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内外情勢の回顧と展望(平成18年1月)

2005年12月23日 更新

 公安調査庁は,平成17年12月23日,平成17年の内外公安動向を回顧し,今後を展望した「内外情勢の回顧と展望」(平成18年1月版)を発表しました。その要旨は次のとおりです。

平成18年版「内外情勢の回顧と展望」要旨


《平成17年の国際情勢》
【北朝鮮・朝鮮総聯】
[国内情勢]―「安定化」要因と「不安定化」要因がせめぎ合う北朝鮮―
 北朝鮮では,「経済改革」導入(2002年7月)以降,各種の体制不安定化要因が顕在化する中,破綻状態に陥っていた食糧配給制の修復に着手したり,第4回6者協議での共同声明採択を外交的成果と強調するなどして金正日総書記の権威回復に努めるとともに,中国・韓国との経済交流活発化や援助増大による経済再建への期待などにより,体制の不安定化阻止に努めた。北朝鮮は引き続き,中国・韓国からの経済支援・投資拡大,食糧配給制の修復などの社会統制手段の回復・強化により,体制の強化を図るとみられるが,反面,中国・韓国との経済交流は更なる外部情報の流入,拝金主義や貧富の格差の拡大(「勝ち組」と「負け組」の一層の顕著化)を招く可能性があり,また,食糧配給も,その基盤は必ずしも盤石とはいえず,配給量の不均衡や再停止などの事態が生じれば,住民の不満を増幅させるおそれもある。北朝鮮では,今後,当分の間,こうした体制の「安定化」要因と「不安定化」要因のせめぎ合いが続くとみられ,その推移が注目される。
[6者協議]―共同声明後むしろ複雑化の様相―
 北朝鮮は,こうした厳しい国内情勢を乗り切り,体制の強化を目指すためにも,6者協議や対日,対中,対韓関係など外部環境の好転に力を入れた。
 このうち,核問題については,2月に「核兵器保有」を初めて公式に宣言し,核兵器の増強を示唆するなど瀬戸際戦術を展開しつつ,第4回6者協議の共同声明で核放棄を「約束」したが,軽水炉供与を核放棄履行の前提とする主張を繰り返したり,米国の「対北朝鮮金融制裁」解除に固執した。北朝鮮は,今後も共同声明をカードとして,交渉を複雑化・長期化させることで,核放棄の履行を引き延ばしつつ,中国などから最大限の援助を獲得して自国の富強化を図っていくものとみられ,さらには,インドやパキスタンのような形で核保有国としての生き残りを図ろうとすることも懸念される。また,中国は,6者協議議長国として,このような北朝鮮に核放棄を促す姿勢を取りつつも,国益上の配慮から早急な核放棄要求は行わず,むしろ同国との関係強化や6者協議枠組みの維持等に努めるとみられる。
[対日関係]―拉致には「過去清算」で対抗する北朝鮮―
 我が国に対しては,「拉致問題は解決済み」との立場を堅持し,拉致問題に対抗して「過去清算」要求キャンペーンを展開した。11月には,約1年振りに日朝政府間協議を再開したが,従前の対日姿勢を大きく転換させるには至らなかった。北朝鮮は,小泉総理の任期中に後戻りできない国交正常化への道筋を付けるべく,朝鮮総聯などを介して,政界,経済界,マスコミ関係者らへの働き掛けを強める一方で,「過去清算」キャンペーンを活発に展開しつつ,拉致問題打開のため,何らかの対応策を提示してくる可能性も否定できない。
[中朝関係]―胡錦濤国家主席訪朝後本格的な緊密化へ―
 中朝関係については,要人の往来が活発に行われ,6者協議への対応や経済関係強化について協議が行われた。とりわけ,胡錦濤国家主席の訪朝では,新情勢下での両国関係の発展に向けた諸般の協議・合意がなされ,中国が北朝鮮との関係発展を「戦略的方針」として位置付けたことを内外に強く印象付けた。また,北朝鮮が中国との関係強化に努める背景には,資源輸出による外貨獲得や核問題での対米交渉力を高める狙いがあり,引き続き,中国経済への接近を強めるとみられるが,反面,過度の中国依存を回避するべく,韓国やロシアからの投資引き入れや,対日関係改善を視野に入れた働き掛けを強めることも予想される。
[南北関係]―南北関係発展の雰囲気づくりに努める北朝鮮―
 南北関係については,更なる韓国の取り込みを図るため,「我が民族同士」のスローガンの下,官・民の交流を積極的に展開した。北朝鮮は,今後,盧武鉉大統領在任中に,南北関係をできる限り緊密化することを目指して,同政権の「過去清算」の動きなども利用しつつ,韓国国民を「親北,反米・反日」の方向に誘導することに努めるとみられる。
[朝鮮総聯]―組織力の回復・強化に努める朝鮮総聯―
 朝鮮総聯は,近年,組織の勢力や活動力が減退傾向にある中,結成50周年記念日(5月25日)を契機に,在日朝鮮人の組織への結集に取り組んだ。一方,若手活動家を対象とした思想教育に力を入れ,「先軍政治」に関する集中学習を実施し,また,北朝鮮も,前年比3倍となる多数の若手活動家を召集した上,朝鮮人民軍部隊の視察など多様な思想教育を施した。朝鮮総聯は,引き続き,忠誠心の高い若手活動家の幹部登用を進めつつ,組織勢力の拡大と思想教育に一段と力を入れるとみられる。


【中国】
[国内情勢]―課題山積の内政―
 中国では,地方の党・政府要職人事で,胡錦濤国家主席の出身母体である共産主義青年団の幹部の起用が目立ち,胡錦濤体制の基盤強化に向けた動きとして注目された。胡錦濤政権は,「調和のとれた社会」の建設を政策の中心課題とし,個人及び地域間の貧富の格差是正を目指している。しかし,経済・社会情勢では,高い成長率を維持しているものの,不動産のバブル崩壊への懸念,エネルギー供給のひっ迫,厳しい雇用情勢など,多くの不安定要素が顕在化しているほか,党・政府幹部の汚職・腐敗などを背景とする農民らによる集団抗議事件が多発しており,その前途には困難な課題が山積している。加えて,これら人民が反発する深刻な汚職・腐敗を根絶しようとすれば,地方の党・政府幹部の強い抵抗を招くというジレンマも更に抱えることとなり,胡錦濤政権はその山積する課題への対応で,極めて慎重なかじ取りを迫られるとみられる。
[国際外交]―全方位外交と同時に米国一極支配牽制―
 外交面では,様々な切迫した国内事情などを背景に,首脳が率先して全方位外交を積極展開した。なかでも,中国は,経済の持続的な成長に不可欠なエネルギー資源等の獲得を狙いとして,中東諸国で構成される「湾岸協力会議」との自由貿易協定(FTA)の締結交渉を開始したり,カザフスタンなどにある油田・ガス田を買収するなどの活動を活発に展開した。米国に対しては,“協調”を掲げつつも,中ロ共同声明で,「一国主義的行動を取ってはならない」とうたったり,ロシアと初の合同軍事演習を実施するなど,米国の「一極支配」を牽制する姿勢を強めた。中国は,東アジアにおける日米の影響力の抑制と,自己の主導権確立に努めており,今後,米国や我が国と対峙する傾向を強めるとともに,その他各国との間でも,資源獲得,経済・貿易,国連改革などの問題で,国益重視の対応姿勢をより強く打ち出していくものとみられる。
[対日関係]―“重視”と“牽制”の硬軟両様の政策展開か―
 対日関係では,4月に大規模反日デモが発生し,在中国日本大使館施設の一部などを破壊した。これに対して中国当局は,当初,投石などの破壊行動を制止しなかったが,後にデモ封じ込めへと対応姿勢を変化させた。その背景には,反日デモが反政府運動へ転化することへの懸念のほか,国際社会からの批判,北京オリンピックへの影響などへの配慮があったとみられる。我が国の国連安保理常任理事国入り問題では,これに反対する立場を表明したほか,靖国問題や台湾問題での日本の対応については,「実際の行動」を求め,第三国での首脳会談をも見送るなど,当面,政治面での関係改善には消極的な対応を行う姿勢を示した。その一方で,政治的冷え込みが経済面に及ぶことを懸念しており,今後,我が国の対中政策をめぐる政局動向を注視しつつ,自国の経済発展のための対日“重視”と,アジアにおける主導的地位の構築及び国内反日世論への配慮のための“牽制”を織り込んだ硬軟両様の政策を展開するものと予想される。
[中台関係]―平和統一攻勢を強化―
 中台関係では,中国は,対台湾武力行使の要件を列挙した「反国家分裂法」を制定したが,その狙いは,台湾における「新憲法制定」の動きを抑制することを企図したものとみられる。一方,中国は,台湾野党党首の訪中を相次いで招請したり,台湾住民の中国での出入境及び居住手続を簡素化するなど,平和統一攻勢を強化した。これに対して台湾の陳水扁政権は,台湾の「民主」と「自由」を強調しつつ,「新憲法制定」構想を前進させる構えをみせ,形勢の挽回を図った。中台関係は,陳水扁政権が制定を目指す「新憲法」の内容如何によっては,更に緊張した情勢となることも予想される。

【ロシア】
 ロシアでは,高い支持率を保ち続けるプーチン大統領の下,国内情勢は,おおむね安定した状態で推移している一方で,プーチン後継体制に向けた動きが始まりつつある。外交面では,様々な懸案事項を抱えながらも米欧との協調関係を維持する一方で,中国,インドとの間でエネルギー及び軍事技術を軸とした協力関係を拡大した。我が国に対しては,プーチン大統領の訪日日程が確定するまでに多くの時間を要し,また,国内からの対日強硬発言が相次ぎ,プーチン大統領が訪日するも,北方領土問題では実質的進展はなかった。

【イラク】
 イラクでは,1月以降,新政権発足に向けた移行プロセスが,諸々の問題を抱えながらも進展をみせ,同プロセスは最終段階に至っている。しかし一方で,移行プロセス破綻を企図した反米武装勢力による攻撃は多発し,イスラム過激派の国内への侵入も続いている。また,国内各勢力間において,対立勢力の武装組織や一般住民への攻撃事案もみられた。一方,陸上自衛隊が派遣されているサマワでは,陸自車両が爆発物で被害を被る事案(6月)や陸自宿営地付近への着弾事案などがみられたが,テロが多発するイラク中北部に比べ,比較的安定した状態が続いている。

【イラン】
 イランは,6月の大統領選挙で保守強硬派のアフマディネジャド大統領誕生後,核開発問題での強硬姿勢を強め,英仏独の制止を振り切り,ウラン濃縮の前段階であるウラン転換作業を再開した。こうした中,国際社会では,核開発問題の国連安保理付託を求める動きもみられるが,当面は,多国間協議を通じた問題解決を目指す方針で一致している。一方,イランは,国連安保理付託に強い反発を示しつつ,多国間協議を受け入れるなど,硬軟織り交ぜた策を講じ自国への制裁回避を図りながら,核開発の継続を企図している。

【イスラエル・パレスチナ】
 イスラエル・パレスチナ情勢をめぐっては,2月に両首脳の会談が実現して,双方が暴力を停止することで合意し,9月には,イスラエルがガザ地区から撤退した。しかし,イスラエルは,ヨルダン川西岸地区においては,パレスチナ人居住区の「分離策」を継続し,大規模なイスラエル人入植地のイスラエル領への併合を加速させており,パレスチナ側は強く反発している。また,2006年1月には,パレスチナ評議会議員選挙が予定されており,同選挙で「ハマス」が躍進した場合,パレスチナ主流派「ファタハ」のパレスチナ政治における主導性が揺らぐ可能性もある。

【アフガニスタン】
 アフガニスタンでは,2004年12月の組閣の際,「北部同盟」出身で暫定内閣閣僚を務めた少数民族の軍閥有力者が排除されたが,これら有力者は「力による対抗」を行わず,下院選挙及び州議会選挙(9月18日)に立候補して地位・利権を固める姿勢を示しており,議会民主制に則した政治運営が定着化しつつある。一方,「タリバン」など反政府武装勢力は,選挙の実施阻止に失敗するも,依然としてテロを続発させており,治安情勢は,なお改善の兆しを見せていない。

【中央アジア】
 旧ソ連中央アジア地域では,米軍の同地域への駐留をめぐり,上海協力機構首脳会議が「駐留期限明確化」要求を含む「共同宣言」を採択した。米国は,その後に発せられたウズベキスタンからの撤退要求を受け入れたが,米国からの経済支援に頼らざるを得ないキルギスは,米軍駐留の継続を決定するなど,その対応に差がみられた。また,CIS諸国の「民主革命」の影響が中央アジア地域にも及ぶ可能性が指摘される中,キルギスやウズベキスタンで暴動が発生したが,こうした暴動の要因として挙げられた失業・貧困などの根本的な問題の解決には至っていない。

【国際テロ】
―テロの脅威が拡散―
 国際社会は,2001年9月の米国同時多発テロ事件以降,国際的なテロ包囲網を構築し,「アルカイダ」などの国際テロ組織の根絶とテロ撲滅に努めているが,国際テロ組織によるテロは,世界各地に拡散する傾向を示している。例えば,英国・ロンドンでは,7月,「アルカイダ」指導者を賞賛する同国籍のイスラム系若者が公共交通機関を狙った大規模な同時多発テロを引き起こすなど欧州諸国の一部にも「アルカイダ」などの過激思想が浸透している実態が明らかとなるなど,国際社会は,引き続き,テロ撲滅に向けた困難かつ長い闘いの中におかれているといわなければならない。
 こうした中,イラクでは,新憲法承認など政治プロセスの進展にもかかわらず,駐留米軍や移行政府に対するイラク人武装勢力,外国人テロ組織などによる攻撃や邦人を含む外国人を巻き込むテロ事件が多発するなど,治安情勢に改善の兆しがみられなかった。さらに,エジプトやヨルダンにおいても,大型テロ事件が続発し,イラク周辺国への拡大傾向を示した。また,東南アジアでも「アルカイダ」と関連を有する「ジェマー・イスラミア」によるとみられる爆弾テロが発生し邦人が死亡するなど,テロの脅威は収まる気配をみせていない。

【各国のテロ対策】
 米・英・独・仏の先進諸国は,ロンドン同時多発テロ事件を始めとした多くの国際テロ事件発生を受けて,テロ対策関連法制の改革や治安情報機関の予算,人員の増強などに取り組んでいる。
 我が国も,度々,テロの標的として名指しされていることから,テロの未然防止の重要性にかんがみ,公安調査庁でも「テロの未然防止に関する行動計画」を着実に実施し,関係省庁の一員として関係措置の検討を継続している。
《平成17年の国内情勢》

【オウム真理教】
―麻原の絶対視を鮮明化―
 教団は,麻原への絶対的帰依を強める指導方針を打ち出して,修行強化月間を設けたほか,麻原の説法を収録した教材を相次いで発行したり,機関誌に麻原の偉大性や麻原への絶対的帰依の重要性を強調する記事を毎号掲載するなど,麻原への帰依心の扶植に努めた。また,1月には,高温の湯に浸かる「温熱修行」により幹部信徒が死亡し,麻原の教えに基づく危険な修行を継続している事実が明らかになったほか,一部幹部信徒は,「皆から受け入れられないことは,修行にとって最高の環境」,「権力が震え上がるぐらいの帰依をみせつけよう」などと反社会,反権力の姿勢を示した。
―“麻原隠し”の是非をめぐり対立―
 正大師・上祐史浩は,麻原への絶対的帰依を強調する指導方針は教団の存続を危うくするとして,平成16年末ころ,表面上麻原の影響力の払拭を装う“麻原隠し”に向けた取組を再開した。上祐は,平成17年に入り,ブログを立ち上げて自己の主張する“麻原隠し”の必要性を訴えるなどして,上祐支持派の掘り起こしに努めた。これに対し,正悟師・村岡達子ら“麻原隠し”に異議を唱える反対派は,麻原の子への「王権継承」の正統性を訴えるなど,麻原への絶対的帰依をより強調する姿勢をあらわにしており,両派の確執が激化している。
―“信徒倍増計画”を表明―
 活動面では,幹部信徒が“信徒倍増計画”を表明したり,ヨーガ指導などを装った教室を運営するなど活発な勧誘活動がみられた。また,事業関係では,無許可で複数の信徒を労働者として供給しソフト開発業務に従事させていたとして,職業安定法違反で正悟師・杉浦茂ら信徒7人が逮捕(5~6月)されるなど,組織的な違法行為が発覚した。
―公安調査庁は,教団に対する観察処分の期間の更新(第2回目)を請求―
 公安調査庁は,教団が,平成15年1月の観察処分の期間更新決定後も依然として松本・地下鉄両サリン事件の首謀者である麻原を絶対的帰依の対象とし,同人の教えに基づく殺人を勧める綱領,修行体系,位階制度を維持するほか,両サリン事件を殺人を勧める教義(タントラ・ヴァジラヤーナ)の実践として正当化するなど,その危険な本質は,観察処分決定時及び期間更新決定時と変わらない上,閉鎖的・欺まん的体質を依然として保持していることから,引き続き,教団の活動状況を継続して明らかにする必要があると判断し,11月25日,公安審査委員会に対し,観察処分の期間の更新請求(第2回目)を行った。

【イラク情勢をめぐる国内諸団体の動向】
 共産党や過激派は,年初から,陸上自衛隊のイラク復興支援群の出発時における現地抗議行動を中心に,「自衛隊派兵阻止,即時撤退」を訴える取組を各地で繰り広げ,劣化ウラン兵器廃絶運動,自衛隊派遣違憲訴訟運動への介入・連携にも力を注いだ。また,反戦市民団体などは,イラク開戦2周年(3月)や米国同時多発テロ事件4周年(9月)に合わせ,自衛隊の即時撤退に沖縄米軍基地問題を絡めて運動の枠組みを広げることに努めた。他方,右翼団体の大半は,派遣に賛同する姿勢を堅持し,各地で派遣隊員を激励する活動を展開した。
 平成18年は,年初から「第9次派遣阻止」を掲げた取組を活発化させ,自衛隊撤退世論の盛り上げに努めるものとみられる。

【共産党・過激派等】
 共産党や過激派は,日米両政府の在日米軍再編協議が進められる中,沖縄・米軍普天間基地の代替施設建設を始め,米軍基地機能の再編案を「基地機能の強化」と決め付けて反発し,地元住民らと反対運動を繰り広げた。とりわけ,再編協議の中間報告(10月)に対して,「在日米軍と自衛隊の一体化を促進するもの」と受け止め,反対運動の取組を一段と強めた。今後は,地元の自治体との連携を模索しながら,在日米軍基地撤去を求める活動を継続するものとみられる。また,共産党系の原水協は,被爆60周年に当たり,5月の核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議に合わせ,米国へ代表団を派遣して国連に核兵器廃絶署名を提出した。8月の原水禁世界大会では,過去最高の海外代表を招請して,非核保有国や海外の反核・平和団体と連携して核兵器廃絶運動を盛り上げていくことを確認した。共産党や過激派は,今後も海外の反核・平和団体への働き掛けを活発化させつつ,青年層への運動の浸透にも努めるものとみられる。
 共産党や過激派は,憲法改正の動き,歴史教科書採択,総理の靖国参拝などに強く反発し,批判活動や抗議行動を展開した。憲法改正問題で共産党は,著名人が呼び掛けた「九条の会」の組織拡大を支援したり,改憲反対の新聞広告を掲載したほか,衆院憲法調査特別委員会の設置や自民党の「新憲法草案」を批判した。「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史・公民教科書をめぐっては,共産党が教育委員会などに採択しないよう申入れを行ったほか,中核派などが同教科書を採択した杉並区教育委員会に対して抗議の「人間の鎖」行動を実施した。小泉総理の靖国神社参拝に対しては,共産党が「侵略戦争を正当化するもの」と批判したほか,中核派が総理の参拝に際し抗議行動を行った。今後,共産党や過激派は,憲法改正に向けた国民投票法制定をめぐる動きや,靖国神社参拝などを注視しつつ,反対運動を強化するものとみられる。
 過激派は,暴力革命路線を堅持しつつも,共産主義の退潮傾向の中で,多くのセクトが党派色を隠ぺいしながら労働運動や市民運動に浸透・介入を図るなどして,影響力の拡大に努めた。中核派は,労働運動重視路線の下,教員への浸透を重視し,教員に卒業・入学式に際して「日の丸・君が代強制拒否」を訴えるビラを配布したり,「新しい歴史教科書をつくる会」編纂の教科書不採択を求める学習会に参加させるなどして,取り込みを図った。革労協解放派の主流派と反主流派は,それぞれ日雇い労働者などの生活支援活動などに取り組む中で組織のすそ野拡大に努め,また,革マル派は,基幹産業労組への影響力拡大や反改憲運動を通じた市民層への浸透に努めた。民主主義的社会主義運動は,イラク反戦運動における市民層の結集を図る受け皿として,各地に「イラク市民レジスタンス連帯委員会」を立ち上げるとともに,政府の有事体制づくりに反対する運動として,「無防備地区宣言」条例の制定運動を展開する中で,市民に機関紙の購読や組織への加盟を働き掛けるなどした。
 共産党は,「自民か民主か」という「二大政党制」の構図に埋没する事態に直面する中,民主党を連立与党と同一視した批判宣伝を展開するとともに,自民党政治と対峙する存在としての印象付けに努めた。9月の総選挙では,「たしかな野党」をキャッチフレーズに,郵政民営化方針に断固反対するなどして無党派層や反自民層からの支持獲得に努め,比例で現有9議席を維持して平成12年からの国政選挙の連続後退に歯止めを掛けた。また,伸び悩んでいる党勢の伸長を目指して,大運動として党を挙げて取り組んだが,年初と比べて党員数は微増にとどまり,「しんぶん赤旗」部数は減少した。
 日本赤軍国内支援者が開催した支援集会などは低調であった。しかし,同軍リーダー重信房子は,同支援集会に送付した声明の中で,テルアビブ空港乱射事件を引き続き評価しているほか,国際手配犯も依然として逃亡しており,同軍の危険性は依然として継続している。
 JRCL主導の「ATTAC-Japan」は,過去最大規模の参加者を集めた「第5回世界社会フォーラム」(1月,ブラジル,135か国,約15万5,000人)の分科会で,世界貿易機関(WTO)第6回香港閣僚会議(12月)に対する抗議行動への結集を申し合わせたことを受け,WTO閣僚会議反対行動を平成17年の最重要課題に位置付けるとともに,「WTOの合意形成を下支えするもの」ととらえるアジア太平洋経済協力会議(APEC)閣僚・首脳会議に対する現地抗議行動(11月,韓国)に参加した。その一方,国内においても,共産同統一委員会主導のAWC日本連などとともに,各地で韓国の労働団体幹部を招いた集会などに取り組み,反WTO・APEC行動の盛り上げを図った。「ATTAC-Japan」などは,今後もアジア各国の団体との連携・交流を進め,東アジア規模における反グローバル化運動の強化を目指すものとみられる。

【右翼団体】
 右翼団体は,国民の関心が高い外交・領土問題を中心に活動に取り組んだ。
 中国に関しては,中国国内での「反日デモ」に反発し,被害の賠償要求や政府の「弱腰外交」を批判する活動を展開した中,中国銀行支店火炎瓶投てき事件(4月)を引き起こした。
 韓国に関しては,島根県議会での「竹島の日制定を求める条例」成立以降,「竹島問題への意気込みを示す」として,自ら切断した小指と血判状を日韓両政府に提出したり,同島への渡航を試みるなどの動きをみせた。
 北朝鮮に関しては,日本人拉致問題の解決に進展がみられないなどとして,経済制裁の実施を訴える街宣活動や朝鮮総聯への抗議,「万景峰92」の新潟寄港反対活動などを展開した。
 右翼団体は,近隣諸国との外交問題で,引き続き,政府,自民党に強い対応を求めて行くほか,国立追悼施設建設問題に反発を強める一方,皇室典範改正問題にも強い関心を示している。

【特異集団】
 特異集団は,社会通念とかけ離れた主義・主張を掲げ,これに基づいた特異な活動を展開した。なかには,「かつてクーデター計画を目論んでいた」などと報道された集団が,「実現の見込みはなかった」旨主張し,これを打ち消す動きをみせたほか,300万人会員の達成を目指す集団が,若年層への執拗な勧誘をめぐり,監禁容疑で逮捕される事件(7月)を引き起こす動きもみられた。こうした特異集団は,引き続き,危機感や不安感をあおって勢力拡大を図っており,その過程で不法事案を引き起こすことも懸念される。

詳細は,平成18年版「内外情勢の回顧と展望」

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