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法曹養成検討会における検討の経過(新司法試験関係部分の議事概要の抜粋)

(□:座長,○:委員,■:事務局,▲法務省)

第1回検討会(平成14年1月11日)
(論点整理:概要)
  第1  新司法試験について
   1  試験科目
   2  試験方法
     ・ 短答式,論文式,口述式のいずれの方法によるかなど
   3  対象者(受験資格)
   4  受験回数等の制限
     ・ 制限の内容
     ・ 制限内に合格することができなかった者が一定期間を経た後に再受験することを認めるかなど
   5  実施時期
     ・ 法科大学院在学中(毎年3月ころまで)に実施するか,修了後数か月程度が経過してから(毎年夏ころに)実施するかなど
  第2  予備的な試験について
  第3  その他
   1  現行司法試験と新司法試験の関係(スケジュール)
   2  現行司法試験と新司法試験の併存の問題点
     ・ 現行司法試験と新司法試験の重複受験を認めるかなど
   3  司法試験管理委員会の改組
   4  いわゆる合格枠制の廃止


第2回検討会(平成14年1月28日)
(法科大学院の第三者評価(適格認定)基準の在り方:省略)


第3回検討会(平成14年2月5日)
(法務省から現状説明:質疑応答部分は省略)
 ○  法典法国の法曹としては,正確な知識を幅広く備えていることが必要であり,例えば,弁護士の法律相談では,基本的な事項はその場で説明する必要があり,「調査してから後日回答する」では済まない。論文試験は必要な情報を与えて論理的思考力を試す試験とすべきであるが,基礎的知識の具備を確認するためには,短答式試験を実施すべきである。
 ○  審議会意見は,法曹の多様性や「国民の社会生活上の医師」としての法曹を掲げており,弁護士には依頼者のための熱意や誠意,カウンセリング能力等が強く求められる。ペーパーテストで試すことのできる能力は限定されており,法科大学院でのプロセス教育と司法試験の役割分担を考える必要があるのではないか。
 ▲  法科大学院,司法試験,司法修習をトータルで考える必要があり,熱意や技術のような実務的要素は,司法修習に相当程度ゆだねるべきではないか。
 ○  法曹の多様化に応じて必要な能力も異なるので,司法試験では,多様な法曹に最低限共通して求められるものを問うべきではないか。法曹倫理の理解も最低限のものとして必要であり,論理的説得力や弁護士倫理の大枠に反していなければ合格とするという大まかな採点であれば,現在でも法曹倫理を試験科目とすることが可能ではないか。
 ▲  基本六法を中心として,それにプラスした選択科目が最低限共通として必要であると考えている。法曹倫理については,現時点では学問としての普遍性に疑問があり,客観的な採点が難しいという問題がある上,全法科大学院で同一水準の教育がなされるのかも明らかでない。
 ○  選択科目を設けると,例えば環境法のような分野を専門としたい学生が,司法試験のためだけに他の選択科目を勉強することになり,また,法科大学院の創造的な取組みや最先端の教育を阻害することになるのではないか。受験生が志望に関係なく得点の取りやすい科目を選択することが,以前に選択科目を廃止した理由の一つではなかったか。
 ○  法曹にとっての基本法とは,どのような意味か。法曹としての需要が一番多いということか,六法を知っていれば,あとは応用で対応できるということか。いわゆる裁判法曹と違い,弁護士については,刑法,刑訴法は必須ではないのではないか。
 ▲  我が国では,法典法国として基本六法が確立しており,個々の法律もベースは六法にある。応用のための土台としての基本六法は,法曹の基本として必須のものである。
 ○  基本六法は,従来は法曹の必要十分条件であったが,今後は,十分条件ではなくなるかもしれないものの,必要条件であることに変わりはない。例えば,知的財産権法では民法の理解が必要であり,企業法務でも,違法性や犯罪構成要件等の刑事法の理解が必要である。
 ○  刑法の教育は,法律家としての物の考え方を鍛えるという点でも重要である。短答式を行うのであれば,合格のための知識の覚え込みのような弊害が起きないよう,内容を工夫する必要がある。法曹倫理は法科大学院で十分に教育すべきではあるが,試験科目とすることは,採点等の面で問題がある。
 ○  刑事法も法曹倫理も重要である。法曹倫理を試験科目としないと,重要でないとのメッセージを与えることになり,学生も勉強しなくなるのではないか。法曹倫理の試験は,基本的知識に欠けている者,まったく考えていない者を不合格とすればよいのではないか。
 ○  法曹倫理については,法科大学院で必修科目とされれば,重要であるとのメッセージになる。そのようなメッセージ性の点は,他の科目についても同様であり,すべてを司法試験科目にすべきであるということにはならない。
 ○  法曹の最低限として,法曹倫理も試験科目とすべきである。正解のある問題ばかり出すから正解指向となるのであり,正解のない問題でも,論理的・説得的に論じているかを見ればよい。点数で評価するのではなく,合否の判定だけでよい。
 ○  法曹倫理の試験を合否の判定のみとした場合,他の科目にどのように組み込むのか。
 ○  法曹倫理で不合格とされた者は,それだけで全体でも不合格とすべきである。
 ○  試験範囲としてどのような法律を対象とするかと具体的な試験科目とは必ずしも一致する必要はなく,両者を一致させて考えるのは,従来の形にとらわれているのではないか。短答式も口述試験も,やり方によっては法曹の資質を試すことができる。試験方法については,法科大学院の教育方法・成果とも関連する問題であり,現段階で固定的に決める必要はないのではないか。法曹倫理も,成熟した段階で試験科目とすることも考えられる。ただ,合否の判定だけでは,他の科目との関係で,合否判定にどのように組み込むか問題となるのではないか。
 ○  全科目の合計点で合否を判定するのではなく,民事系,刑事系等の科目のグループごとに最低点を決めて合否を判定し,何年かかっても,最終的に全グループで合格すればよいというような方法も考慮することができないか。
 ▲  科目ごとの積み上げ方式では,合格まで何年かかるか分からない制度となり,修習に入る段階での能力のばらつきも予想され,プロセスとしての法曹養成という考えに沿わないように思われる。
 ○  日本では,インタビューは機能していない。論文試験の成績が良いのに,口述試験に不合格となった者がいるのか。いわゆる「入れ替わり率」のようなものは出しているか。また,口述試験不合格者の翌年の合格率はどの位か。
 ▲  論文試験が高得点でも口述試験に不合格となった者もかなりいる。論文試験の成績が下位10%の層でも,口述試験の合格率は8割以上であり,不合格者の翌年合格率も,全体の合格率よりはやや低いが,8割以上である。
 ○  法曹としての決定的な能力ではなく,合格後の経験や訓練で補完できる能力であれば,あえて10%を落とす試験を行う必要はないのではないか。
 ○  考査委員の経験から言うと,口述試験は受験生の個性が分かる。会話が成立しないような者が,法曹には不適格として不合格とされているように思われる。できれば,口述試験は残すべきではないか。
 ○  口述試験がそのようなものであるなら,各分野の法律知識を問う必要はないのではないか。
 ○  60点,61点というような採点は,不適格者の排除と合致しないのではないか。
 ○  思考がパターン化しているために存在しない学説を考えさせるような問題にまったく対応できないような者が不合格とされているのではないか。口述試験の選抜機能を強調するなら,もっと落とすような試験とすることも考えられるのではないか。


第4回検討会(平成14年2月19日)
(各委員からあらかじめ提出された意見書に基づいて意見聴取:省略)
 □  新司法試験について,法科大学院の教育内容を十分に踏まえた新たなものとするという点は,各委員とも異論はないと思われる。試験科目については,これまでの各委員の意見を踏まえて検討することとしたい。試験方法については,論文式試験を中心とすべきであるという点は,各委員とも異論はないと思われる。
 ○  短答式試験は実施すべきではないと考えるが,もし実施する場合でも,論文式試験の受験者数を絞り込むために行うことは,短答式試験の欠点が顕著に出るので反対である。
 ○  基本的知識の確認は,本来的には法科大学院の成績評価によって行うべきであるが,短答式試験を実施するとしても,論文式試験と併用するのがよいのではないか。もっとも,受験者数が相当多数となった場合には,現実問題として論文の採点ができなくなるのではないかという問題がある。
 ○  現在の論文式試験のような,手間をかけた細かい採点をしなくてもよい。新司法試験は,法曹としての最低限の能力を判定する試験に変え,採点方法も,科目ごとに合否のみを判定する方法に変えるべきである。
 ○  合否のみの判定でも,実際には,他の答案との比較やランク付けが必要であり,採点が省力化できるわけではない。合否のみを判定し,一科目でも不合格があると全体として不合格とするという方法では,各科目ともぎりぎりの合格点でも合格できるが,他方,一科目でも不合格となれば,他の科目で高得点を取っても不合格となってしまうことになる。これからの法曹としては,後者のような人の方が魅力があるのではないか。
 ○  法曹としての最低限に達していない者だけを落とすという試験とするのであれば,一科目でも不合格となれば全体として不合格とすべきである。
 ○  論文式試験の受験者数を絞り込むために短答式試験を行うことは,現在の制度と同じ結果となることが懸念され,反対である。論文式試験についても,ドラフティングの問題や融合問題,資料をたくさん与えて分析させる問題など,様々な方法が考えられる。
 ○  新司法試験では,論文式試験の採点に,現在よりも手間がかかることになるのではないか。
 ○  どのような能力が必要とされるのか,どのような方法で判定するのかという点から考えるべきである。知識習得型は悪いと言われる場合の「知識」と,法曹に必要な「知識」とは異なる。後者について言えば,知識それ自体が単独として存在することに意味があるのではなく,ネットワークとして体系的に備えておくことが必要だということである。新司法試験の短答式では,このような体系化された知識を問うべきである。
 ○  知識を断片的に丸暗記することは不要であり,血となり肉となった知識が必要である。
 □  短答式試験について,各委員とも,現在と同じものとは考えていないものと思われる。新司法試験(本試験)の受験資格については,法科大学院の修了者と予備的な試験の合格者に認めるということで,各委員とも異論はないと思われる。受験回数制限とその後の再受験の問題については,法制面の問題もあるので,事務局において検討し,報告いただきたい。新司法試験の実施時期については,法科大学院修了後に実施すべきという意見が大勢と思われる。
 ▲  予備的な試験について,補足的に説明したい。法務省としては,法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度を整備するという司法制度改革審議会意見の趣旨を損なうような制度設計とすることはまったく考えていない。新司法試験は,受験技術優先の勉強では対応できず,法科大学院で思考力を身につけた者でなければ合格が難しい試験となると思われ,その合格者は,自ずと法科大学院修了者が中心となると思われる。経済的事情等を理由に予備試験の受験資格を制限しようとしても,規定の仕方や実際の認定が極めて困難となる。受験資格の制限という方法によらなくても,審議会意見の趣旨を実現する方法が考えられるのではないか。
 ○  予備試験は,法科大学院のプロセスを経由することを要求することが社会的に相当でないと認められるような者のために設けられることになったという原点を忘れるべきではない。それ以外の者は当然法科大学院に進む制度とし,法科大学院を経由しないことが社会的に相当であるかを審査する仕組みを設けるべきである。
 ○  形式的な受験資格として審査することが困難なのであれば,社会的経験を問うような試験内容とすることが考えられるのではないか。経済的事情で法科大学院に行けなかった者や社会人として経験のある者に予備試験を受験させることは当然であるが,予備試験ルートが太くなり,成績優秀者が予備試験ルートに流れ,法科大学院修了者はこれより劣るという評価がなされるような事態は避けるべきではないか。
 ○  多数の者が予備試験ではなく法科大学院に進むような制度設計とすればよく,少数の優秀者が予備試験ルートに行くことは仕方ないのではないか。そのような者まで法科大学院に行かなければならないとする制度設計は合理的とはいえないのではないか。また,予備試験に合格しても本試験の受験回数制限が課されるとすれば,予備試験はリスキーな選択となるのではないか。
 ○  日本では,超特急組がエリートであるという意識が強く,学部段階や法科大学院在学中から予備試験を目指して受験勉強に専念する学生が出ることが予想され,そうなると,プロセスによる養成,幅広い法曹の養成という趣旨が損なわれるのではないか。
 ○  優秀者が予備試験ルートに行くのは仕方がないという考えは,プロセスによる養成への転換が必要であるという改革の根本理念に反するのではないか。
 ○  予備試験の受験資格を制限すべきとの意見は,法科大学院に自信がないので保護してほしいという印象を受ける。法科大学院が充実すれば,予備試験ルートより,法科大学院修了者の方が良いということになるのではないか。
 ○  新司法試験で法科大学院で教育された高い能力が問われるのだから,予備試験合格者でも,本試験でそのような高い能力があると判定されたのであれば,それでよいのではないか。
 ○  法科大学院に自信があるからこそ,法科大学院を経由してほしい。これからの法曹には試験で判定できない能力も必要とされており,これを養成するプロセスが重要である。
 ○  法科大学院経由者が中心となり,予備試験の合格者が少数にすぎないのであれば,これを排除することは適当でないのではないか。
 ○  予備試験を設ける以上,超特急組を排除することは実際には困難ではないか。むしろ,これからは,超特急組はエリートであるというのではなく,専門分野に強い法科大学院を修了したことや,社会に出てからの評価が重要になるのではないか。
 ○  法科大学院修了と同程度のものであれば,予備試験は極めて難しい試験となり,簡単には合格できず,司法試験も法科大学院でしっかり勉強した人が多数合格する制度となると思われる。
 ○  受験資格で制限しなくても,試験内容で予備試験ルートを限定することができるのであれば,異存はない。
 ○  問題が生じるのは,法科大学院の設置当初のことであり,アクレディテーションが定着してくれば,今議論されているような問題は生じないのではないか。どのような試験としても,必ずクリアする者が出てくるので,当面は仕方がないのではないか。社会人の判定については,社会における活動実績を詳細に記載させれば,判定に時間はかかるが,必ずしも困難ではないと思われる。
 □  予備試験については,問題意識や制度全体の方向性は各委員とも異論はないと思われるが,法制的,技術的な問題もあるので,事務局において検討し,御報告をいただくこととしたい。新司法試験と現行司法試験の関係については,まず,同じ年においては,いずれか一方のみ受験できるという点は異論はないと思われる。法科大学院在学者・修了者の現行試験受験については,法制的な問題もあるので,事務局において更に検討していただきたい。
 ○  法科大学院在籍中の現行試験受験については,実際に問題となるのは1,2年のことであり,あえて禁止する必要はないのではないか。新司法試験の方が合格しやすいのであれば,現行試験を受けようとする者は出ないのではないか。
 ○  法科大学院在学中の現行試験受験を制限しないとしても,受験回数制限にカウントすることは考えられる。


第5回検討会(平成14年3月7日)
 ○  司法試験管理委員会を改組した「新委員会」はいつごろできる見通しなのか。
 ■  新司法試験が開始される平成18年より前にはできていなければならないが,現時点では,設置時期は確定していない。例えば,平成16年からとすることも一つの考えであろう。
 ○  例えば,刑事系科目の問題で,独占禁止法や証券取引法等にも関連する企業犯罪的な問題も出題できるのか。刑法,刑事訴訟法に関する問題でなければならないとすると,現在の論文式試験と変わらないのではないか。
 ○  経済犯罪的な問題も出題できるが,刑法や刑事訴訟法の考え方を問うということになるのではないか。その場合,必要に応じて,商法等の情報を受験生に与えることとなろう。試験科目については,受験生に対する告知の問題もある。
 ○  特定の法律分野と結び付いた出題とすると,予備校が介入することが懸念される。法科大学院で幅広く勉強したことを前提として,新司法試験を検討する必要があるのではないか。
 ○  選択科目としてどれを選択するかによって,不公平が生じるようなことは避ける必要がある。
 ○  受験生が相当多数となった場合に,段階的な選抜として短答式試験を行うことは可能なのか。
 □  これまでにも,そのような意見が出されたことを踏まえて,資料4のように整理したものである。
 ○  段階的な選抜として短答式試験を行うことには反対である。
 ○  資料4には,論文式試験について,融合問題の出題の方向性が明確に書かれていないが,融合問題も検討する旨を加えるべきではないか。
 ○  融合問題を出題するとしても,技術的,法制的な面で,基になる法律を特定せざるを得ないのではないか。
 ○  実際の法律相談では,民事,行政,刑事等,様々な要素が含まれる。そのいずれかだけを検討すればよいということになっては困るので,新司法試験でもそのような点を考慮すべきではないか。
 ○  資料4では,論文式試験について,現在の試験と比べてどのように変わるのかが明らかでない。もっと具体的なイメージを出すべきではないか。
 ■  幅広い法分野から出題するとしても,法制的な問題として,受験生への告知の必要から,「○○法」と具体的な法律名を列挙して規定する必要があり,例えば,その数が20~30科目となると,法科大学院もそのすべての授業をしなければならないという考えを助長することにもなりかねない。
 □  新司法試験の論文式試験のイメージをどのように示すかについては,さらに検討したい。
 ○  大学としては,司法試験の科目が,例えば「民事系」のように抽象的に定められるだけでは,法科大学院のカリキュラムの策定が難しいという事情もある。
 □  むしろ,法科大学院のカリキュラムを踏まえて,司法試験の科目が決まる関係にあるのではないか。
 ○  基本法科目として何を教育するかという点については,大学関係者に共通の認識があるのではないか。


第6回検討会(平成14年3月28日)
 ○  予備試験については,「経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも,法曹資格取得のための適切な途を確保すべきである。」としている審議会意見の趣旨に照らし,受験資格を制限することを更に検討すべきである。法令上,経済的事情や実務の経験を規定している例もある。予備試験の受験資格を制限しないと,法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度への転換の趣旨が損なわれることになる。
 ○  審議会意見では,経済的事情等を予備試験の受験資格とするとは書かれていない。実務の経験を要件としている例があるというが,それらは特定分野における実務の経験であることが具体的に規定されているものである。しかし,司法試験の予備試験の場合には,「実務の経験」を具体的に規定することができるのか。例えば,「法律に関する実務」と言っても,その内容は様々であり,どうやって区別するのか。社会の様々な職業を区別すること自体が問題ではないか。審議会意見の趣旨は,受験資格ではなく,試験の内容で実現すべきである。
 ○  法科大学院を中核とする審議会意見の趣旨からすれば,経済的事情で法科大学院に進学できない人や,十分な社会経験を持ち法科大学院への進学を求めることが相当でない人以外は,法科大学院に行くべきであり,予備試験を受験させるべきではない。
 ○  問題は,予備試験の受験資格の段階で制限するかどうかということであり,審議会意見では,受験資格の制限でなければならないというわけではない。経済的事情を要件としている法令の例は,経済的に困窮している者に援助を与えるというような制度に関するものであり,予備試験の場合とは性質が異なるのではないか。また,例えば,経済的事情で法科大学院に進学できなかったということを審査するためには,本人だけではなく,家族等の経済状況も審査する必要があるが,家族の納税証明書まで審査するような制度は適当ではない。
 ○  資料4の6の(注)を見ると,経済的に豊かな者も予備試験を受験できるように読める点が問題である。
 ○  審議会意見の趣旨を実現するように,司法試験制度全体の中で検討するということでよいのではないか。
 □  資料4の6の(注)の前の本文の部分にその趣旨が記載されている。
 ○  予備試験の運用次第では,予備試験が主流となる可能性がある。法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の趣旨を損なわないような運用をすべきことを書き加えるべきではないか。
 ○  委員の意見書では,法科大学院が原則で予備試験が例外と書くべきとされているが,そのように原則,例外という区別はしないというのが,審議会での了解事項であった。新たな法曹養成制度の趣旨を損なわないようにすることは当然の前提である。
 ○  実務の経験のようなものを試験の内容で問うという場合に,そのことを受験生に伝えるべきではないか。
 ■  予備試験については,「法曹の実務に関する基礎的素養」を問うというような形で伝えることが考えられる。なお,その場合には,実務経験の有無そのものを問うのではなく,実務の経験があれば備えているべき能力を有しているかどうかを問うことになるものと考えられる。
 ○  これまでの意見の整理であれば,資料4の6のような整理が適切ではないか。あいまいな受験資格制限を設けることは,法律的に問題である。
 ○  本検討会では,受験資格を制限する方法を採らないと決めたわけではないのではないか。
 ○  本検討会でのこれまでの議論は,受験資格を制限することは困難であるから,試験の内容で審議会意見の趣旨を実現するというものであり,資料4の整理が適切ではないか。
 ○  資料4の6の(注)では,その趣旨が十分に表れていない。少なくとも,受験資格を制限すべきとの意見があったことを,意見の整理に残すべきである。
 ○  資料4の6の2つ目の「・」の3行半にその趣旨が書かれている。
 ○  予備試験の目指すべき方向ははっきりしているのではないか。また,資料4の2の試験科目について,選択科目を設けることに反対の意見もあるが,司法試験に選択科目を設けることは,法曹の多様性や法科大学院の多様性に直結するものであり,試験科目にしないと学生は勉強しない傾向があることからも,選択科目を設けるべきである。法曹倫理については,教育の対象とはすべきであるが,試験の対象にすべきではないと思う。
 ○  法曹のミニマム・スタンダードとして,法曹倫理が必要であり,その試験科目化については,新委員会で「適切な時期」に検討すると書くのではなく,「早急に」検討することとすべきである。
 ○  法科大学院での教育内容等を踏まえる必要があることから,資料4では,「適切な時期」に検討することとしているのではないか。
 ○  アメリカの司法試験では,法曹倫理の試験をしている。
 ○  法曹倫理の重要性は共通の認識であるが,試験科目とするかどうかは別の問題である。法曹倫理についての知識を問う試験とすることは適当ではないし,法曹としての生き様のようなものは,試験で問うべきものではないと思う。
 ○  アメリカでは法曹倫理についての論文試験も行っており,試験科目とすることは不可能ではない。
 ○  そのほか,資料4の3の(注)に,従来の短答式試験の弊害として,段階的選抜のために使用することの弊害も加えるべきではないか。
 ○  段階的選抜のために使用することの弊害は,この資料に記載されている「知識の丸暗記」の弊害に含まれている。資料4の3の(注)に段階的選抜に使用することの弊害を加えると,全体として,本検討会が短答式試験を段階的選抜に使用することはできないとの意思決定を行ったとも読まれ得るが,それは,本検討会の議論とは異なる。
 ○  資料4には,新司法試験を法科大学院修了者の相当程度が合格できるものとするという審議会意見の趣旨が欠落しており,「法曹となるべき資質・意欲を持つ者が入学し,厳格な成績評価及び修了認定が行われることを不可欠の前提とした上で,法科大学院の課程を修了した者のうち相当程度(例えば7~8割)が合格できる試験とする。」を書き加えるべきではないか。
 □  審議会意見では,そのようには言っていない。
 ○  法科大学院修了者の7~8割が新司法試験に合格することを保証しているわけではない。
 ○  法科大学院の設置状況や受験者の滞留によって,実際の司法試験の合格率が全体として7~8割とならないことも考えられる。
 ○  法科大学院の教育内容を踏まえて新司法試験が決まるのであり,新司法試験によって法科大学院の教育内容が決まるのではないことを,どこかに書き加えるべきではないか。
 □  その点は,検討の当然の前提である。今後は,事務局で法制面,技術面の検討を行い,更に検討すべき問題点が発生した場合には,本検討会で更に検討するということで,現段階の意見の整理としては,資料4のとおりとする。


第7回検討会(平成14年5月10日)
 ○  新司法試験における論文式試験の具体的内容を検討することなく,短答式試験や口述試験を実施するかどうかを検討することは難しいのではないか。
 ○  論文式試験が現在より高度な内容となることは間違いなく,このことを前提に,司法修習の開始時期との関係や司法試験の実施事務の問題について検討すればよいのではないか。
 ○  論文式試験で科目融合的な問題を出題する場合には,一人の考査委員が適正な採点をすることは困難であり,論文答案を見ながら複数の考査委員による口述試験を行い,総合的に採点する方法が,能力を最も良く判定できるのではないか。
 □  アイデアとしては考えられるが,現実問題として,そのような方法で採点することが可能かという問題があるのではないか。
 ○  3月に法科大学院を修了して,司法修習が翌年の4月に開始するという制度は問題である。論文式試験の採点方法を簡易化する工夫をすれば,短答式試験を実施しない,あるいは,短答式試験による段階的選抜を行わない場合でも,現在のような採点期間は必要ないのではないか。
 ○  新司法試験の論文式試験は現在より高度な内容となり,採点に現在より手間がかかることは明らかであり,採点方法を簡易化することは実際には不可能である。
 ■  新しい法曹養成制度では,法曹資格を取得するまでの期間が現行制度より長くなることが懸念されることから,法科大学院の修了から司法修習の開始までの期間が長くなることは適当でないと考える場合には,司法試験の方法を工夫することが考えられるであろうし,他方,司法修習の開始時期が遅れることとなっても司法試験で時間をかけて丁寧に能力を判定すべきであるという意見もあり得ると思われるので,そのような点について御検討いただきたい。
 ○  法科大学院で双方向的・多方向的で密度の濃い教育がなされ,議論等の能力が養われるのであれば,新司法試験であえて口述試験を行う必要性はないとも思われる。また,論文式試験の受験者数は相当多数に上る可能性が大きく,論文答案の採点にかなりの期間を要すると思われることからすると,例えば,5月ころに,短答式試験と論文式試験を一括して実施することも考えられるのではないか。
 ○  短答式試験と論文式試験の問題作成を並行して行う態勢が整備されれば,両者を一括して実施することも可能であろう。
 ○  一括実施の場合には,短答式試験による段階的選抜は行わないことになるのか,それとも,一部の受験生について論文答案を採点しないようなこともあるのか。
 ○  実際には,論文答案の採点通数を合理的な範囲とする必要があろう。
 ○  短答式試験を段階的選抜のために行うことには反対だが,短答式試験と論文式試験を一括して実施することは十分に考えられるのではないか。
 □  本日の議論を踏まえ,新司法試験においては,短答式試験については,実施することとした上で,論文式試験との関係につき次回以降更に検討することとし,口述試験については,実施しない方向で立案を検討することもやむを得ないこととしたい。


第8回検討会(平成14年6月4日)
 ■  短答式試験については,公法系科目,民事系科目及び刑事系科目を,論文式試験については,公法系科目,民事系科目,刑事系科目及び選択科目(1科目)をそれぞれ試験科目とする方向で検討している。なお,どのような科目を選択科目とするかについては,法科大学院における具体的なカリキュラム編成等を待って,新しい司法試験管理委員会(以下「新委員会」という。)の意見を聴いて決定されるべきであると考えている。
 ○  選択科目については,法令上はどのように規定されるのか。
 ■  法制面の検討がなお必要であるが,将来的にも法科大学院の教育内容を踏まえて柔軟に対応するという観点からは,法律ではなく,省令等に規定する方向で検討している。
 ○  選択科目を設けるなら,多様な法曹の養成が阻害されることのないように,できるだけ広い範囲から多くの科目を設けるべきである。実際に選択するのは1科目が適当である。
 □  選択科目とするための条件については,どのように考えるか。
 ○  選択科目は,できるだけ幅広い分野から選択できるようにすべきである。各分野の学会等から,法科大学院のカリキュラム案や司法試験問題のモデル案等を提出してもらうことも考えられるのではないか。また,法律ごとの縦割りの科目ではなく,事象をとらえた横断的な科目とすることも考えられるのではないか。選択科目は,法律よりも省令等で規定し,機動的に対応するのが適当であろう。
 ○  受験生の負担を考えると,1科目を選択させるのが適当と思われる。出題の範囲や難易度の点で,どの科目を選択するかにより不公平とならないようにする必要があり,また,受験生が特定の科目に集中すると,それが法科大学院の教育にも影響を及ぼす可能性もある。選択科目とするには,全国的に相当数の法科大学院で授業が行われていることが必要であろうし,ある程度広がりのある領域を対象とすることが必要ではないか。
 ○  選択科目の範囲を幅広くすることは賛成であるが,必須科目の範囲と重複する場合には,受験生の間で不公平が生じるのではないか。
 ○  必須科目の範囲は法律で規定されるのか。
 ■  例えば,公法系科目については,法律では,憲法又は行政法に関する分野というような形で規定した上,省令等で更に出題の範囲を定めるということが考えられる。
 ○  融合問題の出題は可能なのか。法曹倫理は試験科目に入るのか。
 ■  現案でも,公法系,民事系,刑事系という範囲での融合問題の出題は可能である。法曹倫理については,法科大学院における教育内容等を踏まえ,新委員会で検討するというのが,本検討会のこれまでの議論の整理である。
 ○  本検討会では,選択科目について,個別の科目を議論するのではなく,法科大学院において全国的に授業が行われており,社会のニーズが高いなどのような,選択科目とするための基準について議論すべきではないか。
 ○  受験生への告知という点からは,一定の教育内容が制度化されている必要があるのではないか。
 □  個別の法律でなくても,学問領域が制度化されていれば,試験科目とすることになじむと思われる。
 ○  短答式試験については,基礎的理解を問うのであれば,範囲をもっと限定してもよいのではないか。
 □  その点は,試験の実施に当たって具体的に検討することとなろう。新司法試験の試験科目については,本日の議論も踏まえて,冒頭に事務局から説明があったようなものとする方向で立案作業を進めてもらうこととしたい。
 ■  新司法試験のスケジュール等については,これまでの議論を踏まえ,毎年8月末ないし9月初めころまでに司法試験の最終合格者を発表し,年内に司法修習を開始することを目指す方向で検討しており,そのために,例えば,(ア)短答式試験と論文式試験を同時期(5月)に実施し,受験者全員に両試験を受験させる(両試験は異なる能力を判定するものであることから,そのいずれかについて一定の成績に達しなかった者は最終的に不合格とする。),(イ)これらの方策を講じてもなお受験者が多数に上り,9月初めころまでに最終合格発表を行うことが不可能となる事態に備えるため,新委員会において考査委員の数や採点期間を考慮して,あらかじめ一定人数を定め,受験者数がこれを超えた場合には,短答式試験の合格者につき,論文式試験の成績に基づいて最終的な合否を判定できるものとする(短答式試験の不合格者については,論文式試験の答案を採点しないことができることとする。)ことが考えられる。なお,最終的な規定振りについては,法制上の観点から更に検討する必要がある。
 ○  法科大学院修了から司法修習開始までの期間として許容されるのは半年程度であり,司法修習は10月に開始すべきではないか。司法修習開始までの期間が長くなっては,修習期間を短縮しても,全体としての養成期間が長くなってしまう。司法試験の合格発表が8月末の場合でも,合格発表前に修習地の希望を提出させるなどの工夫により,10月から司法修習を開始することが可能ではないか。
 ○  司法修習の開始時期は,実現可能性との関係もあり,関係機関の努力を前提に,どの時期に設定することが可能かという問題であって,それらに関係なく設定する性質のものではないのではないか。
 ○  現行制度での事務作業を前提とするのではなく,10月開始という目標を立てて努力すべきではないか。時期を設定しないと,努力しないのではないか。
 ■  事務局としても,関係機関と協議し,どのような条件が整えば,司法修習の開始時期をどこまで早めることができるのかを検討することとしたい。
 ○  司法修習の開始時期を早めるためのアイデアとして,試験等に関する事務において,書類を提出させることを止め,オンライン化することも考えられるのではないか。
 ○  短答式試験と論文式試験のいずれかについて一定の成績に達しなかった者は最終的に不合格とするというが,「一定の成績」とは,どのようにして決めるのか。
 ■  新委員会,あるいは,考査委員の合議で決めることになると思われる。
 ○  短答式試験と論文式試験とでは,その機能や判定すべき能力が異なるので,両試験のそれぞれについて一定水準を要求することは合理的であると考える。また,事務局の案は,可能な限り段階的選抜をせずに,論文式試験の答案を採点しようとするものであり,(上記の)(ア)の水準と(イ)の水準に多少の上下があっても,基本的な考え方は一貫しているのではないか。
 ○  (ア)の一定水準を,事前に決めておくのであれば合理的であると思うが,受験者数によって決める場合には,(イ)の場合と変わらないのではないか。
 ○  毎年の出題の難易度によってその水準は上下することがあり得るので,6割,7割というように事前に決められるものではない。また,短答式試験と論文式試験の成績を組み合わせて評価し,両者の比重を決めることができる余地を残しておくのがよいのではないか。
 ○  現在の短答式試験は,パズル的な問題で落とすための試験になっているのが問題であるが,必要な知識,能力を問う短答式試験にするのであれば,一定水準以下の者を不合格とすることは合理的であろう。
 □  事務局の案は,短答式試験と論文式試験のいずれかが一定水準以下の者は不合格とすることを前提としつつ,なるべく多くの受験者の論文式試験の答案を採点しようとするものであるが,合理的な期間内に採点を終える必要がある点も考慮するものである。司法修習の開始時期ができるだけ早いことが望ましいという点では異論はなく,本日の議論を踏まえ,関係機関等が努力してもなお論文式試験の採点に支障が出る場合に備えて,採点態勢の整備や採点期間を考慮してあらかじめ定める一定数を受験者数が超えた場合には,短答式試験の合格者について論文式試験の成績に基づいて最終的な合否を判定することもやむを得ないという方向で検討を進めることとしたい。
 ○  (イ)については慎重に検討すべきである。短答式試験で知識を問い,一定水準以下の者を不合格とすることは合理的といえるが,受験者数によって方法を変えることは,現在の司法試験と同じ問題を残すこととなりかねない。
 □  その意見も踏まえて,更に検討を進めることとする。
 ■  予備試験についても,法律で定めておくことが必要と考えられる事項がある。これまでの議論を踏まえ,予備試験は,法科大学院修了者と同等の学識・能力・(法律に関する)実務に必要な基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とし,短答式試験,論文式試験及び口述試験により行うこととし,試験科目については,短答式試験では,基本六法,行政法及び一般教養科目,論文式試験では,基本六法,行政法,一般教養科目及び法律実務基礎関連科目,口述試験では,公法系科目,民事系科目,刑事系科目及び法律実務基礎関連科目とする方向で検討している。なお,最終的な規定振りについては,法制面で更に検討する必要がある。
 ○  法律実務基礎関連科目とは,具体的にはどのようなものを考えているのか。また,基本六法のほか,行政法を試験科目とする趣旨は何か。
 ■  予備試験は平成23年ころから実施される予定であり,法律実務基礎関連科目の内容は,その時点で法科大学院で行われている法律実務基礎科目であって,試験になじむものとすることが考えられるが,例えば,具体的な法律の知識を離れた,リーガル・ライティングのようなものが考えられる。また,予備試験の口述試験では,法的推論能力や口頭表現能力を試すことが考えられる。行政法については,公法系科目として,行政法が組み込まれていることから,予備試験でも試験科目とすることを検討しているものである。
 ○  事務局の説明では,予備試験を設ける趣旨が現れていない。予備試験の目的等に,司法制度改革審議会意見の趣旨を盛り込む必要があるのではないか。
 ■  予備試験の目的を規定した場合,それが試験の内容や合否判定に関係するのかという法制上の問題がある。試験内容や合否判定に関係しないのであれば,敢えて盛り込む必要はないということにもなる。
 ○  法科大学院に進学できない者や社会的経験を有する者に法曹資格取得の途を確保することが予備試験の趣旨であるなら,例えば,各自の社会的経験に基づくレポートの作成を試験に加え,社会的経験のない者を排除することが考えられるのではないか。
 ○  考えられる案ではあるが,予備試験は国家試験であることから,客観的な評価が可能かという問題があるのではないか。
 ■  法律実務基礎関連科目の中で,社会的経験に基づく能力・素養を問うことは可能であると思われるが,法科大学院の修了者と同等の能力等を判定するのが予備試験の目的であるとすれば,それ以上の能力を問うことには問題があろう。
 ○  例えば,「社会的経験等を通じて法科大学院修了者と同等の能力を備えているかどうかを判定する」とすればよいのではないか。
 ○  社会的経験等が試験内容や合否判定に影響しないのであれば,敢えて加える意味があるのかという問題があり,他方,これに意味を持たせるとすれば,客観的に判定することができるのかという問題がある。
 ○  そのような能力は,口述試験の法律実務基礎関連科目で判定するほかないのではないか。
 ○  口述試験で,例えば,交渉能力や事情聴取能力等を問うことが考えられる。これらの能力は,社会的経験の有無によって差異が生じるものである。
 ○  法科大学院のロイヤリングという科目では,面接・交渉の技術を教育することになる。リーガル・ライティングだけだと,受験勉強で対応できることになる点が問題ではないか。事務局の説明するような形で制度設計すると,実質的には,予備試験が現行司法試験の残存となってしまうのではないか。
 ○  書式の教育ではなく,法律家らしい論理的で説得的な文章の作成を教育する,質の高いリーガル・ライティングは,受験勉強では対応できないのではないか。
 ○  専門職責任(法曹倫理)は法科大学院では必修科目とされるのだから,法律実務基礎関連科目の中に入れるべきではないか。
 □  専門職責任などと具体的に明示するのではなく,法科大学院で教育される実務基礎科目について,社会的経験に基づいてこれと同等の能力を有しているかを判定することになるのではないか。
 ○  予備試験が行われる時期には,法科大学院で実務基礎科目が9単位行われ,専門職責任についても教育内容や教材が確立していると見込まれるので,試験科目に入れるべきではないか。
 ○  専門職責任は,新司法試験の本試験の試験科目にするかどうかという議論をしてきた。専門職責任は社会的経験と必ずしも結び付くものではなく,これを予備試験で問う場合には,受験者は予備校で勉強することになるのではないか。アメリカの専門職責任の試験でも,倫理規定の覚え込みの問題が指摘されている。
 ○  本試験で専門職責任を試験科目としないのなら,予備試験で問うべきではないか。
 □  予備試験の法律実務基礎関連科目は,法律実務に関する基礎的素養をトータルで判定するものであり,必ず専門職責任を問うとか,必ずリーガル・ライティングを問うというものではないのではないか。
 ○  事務局の説明では,法科大学院と予備試験が並列であるとの印象を受けるので,予備試験の目的や,社会的経験に基づく能力を問うことを明示することは考えられないか。
 ■  法制的な問題も含めて,更に検討したい。
 ○  社会的経験については,一般教養科目の中でも問うことができるのではないか。
 □  予備試験については,法律で規定すべき事項は,基本的には事務局から説明があった程度ではないかと思われるが,本日の議論を踏まえ,更に立案作業を進めていただくこととする。


第9回検討会(平成14年6月28日)
 ○  新司法試験の実施時期を5月ころとするとあるが,司法修習開始までの期間を短縮するため,4月ころに実施することはできないのか。
 ■  司法試験の受験資格に関して法科大学院の修了の事実を確認することや,法科大学院の最終試験から一定期間を置くことが必要となり,5月ころに実施するという案とした。
 ○  論文式試験の採点期間は1か月程度集中して確保すれば足りるとの意見もあり,そうであれば,合格発表を8月初めころに繰り上げることもできるのではないか。
 ■  そのためには,考査委員となる大学関係者や弁護士が全体として協力することが必要になる。
 □  その点については,大学関係者にも努力を求めたい。
 ○  授業と併行して採点をすることは難しいが,検討する必要がある。もっとも,新司法試験の論文式試験の採点は,現在より時間がかかることも考えられる。
 □  資料3については,「毎年8月末ないし9月初めころまでに最終合格者を発表することを目指すこととする。」に,関係機関の協力を得て合格発表の時期を更に繰り上げるための努力をする旨を書き加えることとしたい。
 ○  「3 新司法試験の試験方法」の(注)の3つ目については,2か所の括弧をいずれも外すべきである。
 □  その2か所の括弧を削除することとする。本日は,このような形で整理することとする。


第10回検討会(平成14年7月19日)
意見の整理:省略)


第11回検討会(平成14年8月28日)
 ○  資料2の2(6)は,現行司法試験法第6条第5項と同様の表現であり,新司法試験は現行司法試験と変わらないという印象を与えるのではないか。司法制度改革審議会意見で提言されている新司法試験のイメージが出るように工夫すべきではないか。
 ■  「知識を有するかどうかの判定に偏することなく」という部分に意味があるという考えもある。
 ○  移行期間中の現行司法試験については,法文上はどのように規定することになるのか。
 ■  移行期間中の現行司法試験も新司法試験も,その合格が司法修習生の採用の前提となる「司法試験」である。移行期間終了後は新司法試験に完全に移行することから,移行期間中の現行司法試験は,附則で規定する方向で検討している。
 ○  現行司法試験法においては,司法試験で判定する能力について第5条第1項で「裁判官,検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力」と規定した上で,第6条第5項で「知識を有するかどうかの判定に偏することなく」と規定しているが,資料2の骨子案では,短答式試験及び論文式試験で判定する能力をそれぞれ具体的に記載しているので,現行法第6条第5項のような規定はこれと必ずしも整合せず,必要ないのではないか。
 ○  資料2の骨子案は,司法試験の判定の対象となる能力と,判定の方法ないし留意事項とを書き分けたものであり,2(6)のような規定を設ける意味があるという考え方も成り立つのではないか。
 ■  この問題については,更に検討し,次回の検討会で御報告したい。
 ○  受験回数の制限について,受験者がいずれの5年間においても3回の範囲内で受験できる制度設計とするという考え方は,単純かつ公平で,最も合理的である。
 ○  法科大学院の在学生が現行司法試験を受けた場合には,修了前2年間に受験したものを受験回数制限の対象に算入するということだが,在学期間が2年より長くなった場合はどうなるのか。
 ■  現行司法試験の受験者が法科大学院に在学中であるかどうかを審査することは実際上は極めて困難であり,再受験の場合に2年間の不受験期間を置くこととの均衡も考慮して,一律に修了前2年間の受験を算入することが適当であると考えたものである。
 □  法科大学院の在学中に現行司法試験を2回受けて不合格となった者が,2年間留年した場合には,結局,受験回数制限に算入されないことになるのか。
 ○  そのような者を安易に留年させてよいのかという問題があるのではないか。
 ○  法科大学院修了前2年間の現行司法試験受験を受験回数制限に算入するという考え方は合理的であると思う。
 ○  予備試験の実施状況等を踏まえて,その在り方を見直す旨を規定すべきではないか。
 ■  予備試験を見直すに当たっては,法曹養成制度全体の観点から見直すことが必要となる。司法試験法のみを見直すのか,法曹養成制度全体を見直すのかという問題もあり,更に検討したい。
 ○  予備試験は,社会での経験を有する者が合格するような試験内容とすべきであるが,資料2の骨子案で,法律に関する実務の基礎的素養につき,「法律に関する実務の経験により修得されるものを含む」としている点,口述試験の試験科目を法律実務基礎科目のみとしている点は,その趣旨が良く表れていると思う。
 ○  司法試験委員会は,大臣の諮問を受けない限り,意見を述べることができないということになるのか。
 ■  法制面の問題を更に検討する必要があるが,司法試験委員会は司法試験の実施主体であり,実際には,その実施に関する重要事項については,大臣に適宜意見を述べることができるものと考えられる。
 ○  司法試験委員会の委員数については,どのように検討しているのか。
 ■  法曹三者が過半数を占めるのは妥当でないという考えもある。委員の数については,関係機関とも調整中である。
 □  資料2の骨子案は,本検討会におけるこれまでの検討を踏まえたものとなっていると考える。引き続き事務局において検討し,次回の検討会で報告していただきたい。


第12回検討会(平成14年9月18日)
(事務局より司法試験法改正の立案作業の状況について説明:省略)


第13回検討会(平成14年9月30日)
 ( いわゆる移行期間中における現行司法試験合格者の司法修習期間について,日本弁護士連合会,法務省及び最高裁判所から意見を聴取:省略)
 ○  前回の検討会で,現行司法修習の実務修習と新司法修習の実務修習とを併行して実施することになる実務庁会の負担の問題を指摘したが,実施方法の工夫等によりその問題を解決できるのであれば,移行期間中の現行司法修習の期間を1年4か月間とすることに異存はない。
 ○  司法修習を実際に担当する法曹三者が移行期間中の現行司法修習の期間を1年4か月間とするのが妥当であるという意見であれば,それを尊重すべきであるが,その場合には,集合修習の重複を避けようとすれば,新司法修習を11月より前に開始することが難しくなるのではないか。
 ○  法科大学院は,実務基礎科目の教育について,早期に充実したものとなるよう努力すべきであり,弁護士会としても協力していくべきである。
 □  移行期間中の現行司法修習の期間については,1年4か月間とすることを基本として,事務局において立案作業を進めていただき,その具体的な実施の在り方については,関係機関において引き続き検討していただきたい。その他,司法試験法及び裁判所法の一部改正については,配布資料2の方向で,事務局において最終的な立案作業を進めていただきたい。
 ■  移行期間中の現行司法修習の期間に関する規定振りについては,法制的・技術的な問題もあり,更に検討したい。