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「新司法試験において選抜すべき法曹像」についての意見等の整理

【第1回会合での意見の整理】
 ○  「新司法試験において選抜すべき法曹像」については,司法制度改革審議会意見等において十分に言い尽くされている。
 ○  司法試験法に定められた試験科目と試験方法で測ることのできる資質は,法曹に必要とされるもののすべてではないことを明確にすべきである。
【 司法を担う法曹に必要な資質として,司法制度改革審議会意見,司法制度改革推進計画,法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律,司法試験法等に記載のある事項】
 ○  豊かな人間性や感受性(審議会意見・推進計画・連携法)
 ○  幅広い教養と専門的な法律知識(〃)
 ○  柔軟な思考力(審議会意見・推進計画・試験法)
 ○  説得・交渉の能力(審議会意見・推進計画)
 ○  社会や人間関係に対する洞察力(〃)
 ○  人権感覚(〃)
 ○  先端的法分野や外国法の知見(〃)
 ○  国際的視野と語学力(審議会意見・推進計画・連携法)
 ○  職業倫理(推進計画・連携法)
○  司法制度改革審議会意見書(平成13年6月12日)

I  今般の司法制度改革の基本理念と方向
第3  21世紀の司法制度の姿
2  21世紀の司法制度の姿
(2)  司法制度を支える法曹の在り方(人的基盤の拡充)
 高度の専門的な法的知識を有することはもとより、幅広い教養と豊かな人間性を基礎に十分な職業倫理を身に付け、社会の様々な分野において厚い層をなして活躍する法曹を獲得する。
( 中略)
III  司法制度を支える法曹の在り方
 まず、質的側面については、21世紀の司法を担う法曹に必要な資質として、豊かな人間性や感受性、幅広い教養と専門的知識、柔軟な思考力、説得・交渉の能力等の基本的資質に加えて、社会や人間関係に対する洞察力、人権感覚、先端的法分野や外国法の知見、国際的視野と語学力等が一層求められるものと思われる。
( 中略)
第2  法曹養成制度の改革
3  司法試験
(2)  試験の方式及び内容
 法科大学院において充実した教育が行われ、かつ厳格な成績評価や修了認定が行われることを前提として、新司法試験は、法科大学院の教育内容を踏まえたものとし、かつ、十分にその教育内容を修得した法科大学院の修了者に新司法試験実施後の司法修習を施せば、法曹としての活動を始めることが許される程度の知識、思考力、分析力、表現力等を備えているかどうかを判定することを目的とする。
 新司法試験は、例えば、長時間をかけて、これまでの科目割りに必ずしもとらわれずに、多種多様で複合的な事実関係による設例をもとに、問題解決・紛争予防の在り方、企画立案の在り方等を論述させることなどにより、事例解析能力、論理的思考力、法解釈・適用能力等を十分に見る試験を中心とすることが考えられる。

○  司法制度改革推進計画(平成14年3月19日閣議決定)

III  司法制度を支える体制の充実強化
 高度の専門的な法律知識、幅広い教養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹の養成及び確保その他の司法制度を支える体制の充実強化を図るため、以下に述べるところに従い、改革を推進する。
 ( 中略)
第2  法曹養成制度の改革
 司法を担う法曹に必要な資質として、豊かな人間性や感受性、幅広い教養と専門的な法律知識、柔軟な思考力、説得・交渉の能力等に加えて、社会や人間関係に対する洞察力、人権感覚、先端的法分野や外国法の知見、国際的視野と語学力、職業倫理等が広く求められることを踏まえ、法曹養成に特化した教育を行う法科大学院を中核とし、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた新たな法曹養成制度を整備することとし、そのための措置を講ずる。

○  日本弁護士連合会司法制度改革推進計画(2002年3月19日)

II  司法制度を支える法曹の在り方-人的基盤の拡充-
 法の支配の下に潤いのある社会を築いていくには、司法の運営に直接携わるプロフェッションとしての法曹の役割が格段と大きくなることは必定である。法曹は、高度の専門的な法的知識を有することはもとより、幅広い教養と豊かな人間性を基礎に十分な職業倫理を身に付け、社会の様々な分野において厚い層をなして活躍する必要がある。

○  法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律(平成14年法律第139号)

(法曹養成の基本理念)
第 二条 法曹の養成は、国の規制の撤廃又は緩和の一層の進展その他の内外の社会経済情勢の変化に伴い、より自由かつ公正な社会の形成を図る上で法及び司法の果たすべき役割がより重要なものとなり、多様かつ広範な国民の要請にこたえることができる高度の専門的な法律知識、幅広い教養、国際的な素養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹が求められていることにかんがみ、国の機関、大学その他の法曹の養成に関係する機関の密接な連携の下に、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。
(第一号から第三号略)

○  司法試験法(昭和24年法律第140号)(平成17年12月1日施行)

(司法試験の試験科目等)
第 三条 短答式による筆記試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な法律知識及び法的な推論の能力を有するかどうかを判定することを目的とし、次に掲げる科目について行う。
(第一号から第三号略)
2  論文式による筆記試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な学識並びに法的な分析、構成及び論述の能力を有するかどうかを判定することを目的とし、次に掲げる科目について行う。
(第一号から第四号及び第三項略)
4  司法試験においては、その受験者が裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を備えているかどうかを適確に評価するため、知識を有するかどうかの判定に偏することなく、法律に関する理論的かつ実践的な理解力、思考力、判断力等の判定に意を用いなければならない。
○  在り方検討グループ(第1回会合)における意見

  •  「新司法試験において選抜すべき法曹像」は大変大事な問題だとは思うが,司法制度改革審議会の意見書あるいは司法試験法等にどう書いてあるのかを確認して,特にこれじゃ足りないからこういうことを議論しなければ先に進められないではないかということがあれば別であるけれども,それを一応確認した上で,具体的な問題を考えながらまた必要があれば議論をした方がよい。
     
  •  「新司法試験において選抜すべき法曹像」については司法制度改革審議会の意見書で出ており,「豊かな人間性や感受性,幅広い教養と専門的知識,柔軟な思考力」云々云々と誰も反対できないことが書いてあり,(これ以上この場で検討を行ったとしても)これ以上一歩も出ないと思う。アメリカでも適性試験を考えるときに選抜すべき理想的な法曹像を考えてそれにプラスになるような適性試験を考えようとしたが,こういう抽象的なもの以上に一歩も出られなかった。というのは,実際に働いている弁護士さんというのは千差万別であり,どの弁護士さんが立派な弁護士さんかということについて意見の一致ができない。結局,適性試験は何をやったかというと,ロースクールの1年次,2年次との成績の相関関係を高めるということに徹している。
     ここでも理想的な法曹像をいくら議論したって改革審議会の意見書以上のものは出ないと思われることから,アはごく軽く審議会の意見書を確認するだけにして,イ以下の具体的なことを議論する方が実りが多いのではないか。
     
  •  アについては,司法制度改革審議会意見書が提示している法曹像というものがあって,それが選抜すべき法曹像であるといえると思うが,司法試験法に定められた試験科目と試験方法で,このような法曹像が備えるべき資質をトータルに把握するということができるのかというと,ペーパーテストではなかなかそういうものをトータルに測る試験は設計し難いと思う。
     しかし,この法曹像から外れた方向に行ってはいけないわけであり,ペーパーテストで測ることができる能力は一部には止まるとしても,その一部分がこの法曹像に合致したものでなければいけないことについて,少し整理をしてみる必要がある。この意見書の中には「幅広い専門的知識,柔軟な思考力」という表現があるが,これはペーパーテストでも確かめ得ると思う。
     さらに,この意見書の表現では,それを批判的に検討し,また,発展させていく創造的な思考力,あるいは事実に即して具体的な法的問題を解決していくため必要な法的分析能力や法的議論の能力といった表現があるが,こういったこともペーパーテストであっても確かめ得るのではないか。
     大体今のようなことを確かめ,測るような試験を構想していくのではないか。
     
  •  まず検討すべきはどういう資質が測れるのかということの仕分けをしないと,何となく審議会意見書のすべての資質が測れるんだという誤解が生まれてしまうのではないかと思う。司法試験はあくまで一部の資質しか測れないんだということをはっきりさせることは意義のあることだと思う。
     
  •  資質に関するものとスキルに関するものとがある。スキルに関するものは比較的ペーパーテスト試し易い。非常に多様な価値観を持っているのかとか,公明正大な人かとか,あるいは柔軟性があるかとかは,資質に関する部分で難しい。
     しかし,最も大切なのは資質に関する部分であり,これをどうやってスクリーニングをかけるのか。教育の過程の方が大切かとも思うが,テストの中でもできるだけ試すことができるようにすべきである。
     インタビュー(口述試験)についての議論がこの中であり,賛否両論があって結局はやらないことになったようであるが,本当にそれでよいのか。やはり資質の評価というのはフェイストゥーフェイスで話す以外ない。
     
  •  あまり司法試験にすべてを期待すると,かえってプロセスとしての養成に反してしまう。基本的には法科大学院における成績評価や修了認定にまず重点を置き,その上で法曹になる時にこの程度のことが必要だというものを司法試験でチェックするということでないといけない。
     
  •  従来の司法試験は選んでいく試験だったが,新司法試験は,その発想として,法科大学院で修了認定を受けた人の中から例外的によくない者を落としていくだけのものであって,基本的には修了認定でプロセスを経ているというところに重点が置かれるべきもの。そういう意味で,本来の意味での資格試験的な性格をより強く持つべきである。