新不動産登記法Q&A
Q1 | 不動産登記法(以下「新法」といいます。)の主な改正点は,どのような点ですか。 |
A1 | 主な改正点は,次のとおりです。 |
ア | これまでの書面申請に加えて,オンライン申請を導入しました(注)。 |
イ | 書面申請について,出頭主義を廃止しました。 |
ウ | 登記済証に代わる本人確認手段として,登記識別情報の制度を導入しました。 |
エ | 保証書の制度を廃止し,事前通知制度を強化するとともに,資格者代理人による本人確認情報の提供制度を導入しました。 |
オ | 登記原因証明情報の提供を必要的なものとしました。 |
カ | 地図等を電磁的記録に記録することができる制度としました。 |
キ | 法文のすべてを現代語化しました。 |
(注 | )平成17年3月に,さいたま地方法務局上尾出張所が最初のオンライン庁として指定され,その後,平成18年8月末までに,140庁が指定されています。 |
Q2 | 新法の実施時期は,いつですか。 |
A2 | 新法の施行日は,平成17年3月7日です。 新法の施行後のオンライン申請については,個別に指定された登記所における登記申請手続から順次実施していくこととなります。それまでの間は,書面申請のみが可能ですので,登記完了時には,登記識別情報ではなく,登記済証を交付することになります。しかし,出頭主義の廃止,保証書の廃止,強化された事前通知,資格者代理人による本人確認情報の提供の制度及び登記原因証明情報の提供の必要化については,新法の施行と同時に,すべての登記所において実施されることになります。 |
Q3 | 書面申請とオンライン申請とを併存させるのは,どうしてですか。 |
A3 | オンライン申請を導入する趣旨は,国民の利便性を一層高めるためです。 多数の国民が利用する不動産登記制度について,現時点で,申請方法をオンライン申請に一本化し,書面申請を認めない制度とすることは,国民の利便性の観点から適切ではないと考えられるからです。 |
Q4 | 共同申請の原則は,どうなるのですか。 |
A4 | 権利に関する登記の申請は,その正確性を確保するために,共同申請が原則になります。したがって,単独申請によることができる場合を除き,登記権利者と登記義務者(注)が共同して行わなければなりません。 |
(注 | )登記権利者とは,登記によって直接利益を受ける者をいい,売買を原因とする所有権の移転の登記における買主などが該当します。登記義務者とは,登記によって直接不利益を受ける登記名義人をいい,売買を原因とする所有権の移転の登記における売主などが該当します。 |
Q5 | 共同申請をオンライン申請でする場合には,どのようにすればよいのですか。 |
A5 | 共同申請をオンライン申請でする場合には,登記権利者及び登記義務者が申請情報又は委任情報に電子署名を行い,そのうちの一人又は代理人が,申請情報及び添付情報を法務省オンライン申請システムに送信することとなります(オンライン申請の方法や利用時間等についての詳しい説明は,https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/index.htmlをご覧ください。)。 |
Q6 | 出頭主義を廃止するとは,どういうことですか。 |
A6 | 旧法の下では,権利に関する登記の申請は,当事者又はその代理人が登記所に出頭してしなければならないという出頭主義が採られていました。しかし,オンライン申請の導入に伴い,この出頭主義を廃止し,申請人等の負担軽減の観点から,書面申請についても,申請人やその代理人が登記所に出頭することなく,登記の申請をすることができることとなりました。したがって,登記申請書を郵送により送付することもできます(郵送による場合は,書留郵便により行う必要があります。)。 |
Q7 | 郵送申請の受付は,どのように行うのですか。 |
A7 | 登記申請書が郵送で送付された場合にも,その受付は,申請書類が登記所の窓口に到達した時点で行います。したがって,1回の配達で複数の申請に係る申請書類が登記所の窓口に同時に到達したときは,すべて到達時に受付をすることになります。 この場合の受付番号については,同一の不動産について権利に関する登記の申請が2つ以上された場合に限り,受付番号も必ず同一にすべきことになります。これは,同一の不動産について複数の権利に関する登記の申請の先後は,権利の順位にかかわることから,受付番号を同一にすることによって,登記手続上,同順位のものであることを明らかにしておく必要があるからです。 |
Q8 | 受領証は,どうなるのですか。 |
A8 | 書面申請をした申請人は,その登記が完了するまでの間であれば,申請書及びその添付書面の受領証の交付を請求することができます。 他方,オンラインによる申請がされたときは,申請が受け付けられたことを含め,処理状況に関する情報は,法務省オンライン申請システム上に掲示されることになっていますので,受領証は交付されません。 |
Q9 | オンライン申請におけるセキュリティは,確保されているのですか。 |
A9 | 不動産登記のオンライン申請に当たっては,法務省オンライン申請システムを利用します。インターネットと法務省オンライン申請システムとの接続部分及び法務省オンライン申請システムと登記情報システムとの接続部分には,それぞれ厳重なファイヤーウォールを設けることによって,ハッカーの侵入を防止し,登記情報のセキュリティの確保に万全を期す体制を整えています。 また,電子署名・電子認証の仕組みを利用し,成りすましや情報の改ざんを防止することとしています。 |
Q10 | どうして登記済証(権利証)は,廃止されるのですか。 |
A10 | 登記済証(権利証)とは,登記が完了した際に登記所から買主等の登記名義人に交付する書面であって,その後,その登記名義人が登記を申請する場合において,本人を確認するために登記所に提出しなければならないとされている登記手続固有の本人確認手段です。 しかし,この登記済証(権利証)は,書面のままでは,オンラインにより,登記所に提供することも,登記所から通知することもできず,オンライン申請の導入と両立し得ません。そこで,オンライン申請においても利用可能な本人確認手段である登記識別情報(Q13参照)の制度を導入することとしました。 なお,登記済証の登記が完了したことを証明する機能を代替するものとして,登記完了証が交付されます。 |
Q11 | 新法施行後,オンライン庁として指定されるまでの間における登記識別情報の通知及び登記完了証の交付はどのようになるのですか。 |
A11 | 新法の経過規定において,オンライン庁として指定されるまでの間における登記申請には,登記識別情報に代えて従来のとおり登記済証が交付されます。この間は登記完了証は交付されません。なお,登記済証の交付を希望する場合は,別途,現行の登記原因証書と同様のもの又は申請書の写しの提出をする必要があります。これらの書面の提出がない場合は,登記済証の交付を希望しないものとして,登記済証は交付されません。 |
Q12 | 現在,登記名義人が持っている登記済証(権利証)は,どうなるのですか。 |
A12 | 新法の経過規定において,現在の登記済証(権利証)は,これまでどおり登記の申請に用いることができることにしています。したがって,現在,登記名義人が持っている登記済証(権利証)は,新法施行後も,書面申請において,添付書面として利用することができます。 |
Q13 | 登記識別情報とは,何ですか。 |
A13 | 登記識別情報とは,登記の申請がされた場合に,当該登記により登記名義人となる申請人に,その登記に係る物件及び登記の内容とともに,登記所から通知される情報をいいます。登記識別情報は,アラビア数字その他の符号の組合せからなる12桁の符号で,不動産及び登記名義人となった申請人ごとに定められます。 この登記識別情報は,本人確認手段の一つであり,登記名義人本人による申請であることを登記官が確認するため,登記所に提供してもらうことになります。 |
Q14 | 登記識別情報は,どのようにして通知されるのですか。 |
A14 | 登記所から登記識別情報を通知する場合には,秘密を保持するため,次の方法により通知されます。書面申請の場合は,通知書の登記識別情報を記載した部分を覆う目隠しシール(はり直すことができないもの)をはり付け,本人以外の者がシールをめくって登記識別情報を盗み見た場合には,その痕跡が明らかになるような工夫をして,登記所の窓口において,本人を確認した上で交付する方法で通知することになります。オンライン申請の場合は,申請人が申請時にあらかじめ送信した専用の公開鍵を用いて登記識別情報を暗号化し,これを申請人がダウンロードする方法により通知することになります。 |
Q15 | 登記識別情報が盗まれた場合には,どのようにしたらいいのですか。 |
A15 | 盗まれた登記識別情報が不正な登記申請に用いられることがないようにするため,登記名義人又はその相続人その他の一般承継人は,登記官に対し,登記識別情報についての失効の申出をすることができます。 |
Q16 | 登記識別情報が盗まれた場合には,勝手に登記されてしまうのでしょうか。 |
A16 | オンライン申請では,登記識別情報だけでなく,電子署名及び電子証明書を併せて提供することとし,二重の本人確認手段を採っています。書面申請においても,登記識別情報だけでなく,印鑑及び印鑑証明書を提出することになります。 他方,現在の登記済証(権利証)の制度は,本人が登記済証を適正に管理している場合であっても,登記済証自体を偽造することにより不正な登記申請がされるという事件も発生しており,最近のカラー複写・印刷技術の向上から,これらの偽造事件の未然防止が非常に困難な状況になりつつあります。 登記識別情報は,それ自体を偽造することは,事実上不可能であり,登記済証の制度よりも,安全性が高まると考えています(Q15参照)。 |
Q17 | 登記識別情報を亡失した場合は,再通知されるのですか。 |
A17 | 登記識別情報は,登記完了時に通知するものとされているため,その再通知は,認められません(Q22参照)。 |
Q18 | 登記識別情報は,どのようにして管理すればよいのですか。 |
A18 | 登記識別情報は,本人だけが知っている情報であることが前提となるものです。したがって,登記識別情報の管理については,第三者に盗み見られないような方法で管理する必要があります。書面で交付する登記識別情報通知書については,登記識別情報を記載した部分を覆う目隠しシールをはり付けて,第三者に盗み見られないような工夫がされています(Q14参照)。この目隠しシールをはがした場合には,通知書を封書等で封印した上で,金庫等に保管することが望ましいでしょう。 また,オンラインで送信された登記識別情報は,復号化しないまま電子媒体等に保管し,復号ソフトとともに適切に管理することも考えられます。ただし,媒体は経年劣化のおそれがあるので,定期的な格納媒体の更新が必要になります。その他,復号化した登記識別情報を書面に印刷し,これを封筒等に封印して金庫等に保管する方法が考えられます。 |
Q19 | 登記識別情報については,確率的に,でたらめに入力したものが正しいものと偶然に符合してしまう可能性はないのですか。 |
A19 | 登記識別情報は,アラビア数字その他の符号の組合せによる12桁の符号ですので,現実的には,正しい登記識別情報に符合することはあり得ないと考えられます。 また,登記申請の際,誤った登記識別情報の入力が繰り返されたときは,申請人以外の者が申請していると疑うに足りる相当な事情がある場合に該当するものとして,登記官が申請人やその代理人を呼び出す等して,本人確認をすることがあります。 |
Q20 | 登記識別情報を登記所に提供するときは,どのような方法で行うのですか。 |
A20 | 登記識別情報は,権利の一部の移転や担保物権の設定の登記等において,繰り返し本人確認手段として利用することが予定されています。そのため,登記所に提供する際にも,秘密性を保持する必要があります。そこで,オンライン申請の場合には,登記識別情報を登記所の公開鍵を用いて暗号化して送信することになります。 また,書面申請の場合には,盗み見られることがないよう登記識別情報を記載した書面を封筒に入れる等して提出することになります。 |
Q21 | 登記識別情報に関する有効証明制度とは,どのような制度ですか。 |
A21 | 登記名義人又はその相続人その他の一般承継人は,登記官に対し,手数料を納付して,登記識別情報が有効であることの証明を請求することができます。この証明により,登記申請の前に有効な登記識別情報を有していることを証明することができます。 |
Q22 | 登記識別情報を亡失した場合など登記識別情報を提供することができない場合は,どうしたらいいのですか。 |
A22 | 登記識別情報は,一般的な本人確認手段としての印鑑及び印鑑証明書又は電子署名及び電子証明書に加え,登記手続固有の本人確認手段となるものですから,登記識別情報の提供がないときは,別の手段により本人確認手続を行う必要があります。具体的には,登記官が事前通知(個人の場合は,本人限定受取郵便により,法人の場合は原則として書留によります。)の手続により本人確認を行うのが原則となります。また,住所移転を利用した成りすましによる登記申請に対処するため,所有権に関する登記の申請がされた場合において,登記申請前に登記義務者の登記簿上の住所が変更されているときは,変更前の住所にも原則として登記申請があったことを通知することになります。 |
Q23 | 資格者代理人による本人確認情報の提供の制度とは,どのようなものですか。 |
A23 | 登記識別情報を登記所に提供することができない場合に,資格者代理人が適切な本人確認情報を提供し,登記官が提供された情報の内容を適正なものと認めたときは,事前通知の手続を省略することができるというものです。 |
Q24 | 登記官による本人確認制度とは,どのようなものですか。 |
A24 | 今回申請手続の利便性を向上させるため,出頭主義を廃止しましたが,登記の正確性を確保するため,本人以外の者から申請していると疑うに足りる相当な理由がある場合には,登記官が直接確認することを可能にしておく必要があります。そこで,従来は,すべての申請について出頭を求めていたことを改めて,このような場合に限り,登記官が本人であることを確認するために,出頭を求め,事情を聞いたり,本人であることの証明書等の提示を求めることができるとされています。 |
Q25 | 登記原因証明情報の提供が必要的なものとされましたが,共同申請の場合は,具体的には,どのような情報を指すのですか。 |
A25 | 登記の原因となった事実又は行為及びこれに基づき現に権利変動が生じたことを証する情報を指します。共同申請の場合には,(電子)契約書等のほか,登記原因について当該登記によって不利益を受ける者(登記義務者)が確認し,署名若しくは押印した書面又は電子署名を行った情報が含まれます。例えば,売買による所有権の移転の登記の場合には,契約の当事者,日時,対象物件のほか,売買契約の存在と当該売買契約に基づき所有権が移転したことを売主が確認した書面又は情報が登記原因証明情報に該当します。したがって,売買契約書(所有権の移転時期の特約があるときは,その条件成就の事実を証する情報も併せて必要)のほか,売買契約書の写しに売主が記名押印したもの,登記原因を記載した報告書に売主が記名押印したものが含まれます。なお,いわゆる売渡証書であっても,登記義務者が署名しているものは,それが売買契約とこれに基づく所有権の移転を内容としているものである限り,登記原因証明情報に該当します。 |
Q26 | オンラインで登記事項証明書を請求することができるのですか。 |
A26 | 手数料を納付して,登記事項証明書の送付をオンラインで請求することが可能になりました。オンラインで請求されたものは,郵送により交付されます。なお,この方法による請求の手数料には,郵送料も含まれていますので,手数料のほかに郵送料を納める必要はありません。 |