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新司法試験調査会在り方検討グループ(第3回)議事録

(司法試験管理委員会庶務担当)
1  日時
平成15年5月7日(木)10:00~12:07

2  場所
法務省第1会議室

3  出席者
(委員)
磯村保,小津博司,柏木昇,釜田泰介,鈴木健太,中川英彦,宮川光治
(敬称略)

(説明者)
片岡弘内閣司法制度改革推進本部事務局参事官

(同委員会庶務担当(法務省大臣官房人事課))
池上政幸人事課長,横田希代子人事課付,古宮義雄試験管理官

4  議題等
(1)  司法制度改革推進本部事務局からヒアリング
(2)  庶務担当からの報告
(3)  協議
(4)  今後の予定

5  配布資料
資料1  法曹養成検討会における検討の経過(新司法試験関係部分の議事概要の抜粋)
資料2  新司法試験調査会各科目別ワーキンググループ議事概要

6  議事等
(1)  司法制度改革推進本部事務局からのヒアリング
【釜田委員】時間ですので始めさせていただきます。
 本日の第1番目の項目は司法試験法の改正経緯等につきまして,司法制度改革推進本部の方から御説明をいただくということになっており,片岡内閣参事官においでいただきました。法律改正の経緯等につきまして最初に御説明いただきまして,後ほど質疑応答の時間をもたせていただきます。それではよろしくお願いします。

【片岡参事官】片岡でございます。本日はよろしくお願いいたします。
 まず,御説明に先立ちまして御報告と御礼を申し上げます。昨年の臨時国会におきまして,この法曹養成,司法試験の関係で二つの法律を司法制度改革推進本部におきまして立案し,提出して成立していただきました。いわゆる連携法と呼んでおります「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律」,そして「司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律」でございます。今国会におきましても「法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律」が4月25日に成立いたしました。関係者の皆様が早期の成立をと御要望されておりましたが,4月中に成立することができましたので,御報告と,改めまして御礼申し上げます。

 それでは,司法試験法の改正経緯等に関する説明に入らせていただきます。本日用意した資料は,司法制度改革推進本部で開催しております法曹養成検討会の新司法試験に関係する部分の議事概要を抜粋したものです。ページ数が多くなっておりますので,適宜関係する部分を指摘しながら御説明します。
 まず,第1回の法曹養成検討会が,昨年の1月11日に開催されました。その際に論点整理といいますか,このような事項について御検討をお願いしたいということで事務局の方から資料を用意したものの概要が,ここに記載したものです。これは,主として司法試験法の改正に当たり,どうしても検討して方向性を決めていただかなければならないという事項にかなり絞って,その事項を記載したものです。
 第1に,新司法試験については,1番目は試験科目をどうするか,2番目は試験方法をどうするか,短答式・論文式・口述のいずれの方法によるかなど,3番目としては対象者,受験資格として法科大学院との関係をどうするかなどです。さらに,4番目は司法制度改革審議会意見書にもあったとおり受験回数の制限を設けるか,5番目は実施時期をどうするか,特に法科大学院在学中に実施するのか,それとも修了後に司法試験を実施するのかなどです。第2は法科大学院を経由しない者についての予備的な試験をどうするか,そして,第3はその他として,いわゆる移行期間中における現行司法試験の併行実施に関する問題,委員会を改組する問題,あるいは合格枠制の廃止についてであり,最後のこれは方向性としては司法制度改革審議会の意見書において御指摘があったものです。そのような論点を第1回でお示ししまして御検討をお願いしました。そして,第3回検討会で,まず法務省から現行試験の現状について説明を受けた上で,質疑応答あるいは意見をいただいたという流れです。以下順番に説明しますと時間がかかりますので,もう一度第1回の論点整理に戻りますが,これに沿ってどういう流れであったかということを,その後の議論の該当部分も御指摘しながら説明したいと思います。
 まず,新司法試験について,基本的にはどういうものかというものです。改めて申し上げるまでもないことだとは思いますが,従来の司法試験という「点」のみによる選抜から,法科大学院・司法試験・司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を新たに整備する。そして,その中核的な教育機関として法科大学院を設けるという司法制度改革審議会意見を踏まえて,基本的な制度設計を行うというものです。そして,司法試験との関係ですが,新司法試験は法科大学院での教育内容を踏まえた新たなものに切り替えるべきであるとして,司法制度改革審議会意見において指摘されているところです。そうしますと,試験科目・試験方法・受験資格等にも絡んでくるわけですが,およそ法科大学院での教育内容がどういうものになるのか,どういうものになるものとして構想されているのかということが,試験科目等を決める上でかなり重要な要素になってきたわけです。その関係では,司法制度改革審議会時代には,小島先生が座長を務められた法科大学院(仮称)構想に関する検討会議が設けられまして,そこで平成12年9月にまとめられた内容をかいつまんで申しますと,基本法に関して「基礎科目」と「基幹科目」に分けた上で,「基礎科目」は例えば憲法・民法・刑法・訴訟法というように実体法の分野ごとに教育するとされ,そして,「基幹科目」は,基本的な法分野の学識理解の深化,法的思考能力・分析能力の向上のための科目として,必ずしも実定法ごとの教育に固執する必要はなく,例えば,民事系(民法・商法・民事訴訟法),刑事系(刑法・刑事訴訟法)といったまとまりとして設置することなどにより,実体法と手続法の複数の法領域の間の有機的な連関を重視するという観点から,体系的な理解を踏まえた理論の応用・活用,そして実務との整合性のとれた教育ができるようなカリキュラムを構築すべきであるというような指摘がされています。
 つまり,完成型としては,「基幹科目」まで終えた者にとっては実体法と手続法,あるいは複数の法領域の間での有機的な連関,体系的な理解を踏まえた実務との整合性のとれた教育を終えているということを構想されていたということになります。そして,その後,これは司法制度改革審議会意見の出た後ですが,平成14年1月に田中成明先生を中心にした「法科大学院の教育内容方法等に関する検討会」の中間まとめが出ています。この中間まとめにおいては,完成型としての教育の構想というかその姿をお示しになっており,法律基本科目として公法系・民事系・刑事系というような分け方をされ,ここでも実務上生起する問題の合理的解決を念頭に置き,体系的な理論を基調として実務との架橋を強く意識した内容でなければならず,法律基本科目内部において理論教育と実務教育の架橋を実効的に図るよう工夫されなければならないと指摘されています。実体法と手続法の融合あるいは双方に関係するような教育をして,実務との架橋を強く意識した教育を行うということが言われていたわけです。

 そのような法科大学院の教育に関する構想の検討状況を受け,司法試験法改正においても,基本法科目としては公法系科目,民事系科目,刑事系科目として置いた上で,後に選択科目を1科目置くというような検討状況になり,このような試験科目になったということです。
 そして,試験科目とも関係する論点ですが,試験方法についてどうするかということで,これはやはり司法制度改革審議会意見において,「新司法試験は,例えば,長時間をかけて,これまでの科目割りに必ずしもとらわれずに,多種多様で複合的な事実関係による設例をもとに,問題解決・紛争予防の在り方,企画立案の在り方等を論述させることなどにより,事例解析能力,法解釈・適用能力等を十分に見る試験を中心とすることが考えられる。」ということです。実は法曹養成検討会において,新司法試験については,「例えば」として同じようなものを検討するというまとめになっており,審議会意見と基本的な発想・方向性は異なるものではないという検討の結果となっています。
 そして,具体的な法律改正,立案の関係で問題となったのは,特に短答式試験と口述試験をどうするかということでした。その関係で資料をかいつまんで御説明します。まず,現行司法試験の短答式試験が,知識の覚え込み,丸暗記による弊害が出ているのではないか,あるいは不都合な点があるのではないかという問題点の御指摘,認識から始まっているわけですが,資料1の1ページの第3回検討会の最初の意見(○印)のところですが,「基礎的知識の具備を確認するためには,短答式試験を実施すべきである」という意見も出たわけです。そして,次の3ページの第4回検討会ですが,この会は各委員からあらかじめ提出された意見書に基づいて意見を聴取しています。そして,その意見についての御説明を伺った後で,ここに記載してある検討が行われたわけです。まず最初の□の印は座長でありますが,各委員の意見を踏まえ,「新司法試験について,法科大学院の教育内容を十分に踏まえた新たなものにするという点は,各委員とも異論はないと思われる。」,さらに,「試験方法については,論文式試験を中心とすべきであるという点は,各委員とも異論はないと思われる。」という発言がなされ,次の意見では「短答式試験は実施すべきではないと考えるが,もし実施する場合でも,論文式試験の受験者数を絞り込むために行うことは,短答式試験の欠点が顕著に出るので反対である。」というようなことが出され,次の意見では,論文式試験と短答式試験を併用するということも考えられるのではないかという指摘,また3ページの一番下では「どのような能力が必要とされるのか,どのような方法で判定するのかという点から考えるべきである。」とし,次ページで「知識それ自体が単独として存在することに意味があるのではなく,ネットワークとして体系的に備えておくことが必要だということである。新司法試験の短答式では,このような体系化された知識を問うべきである。」という意見が出されています。次も同じ趣旨から「血となり肉となった知識が必要である。」という意見が出され,そして,この段階での座長の取りまとめ的な発言として,「短答式試験について,各委員とも,現在と同じものとは考えていないものと思われる。」との発言があります。
 5ページの第5回検討会の一番下にあります「段階的な選抜として短答式試験を行うことには反対である。」という意見が強くありました。6ページ一番上の意見では「論文式試験について,融合問題の出題の方向性が明確に書かれていないが,融合問題も検討する旨を加えるべきではないか。」との指摘がありました。そして,7ページ第6回検討会の下から2つめの意見で「段階的選抜のために使用することの弊害は,この資料に記載されている知識の丸暗記の弊害に含まれている。」とあり,この資料とはこの検討会の意見の整理の案ですが,これに「段階的選抜に使用することの弊害を加えると,全体として,本検討会が短答式試験を段階的選抜に使用することはできないとの意思決定を行ったとも読まれ得るが,それは,本検討会の議論とは異なる。」ということで,本検討会でまったく段階的選抜をできないこととしたということではないという指摘があり,更に議論は続き,例えば,8ページの下から三つ目では,法科大学院の教育を前提に口述試験を行う必要はないのではないかという意見が出た後に,「例えば,5月ころに,短答式試験と論文式試験を一括して実施することも考えられるのではないか。」とされ,一括実施について検討が加えられました。最後に「一括実施の場合には,短答式試験による段階的選抜は行わないことになるのか,それとも,一部の受験生について論文答案を採点しないようなこともあるのか。」という意見を受け,9ページになりますが,「実際には,論文答案の採点通数を合理的な範囲とする必要があろう。」,「短答式試験を段階的選抜のために行うことには反対だが,短答式試験と論文式試験を一括して実施することは十分に考えられるのではないか。」という意見を受け,座長が「短答式試験については,実施することとした上で,論文式試験との関係につき次回以降更に検討する」ということになったものです。10ページで更に議論が続き,このページの下の方の事務局の発言(■)の下にある委員の発言で「短答式試験と論文式試験とでは,その機能や判定すべき能力が異なるので,両試験のそれぞれについて一定水準を要求することは合理的であると考える。」という指摘があります。事務局からお示しした案の考え方として,10ページの上から二つ目に一緒に実施することを前提として考え,(ア)短答式試験と論文式試験を同時期(5月)に実施し,受験者全員に両試験を受験させるということ,(イ)これらの方策を講じてもなお受験者が多数に上り,9月初めころまでに最終合格発表を行うことが不可能となる事態に備えるため,新委員会において考査委員の数や採点期間を考慮して,あらかじめ一定人数を定め,受験者数がこれを超えた場合には,短答式試験の合格者につき,論文式試験の成績に基づいて最終的な合否を判定できるものとするという考え方を叩き台としてお示ししたところ,このページの下から四つ目の委員の発言で,(ア)の一定水準を事前に決めておくのであれば合理的であると思うが,受験者の数によって決める場合には(イ)の場合と変わらないのではないかという発言,要は(イ)であらかじめ人数を決めたり,あるいは受験者の数によりラインを決めたりするのは段階的選抜と変わらないのではないか,弊害が出るのではないかという指摘がありました。そして,次の意見で「毎年の出題の難易度によってその水準は上下することがあり得るので,6割,7割というように事前に決められるものではない。また,短答式試験と論文式試験の成績を組み合わせて評価し,両者の比重を決めることができる余地を残しておくのがよいのではないか。」という,いわゆる総合評価の余地を残しておくのがよいのではないかという指摘です。さらに,「現在の短答式試験は,パズル的な問題で落とすための試験になっているのが問題であるが,必要な知識,能力を問う短答式試験にするのであれば,一定水準以下の者を不合格とすることは合理的であろう。」ということが指摘され,次で座長がおまとめになったわけです。そして,11ページの最初の意見「(イ)については慎重に検討すべきである。短答式試験で知識を問い,一定水準以下の者を不合格とすることは合理的といえるが,受験者数によって方法を変えることは,現在の司法試験と同じ問題を残すこととなりかねない。」という意見も踏まえて更に検討を進めるということで,短答式についての大きい議論はここで終わり,司法試験法改正法の姿になったということでございます。したがって,例えば,先ほどの(イ)あらかじめ…を決めるということを厳格に言いますと,「あらかじめ司法試験委員会が決める人数や割合」とか「あらかじめ司法試験委員会が決める成績」とか,あるいは「法務省令で決める成績」とかいう規定ぶりもあったわけですが,これらの意見を総合して短答式試験をどのように利用するか,少なくとも短答式試験と論文式試験を同時期に実施し,しかも短答式試験を不合格となった者については論文式試験の答案を採点しないことができるということまでは,この改正法の趣旨ですが,あらかじめ決めるかどうか,決めるとしても何を決めるかということについては司法試験委員会に委ねているということです。ただ,この議論の流れから申しますと,受験者が増えた場合には段階的選抜のようにして使う,それだけのために短答式を行うということは否定されている。つまり,積極的に短答式試験において体系的な知識であるとか,新しい論文式試験の在り方を踏まえて,短答式試験だからこそ見るべき能力があるということを積極的に考え,短答式試験について一定の水準に達しなかった者を最終的な不合格とする,その者については論文式試験の答案を採点しないことができるということがこの議論の流れであったと理解しています。
 論文式試験については,先ほどあったように,新司法試験では論文式試験を中心とすべきである,法科大学院の教育内容を十分に踏まえたものとすべきである,あるいは,融合的な問題も出せるようにすべきであるということを踏まえて,更には法科大学院の教育内容に関する検討・構想を踏まえて,公法系・民事系・刑事系あるいは選択科目と法律で規定したものです。
 そして,口述試験については実施しないということにしたものです。
 以下論点整理の第1回に戻りますが,そのほかの問題として,受験資格・受験回数等の制限の問題がありましたが,議論の状況を省略して申し上げますと出来上がりの条文の姿のような意見であったということです。
 実施時期については,先ほど指摘した中に,「短答式試験と論文式試験を同時期に実施する,5月頃に実施する」という方向で意見が出たわけですが,13ページ一番上の座長(□)の各委員の意見を聞いた上でのまとめで「毎年8月末ないし9月初めころまでに最終合格者を発表することを目指すこととする。」とあったことについて,委員からもっと早くできないかという指摘があり,法務省だけの努力では無理ですので,特に採点される大学の先生方等の御協力を得なければいけないということで,「関係機関の協力を得て合格発表の時期を更に繰り上げるための努力をする」という意見の整理をしたところです。ところが,14ページ第12回検討会のころから,いわゆる移行期間中における現行司法試験の合格者あるいは現行司法試験に合格した者が移行期間中に修習を始めた場合の修習期間を1年6月とするのか,1年程度とするのかについて関係機関等との調整の必要が生じ,第13回検討会で,現行司法試験組には1年4か月程度とするということで法律改正の方向性が出ました。そのようなことをしていろいろと組合せを考えますと,第13回検討会の二つめの意見ですが,「現行司法修習の期間を1年4か月間とするのが妥当であるという意見であれば,それを尊重すべきであるが,その場合には,集合修習の重複を避けようとすれば,新司法修習を11月より前に開始することが難しくなるのではないか。」,つまり,重なりを考えると,この移行期間中の現行司法試験組の修習が1年4か月ということを前提とすると,新司法試験組の修習が12月ころからの開始でないと組合せとして難しいこととなりまして,物理的にこの移行期間中は10月開始は無理かということで最後に整理をして,移行期間中は1年4か月という現行司法修習の期間を考えようというような流れになったものです。
 本日は時間の関係もありますので,質問等ありましたら御説明したいと思いますが,その他に予備試験,あるいは,いわゆる移行期間中の現行司法試験との併行実施等の検討もされています。
 それらの点につきましては本日の抜粋に入っております。駆け足になりましたが以上です。

【釜田委員】ありがとうございました。それでは,ただ今の御説明,資料を踏まえて,どうぞ御質問をお出しください。

【宮川委員】基礎科目と基幹科目という分け方からすると,新司法試験ではレベルとしては基幹科目レベルまでを考えていると理解してよろしいでしょうか。

【片岡参事官】ここはその後にいわゆる法律基本科目という構想になったことで,必修としての法律基本科目というレベルと理解しており,基礎科目と基幹科目の区別については,磯村委員の方がお詳しいと思いますが,当時の区別とは異なっていると理解しています。

【磯村委員】今の点は,基礎科目・基幹科目という場合には,先ほど片岡参事官から御説明があったように,基礎科目では従来の実定法分野の体系を維持して,民法なら民法だけをやるということが考えられていました。しかし,それですと最初から民法と商法は一緒にやるべきだという考え方を採ろうとするときの妨げになるというような議論があって,法律基本科目という形で一括することになりました。したがって,例えば民事系科目について,初年度に民法を分野別に行い,2年時には応用的に統合的に行うという方法もあれば,最初から両者を区別せずに一体的に行うという方法もあり得るであろうということで,法律基本科目という枠組みに変わったと思います。基本科目という言い方と基礎科目という言い方が紛らわしいのですけれど,基礎科目と基幹科目という2段階的な区別は,現在のカリキュラムの中ではなくなっているということかと思います。
 一点は確認と,もう一点は質問ですが,まず,司法試験法の条文からすると,第2条第2項で「短答式による筆記試験の合格に必要な成績を得た者」という言い方がされています。先ほどの人数制限についての考え方に関していえば,例えば一定の成績に達していない者を論文式試験については評価しないというのは十分あり得るけれども,単に採点枚数との関係だけで,必要な成績を得ているにもかかわらず,採点ができないので一定の数を切り捨てるということはしないということは,了解事項であると理解してよろしいのでしょうか。

【片岡参事官】先ほど御指摘した箇所にもあったように,ある期間内に論文式試験の採点を仕上げなければならないという配慮もありますが,ある年は受験者が少なかったから短答式試験不合格者を出さない,ある年は多くなったから不合格者を出すということではなくて,必ず不合格者は出るのであろうとされています。論文の採点の問題は別として,一定レベルに達しないということで,必ず短答式試験のみによる不合格者は出るのであろうと。一方,受験者が多くなった場合に,論文が採点できないからレベルをどうするかという発想でも必ずしもなく,少なくとも,合理的な短答式の合格者数が採点可能な数を上回るのであれば,論文の採点体制を整備する努力をいただくという思いを含んで考えられているというように理解しております。

【磯村委員】次は質問の方ですが,司法試験法からは読みとりにくいところですが,法曹養成検討会の議論を拝見すると,短答式は良い成績だけれど論文式試験自体を見ると十分な成績ではないという場合に,論文式だけを見て不合格とすることも可能であると考えられていたと思われます。司法試験法だとそこの部分が規定の文言上はあまり明確にはなっていないのですが,この規定の中でもそういう趣旨で理解することは可能であるということでよいのでしょうか。

【片岡参事官】御指摘の論文式試験のみによる不合格もあり得ると解釈上考えております。

【磯村委員】もう一点別の質問ですが,司法修習の時期との関係で,現行司法試験合格者の修習期間が1年4か月ということですと,4月から始まると8月で1年4か月が終わりますが,そのときに10月スタートというのは無理なスケジュールなのでしょうか。

【片岡参事官】10月スタートとするには新司法試験組の修習期間は1年ですから,2班制にしますと6,7,8,9月は,後期といいますか集合修習になり,そうすると現行試験組の修習と重なりますので,新司法試験組の最後の集合修習を9月から12月にするとか,とにかく4か月は重ならないようにしないといけないというような問題があります。移行期間中の5年ぐらいの話だと御理解いただければと思います。

【中川委員】磯村委員の御質問に関係し,短答式は一定レベルであったが論文式が非常に成績が悪かったという場合は不合格だという可能性があるわけですね。裏返すと短答式は非常に悪いけれども,論文式で素晴らしい成績をあげた人はチャンスが最初からないということになりますね。どちらかが悪いからだめだという考え方と理論的には同じことなのですか。

【片岡参事官】そこは短答式と論文式でどういう能力を判定するかを規定した上で,第3条第4項で「司法試験においては…適確に評価するため,知識を有するかどうかの判定に偏することなく,法律に関する理論的かつ実践的な理解力,思考力,判断力等の判定に意を用いなければならない。」と条文を置いたわけです。これを前提に,この判定のためには,短答式試験による判定がより望ましいのか論文式試験による判定がより望ましいのかということを御検討いただかないといけないのであって,例えば,ほとんどこれは論文式試験で見るべきだという話であれば,論文式試験の比重が8割とか9割とかになるとか,法曹に必要な特に基本的な知識あるいは体系化された知識を問うという点では短答式も積極的に評価すべきというのであれば,短答式の比重がかなり高くなってくることもあり,現実問題としては比重との兼合いになります。そこの御判断は司法試験委員会や考査委員の御検討に委ねたということです。

【中川委員】例えば,論文式において良い成績を取れるのは体系的な知識があるからだと,それがなければ良い答えができるわけがないという前提に立つと,短答式の合格ラインを相当低くしておかなければならないということになりますね。あまりそこを高くしておくと総合的に評価するという点を間違ってしまいますから,短答式がどうにもならないという人だけを短答式では不合格とするという感じになるのですか。

【片岡参事官】ここは私が申し上げることではないとは思いますが,例えば,新司法試験委員会において,論文式で1科目でもこれ以下の成績だったら不合格とするという運用もあり得るのかもしれない。その発想が,人数の事情もあるのかもしれませんが短答式にも似た発想ができるのかもしれないと考えております。今の短答式,つまり5万人を5000~6000人にするようなものではなくて,もっと合格率という意味では良い短答式試験であるのだろうと考えております。

【磯村委員】今の司法試験との決定的な違いは,総受験者数が基本的には法科大学院修了者数ということになりますので,極端にいっても1万人を超えることはまずないだろうと思われます。そうすると,最終合格者数からいっても,現行の短答式試験とは異なって,5倍とか6倍とかいう競争率というのは,あまり考える必要はないのではないかと思います。私自身のイメージでは,短答式についても論文式についても,少なくとも一定のレベルに到達していなければ,総合評価を受けることができないという仕組みですが,実際には短答式の方はその判断が簡単ですのでその結果が早く出る,論文式は時間のかかる採点を終えてからでないとその結果が出ませんので,そこを先にやるというのは意味がなく,結果として,短答式のチェック機能の方が先に働くということではないかと思うのですが。

【中川委員】ただ,短答式のバーを低くするのか,それを相当上げるのかという問題はあるのかなと。

【磯村委員】そうですね,そこを高く上げ過ぎてしまうと,逆にそこを通ればほとんどが論文式に合格するとなるので,それは総合評価の趣旨からいって適当ではないと思いますので,私も中川委員と同じように,最低限これだけのレベルをクリアーしていれば論文式の評価と併せて総合判定を受けられるというイメージで考えております。

【中川委員】論文式も短答式も試験範囲は同じと考えて良いのですね。

【片岡参事官】選択科目は別にしますと,論理的には法務省令で違う範囲を作ることもできます。それが良いかどうかは別としてですが。短答式はもう少し絞って基本分野つまりコアの部分にすべきではないかという意見もありました。法律上はニュートラルです。

【中川委員】3年間も修得した体系的知識を試すということになれば,論文式と短答式の試験範囲を区別する理由があまり感じられないです。ただ,中身はかなり違ってくると思いますけど,範囲としてはそこを限定する理由はないと思います。

【片岡参事官】そういう前提の委員がほとんどだったと思います。短答の範囲を絞るべきではないかという意見は,範囲がかなり広いと受験生に詰め込み,覚え込みというような心理的な要素があるのでという御配慮だったと思います。ただ,今御指摘のとおり一緒に試験するわけですから同じではないかというのが大勢であったと思います。

【磯村委員】例えば,民事訴訟法が試験範囲に含まれる場合に,広い意味で民事訴訟法をとらえると民事執行法や破産法というようなものが入ってくるのですが,それを短答式試験でも問うべきなのか,あるいは,倒産実体法の問題を論文式試験では資料を与えて問題の見方を書かせるということはあり得るけれども,基礎的な知識として法科大学院修了者がそこまでカバーしておくべきなのか,短答式については,従来の司法試験と同様に,基本六法等に限定するという議論はあり得るのではないかという気がしているのですが。

【中川委員】ちょっと気になっているのは,実務との架橋というのを盛んに言ってますよね。それを3年間の間にできるだけ修得させる。そうすると,○○法の知識というとこれは基礎的なものだと思うのですけれど,それだけであると少し頼りない感じがするのです。架橋の部分をきちんと修得しているかという判定を短答式にも持ち込まないと具合が悪いのではないかと,そこはどのようになるのですか。

【片岡参事官】実務的なというのは御指摘のとおりであると思います。ただ,範囲が先ほど御指摘のとおり民事訴訟法に関するということで倒産とかそのような分野まで,つまり論文では資料を与えて知識が無くても解けるけれども,短答をもしそのようにやらないとすれば,そこまで広げておくのは広げ過ぎではないかという御指摘,御心配があるのかもしれません。そこは考査委員にも委ねているところです。

【磯村委員】法曹養成検討会の議論の中では,論文式がむしろ中心であるということについては異論がないという言い方をされていて,それは総合評価するというときの比重にある程度反映される必要があるのか,あるいは,ここで新しく議論するときに,例えば1対1で良いのではないかというように,自由に考え直す余地があるのか,その辺はどのようなニュアンスなのでしょうか。

【片岡参事官】結論から言いますと,ニュートラルということですが,論文式を中心とすべきである,あるいは,先ほど指摘しました条文の中で「知識を有するかどうかの判定に偏することなく」と,例えば,短答で基本的知識を問うあるいは体系的知識を問うといいながら,やはり知識を問うといいますか,かなり知識の有無の判定にウエイトがあるという場合には,論文の割合を多くすることができるというようにも読めるという条文になっています。五分五分から始まって,論文の方によりウエイトをというイメージではあります。

【釜田委員】ほかにはよろしいですか。予定した時間もまいりましたので,以上でこの案件につきまして終わらせていただきます。ありがとうございました。

(片岡参事官 退席)

(2) 庶務担当からの報告
【釜田委員】引き続き議題の2へ移らせていただきます。庶務担当から報告をお願いします。

【横田人事課付】それでは,論点等の整理と科目別ワーキンググループの開催状況について御説明します。
 お手元の「短答式試験,論文式試験,総合評価等に関する論点の整理」を御覧ください。前回お示しした皆様からの御意見に基づく論点メモを更に整理したものです。この整理に当たりましては,前回会合における御討議の結果を踏まえ,受験生をはじめとする関係者の方に既に在り方検討グループにおいて論点メモについての意見の取りまとめがなされてしまったという誤解や混乱を生じさせないように配慮しております。また,論点出しという当初の目的に沿った形にするという観点から修正しました。

【釜田委員】ありがとうございました。それでは説明いただきました論点メモについて,何か御意見がありましたら頂だいしたいと思います。

【鈴木委員】2点ほどあります。1点は確認をお願いするものと,もう1点は多少手直しをお願いしたいというものです。まず確認ですが,2枚目の第3の1の「合格レベルの設定」について,これは従前からいろいろな議論がありまして,非常に重要な問題かなと思っています。論点に挙げること自体には全く異存はありません。むしろ今回の改正が質を維持しつつ,あるいは向上させつつ量的な増大を図るというところからみますと,合格レベルをどう設定するのかということが,極めて重要な問題と思っています。そういう意味で前回もお話ししましたけれども,どういう質かと言いますと,司法修習を終えた段階で少なくとも現在と同じ程度,あるいはそれ以上のレベルを確保したいということだと思います。人数をどうするかという問題もありますけれども,この合格レベルをどう設定するかという問題が,新司法試験についても,あるいは,移行期間中の現行司法試験についてもかなり重要な問題かと思いまして,論理的に論点を並べますとこの辺の位置になるのでしょうけれども,論点としての重要性を再認識させていただきたいという点です。
 もう1点は第4の1「試験の在り方全般」の所で「法科大学院における教育との連携」とありますが,司法試験法にもあるとおり,やはり,法科大学院と司法修習との有機的連携を図るところに司法試験の意味がありますので,その後の司法修習をにらんで考えるべきものだと思いますので,「法科大学院における教育及び司法修習との連携」ということに修正いただければと希望します。
【釜田委員】まず2点目の意見について,「その他」の1のところへ「及び司法修習」を加えることについて,この点はよろしいでしょうか。
(一同了承)
それでは,そういう形で修正します。
それから第1点目はどういうふうになりますでしょうか。

【鈴木委員】第1点目は並びとしてはここになるかなと思いますので,その重要性をここで再確認させていただいたという程度でございます。

【釜田委員】ほかにいかがでしょうか。

【宮川委員】試験の日程と試験時間をどうするかについては,この在り方グループの論点には含まれないのでしょうか。

【横田人事課付】その点については,第一義的には科目別ワーキンググループで検討される事柄ではないかという御意見もありましたので,この論点メモからは外していますが,大きな枠組みの中での「出題の在り方」ということで当然入ってくるのではないかと考えています。

【鈴木委員】私もその点は気になっていたのですが,「出題の在り方」の最後の項目にある「問題数等及び科目間,科目内におけるバランス」の中で,当然時間とか出てくるのかなと思いましたので,原案どおりでもよいかと理解しているのですが。

【中川委員】入れておけばいいのではないですか。

【宮川委員】何日間,どのくらいの時間を新司法試験に投入できるのかということは,短答式試験と論文式試験の在り方に非常に大きな影響があり,その部分を議論してそれを踏まえた上で考えていかないと現実的な議論にならないのではないかと思います。

【釜田委員】そうすると,具体的には2の「出題の在り方」の最後に付け加えるとすればどういうことになるのでしょうか。

【中川委員】試験日数・時間とかそのような形になるのではないでしょうか。

【横田人事課付】第1,第2の各項目中にそれぞれ3として付け加え,例えば,第1の短答式では「2 出題の在り方」の次に3という項目として「試験時間・日程の在り方」とするという形でいかがでしょうか。

【小津委員】具体的には今おっしゃったとおりだと思います。このままの表現だとすると「問題数等」の“等”の中に入っていることだろうと思いますから,それでは何かがはっきりしないから何か書き方に工夫をという点があって,それから試験の時期の話も出たと思いますが,時期は現在の案ですと先ほどの鈴木委員の御指摘がございました第4の1の「法科大学院における教育と司法修習との連携」をするために時期はいつ頃になるのかなという議論になってくるのかと。ただ,特に時間のことは,どこかにはっきりさせておいたほうがよいかと思います。

【釜田委員】第1のところに新たに3という項目を立てることになりますか。

【横田人事課付】修文した案をお示しして,お諮りしたいと思います。

【釜田委員】そのほかにいかがでしょうか。

【磯村委員】「短答式試験,論文式試験,総合評価等に関する論点の整理」というタイトルだと,この検討グループでほかにも論点があって,取りあえずこの論点についてというイメージがあるので,もしこれがこの在り方検討グループの検討すべき網羅的な論点ということであれば,タイトルを工夫した方が明確になるのではないかと思います。

【中川委員】「融合問題」という言葉が分かりますか。我々は何となく分かるけれど“融合”というのは何と何を融合するのかというようなことをもう少し丁寧に言った方が良いのかもしれませんね。

【磯村委員】各法典の枠を超えるようなというイメージですよね。

【鈴木委員】説明するにしても用語が難しいなという感じですね。

【中川委員】実務との融合とも読めるかなと思ったので。科目間とか。

【磯村委員】「領域横断的な」という言い方を我々はよくしているのですが。では,その「領域」というものをどの広さで取るかというまた同じ議論が出てくるのですが。

【鈴木委員】確かに「領域横断」とすると,公法系と民事系の融合みたいな,そこまでいってしまうようなニュアンスも出てきますね。

【小津委員】論点としてはこう書いておいて,まさに「融合」とは何かということをここで論議した方が良いのかもしれないのですが。普通の意味ではこれだけだと分かりにくいと思いますが,最近の受験生そして受験に関係している大学の先生方は相当の情報をお持ちですので,“融合問題”という言葉がその世界で使われ出したのも結構前ですので,今度の司法試験改革をフォローしている人ですと融合問題というと何となくイメージを持っているかなと思っています。逆に言いますと“融合”とは何かというのを注に書こうとすると苦労するかなと,ここで意思統一が必要となりますので。

【宮川委員】それから,前のペーパーでは,「その他」の所に“現行試験との併行実施期間における総合格者数,合格者の割合”という検討テーマと“論文式試験の選択科目の在り方”というテーマが記載されていましたが,落とされたのは議論しなくてもよいということなのですか。

【横田人事課付】それにつきましては,司法試験管理委員会が新試験調査会に委嘱した研究調査事項が「新司法試験の実施」に関する事項であり,合格者数と選択科目については研究調査事項とされておりませんので,中間報告で取りまとめていただく事項にはなっていないのですが,新司法試験に関連する事項として御議論いただくことについては問題ないと考えます。

【宮川委員】前者についてはどこで論じることになるのでしょうか。

【池上人事課長】宮川委員から御指摘の問題につきましては,司法制度改革推進本部の方でも御検討される余地がまだあるようでして,調整されている段階でございます。もとより御意見の中にもありましたとおり,こういった合格者数あるいは併行実施期間の新試験と現行試験との合格者数につきましては,司法修習等との問題もありますので,この研究調査会でそれなりの御議論があること自体は当然であろうかと考えております。ただ,それを確定的にどこで議論するのかということについては,まだ確定していない状況でございます。

【宮川委員】受験者の側からすると,できるだけ早く方針を決めてアナウンスした方が,行動がとりやすいのではないか。だから,どこかで議論を始めないといけないのではないか。皆さんのペーパーを見ると何人もの方々が論点に挙げておられる。これは大切なことかなと改めて思います。

【釜田委員】そうしましたら,「その他」のところにもう一つ一般的な言葉を掲げておいてはどうでしょう。「その他関連事項」というようなことでしょうか。具体的なものはいろいろあるのですが,それは,恐らくこの会議が進めばおいおいと出てくるのではないかと思うのですが。

【横田人事課付】抽象的に,例えば「その他関連事項」というように挙げさせていただき,御協議いただくことについては,何ら問題はないと思います。

【釜田委員】言葉については考えていただき,項目を付け加えてください。その上で,先ほどのタイトルを含め,修正したものを各委員にご覧いただきまして,最終的なものとするということにしたいと思います。
 これは具体的には,次回の会合でということになりますか。

【横田人事課付】事前にお送りしまして,最終的には次回の会合でお諮りするという形にさせていただきたいと思います。

【釜田委員】それではそういう形で進めさせていただきます。
 また,何かお気づきのことがございましたら,庶務担当あてに御指摘をいただいたら結構かと思います。

(庶務担当から配付資料2について説明)

(3) 協議
 <論文式試験について>
【釜田委員】本日の協議事項ですが,前回短答式試験の問題を中心に御議論いただきましたので,本日は論文式試験がどうあるべきかということについて,御意見を伺いたいと思います。

【宮川委員】その前に,論点の整理に挙げられている項目について,前回どういう議論が行われたかということを思い出しますと,議論がかなり深まったところもあると思いますけれど,大方ほとんど積み残されていると思うのですが,一通り論文式試験について意見交換した後で,もう一回戻ってつぶしていくということでよろしいのでしょうか。

【釜田委員】それでいかがでしょうか。と言いますのは,このスケジュール表にありますように,次回5月13日には各科目別ワーキンググループと意見交換をします。それから,次の22日には法科大学院の関係者からいろいろお伺いするわけですが,それまでに,できれば今の論文式・総合評価の問題を一度御議論いただきまして,それから科目別ワーキンググループや法科大学院関係者との意見交換等を行った後で,立ち返りましていろいろと詰めていただくというのがよろしいのではないかと思うのですが。それでよろしいでしょうか。
(一同了承)
それでは,そういうことで進めさせていただきます。

【中川委員】ワーキンググループで一番進んでいるところは何回ぐらいやっているのですか。

【横田人事課付】一番多いところで3~4回程度開催されています。

【中川委員】と言いますのは,どのワーキンググループも共通問題を抱えておられるのではないかと思うのです。それは,短答式と論文式をどういう分け方にしたらいいのか,その性格といいますか,それから総合評価といいますか短答式のレベルをどのようにしたよいのか。つまり採点の比重とかあるいは総合評価の仕方とか。これは恐らくどのワーキンググループも同じ問題を抱えて,それをイメージしながらそれぞれの出題をお考えになると思うんですね。そういう基本的な共通の問題については早く在り方検討グループとしての結論を出して,こういう考え方で進めてはどうでしょうかとやってあげないと,ちょっと困るのでは。きっと同じようなことを議論されていると思うのです。できるだけ早くガイドラインというか,ものの考え方の基本的なところを共通問題について示して差し上げることを考えたらいいんではないかと思います。

【小津委員】今の中川委員の御指摘はごもっともだと思います。違う言い方をしますと,科目別ワーキンググループのこれまでの議論の中で,ここのところは共通のことだから在り方で考えてもらわないと困るという事項がどういうようなものが出ているかということを早めに我々に教えていただいて,我々がそれを優先的に議論するということになるのかと思います。

【釜田委員】そうですね。

【中川委員】それはたくさんないとは思うのですよね。

【小津委員】なおかつ,それを議論する中で,抽象的に議論するべき事柄も大事だとは思いますけれども,優先度としては具体的にどうかということについての問題意識を先にいただくとありがたい。

【池上人事課長】13日の意見交換の際,科目別ワーキンググループからいくつかの論点が出るのではないかと思っています。

【中川委員】そこで優先的にすべきことを決めた方が良いと思うのです。

【釜田委員】そうですね。13日の会合ではここでの今までの検討状況を報告することになると思いますので,今日は論文式の問題を中心にということで意見をお願いしましたが,先ほど既に新司法試験法成立過程の御説明をいただいた時に,総合評価の問題も取り上げられていたと思いますので,そこも含めて,いろいろ御意見を出していただきましょうか。その方がよろしいと思いますので。
 先ほども意見交換の中で総合評価の比率の問題についてお話が深まっていた様に思いますが,論文式の試験問題をどうするのかということについては,だいたいの方向性というものがすでにいろいろな場で語られていることもありますので。総合評価も含めて御意見をお出しいただけますでしょうか。

【宮川委員】総合評価のことを含めての意見ではないのですが,論点の整理の中に「判定すべき能力」という項目がありますが,これについて少し議論をしないと,どういう出題をしたらいいのかというイメージが出てこないのではないかと思います。
 司法制度改革審議会意見等において判定すべきとされている「事例解析能力,論理的思考力,法解釈・適用能力等」とはどのようなものかということですが,「事例解析能力」とは,現実に生起する多様で複雑な事象を分析してそこの中から意味のある事実を取り出すという能力のことをいうのであると思われます。次に「論理的思考力,法解釈・適用能力」は,その取り出した事実を法準則などに当てはめて考え,たくさんの事実と考えられる法準則とをあっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら,視線を移動させながら事実を固め,適用すべき法準則を考え出して,そして構成をするということであろうと思います。それと,この「等」というところに何を含んでいるのかということですが,それを論述する能力・表現力,さらには問題解決・紛争予防についてのアイデアを出すとか企画立案するという,そういう解決策を示していく能力もこの「等」の中に含まれるのであろうと思います。
 このように判定すべきものをイメージすると,おのずから出題も相当複雑な事実を事例として出して考えさせるということとなるので,「○○を論ぜよ」式の問題とか,非常にコンパクトな事例で典型論点を答えさせるという問題は,これからはあり得ないのではないかと思います。

【鈴木委員】宮川委員のおっしゃったとおりだと思います。この「事例解析能力,論理的思考力,法解釈・適用能力等」については,多分この認識は一致しているのではないかと思うのです。混とんとした事実の中から法的に意味のあるものを取り出して分析し構成していく,最後は適用して論述をするという能力であるということ自体の認識は一致していると思うんですが,問題は,具体的にどういう形でそれを問うかということで,ある科目別ワーキンググループの議論を漏れ聞きますと,一件記録みたいなものを作って渡すとか,そこまではできないだろうとか,むしろそれをそういう形で実際に試験としてやっていけるかというような,かなり具体的な議論となっていると聞きますので,ここで議論するときに,ある程度科目別の議論を踏まえてまとめていくのか,それともこちらがリードしていくのかという問題があるのかなという気がします。

【宮川委員】相互フィードバックしてと言われていることなので,我々もある程度検討して,科目別の人たちの意見も聞いてまた考え直すということですかね。

【鈴木委員】それが,時間との関係でもどのくらいの時間をかけるんだということにも関連はしてくるのだろうと思います。

【小津委員】今の宮川委員の御意見に基本的に賛成なんですが,このグループでどこまで確定的にものを言ってしまって良いのかということとの関係で,例えば,ある科目で2問出題して1問はかなり長文のものにして事例解析能力を問うと,1問はかなりコンパクトな出題で,これに対してこの人は何をどんな解答を書くのだろうかということを試したい。ということになった場合,これからはコンパクトな出題はあり得ないと言ってしまいますと,あるいは限定しすぎかもしれないという気がします。

【宮川委員】民事系では民法と商法と民事訴訟法と三つありますから,民法・民訴の融合問題を1問作って,この場合に商法については,おっしゃるようにコンパクトな事例を与えて答えさせる,そういったことは考えられると思います。

【中川委員】司法試験の問題には,一貫した出題者の意図があって,事実関係をたくさん書いてこれについて論ぜよということになっているんだけれど,結局の所,問うてるところは法律の第○条がどういう解釈になるのかということと,それに対する裏付け的判例があるのかということに焦点が当たっている様な気がするんです。一方,ドイツとかアメリカ等の試験では,出題者の意図がそういうことも含んでいるんでしょうけれど,事実関係の中にある法律関係をこれが何であるかということをまず見つけなさい。それに対する解釈ではなくて,妥当な解決方法を探しなさいという意図に読めるんですね。法律的な知識はバックグラウンドとしてあるということを前提とした上で事実関係から発生する法律問題の解決をどうしたら良いのかという提案といいますか,法的な解決方法に頭を向けろというような感覚があるなと思いまして,全然似ているけれども違う。どっちのやり方が良いのかという議論は大いに大切なところでして,どちらも正しいような気がするんですけれど,あんまり両方極端になると具合が悪いなと私は思いました。後者の方は,ごくごく簡単な,例えば,ある人が会社を作って,自分の友達に子会社を作らせて,その子会社に物を作らせて親会社が売ると,その子会社は一切利益を取ってはいけないということにしていつでも赤字だと,でも親会社は隆々としている。こういうときに子会社の株主はどのような権利があるのか,そのようなものが出題になってるわけです。全然日本の出題方法と違います。違うけれどもかなり高度の法的推論なり知識を駆使しないと解けないという仕組みになってまして,それはそれなりに出題形式としては優れているなという感じがいたしました。この辺のバランスをどういう風にとっていくのかということが一つの問題かなと思ってます。場合によっては二つ並べても良いような気もしますし。

【小津委員】今のお話の後者,あるいは,事例解析能力とか問題解決の提示については,法律上は従来の司法試験法の下でも出題はできたのであろうと思いますが,これまでは大学における法学教育の実情というものを前提にして出題していましたので,なかなかそういう後者の部分を出題していこうとはなっていかなかったのではないかと思います。今後はそこが大きく変わるわけですので,後者の方も出題するのが好ましいのでないかということで,司法制度改革審議会意見書の中で「事例解析能力」とわざわざ書かれたのはそういう意味もあるのかなと思います。

【柏木委員】今まで大学の試験では,条文や判例の解釈を問う前者の形式しか出していないのですけれど,実際に実務をやっていくときには後者しかないわけです。結局,最高裁がある条文についてどう解釈したかについては,リサーチをすれば済むことです。そういうリサーチは時間をかけて調べればよい。そのような能力をいくら問うてもあまり意味がない。むしろ,大きな判断・戦略を練るというような能力の方が大切なのではないか。それから解釈を問う問題であれば,これは短答式に任せればいいのではないかという気がします。

【宮川委員】先ほどの意見の関連ですが,これまでの司法試験は大学の法学教育に影響されていた。これからはプロフェッショナルスクールを作るというわけですから,先ほど中川委員の言われた後者の方のような問題に新司法試験は傾斜していくということに基本的になるのではないかと思います。ただ,論点主義が全くだめで排除されているとまでは私は言うつもりはありません。問題の中で基本的な論点について意見を書かせるという小問というか小項目があるということはあり得るとは思います。

【磯村委員】短答式試験で問える法的な能力というのは,体系的であっても基本的知識の確認という要素が強いということは否定できない。そうすると事例解析能力が当然前提となりますが,重要と思われる事実関係を把握し,それに対してどういう法的スキームを与えることができるかというのが,論文式で問える最も典型的な能力の一つだと考えられます。経験豊かな法律家は,ある事実関係を見たときに,まず落とし所を考えるという言い方をされることがありますが,なぜそこが落とし所かという感覚を持つかというと,それは,恐らくその方々の中では,ある種,法的スキームによってこういうところに落ち着くであろうという意識的・無意識的な選別がなされているんではないかと思うんです。そうすると,最初の,これから法律家になろうという段階においては,法的スキームを文章化して表現できる能力というのは非常に重要であり,また同時に,どこが最終的に着くべきゴールかということを意識することも非常に大事で,学生時代は割と,我々大学の教師の責任かもしれませんが,結論の当否よりも途中の論理的な過程が重要なんだと強調する癖がないではありません。そこは実務家養成という点でいくと少し違って,この結論で良いのかというフィードバックが常に必要かと思うのですが,法的スキームを構成する能力を鍛えるのは,やはり将来実務法律家として事件を分析するに際してきわめて重要な能力ではないかと思います。ただ,その面を強調しすぎると,従来の論点積み上げ方式になってきて,そこを少し思い切らないと新しい出題というのはなかなか難しいかなという印象を持っています。

【宮川委員】どの答案を見ても書いてあるようなことが同じというような試験にしないようにしないといけないんでしょうね。

【磯村委員】その総論については皆さん異論はないと思うのですけれど,どういう問題を作ればそうなり得るかというのが難しいですね。

【柏木委員】もう一つの考え方は,つまり,論点式というのは割と解答が客観的に出るというか,採点がしやすい問題です。アメリカのケースブックなんかを見ますと,一番最後に問題が書いてありますけれども,ほとんどが正解のない問題で,学生の訓練に非常に良いのです。そういう正解のない問題を学生に出して議論させる。そうすると法律を使いながら法論理で組み上げる者と感情論で組み上げる者とがいて非常に面白いんですけれども,逆に採点が非常にしづらい。まさに主観的な採点しかできない。まあ,そういう解答のない問題,だけれども論点としては非常におもしろい問題を一部組み合わせることも一つのアイデアかなと考えております。

【磯村委員】この前いただいた柏木委員のメモに「法律学の研究者は出題者になるべきではない」という趣旨の御指摘がありまして,これはもっともな点があると感じておりました。要するに,まず論点があって,それを検討の対象とさせるためにどういう事例を作ればいいかという思考で作題をするとやはり良くないんだろうと思います。まず生の事実があって,そこから出発してどういうところに法律家は行き着くことができるかという,そちらの方が重要であると思いますし,法科大学院の授業の中で事例分析の重要性がいろいろなところで強調されているのも,従来の法学教育で最も欠けていたのはそうした部分であろうということだと思います。もちろん,研究者の中にもそういう出題ができる人もいるのだろうとは思いますが,御指摘の背後にある考え方としては確かにそうかなと思いました。

【小津委員】ただ今の議論で,結論が大事か途中の思考過程が大事かということについては,どちらも大事だと思います。それから結論は大事ですけれども,委員が言われたように,正解がないという出題の場合ですが,途中の思考過程について申しますと,非常に悪い解答のパターンで,なおかつ,非常に多いと言われているものは,正に論点だけ書いてあって思考過程がなくて,例えば,論点が10個あって,これについてはA説,B説,C説がある,はい次,A説,B説,C説…というようなもので,何を考えているのかということが全然つながっていない。もちろん,上手な答案は,そのつながってないことがばれないように接続語をちゃんと使って書いていますが,結局はつながっていないので,もう一つ聞かれたら,それとばらばらの所をぽんぽんと論点について知ってることだけ書いてあるということになる。これは,本当は思考過程が書いてあるわけではないということだと思いますが,その点を,どのような出題にしてどのような採点にすれば見られるのかというのは,とても難しいと思います。難しいからこそ,これまでの司法試験でも先生方が苦労しておられたと思います。

【釜田委員】難しいですね,採点というのは。今でも,今度無くなりますけど,最後の口述の時にそれがチェックできるのです。同じようなことを口述で聞いていると,おっしゃったようなことが出てきまして,怪しいなと思うんですけど,確かに文字で書かれたものを読む限りでは,なかなかそこのところの見極めが難しい場合もあるかもしれませんね。採点というのはどうなるのでしょうか。

【小津委員】次善の策ですけれども,従来よりもたくさん書くということになれば,これまでよりもぼろが出やすくなりますね。それと関係するのですが,事務的には論文式試験はどのくらいの時間をかけるのが可能だということになるのでしょうか。

【池上人事課長】御検討のための資料はまた別にお出ししたいと思いますけれども,1科目で1日を超えるというのはなかなか難しいということと,もう一つは,論文式試験については,昼食,あるいは夕食を取らせて試験を継続して行うということは難しいのではないかということが考えられます。司法研修所の行っている二回試験では昼食を挟んで,更に継続して答案作成をさせるというようなシステムを採っておられますが,これは司法試験の場合では難しいので,そうすると一科目につき最大限数時間が限界ではないかと考えております。

【中川委員】具体的に言うと公法系と民事系と刑事系と選択という四つがあって,これを2日ぐらいでこなすかどうかというようなイメージになるわけでしょう。

【池上人事課長】2日でこなすか,最大限1日ずつやるか,その辺が限界だと。

【宮川委員】1日ずつやる場合は4日間でしょう。

【中川委員】まあ2日ぐらいが妥当なんじゃないんですか。

【磯村委員】短答と併せてですから,3日でも結局2日半くらいという感じになるのではないでしょうか。

【宮川委員】ただ,午前も午後も論文式をやるということになると,それぞれ3時間ぐらいずつになってしまいますよね。できるだけ長時間をかけてという要請があるわけですよね。それに3時間で応えられるのか,4時間は必要なんじゃないですか。

【磯村委員】今ですと,1科目の時間が決まっていてその中で2問とも解答するという方式なんですが,問題ごとに時間を切ってということだと少し融通がききやすくなるのではないでしょうか。場合によっては1問に2時間かけて答えさせるということも考えられます。今の試験時間の中で非常に詳しい事実関係を提示すると,事実を見るだけで時間がかかり,書く時間が不足すると思うのですが,1科目1問について2時間,場合によっては2時間半かければかなりの資料を読ませることができるのではないかと思います。

【中川委員】今はどれくらいかかってるのですか。

【横田人事課付】1科目2問で2時間,6科目ですので12時間を2日間で行っています。

【磯村委員】昔はもっと長くやっていました。5日間だと記憶しています。2日で6科目だと体力が要りますね。

【横田人事課付】現在,短答式試験の時間は3時間半となっています。

【磯村委員】トータルの時間とも関係するのですが,例えば,民事系では他の科目と同じ配点や時間ですと,民法,民訴法,商法が入っているので少なすぎるのではないかというような意見があるようです。例えば,民事系については3問出すとすると,当然1問にどのくらいかかるかという時間計算をしなければいけないでしょうし,短答式も,仮に100問とか200問とか,かなり多数の問題を出すということになると,今の3時間半でいいのかどうか,恐らくもっと時間が必要になるのではないかと思います。日程的に可能な上限が決まっていると,考えられる試験の在り方の範囲も限られてくるのではないかと思いますが,日程としては4日が限度という前提なのでしょうか。

【横田人事課付】日程をお考えいただく時に,試験を何日間か連続してやるのか,間を空けて土日に2回以上に分けて実施するのかという問題もありますし,仮に各科目2問とした場合に,1科目を問題ごとに試験時間を分けて実施できるのかということなども,考慮していただく必要があります。このようなことは,当然,科目別ワーキンググループでも検討されているのですけれども,例えば,1科目を2問に分けて出題し,試験時間を別個に設定すると決めてしまいますと,例えば,一つの統一問題から刑訴の問題と刑法の問題と両方を出題したいという時に融通が利かなくなるので,問題ごとに同一科目を二度に分けて実施することについては消極意見もあるようです。

【宮川委員】司法研修所の二回試験は,論述式のものは5科目で5日間やるわけですね,それ以外に口述が2日間,教養試験日を除いても延べ7日間あるわけですが,そこまではいかなくてもある程度それに近いものかなと思っていたのですけど。

【磯村委員】例えば,民事系の短答式科目を午前中にやって,午後1時から6時ぐらいまで5時間やるとか,それで3日終わりますよね。それで,最後の日は選択科目をやるとか。そういう日程はあり得るのですか。

【横田人事課付】当然あり得ると思います。

【宮川委員】公法系と刑事系の短答式はある日の午前中にまとめてやってしまうということも考えられますし。最後の3日目は午前中は選択科目でということも可能ですよね。全部で3日間におさめると非常にハードですけれども。

【磯村委員】午後だとけっこうまとまった時間が取れますけれども,午前中は早くても9時(試験開始)ですよね。

【中川委員】あんまりこってりした試験をやると本来の趣旨というか,ロースクールできちっとやったことを確認しようじゃないかということが薄れてきて,また予備校が出来たりそんなことにもなりかねませんよね。

【鈴木委員】基本的な問題としては,今おっしゃったようにロースクールで基本的にはきっちり成績評価をして修了の認定を出すということになれば,司法試験は最低限のことをやれば良いということになるんですが。ただ,逆に司法試験が簡単になると,それだけをやればいいということになりかねないので,その辺が難しい問題だろうとは思います。

 <総合評価について>
【釜田委員】時間も近づいておりますので,残り時間で先ほど申し上げました総合評価の論点につきまして,既に先ほどの片岡参事官の御説明の後に幾分か意見交換があったのですが,いかがでしょうか。

【宮川委員】総合評価の在り方の議論においては合否判定の在り方や合格レベルの設定という難しい議論をしなければいけませんが,議論の順序としては,まず短答式試験の合格に必要な成績をどう判定するのかということを議論した方がよいのではないかと思います。

【釜田委員】なるほど。ここで挙がっておりますものとして「合格レベルの設定」というものがありますがいかがでしょうか。

【宮川委員】短答式試験による一次評価の在り方ということについて,まだ私の意見は固まっていないのですが,科目ごとに合格に必要な成績を決めるのか,3科目合計して必要な成績を決めるのかということを考えなければならない。

【磯村委員】趣旨から言えば,仮に公法系・民事系・刑事系と分かれたときのそれぞれの出題数の中で,一つ極端に悪いという時は不合格というのが新しい理念とは適合的な方法のようには思いますけれど。

【宮川委員】極端に悪い場合には良いのですが,例えば合格に必要な成績の水準を7割と決めた場合に,50問出して35点に達しなくて34点だと,ある科目についてですね,例えば,民事系なら民事系についてですね,しかし,刑事系と公法系についてはすばらしい成績だったという場合にどうするのか。1科目でもわずかに下回ったらその人は合格に必要な成績を得ていないということで排除されるのか,そういう政策をとることが果たして法曹界に多様な人材,個性のある人材を吸収するということと適合するのか,それとも,それは合格水準の決め方によるので,ミニマムスタンダードなのだからそこに1科目でも到達していなければ,試験である以上やむを得ないと考えるのか。

【磯村委員】私の感覚は後者ですね。多様性というのは確かに必要なんですが,法律基本科目のその部分というのは,およそ法律家たる者が備えているべき大前提があって,その中で35点という設定が適切であって,なおかつそれをクリアーできていないということになると,そこの部分については,およそ将来法律家となるにふさわしくないレベルであるという評価になるのではないかと思います。確かに,限界事例で,今のケースで35点ギリギリで通る人もいるじゃないかということもあると思うんですが,それは,短答式トータルの点数でこれだけの成績に到達しなければ論文式の評価に値しないというのと,要は同じ議論なのではないでしょうか。

【柏木委員】これは問題発言かもしれませんけれども,私は,基本的には法律家の物の考え方の基本というのは親族・相続を除いた民法が一番重要だと考えているわけです。3科目の中でも民事系が基本で重要であって,民事系の理解が徹底的に悪かったらこれはどうにも使い物にならない。ただ,公法系が徹底的に悪くても弁護士として使い物にならないかというと,これはかなり私は疑問があるんじゃないかと,例えば,民事系だけを絶対これだけ取らなければならないという考え方もあるのではないかと気がするのですが。

【小津委員】あくまでも選択肢として申し上げれば,例えば,いろいろな試験でいくつかの科目がある場合に,一つの方法としては,トータルの成績が何点以上でなければならないというのを設定した上で,科目別に少なくとも何点以上でなければいけないという二つのラインを設けるというのが割合多いパターンの一つだと思います。

【宮川委員】そういう二重基準と言いますか,ダブルスタンダードを設けるというのも一つのやり方ですよね。ただ,その場合には科目別の水準は少し低くて,総合ラインはその3倍よりも高い水準でということですね。

【小津委員】そうですね。

【鈴木委員】先ほど宮川委員のおっしゃったトータルは合格ラインに達しないけれども2科目が非常に良いというタイプは落ちてしまうわけですよね。

【宮川委員】それは当然ですよね。

【鈴木委員】むしろ,トータルでは合格ラインを超えているけれども1科目非常に悪いという人は落とそうと,そういうことでよろしいわけですよね。そうであれば,特定の科目を取り上げるというのはちょっと問題かなという気がします。その点は,例えば民事系であれば,そもそも民事系の配点や問題数の調整ということもあり得るところだと思いますので,民事系の問題数を増やした上でなおかつ民事系にだけ最低点を設けるという,そこまではやる必要はないんじゃないかなという気がします。設けるなら各科目共通ラインかどうかは別として,各科目に最低ラインを設けるというのが合理的なのかなという気がします。多分論文でも同じ問題が出てきます。

【宮川委員】ただ,それは今までの司法試験とは全く違うやり方を選択することとなりますよね。それはなぜなのか,なぜ新司法試験ではそうでなければならないのか,今までのやり方はどこがおかしいのかということを少し突き詰めて議論しないといけないですよね。そこのところで説得力のある議論が必要であると思います。

【鈴木委員】現在も論文はそうですよね。

【横田人事課付】「得点が10点に満たない科目がある場合には,それだけで不合格とする。」とされています。

【宮川委員】それは極端ですから。

【鈴木委員】短答式には無かったとは思いますが。

【磯村委員】考え方の問題だと思います。現行司法試験の短答式試験というのは,それ自体の倍率が非常に高いので,ある科目が非常に悪ければほとんど実際上も合格できないだろうということが言えると思うんですが,新しい司法試験での短答式試験で,一定の水準を超えていればよいという発想でいけばいくほど,逆にそういう必要性は高くなるのではないでしょうか。これまでの短答式試験の性格が人数で第一次段階選抜を行うという試験であったため,事実上そういう弊害があまり出て来なかったのに対して,新しい短答式試験は絶対値的な評価をするということになるわけですから,科目ごとについて最低ラインを設ける必要がより強くなるということではないでしょうか。

【宮川委員】今までの試験で総合点で見ていたのは,知識を総合的にとらえていたと考えることはできないでしょうか,憲法・民法・刑法のどこか一つ弱いところがあったとしても,総合的に見れば法律家としての基礎的な知識を備えているとみられる者はまずは短答式を合格させようという考えなのではないか。その考えは新司法試験の下では維持できないのですかね。

【中川委員】私は皆さんと別かもしれないのだけど,ちょっと時代の流れに逆行しているような気がするのですよ。非常に良く分かるのですよ,法律家たる者はフル規格でないといけないということは。これは法曹制度委員会においてもしょっちゅう出てくる議論なんですね。つまり,ミニマムスタンダードをみんな満たしていると,金太郎飴をいっぱい作れということですよね,悪い言葉で言うと。個性を抹殺し,まあそれはちょっと言葉がきついですけど。アメリカのロースクールの話を聞いてますと,3回生ぐらいで自分の進路をみんな定めているというんですね,例えば,自分はタックスローヤーになりたい,あるいは不動産専門のローヤーになりたいとか,金融関係に行きたいとか。そういうことを意識的に勉強して,あそこはエクスターンシップもあればいろんなものがありますから,弁護士事務所に入ったときにも自分の志向するところに行って,専門家を目指している。まあ,もちろん全部が全部そうではないでしょうけど,そういうふうになって,いわゆる専門家を生んでいくような形になっているわけですよね。そういう人は,当然成績の上でもばらつくのは当たり前の話でして,そのばらつくことを是としているわけですよね。ところが,ここの議論は否としているわけですよ。それは時代の流れからどうでしょうか。この日本の閉塞感なりがどこから来ているかというと,やはり,教育も含めてそういう個の尊重ということに非常に消極的であった。試験の制度もそうですよね。一律みんな一緒だと。そういう人間像,プロトタイプに合った法律家を作るのが良いことだとされてましたけれど,それが時代が変わって,そういう人たちは少なくて良いんだということになってきているわけですから,そこのところはよく見た方がいいんじゃないかという感じがします。まあ,あまり極端はいけないけれど,得意技を持っている人間を尊重しようじゃないかという発想ですね。これはやっぱり大いに必要なんじゃないかと私は思います。あまり科目間のばらつきは気になりませんし,論文式でもう一回チェックがかかるわけですから,そんなに気にすることはないんじゃないかなと思います。

【釜田委員】ありがとうございました。

 時間が参りましたので,この続きは次回の会合につなぎたいと思いますので,よろしくお願いします。それでは,庶務担当から今後の予定についてお願いします。

5月13日に科目別ワーキンググループとの意見交換の場が予定されていることについて説明。協議の結果,意見交換の場では,釜田委員から在り方検討グループの検討内容の紹介を行うことで了承された。)

【横田人事課付】5月22日の第4回会合ですが,法科大学院関係者に対するヒアリングを予定しており,京都大学,新潟大学,上智大学,早稲田大学からヒアリングを行うこととされております。