訟務局


法務省訟務局付(筆者は右端)
経歴
 平成14年に任官後,東京,大阪,秋田,長野,千葉,名古屋の各地方検察庁で勤務。
 その他,法務省訟務局で勤務。

訟務局における職務内容

「勝つべき事件は正しく勝ち,負けるべき事件は正しく負ける。」

 国が当事者となる行政訴訟,国家賠償請求訴訟等において,国の訴訟代理人を務めるのが訟務検事です。全国の裁判所に対応し,訟務局及び全国の法務局に,私のような検察官のほか,裁判官,弁護士出身の法曹が訟務検事として在籍しています。訟務検事は,訴訟での的確な主張立証のため,行政庁の担当者から事実関係や行政実務の実情等につき十分に聞き取り,膝をつき合わせて打ち合わせ,準備書面の起案や証人尋問の準備等を行って訴訟に臨みます。
 行政施策を正しく実現するには,訴訟において,裁判所にその施策等の法適合性を正確に理解してもらう必要がありますし,仮に誤った施策によって国民の権利,利益が侵害されていたのであれば,直ちに是正しなければならず,その見極めも重要です。冒頭の「勝つべき事件は正しく勝ち,負けるべき事件は正しく負ける。」というのは,昔ながらの訟務のモットーです。

行政に頼られる訟務検事

 訟務検事に求められる役割は,訴訟対応にとどまりません。訴訟となれば,解決をみるまで,準備等に多くの時間と人的資源が費やされます。そこで,事前に行政施策の法適合性を検討し,紛争を予防する役割が,訟務検事に今求められています。
 訟務局の「予防司法支援制度」(平成27年開始)は,行政施策の法適合性を事前にチェックし,国の施策によって,国民の権利・利益が侵害されることを防ぎ,国民が紛争に巻き込まれることのないよう,その権利・利益を保護することを目的とする制度です。
 「予防司法支援制度」というと聞き慣れない方も多いと思いますが,いわば行政庁向けの法律相談で,平成29年からは全国の法務局・地方法務局においても行っています。この制度は,まさに「法の支配」を実践する取組です。訟務検事は,日々,行政マン達から施策の実施に絡む法的問題について相談を受け,裁判例・学説等を調べ,知恵を絞ってアドバイスしており,「政府の顧問弁護士」としての役割を期待されています。
 私は,訟務局でこの相談業務に携わっていますが,行政庁からの相談には,聞いたこともない法律に関わる問題もあり,面食らうことも度々です。しかし,同僚の訟務検事達や,時には行政法学者の先生からも意見をいただき,皆で議論しながら適切な解決策を見出すようにしています。全く知らない分野の法的問題を検討し,妥当な解決を見出すのは,知的好奇心を大いに刺激されますし,柔軟な法的思考力が鍛えられます。また,この部署では行政の動きをビビッドに感じることができ,政策の動きを実感することもできるため視野が広がります。

検事を志す皆さんへ

 刑事事件は,どんな事件であっても,起訴,不起訴等の手続が,被疑者,被害者,彼らの親族等の人生に様々な影響を与えます。そうした事件を適正に処理するため,検事には深い洞察力とバランス感覚,そして見識が求められます。訟務局では全ての行政機関の営みを知ることができ,ここでの経験は,検事としての職務を行う上で糧になるものと感じています。幅広い分野で活躍する検事に,皆さんも是非なりませんか?