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行刑改革会議における宮澤(弘)座長あいさつ

平成15年12月22日
 最後になりましたが,私から,これまで行刑改革会議の座長を務めさせていただいて感じたことなどを交えまして,一言ごあいさつを申し上げます。

 今回の行刑改革は,矯正行政に対する国民の信頼を回復することにその大きな目的がありました。
 国民の信頼を回復するには,何よりもまず,改革に向けての過程が国民の目に触れることが大切だと思いました。
 一部の反対もありましたが,私がこの会議を全面的に公開することに踏み切ったのも,こうした思いからでありました。国民に理解され,支えられる刑務所を作るため,適切な判断だったと思っております。

 今回の会議を通じて最も感じましたのは,「刑務所の塀の高さ」でありました。刑務所が,世間の関心から取り残され,閉ざされた世界であると感じました。
 私は,今回行刑改革会議の座長となってから初めて府中刑務所などを視察しましたが,正直に申して,大変な驚きでありました。
 大勢の受刑者が同じ服を着て,隊列を組んで歩き,号令に従って一斉に行動することや,刑務官が所長に大声で報告をする姿など,いわゆる塀の外とはかなり違った秩序が形成されているように思いました。
 もちろん,それぞれに必要性があることは分かりますが,それにしても,外の世界とかけ離れているとの印象を受けました。
 また,視察では,刑務所内の仕事の大変さも同時に分かりました。著しい過剰収容である上,覚せい剤乱用の後遺症などで,暴れたり,奇行に走る受刑者が数多く,こうした受刑者に対応するため,刑務官が休暇もろくに取れず,大変な環境の下で苦労している姿が見えました。

 同時に,国民の大多数もこのような状況を知らないのではなかろうかと思いました。これまで,刑務所の中に外の人の目が入らず,また,刑務所の中の声が外の社会に伝わらない状況なのだと痛感しました。
 そこで,今回の改革は,なによりも,刑務所の内外で情報が行き来するようになることがまずは最も重要なことだと考えたのであります。

 私としては,このような問題意識をもって,皆様の議論の交通整理をしてきました。議論の公開もその一環ですし,受刑者と刑務官について,かつてない規模の総合的なアンケート調査を行い,その中で,忌憚のない意見が得られるよう,私自身の書簡を用意するなど工夫を凝らしたことも,刑務所の内外の情報の往来を容易にするために大変意義のあることだったと思います。

 そして,9か月の議論を経て,本当に良い結果が生まれたと思っています。
 いわば「刑務所の塀を低くする」ための改革として,一般人からなる視察委員会を作るということは,外部の人の目を入れる点で極めて画期的なことだと思います。また,覚せい剤依存の受刑者を集め,治療的な処遇を集中的に行うこととした点も,それらの受刑者に適切な処遇を行うことが可能となるとともに,現場の刑務官にとっての負担の軽減にもつながる,大きな改革だと考えております。

 このほか,数多くの具体的な提言をすることができました。ここにおられる委員の方々の御協力があったればこそでございます。
 今回,多数決によらず,また,両論併記になることもなく,委員の総意として提言がとりまとめられましたことは,まことに大きな意義をもつことだと思います。

 さきほど,法務大臣に提言を提出致しましたが,今後は,法務当局において,省を挙げて,この提言の趣旨を生かした改革を,不退転の決意で進めていくよう,強く望みたいと思います。早急にできることは急ぎ実行に移していくとともに,速やかに監獄法改正の検討に入るべきであり,改正への努力を一日たりとも怠ってはならなりません。

 この行刑改革会議は,本日提言を提出したことで,与えられた役割を終えたことになりますが,さきほど,法務大臣から,法務省内に行刑改革推進のための委員会を置くので,その顧問に就任してほしいとのご依頼がありました。そして,これからの改革の節目節目に,私どもにその状況を報告していただけるとのお言葉がありました。私たちも,今回の議論を通じ,行刑について一見識を得たように思いますし,これからは,こうした立場から,この改革を見守っていきたいと考えております。
 今後,私どもの提言が生かされて行刑の改革が進むことを祈念しつつ,私のごあいさつといたします。