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第5 論文式試験の在り方

1  出題の在り方

○  公法系科目,民事系科目及び刑事系科目の出題に当たっては,事例解析能力,論理的思考力,法解釈・適用能力等を十分に見ることを基本とし,理論的かつ実践的な能力の判定に意を用いる。その方法としては,比較的長文の具体的な事例を出題し,現在の司法試験より長い時間をかけて,法的な分析,構成及び論述の能力を試すことを中心とする。
○  同一科目内で複数の法分野にまたがる問題については,必ず出題するとはしないものの,それぞれの科目の特性に応じて,適切な問題を考案するよう努めるものとする。
○  選択科目の出題方針等については,公平性の観点から,何らかの共通する基準を設定することが必要である。

  •  論文式試験においては,「裁判官,検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な学識並びに法的な分析,構成及び論述の能力を有するかどうか」の判定を目的とし,「知識を有するかどうかの判定に偏することなく,法律に関する理論的かつ実践的な理解力,思考力,判断力等の判定に意を用いなければならない。」(改正司法試験法第3条第2項,第4項)とされていることに照らし,事例解析能力,論理的思考力,法解釈・適用能力等を十分に見ることを基本とし,理論的かつ実践的な能力の判定に意を用いるべきである。

  • 公法系科目,民事系科目及び刑事系科目においては,多種多様で複合的な事実関係に基づく,比較的長文の事例を出題し,十分な時間をかけて,法的に意味のある事柄を取り出させ,その事実関係にふさわしい解決策等を示させたりすることなどにより,法的な分析,構成及び論述を行わせることを中心とする。

  • 同一科目内の複数の法分野にまたがる問題については,上記のような論文式試験の出題に適した出題形式の一つであると考えられるが,出題に適した範囲が限られることなどから,必ず出題するとはしないものの,それぞれの科目の特性に応じて,適切な問題を考案するよう努めるものとする。

  • 選択科目については,どの科目を選択した者でも公平に評価されることを担保する必要があることにかんがみ,その出題方針等について,何らかの共通する基準を設定することが必要である。


2  配点,問題数,試験時間等

○  論文式試験の配点は,例えば,公法系科目及び刑事系科目については,各問100点配点の200点満点,民事系科目については,200点配点の問1問と100点配点の問1問の計300点満点とするなど,公法系科目,民事系科目及び刑事系科目間の比率を2:3:2とする。また,選択科目については,公法系科目及び刑事系科目の配点を超えない範囲内で,全体としてバランスのとれたものとなるよう検討する。
○  論文式試験の問題数は,各科目2問とする方向で検討する。
○  論文式試験の試験時間は,公法系科目及び刑事系科目については4時間程度,民事系科目については5~6時間程度とする。また,選択科目の試験時間については,論文式試験全体として,バランスのとれたものとなるよう検討する。
○  答案の量には一定の制限を設ける(例えば,与えられた答案用紙の範囲内で解答することについて,引き続き検討する。)。

  • 配点の科目間における配分は,現行司法試験における科目間バランス,新司法試験における各科目を構成する法律分野の数や法科大学院における教育内容等を考慮して,公法系科目,民事系科目,刑事系科目間では,比率を2:3:2とする。また,選択科目については,新たな法曹養成制度の理念も踏まえつつ,公法系科目及び刑事系科目の配点を超えない範囲内で全体としてバランスのとれたものとなるよう検討する。

  • 公法系科目においては,うち1問は,主として憲法分野のテーマから出題し,可能であれば,関連する行政法分野の論点についても問うものとし,他の1問は,主として行政法分野のテーマから出題し,可能であれば,関連する憲法分野の論点についても問うものとする。

  • 民事系科目においては,例えば,うち1問は,実体法・手続法間又は民法・商法間にまたがる問題とし,他の1問は,実体法又は手続法の問題とする。2つの法律分野にまたがる大きな問題については,配点比率を他の問題の2倍とする。

  • 刑事系科目においては,うち1問は,主として刑法に関する分野のテーマから出題し,他の1問は,主として刑事訴訟法に関する分野のテーマから出題する。

  • 十分に問題を解析し,問題点を抽出した上で,それらについて自らの考えを組み立て,論理的かつ説得的に表現させることを可能とするために,答案作成に必要とされる時間に加え,事例・法令の分析及び答案構成のための時間を十分に確保するのが適当である。それらを考慮して,公法系科目及び刑事系科目の試験時間は,問題数2問を前提として4時間程度とし,民事系科目の試験時間は,配点の比率(公法系科目及び刑事系科目のおおむね1.5倍)を踏まえ,5~6時間程度とする。また,選択科目については,配点と同様に,論文式試験全体として,バランスのとれたものとなるよう検討する。

  • 論文式試験については,おのずと現行司法試験より解答の分量が増すことが想定されるが,的確な問題点の抽出とそれに対する簡にして要を得た解答の作成が期待されるところから,その量に一定の制限を求めることとし,その在り方について引き続き検討する。


3  論文式試験の成績評価の在り方

(1)  採点指針

○  論文式試験の採点に当たっては,事例解析能力,論理的思考力,法解釈・適用能力等を十分に見ることを基本としつつ,全体的な論理的構成力,文章表現力等を総合的に評価し,理論的かつ実践的な能力の判定に意を用いる。

  • 形式的に多くの論点に触れているか否かではなく,出題に含まれる問題点を的確に抽出,分析し,抽出された問題点について法の解釈・適用を論理的かつ適切に行っているかどうかを判定する。その際,全体的な論理的構成力,文章表現力等を総合的に評価し,理論的かつ実践的な能力の判定に意を用いる。


(2)  採点の公平性・調整の問題

○  考査委員間で採点結果に著しい差異が生じないように,答案の評価についての考え方を統一する方策を検討するとともに,考査委員間における採点格差を偏差値等により調整することを検討する。
○  1通の答案を複数の考査委員が採点する方式によるものとする。
○  選択科目間における難易度格差を調整する方策について検討する。

  • 受験者数が多数に上り,同じ問題に対する答案についても,1人の考査委員が全受験生の答案を採点することが困難であって,複数の考査委員が分担して採点する必要があることにかんがみ,次のような方策について検討する。
    ア  考査委員間で採点結果に著しい差異が生じないように,採点評価基準を設けたり,採点方針会議を開くなど,考査委員間で答案の評価についての考え方を統一する。
    イ  考査委員間における採点格差を偏差値等により調整する。

  • 客観性,公平性等の確保の観点から,1通の答案について複数の考査委員で採点して慎重な審査を期す必要がある。この複数の委員については,例えば研究者及び実務家を各1名含むものとすることなどにより,複合的な視点を確保すべきである。

  • 複数の選択科目間においては,出題方針等の共通基準を定めたとしても,ある程度難易度の差が生ずることは避けがたいことから,客観的かつ公平な評価を確保する観点から,難易度格差を調整する方策について検討する。