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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会(第280回)議事要旨


 
 日時
 令和2年6月18日(木)

 

 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当 再調査相当 処理案不相当
11件 11件 0件 0件

 

 意見その他
  懲罰の取消しを求める再審査の申請について,「法務省意見相当」との結論に至ったが,申請人が懲罰を受けた反則行為の相手方である刑務所職員(以下「当該職員」という。)が懲罰審査会の委員兼議長として審理に加わった点について,委員全員から,「懲罰を科す手続については,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第155条において,反則行為をした疑いのある被収容者に対して告知聴聞の機会を付与すべきこと,被収容者を補佐する者を指名すべきこと等を定めているが,その反則行為に直接関係した職員等が懲罰審査会の委員に加わってはならない旨の定めはない。しかし,民事訴訟法においても刑事訴訟法においても,裁判の公正を担保するため,担当裁判官が事件と特殊な関係にある場合には,除斥,忌避,回避の制度が定められ,当該事件の職務執行から排除されている。裁判官が当該事件の被害者である場合などは除斥原因(民事訴訟法第23条第1項第1号,刑事訴訟法第20条第1号)となり,法律上当然に職務執行ができない。そして,除斥原因のある裁判官が裁判に関与した場合の瑕疵は重大なものとされ,民事訴訟法では絶対的上告理由(第312条第2項第2号)や再審事由(第388条第1項第2号)に該当し,刑事訴訟法では絶対的控訴理由(第377条第2号)や上告審における原判決の破棄理由に該当し得るもの(第411条第1号)とされている。懲罰は行政上の制裁ではあるものの,被収容者に対して重大な不利益を科すものであるから,裁判と同様,審理の公正を担保する必要がある。行政処分について見ると,行政不服審査法で審査請求に係る処分若しくは当該処分に係る再調査の請求についての決定に関与した者等の利害関係人が審理員から除斥されている(第9条第2項)ことや,行政手続法で行政庁が不利益処分を行う際の聴聞について当該聴聞の当事者又は参加人等の利害関係人が主宰者から除斥されている(第19条第2項)のも同様の必要性に基づくものである。
  本件は,当該職員が審理に加わっていたものであるから,手続の性質や関与の仕方は異なるものの,審理の公正を害する点においては,前記の除斥原因のある裁判官が裁判に関与した場合や行政不服審査手続において審理員になってはならない者が審理員として関与した場合等と同視できる。
  しかし,行政上の制裁手続については司法と同程度に厳格な公正が要求されているとはいえず,その点で本件の懲罰手続が違法又は不当とまでは言えないが,「被収容者の懲罰に関する訓令」(以下「訓令」という。)第9条第2項及び第3項ただし書では,必要があるときは,刑事施設の長が訓令の本文で定められた委員や議長以外の者を指名することができる旨が定められ,本件の処分庁の規模からすれば容易に当該職員に代わる委員を確保することができたと考えられるにもかかわらず,処分庁は特に問題意識を持つことなく漫然と当該職員に委員及び議長の職務を遂行させたと推測されることからすると,処分庁の懲罰手続の公正に対する配慮の欠如は決して軽微とはいえず,本件の懲罰審査手続は著しく適切を欠いたものであり,訓令第9条第2項及び第3項のただし書によって審理の公正を十分に担保できるのかということについてまで疑問を抱かざるを得ない。
  法務省は,今後,本件のような事態が発生することを防止するために処分庁に対して指導を行うとしているが,それにとどまらず,訓令において,その反則行為に直接関係した職員やその反則行為の調査に直接当たった職員を懲罰審査会の委員から排除することを明記するなど,他の刑事施設においても本件のような事態の発生を防止するための対策を講じるべきである。」との意見が述べられた。