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新たな土地境界確定制度の創設に関する要綱案

第 1 目的

 この制度は,1筆の土地の区画を明確にするための登記官による境界確定に関する手続について定めることにより,国民の権利の保全を図り,もって取引の安全と円滑に資することを目的とするものとする。

第2  定義

1  境界
 この制度において,「境界」とは,相互に隣接する1筆の土地と他の土地との境を特定するための2以上の点及びこれらを結ぶ直線をいうものとする。
2  境界確定
 この制度において,「境界確定」とは,土地の境界が明らかでない場合において,この制度の定めるところにより法務局又は地方法務局の長の指定する登記官が境界を確定することをいうものとする。

第 3 境界確定の主体

 境界確定は,関係土地(当該境界で相互に隣接する1筆の土地及び他の土地をいう。以下同じ。)の所在地を管轄する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所の登記官(不動産登記法第12条)の中から境界確定を行う登記官として法務局又は地方法務局の長が指定する者(以下「境界確定登記官」という。)がするものとする。
(注)
1  除斥の制度(不動産登記法第13条参照)を設けるものとする。
2  管轄する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所が複数存在する場合には,法務大臣又は法務局若しくは地方法務局の長が境界確定の手続を取り扱う法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所を指定するものとする。

第4  境界確定の手続

1  手続の開始
(1 ) 申請による手続の開始
 土地の所有者(所有権の登記名義人若しくは表題部所有者又はこれらの者の相続人その他の一般承継人をいう。以下同じ。)は,当該土地の境界が明らかでない場合は,境界確定登記官に対し,境界確定の申請をすることができるものとする。
(注)
1  「所有権の登記名義人」とは,所有権の登記がある土地の登記簿に所有者として記録されている者をいい,「表題部所有者」とは,所有権の登記がない土地の登記簿の表題部に所有者として記録されている者をいう。
2  申請に際しては,申請に係る土地を特定するため,その位置及び形状を示さなければならないものとする。
3  申請に際しては,政令で定める額の手数料を納付しなければならないものとする。
4  当該境界が既に境界確定により明らかにされている場合や,手数料を納付しないで申請がされた場合等には,申請を却下することができるものとする。
(2 ) 職権による手続の開始
 境界確定登記官は,土地の境界が明らかでない場合において,必要があると認めるときは,職権で,境界確定の手続を開始することができるものとする。
2  公告及び通知
 境界確定登記官は,1(1)又は(2)により境界確定の手続を開始したときは,遅滞なく,その旨を公告し,かつ,関係土地の所有者(1点で隣接する土地の所有者を含む。以下同じ。)で知れているもの(1(1)の申請をした者を除く。)に対しその旨を通知しなければならないものとする。
(注)  当該境界に係る土地が区分建物の敷地(建物の区分所有等に関する法律第2条第5項に規定する「建物の敷地」をいう。)であって区分所有者の共有に属する場合において,管理者が選任され,又は管理組合法人があるときは,当該管理者又は当該管理組合法人の理事(代表理事の定めがあるときは,代表理事)に通知すれば足りるものとする(後記4(2)も同様)。
3  境界確定委員会(仮称)
(1 ) 境界確定委員会への求意見
1(1)又は(2)により境界確定の手続を開始したときは,境界確定登記官は,境界確定委員会に対し,当該境界確定についての意見を求めなければならないものとする。
(2 ) 境界確定委員会の設置及び構成
ア  設置
(ア)  法務局及び地方法務局に,境界確定委員会(以下「委員会」という。)を置くものとする。
(イ)  委員会は,境界確定登記官の求めに応じて,境界確定について調査を行い,意見を述べるものとする。
(注)  委員会は,固定的な組織ではなく,多数の委員を任命しておき,手続ごとにその中から担当の委員を指定して委員会を構成するものとする(委員は,非常勤とする。)。
イ  構成
(ア)  委員会は,委員3人以上をもって構成する合議体とするものとする。
(イ)  委員は,境界確定について必要な学識経験のある者のうちから,法務局又は地方法務局の長が任命し,手続ごとに指定するものとする。
(ウ)  委員会の事務を取り扱う組織を法務局及び地方法務局に置くものとし,これに委員会の調査を補助する調査官を置くものとする。
(注)  委員は,弁護士,土地家屋調査士等の中から任命することが考えられる。
(3 ) 境界確定委員会による調査
ア  委員会は,測量,実地調査,土地の所有者その他の関係人に対する資料の提出の求め及び質問その他境界確定に関し必要な調査を自ら行い,又は調査官に命じてその調査を行わせることができるものとする。この場合において,委員又は調査官は,必要な限度で,他人の土地に立ち入り,測量又は実地調査をすることができるものとする。
イ  委員会は,関係土地の所有者に対し,意見を述べ,又は資料を提出し,かつ,測量及び実地調査に立ち会う機会を与えなければならないものとする。
ウ  委員会は,必要があると認めるときは,関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し,必要な資料又は情報の提供,意見の陳述その他の協力を求めることができるものとする。
エ  関係土地の所有者及び所有権以外の権利の登記名義人(関係土地の登記簿に用益物権,賃借権又は担保物権等の権利者として記録されている者をいう。)は,委員会に対し,境界確定につき,意見を述べ,又は資料を提出することができるものとする。
(4 ) 境界確定委員会による意見の提出
 委員会は,(3)の調査を終えたときは,境界確定登記官に対し,境界確定についての意見を提出しなければならないものとする。
(5 ) 境界確定委員会による調停
 委員会は,調査の結果,関係土地の所有者間に所有権に関する紛争が存することが明らかになったときは,当該紛争に関し調停をすることができるものとする。
4  境界確定登記官による境界確定
(1 ) 境界確定
ア  委員会による意見の提出があったときは,境界確定登記官は,遅滞なく,境界確定をしなければならないものとする。
イ  境界確定は,委員会の意見を踏まえてしなければならないものとする。
ウ  境界確定は,関係土地の状況,公図・地積測量図等の記載内容,登記簿の記録内容その他の事情を総合的に考慮してするものとする。
(注)  境界確定は,座標値を有する図面を添付し,理由を付した境界確定書(仮称)を作成してするものとする。
(2 ) 公告及び通知
 境界確定登記官は,境界確定をしたときは,その旨を公告し,かつ,関係土地の所有者で知れているものに対しその旨を通知しなければならないものとする。
(3 ) 争訟の方法
ア  境界確定の処分については,行政不服審査法による不服申立てをすることができないものとする。
イ  境界確定の処分については,行政事件訴訟法の定めるところに従い,取消訴訟等の抗告訴訟を提起することができるものとする。
(注)
1  この制度の創設後は,現行の民事訴訟としての境界確定訴訟は提起することができないものとする。
2  境界確定の処分に係る取消訴訟等の抗告訴訟の第一審の管轄裁判所は,当該境界に係る土地の所在地の地方裁判所とするものとする。
5  登記事務との連携
(1 ) 登記簿及び地図に関する必要な措置
 登記官は,境界確定がされたときは,遅滞なく,地積の更正,地図の訂正その他の関係土地の登記簿又は地図に関する必要な措置を執らなければならないものとする。
(2 ) 境界確定がされたことの公示
 境界確定がされたこと及びその内容は,登記簿及び地図上で公示するものとする。
6  境界標の設置義務
 境界確定がされた場合において,境界標が存しないとき又は既存の境界標がその内容に合致しないときは,当該確定された境界で相互に隣接する土地の所有者は,その内容に合致する境界標を設置しなければならないものとする。

第 5 その他

1  手続費用の負担
 手続費用は,申請による手続開始の場合は当該申請の申請人が負担するものとし,職権による手続開始の場合は原則として国が負担するものとする。
(注 )申請による手続開始の場合において,境界確定の処分をするまでの経緯等にかんがみ,申請人以外の者に手続費用を負担させるのが相当であるときは,申請人がその者から手続費用の償還を求めることができるものとする。
2  閲覧及び写しの交付
(1 ) 何人も,登記官に対し,手数料を納付して,境界確定書,これに添付された図面その他境界確定の手続において法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局若しくはこれらの出張所(以下「法務局等」という。)に提出され,又は法務局等が作成した図面の閲覧又はその写しの交付を請求することができるものとする。
(2 ) 何人も,利害関係を有する部分に限り,登記官に対し,手数料を納付して,境界確定の手続において法務局等に提出され,又は法務局等が作成した文書その他の物件((1)の図面を除く。)の閲覧を請求することができるものとする。
(注)  (1)及び(2)の手数料の額は,物価の状況,実費その他一切の事情を考慮して政令で定めるものとする。
3  法務省令への委任
 その他必要な事項は,法務省令で定めるものとする。