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トップページ > パブリックコメント > 人権救済制度の果たすべき役割

人権救済制度の果たすべき役割

第 3 人権救済制度の果たすべき役割

1 人権救済制度の位置付け

 人権侵害の現状や被害者救済制度の実情,特に,最終的な紛争解決手段である裁判制度における一定の制約などを踏まえると,今日の幅広い人権救済の要請に応えるため,人権擁護行政の分野において,簡易性,柔軟性,機動性等の行政活動の特色をいかした人権救済制度を整備していく必要がある。すなわち,人権救済制度は,被害者の視点から,簡易・迅速で利用しやすく,柔軟な救済を可能とする裁判外紛争処理の手法を中心として,最終的な紛争解決手段である司法的救済を補完し,従来くみ上げられなかったニーズに応える一般的,横断的な救済制度として位置付けられるべきである。
 既に個別的な行政上の救済制度が設けられている分野,例えば,女性の雇用差別に関する都道府県労働局(雇用均等室)・機会均等調停委員会や児童虐待に関する児童相談所など,被害者の救済にかかわる専門の機関が置かれている分野においては,当該機関による救済を優先し,人権救済機関は,当該機関との連携の中で必要な協力を行うとともに,当該機関による解決が困難な一定の事案については,人権救済機関として主体的な対応を行うなど,適正な役割分担を図るべきである。また,各種の行政上の不服申立手続や刑事手続との間においても,適正な役割分担を図る必要がある。

2 具体的役割

(1)  あらゆる人権侵害を対象とする総合的な相談と,あっせん,指導等の手法による簡易な救済
 人権救済制度においては,法務省の人権擁護機関が従来取り組んできたように,あらゆる人権侵害を対象として,総合的な相談と,あっせん,指導等の専ら任意的な手法による簡易な救済が図られるべきである。
I  相談は,適切な助言を通じて,人権侵害の発生や拡大を防止し,人権侵害に関する紛争の自主的解決を促進するなど,それ自体が有効な救済手法であると同時に,より本格的な救済手続への導入機能や,他の救済にかかわる制度等を利用すべきものについてはその紹介・取次ぎによる振り分け機能を併せ持った極めて重要な手法であり,人権救済制度においては,あらゆる人権侵害を対象とする総合的な相談サービスを提供すべきである。
II  あっせんや啓発的手法を用いた指導その他の強制的な調査権限を伴わない専ら任意的な手法による救済は,対象を限定することなく,広範な人権侵害に対して簡易・迅速で柔軟な救済を可能とする仕組みとして,これを維持することが相当である。


(2)  自主的解決が困難な状況にある被害者の積極的救済
 差別や虐待の被害者など,一般に自らの人権を自ら守ることが困難な状況にある人々に対しては,より実効性の高い調査手続や救済手法を整備して,積極的救済を図っていく必要がある(以下,このような意味での実効的な救済を「積極的救済」と呼ぶこととする。)。
I  司法的救済には,様々な理由から自らの力で裁判手続を利用することが困難な状況にある被害者がおり,このような被害者との関係では有効に機能しないという限界がある(第2,2(2)ア)が,一般に差別や虐待の被害者はその典型である。これらの被害者には,自らの社会的立場や加害者との力関係から被害を訴えることを思いとどまったり,たとえ訴えようとしても,証拠収集や訴訟追行の負担からこれを断念せざるを得ず,泣き寝入りに終わるものも少なくないほか,そもそも被害意識が希薄である場合すらあり,被害が潜在化している実情にある。そして,そのことが更に同種の人権侵害を拡大させるおそれがある。したがって,差別や虐待の被害者を中心とした自らの人権を自ら守ることが困難な状況にある人々に対しては,積極的救済を図っていく必要がある。
II  先の答申において,女性や子ども等の被害者別にみた人権課題を指摘した(第1,1「人権に関する現状」)が,もとより,これらの被害者の属性をもって一律に弱者ととらえることは妥当でなく,むしろ,一般にその被害者が自らの人権を自ら守ることが困難な状況に置かれている差別,虐待といった人権侵害の態様に着目して,積極的救済の対象とすることが適当である。
III  積極的救済の対象とする人権侵害については,その救済手続が一面で相手方や関係者の人権を制限するものでもあることから,そのような関係者らの予測可能性を確保する意味からも,対象となる差別や虐待の範囲をできるだけ明確に定める必要がある。
IV  積極的救済は,差別,虐待を中心に,救済の必要性が高く,人権救済機関が有効な関与をなし得る人権侵害を対象として行うべきである。さらに,差別,虐待等の一定の類型に属さないものについても,人権擁護の観点から看過し得ないものに対しては,機動的かつ柔軟に積極的救済を図ることができる仕組みを工夫する必要がある。なお,積極的救済の対象を考えるに当たっては,人権救済機関の人的・物的資源を分散し,その実効性を損なうことがないよう,また,市民生活への介入を無用に増大させることがないよう配慮する必要がある。

3 その他

 人権救済機関は,その活動に関する公開性・透明性を高め,説明責任を果たすことにより,信頼性の向上に努めるとともに,具体的事件の調査処理に当たっては,関係者のプライバシー保護に配慮する必要がある。
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