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会社法が改正されました

「会社法の一部を改正する法律」(以下「改正法」と言います。)が平成26年6月20日に成立し,同月27日に公布されました。改正法による改正点は多岐にわたっていますが,ここでは主な改正点の概要を紹介します。

1. なぜ改正されたのでしょうか。

会社法は,平成17年に成立し,平成18年から施行されていますが,近時,経済のグローバル化が進展する中,取締役に対する監督の在り方を中心に,コーポレート・ガバナンスの強化を図るべきであるとの指摘がされるようになりました。また,親子会社に関する規律の整備の必要性も,会社法制定以前から指摘されていた課題でした。

これらの指摘等を踏まえて,コーポレート・ガバナンスの強化及び親子会社に関する規律等の整備等を図るために,会社法の改正がされました。この改正により,日本企業に対する内外の投資家からの信頼が高まることとなり,日本企業に対する投資が促進され,ひいては,日本経済の成長に大きく寄与するものと期待されています。

2. コーポレート・ガバナンスの強化のため,どのような改正がされたのですか。

(1) 社外取締役の機能の活用

取締役会の業務執行者に対する監督機能を強化するために,社外取締役をより積極的に活用すべきであるとの指摘が強くされていたことを受け,次の3つの改正がされました。

① 監査等委員会設置会社制度の創設

現行法における監査役会設置会社及び委員会設置会社(改正後の名称は,指名委員会等設置会社)に加えて,監査等委員会設置会社制度が創設されました。

この制度は,3人以上の取締役から成り,かつ,その過半数を社外取締役とする監査等委員会が監査を担うとともに,業務執行者を含む取締役の人事に関して株主総会における意見陳述権を有するというものであって,社外取締役の機能を活用しやすい機関設計を創設するものです。

監査等委員会設置会社制度の創設のイメージ図
② 社外取締役等の要件の厳格化

株式会社又は子会社の業務執行者等に加え,親会社の業務執行者等及び兄弟会社の業務執行者等や,その株式会社の業務執行者等の近親者も,その株式会社の社外取締役等となることができないこととし,社外取締役等による業務執行者に対する監督等の実効性を確保することとしています。

社外取締役等の要件の厳格化のイメージ図
③ 社外取締役を置くことが相当でない理由の説明

社外取締役を置いていない上場会社等の取締役は,定時株主総会において,社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならないこととし,社外取締役の導入を促進することとしています。

(2) 会計監査人の独立性の強化

会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定権を有する機関を,取締役又は取締役会から監査役又は監査役会に変更することとして,会計監査人の独立性を強化しています。

3. 親子会社に関する規律の整備のため,どのような改正がされたのですか。

(1) 多重代表訴訟制度の創設

完全親会社の株主を保護するため,一定の要件の下で,完全親会社の株主が,その完全子会社の取締役等の責任を追及する制度(多重代表訴訟制度)が創設されました。

多重代表訴訟制度の創設のイメージ図

(2) 組織再編の差止請求制度の拡充

合併等の組織再編における株主を保護するため,通常の組織再編についても,株主は,一定の要件の下,組織再編の差止めを請求することができることとされました。

(3) 詐害的会社分割によって害される債権者の保護規定の新設

詐害的会社分割(分割会社が,承継会社に債務の履行の請求をすることができる債権者(承継債権者)と,当該請求をすることができない債権者(残存債権者)を恣意的に選別した上で,承継会社に優良事業や資産を承継させるなどする会社分割)が行われた場合に,残存債権者の保護を直接的かつ簡明に図るために,分割会社が残存債権者を害することを知って会社分割をした場合には,残存債権者は,承継会社等に対して,承継した財産の価額を限度として,債務の履行を請求することができることとされました。

詐害的会社分割によって害される債権者の保護規定の新設のイメージ図

4. 改正法はいつ施行されるのですか。

改正法の施行期日は,公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされています。現時点では,この政令は定められていませんが,施行期日は,平成27年4月又は5月頃を目途としています。なお,改正法の附則では,所要の経過措置が設けられています。