、1の再生計画案について、再生計画認可の決定が確定したものとみなすものとする。
 
九十四 手続の特則
 百六十四3は百九十三1の申立てについて、百六十四5は同意再生の決定について、百六十五2は百九十三7の即時抗告並びにこれについての決定に対する十五において準用する民事訴訟法第三百三十六条の規定による抗告及び同法第三百三十七条の規定による抗告の許可の申立てについて、百九十5は同意再生の決定を取り消す決定が確定した場合について、百六十三、百九十6、百九十二1及び3は同意再生の決定が確定した場合について準用するものとする。
 同意再生の決定があった場合には、九十二から百六まで、百四十八、百五十、百五十四2後段、百五十九から百六十五まで、百六十八から百七十まで、百七十一1及び2、百七十五(百七十九8、百八十2及び百八十五7において準用する場合を含む。)、百七十六3及び4並びに百七十七は、適用しないものとする。
 
九十五 罰則
 罰則について、所要の規定の整備をするものとする。
 
九十六 その他
 その他所要の規定の整備をするものとする。
 
 他の倒産処理手続との関係
 
 和議手続との関係
 この要綱に伴い、和議法(大正十一年法律第七十二号)は、廃止するものとする。
 
 会社更生手続との関係
1 再生手続への移行
(一)  会社更生法第二十三条第一項に掲げる決定をした場合において、相当と認めるときは、裁判所は、その決定の確定前においても再生手続開始の申立てをすることを認可することができるものとする。(会社更生法第二十七条第一項関係)
(二)  裁判所が(一)の認可をしたときは、この要綱案に従って再生手続をしなければならないものとする。(会社更生法第二十七条第二項関係)
 中止命令
(一)  更生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、再生手続の中止を命ずることができるものとする。(会社更生法第三十七条第一項関係)
(二)  裁判所は、(一)による中止の決定を変更し、又は取り消すことができるものとする。(会社更生法第三十七条第五項関係)
 手続開始に伴う中止等
(一)  更生手続開始の決定があったときは、再生手続開始の申立てはすることができず、再生手続は、中止するものとする。(会社更生法第六十七条第一項関係)
(二)  (一)により中止した再生手続については、裁判所は、会社更生法第六十七条第六項の規定による手続の続行及び取消しを命ずることはできないものとする。(会社更生法第六十七条第六項ただし書関係)
(三)  更生計画認可の決定があったときは、(一)により中止した再生手続は、その効力を失うものとする。(会社更生法第二百四十六条第一項関係)
(四)  (三)によって効力を失った再生手続における共益債権は、更生手続においても、共益債権とするものとする。(会社更生法第二百四十六条第二項関係)
 
 その他
 この要綱に伴い、商法その他の法令に所要の改正を加えるものとする。