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ミャンマーの民主化支援-刑務所改革

平成27年8月,ミャンマーの刑務所改革支援が第一歩を踏み出しました。国連アジア極東犯罪防止研修所(アジ研又はUNAFEI)が国連薬物犯罪事務所(UNODC)と協力して現地ミャンマーで刑務所の職員に研修を実施したのです。

マンダレー矯正研修所での開講式の様子

マンダレー矯正研修所での開講式

ミャンマーの現状とアジ研の支援

ミャンマーは,平成23年3月に新政府が発足し,それまでの軍事政権からの転換が図られ,民主化・法の支配の強化・国民和解・経済改革に向け取り組んでいます。さらに,御存知のように平成27年11月8日には総選挙が実施されました。

アジ研はこれまでのノウハウを利用してミャンマーの刑務所改革に協力することで,ミャンマーの民主化・法の支配の強化を支援する方法を模索してきました。例えば,ミャンマーの刑務所の調査をし,国際協力機構(JICA)主催の現地セミナー(対刑務所職員)に講師を派遣してきたのです。

UNODCと今回の研修について

UNODCは,東南アジア地域において,麻薬対策のために広範囲で大規模な支援プログラムを展開しています。その中にはミャンマーでの「国際基準に基づく刑務所の管理・運営」を目指した刑務所改革への支援も含まれています。そこで,UNODCの協力依頼によって,UNODCとアジ研が共同してミャンマーの刑務所改革支援が始まり,その具体的な支援の一つとして今回の研修が実施されました。

UNODCの専門家の講義の様子

UNODCの専門家の講義風景

日本の矯正専門家のスピーチの様子

日本の矯正専門家のスピーチ

どんな研修でしたか

1週間単位の研修を合計3回実施しました。最大都市のヤンゴンで2回,2番目に大きな都市マンダレーで1回です。参加者はミャンマーの刑務所に勤務する部長・課長クラスで,1回当たり30名,合計90名の参加を得ました。

研修の内容は次の表「研修プログラム」のとおりで,グループ・ディスカッション,ロール・プレイなどを多く取り入れた講義を行いました。

なお,講師陣は,UNODC本部(ウィーン)派遣の専門家,アジ研教官,そして日本の矯正局が派遣した矯正の専門家です。

真剣かつ積極的に講義に臨む研修参加者の姿が実に印象的でした。

グループ・ディスカッションの様子1
グループ・ディスカッションの様子2

グループ・ディスカッションの様子

表 「研修プログラム」

番号 研修項目
被収容者処遇の国際基準に関する基礎知識
拘禁施設で人権侵害を防ぐ方法
刑事施設の管理運営
被収容者の人権に配慮した処遇及び処遇能力の向上
受刑者分類処遇制度
インセイン矯正研修所(ヤンゴン)での閉講式の様子

インセイン矯正研修所(ヤンゴン)での閉講式

研修の意義と今後

ミャンマー現地での今回の研修は,国連機関(UNODC)のから依頼,つまりドナー間協調による国際協力である点に意義深いものがあります。また,ミャンマーで人権保障などを内容とする「国際基準に基づく刑務所の管理・運営」が実現されれば,刑務所のみならず国全体の人権状況の改善につながり,民主化の促進,法の支配の強化等の今後の発展につながります。

なお,平成28年2月にまた現地での研修が予定されています。

UNODCとの協力関係を維持しつつ,アジ研では,平成27年11月にミャンマー内務省行刑局幹部を日本に招いて刑務所改革支援に貢献したいと考えています。

第5次出入国管理基本計画を策定しました!

出入国管理基本計画って何?

出入国管理基本計画は,外国人の入国や在留の管理に関する施策の基本となるべき計画について法務大臣が定めるものです。平成4年に最初の基本計画が策定されてから,概ね5年ごとに新たな基本計画が策定されており,平成27年9月15日に第5次となる基本計画が策定・公表されました。

問題のある外国人の入国・在留を阻止するイメージ

問題のある外国人の入国・在留を阻止

問題のない外国人の円滑な受入れを行うイメージ

問題のない外国人の円滑な受入れ

今回の基本計画には何が書いてあるの?

出入国管理行政は,外国人の適正かつ円滑な受入れ,テロリストや犯罪者などの入国・在留の阻止を使命としており,経済・社会の変化による新たな課題に常に対応していくことが求められています。

2020年に東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催され,更に多くの外国人が日本を訪れると考えられることなどを踏まえ,日本の経済社会を活性化する外国人を円滑に受け入れていく一方で,安全・安心な社会を脅かす外国人の入国は水際で阻止する必要があり,また,真に庇護が必要な難民を迅速・確実に庇護していくことも重要です。

このような課題に対する,出入国管理行政としての取組方針を定めたのが今回の基本計画です。

参考:第5次基本計画の基本方針

  • 我が国経済社会に活力をもたらす外国人を積極的に受け入れていく
  • 少子高齢化の進展を踏まえた外国人の受入れについて,幅広い観点から政府全体で検討していく
  • 開発途上国等への国際貢献の推進を図る観点から,新たな技能実習制度を構築する
  • 受け入れた外国人との共生社会の実現に貢献していく
  • 観光立国の実現に寄与するため,訪日外国人の出入国手続を迅速かつ円滑に実施する
  • 安全・安心な社会の実現のため,厳格かつ適切な入国審査と不法滞在者等への対策を強化していく
  • 国際社会の一員として,難民の適正かつ迅速な庇護の推進を図っていく

この基本計画に書いてあることはいつ実現するの?

今回の基本計画も今後5年程度を想定して策定しています。入国管理局としては,今後,基本計画で示した方針に沿って,各種施策に取り組んでいきます。

もっと出入国管理基本計画の内容を知りたい場合は?

法務省のホームページでご覧いただけます。 (法務省ホームページへリンクします。)

ベトナム新規プロジェクトが開始しました!

ベトナムでは,2015年4月1日から5年間の予定で,新しい法制度整備支援プロジェクトが開始しました。

ベトナムに対する法制度整備支援

法務省は,ベトナム政府からの要請を受けて,1994年に初めてベトナム司法省から研修員を受け入れ,日本国内での研修(本邦研修)を実施しました。これが法務省による法制度整備支援の始まりと言われています。

その後,1996年に,国際協力機構(JICA)が実施する技術協力プロジェクトとして,法制度整備支援プロジェクトが開始されてからは,ベトナムからの研修員の受入れのほか,ベトナム国内でのセミナー開催,ベトナムに駐在する長期派遣専門家の派遣などの協力を行っています。

ベトナムにおける法制度整備支援プロジェクトは,1996年の開始からこれまでの約20年間にわたり,名称や活動を少しずつ変えながらも途切れることなく続き,民法などの国民生活の基本となる法律づくりや,裁判官,検察官,弁護士など法律に関わる人材の能力向上に取り組んできました。

その結果,ベトナムの民法,民事訴訟法,刑事訴訟法などの重要な法律が改正され,多くの研修経験者がベトナム司法省など法律に関係する機関の幹部となるなどの大きな成果を上げています。

ベトナム現地でのセミナーの様子

現地でのセミナーの様子

どうして新しいプロジェクトが始まったの?

ベトナムは,法治国家(行政が法律に従って行われる国家)の建設のため,2020年をゴールとした司法改革を行っている最中です。

そして,司法改革のゴールである2020年まで残り5年となったことから,これまでの約20年間にわたる協力の総仕上げをするとともに,2021年からは我が国とベトナムが対等なパートナーとして法律に関する協力ができるようにするため,新たなプロジェクト(「2020年を目標とする法・司法改革支援プロジェクト」)を開始することとなりました。

ベトナム ハノイの風景

ハノイの風景

どのような活動をするの?

新しいプロジェクトでは,約20年間にわたる支援の総仕上げとして,これまで行ってきた基本的な法律づくりの支援や人材の能力向上を行うだけではなく,新たに法律づくりのプロセスを改善するための支援を行うこととなりました。

これは,約20年間続いてきた法制度整備支援プロジェクトに対する評価が高かったことから,基本的な法律だけではなく,より多くの法律について支援してほしいという期待に応えて行われるものです。

そのため,新しいプロジェクトでは,法律を作るプロセスで審査を行うベトナム首相府が新たにプロジェクトに参加し,協力して活動を行うことになりました。

新しいプロジェクトでは,裁判官出身,検察官出身,弁護士出身の日本人専門家がベトナムに駐在して日常的なアドバイスを行うとともに,ベトナム国内でのセミナー・ワークショップの開催,ベトナム人研修員に対する日本国内での研修(本邦研修)などの様々な活動が予定されています。

ベトナム首相府本邦研修時の記念撮影の様子

ベトナム首相府本邦研修時の記念撮影

最近の活動は?

本年9月に,新しいプロジェクトが始まってから最初の本邦研修が法務総合研究所で行われ,ベトナム首相府から研修員10名が参加しました。

研修では,内閣法制局や法務省民事局を訪問し,日本の法律づくりのプロセスや法律づくりのルールについて講義を受けました。また,市橋克哉先生(名古屋大学大学院教授,同大学理事・副総長)をコメンテーターとして,ベトナムにおける法律づくりのプロセスの問題点について熱心な議論が行われました。研修員からは,日本の法律づくりのルールに当たるものをベトナムでも作ってはどうかなど多くのアイデアが出され,今後,法律づくりにおけるルール作りの活動を行う予定です。

新しいプロジェクトでは,今後,ベトナムが進める2020年をゴールとした司法改革に貢献する活動を行っていく予定であり,法務総合研究所もまた,新しいプロジェクトに対する支援を通じ,引き続き,ベトナムの司法改革に協力していきます。

市橋克哉先生をコメンテーターとしたベトナム首相府本邦研修における議論の様子

ベトナム首相府本邦研修における議論の様子