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供託規則の一部改正案に関する補足説明

第 1 はじめに

 政府は,国民や企業の利便性を飛躍的に向上させるため,「国民等と行政との間の実質的にすべての申請・届出等手続を,2003年度までのできる限り早期にインターネット等で行えるようにする」こととしている(「e-Japan重点計画-2002」(平成14年6月18日IT戦略本部決定))。
 また,これを制度面から促進するため,申請・届出等に限らず法令に基づく行政機関等の手続について,個別法令の改正によることなく,書面による手続に加え,オンラインによる手続を可能とするために,行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成14年法律第151号。以下「情報通信技術利用法」という。)が平成15年2月3日から施行されている。
 このように,供託手続についても,早期にオンライン化が求められる状況にあったことから,所要のシステム開発を踏まえ,情報通信技術利用法に基づく主務省令としての供託規則(昭和34年法務省令第2号)を改正することにより,供託手続のオンライン化の導入を図ることが相当であり,また,供託手続のオンライン化に併せて,国民の負担軽減や事務処理の効率化の観点から従来の手続を見直し,より利用しやすいものとすることが必要であると考えられた。
 そこで,供託手続のオンライン化等を目的とする供託規則の改正の現段階における方向性を明らかにして,パブリックコメントに付するため,法務省においてその改正事項を公表することとしたものである。この補足説明は,改正事項について,その趣旨等を補足的に説明したものである。

第 2 主な改正事項について

1  金銭又は振替国債の供託及び供託書正本の交付の手続,払渡請求の手続等をインターネットを介して行うことができるようにすること。

 供託又は払渡請求については,法令により供託書,供託物払渡請求書等の書面によることが規定されている。このような書面を前提とした手続については,情報通信技術利用法のオンライン化可能規定によって,書面によることに加え,オンラインにより行うことも可能とされている。
 情報通信技術利用法第3条第1項及び第4条第1項は,「主務省令で定めるところにより,電子情報処理組織を使用して行わせることができる」と規定し,オンラインで申請等を行う場合の方法等について主務省令に委任している。また,情報通信技術利用法において,申請や処分のオンライン化を認めるか否かについては,行政機関等に法令上の裁量権が認められているものと考えられている(総務省行政管理局・自治行政局編集「解説行政手続オンライン化法」平成15年4月・第一法規・89ページ)。
 オンラインによる供託及び供託書正本の交付並びに払渡請求について,情報通信技術利用法の適用に当たっては,情報通信技術利用法に規定する「個別作用法令」が供託法及び供託規則となり,「主務省令」が供託規則となる。そこで,供託規則において,オンライン化に必要な具体的な手続を規定する必要があり,その対象となる手続として供託及び供託書正本の交付並びに払渡請求が改正事項として掲げられたものである。
 なお,オンライン上で供託手続を完結させるためには,供託金の受払いについても,インターネット等を利用できるようにする必要があり,現在,関係省庁でその準備が行われている。

2  被供託者に対する供託通知書の送付は,原則として供託者自身が行うこととすること。ただし,供託者は,供託官に対し,送付に要する郵券等を添えて,被供託者に供託通知書を発送することを請求することができるようにすること。

 供託通知書及び郵券等付き封筒の添付を義務付け,供託官から供託通知書を発送するという現在の取扱いを維持することとなると,オンラインによる供託についても,郵券等付きの封筒を供託者から提出することを義務付ける必要が生ずる。そうすると,オンラインによる供託でありながら,封筒等を供託所に持参し,又は郵送する必要が生じ,オンライン上で供託手続が完結しないことになり,オンラインによる供託の利用に制約を課すこととなる。
 そこで,供託通知書の添付を義務付ける扱いを見直し,原則として,供託者が民法第495条第3項の規定に基づき供託通知書を発送することとする。
 他方,供託官から供託通知書を発送する現行の取扱いは,国民に広く定着したものであり,また,供託通知書の発送は,払渡請求権の行使の契機となるという供託制度上重要な要素であり,供託通知書の円滑な被供託者への到達について,供託所としては最大限配慮する必要がある。そこで,通知書に郵券及び封筒等を添付して供託通知書の発送の請求が行われた場合には,供託所から被供託者に対して供託通知書を送付するという現行の取扱いを維持することとする。

3  インターネットを介して供託書正本を交付したときは,供託者の請求により,1通に限り,書面による供託書正本を交付することができるようにすること。

 オンラインによる供託書正本の交付を可能にしたことに伴い,現行実務を前提とする限り,供託者が交付を受ける供託書正本は1通であり,その供託書正本はオンラインにより電磁的記録として交付されたものとなる。しかし,供託書正本の提出を求める現行の営業保証等の各種手続においては,いまだオンラインに対応していないものも少なくなく,こうした手続については,従来どおり書面による供託書正本が必要とされる。
 このように書面による供託書正本が必要な手続がなお存することから,オンラインによる正本の交付を受けつつ,書面による供託書正本が必要な場合には,当該正本とみなされる書面の交付を可能とすることとする。
 これにより,将来,各種手続がオンライン化された場合でも,電磁的記録による供託書正本の利用を可能とするとともに,それまでの過渡的な期間においても供託書正本とみなされる書面を利用することが可能となり,利用者の利便性の向上を図ることができる。

4  供託物払渡請求の添付書面として,供託書正本又は供託通知書(供託規則第24条第1号及び第25条第1号参照)を不要とすること。これに伴い,催告払いの制度を廃止すること。

 現行制度においては,供託書正本は供託者において保管すべきものとされており,これを有する者が取戻しをする権利を有することが推測されることから,取戻請求権者に自己が真正な権利者であることを立証させるため,取戻請求に当たり,供託書正本の添付を原則として要求していた。
 また,供託通知書については,弁済供託その他これに準ずる供託にあっては,供託者は,債権者に供託の通知をしなければならないこととされており,供託所は,供託者が提出した供託通知書を被供託者に対して送付することとされている。したがって,供託通知書の所持者が被供託者であることが推測されることから,還付請求権者に自己が真正な権利者であることを立証させるため,還付請求に当たり,供託通知書の添付が原則として要求していた。
 しかし,平成15年の供託規則の一部改正(平成15年法務省令第60号)により,本人確認手段として運転免許証の提示等が導入され(供託規則第26条第3項第2号),有効かつ多様な方法で請求権者本人であるかどうかの確認を行うことが可能となっている。
 そして,現行制度では,供託物の払渡請求に当たって,紛失等の事情により請求者が供託書正本又は供託通知書を添付することができないときは,請求者は供託官に対して催告払いによる払渡しの請求(供託規則第30条)を行い,供託官は利害関係人に対して当該払渡しについて異議があれば一定期間内に異議申立書を提出すべき旨を通知し,又は利害関係人が判明しない場合には通知に代えて公告をしなければならないところ,上記のとおり,運転免許証等による本人確認が可能であるにもかかわらず,利害関係人に対する通知又は公告を要するとすることは,請求者に過大な負担を課すこととなり相当でない。
 そこで,請求者の負担軽減の観点から,払渡請求に当たって,供託書正本及び供託通知書の添付を求めないこととするとともに,これらの添付を前提とする催告払いの制度を廃止することとする。

5  供託物払渡請求時の印鑑証明書の添付に代わる本人確認手段を拡大すること。

 供託者の払渡請求時における利便性の向上のため,新たに本人確認をするための資料として,例えば,「官庁又は公署から交付を受けた書類その他これに類するもの(氏名,住所及び生年月日の記載があり,本人の写真が貼付されたものに限る。)」を追加することが考えられる。地方自治体においてこのような要件に合致しているものが既に存在していれば,その活用が考えられる。