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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会〈第278回〉議事要旨


 
 日時
 令和2年5月15日(金)

 

 

 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当 再調査相当 処理案不相当
9件 9件 0件 0件

 

 意見その他
    信書の受信を禁止とされた措置の取消しを求める再審査の申請について,「法務省意見相当」(信書の受信を禁止としたことに違法又は不当な点は認められない。)との結論に至ったが,1名の委員から,「申請人は,㋐刑事施設A(「施設A」という)に収容されていた期間に信書の受信禁止(「処分(1)」という)及び書籍閲覧禁止(「処分(2)」という)の措置(「本件各処分」という)を受け,これを不服として矯正管区長に審査の申請をしたが棄却されたため再審査の申請をした。㋑その後刑事施設B(「施設B」という)に移送され,同施設の所持品検査により同じ書籍について再度閲覧禁止処分を受けたと思われるが,申請人がこの処分について改めて審査の申請をしたかどうかは明らかではない。㋒その後さらに最初の施設Aに移送された経緯があるところ,これらの事実経過を踏まえた上で,法務省は,処分(1)については再審査の対象とするが,処分(2)については不適法として却下するという見解を示しており,その理由は,申請人が施設Bに移送された段階で本件各処分は施設Aの長の判断を改めて受けることができなくなるため,いずれも不服申立の利益が消滅するからだとし,さらに施設Bに移送された段階で行われる法第44条に基づく検査において,処分(1)の対象である信書は,同条に基づく検査の対象とされていないため,施設Bにおいても施設Aの処分(1)は継続することになるのに対し,処分(2)については同条に基づく検査により施設Bで改めて閲覧禁止処分が執られるため,施設Aで執られた原処分の効力が消滅するからだというものである。
 そして,施設Aに再度移送されたことにより,処分(1)については不服申立の利益が回復し再審査の対象となるが,処分(2)についてはその効力が消滅している以上再審査の対象とはならないとしている。しかし,移送によって当然に不服申立の利益が消滅すると解するとすれば疑問である。移送の多くは刑事施設の都合によって行われる場合が多いと思われるが,そのような申請人のあずかり知らない施設側の事情によって既に存在している不服申立の利益に消長をきたすとすれば,申請人の権利救済と行政の自己統制を目的とする行政不服審査制度の趣旨に悖ると言わざるを得ない。また,移送後も原処分の効力が存続する場合には,その効力を排除する必要性(不服申立の利益)も存続すると考えるべきである。
 法務省は,移送によって不服申立の利益が消滅する理由として,施設Aの長の判断を改めて受けること(原処分を是正することと理解される)ができなくなることを挙げているが,審査庁が認容裁決により処分庁に対して処分の取消と是正を命じた場合,処分庁には身柄の有無にかかわらず,裁決の内容を実現する限りにおいて,それに必要な行為を行う権限と責務があると考えるべきではあるまいか。また,処分庁と移送先施設との間の連絡,協働等により裁決の内容を実現する方策もあるのではないかと思われる。認容裁決を実現することが可能である限り,不服申立の利益は消滅しないと考えるべきである。
 本件を検討すると,処分(1)については,再度施設Aに移送されたことにより不服申立の利益が回復したというより,移送によっても不服申立の利益が消滅せずに存続していたと解する余地がある。処分(2)については,移送に伴って施設Bで所持品検査が行われ,それによって新たに書籍閲覧禁止処分が行われたことにより原処分はその段階で効力を失うとしても,再度施設Aに移送されたことにより不服申立の利益が回復すると扱うのであれば,それと同様に原処分の効力も回復すると解する余地もあると思われる。そのような余地がない場合には,上記のような法律関係を申請人が知ることはほとんど不可能であるから,移送先の施設において申請人にそれを説明し,改めて審査の申請が必要であることを告知すべきである。」との意見が述べられた。