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自粛警察と誤った正義感

 日本国内で新型コロナウイルス感染症の感染事例が確認されてから,2年近くが経過しました。
 当初は,未知の感染症に対する恐怖感を背景に,マスクをつけていない人を激しく罵倒する,他県ナンバーの自動車を傷つけるなどといった,「自粛警察」と呼ばれる過激な言動が話題になりました。その後,こういった事案は,報道されなくなったようですが,最近では,ワクチン接種をしていない人が非難されるなどの問題も発生しています。
 このような行動の原因としては,新型コロナウイルス感染症に対する過剰な防衛反応,正義感からくる義憤など,様々なことが言われています。しかし,健康上の理由等でマスクをつけることができない人やワクチンを接種することができない人など,人によって事情は様々ですから,「感染症対策をしない人」などと一律に他人にレッテル貼りをしてしまうことは,合理的ではないのではないでしょうか。そして,いかなる理由があったとしても,自らの主張を実現するために他人を傷つけることは,絶対に許されません。

 自らの主張の実現のために他人を傷つけるという点では,ヘイトスピーチも同じです。ヘイトスピーチは,「○○人は祖国へ帰れ」,「○○人は殺せ」などと,特定の民族や国籍の人々について,一律に排除・排斥することをあおり立てたり,危害を加えるとする言動をしたりするものです。こうした差別意識や嫌悪感を背景とした不当な差別的言動は,これが向けられた人々に,悲しみや恐怖,絶望感などを抱かせるのみならず,人としての尊厳をも傷つけるものであり,仮に政治的な主張の一環としてなされるものであったとしても,許されるものではありません。

 社会生活の中で,自分とは違う行動をする人,自分とは異なる考え方の人に出会うことも,少なくありません。そのような場面に遭遇すると,違和感を覚えたり,釈然としない気持ちになってしまうこともあります。ただ,そこで少しだけ立ち止まって,そのような人たちに対する自分のそうした感情が,誤解や思い込み,無自覚な差別意識・偏見などによる過剰な反応から生まれたものではないかを考えてみることが,お互いを尊重し合う社会であるために必要なことなのではないでしょうか。

 


ヘイトスピーチ,許さない。