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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会(第285回)議事要旨


 
 日時
 令和2年10月22日(木)

 

 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当 再調査相当 処理案不相当
7件 7件 0件 0件

 

 意見その他
 保護室への収容及び同収容に伴う有形力の行使についてなされた法務大臣に対する事実の申告について,「法務省意見相当(違法又は不当な保護室への収容及び身体に対する違法な有形力の行使は認められない。)」との結論に至ったが, 提供された資料の診療録(カルテ)の記載からは,状況が十分に読み取れない(医師の指示,判断か,看護師の判断か,看護師の判断とすると事前に医師の指示をきちんと受けているか等)という指摘があり,議論がなされ,以下のとおり意見が述べられた。 本件に限らず,時として参考資料に付帯する診療録(カルテ)の記載には,単に薬物名を記載しただけのもの,処置だけを記したもの,文字の解読が困難なもの並びに医師のサイン欄及び看護師のサイン欄に適切にサインがなされていない例など,「第三者に開示したときに十分に内容が伝わる,開示に耐え得る記載が求められる」趣旨から外れ,多忙や困難性を考慮するとしても,ある一定の改善が求められるものが散見される。   受刑者の心身の健康を保持し,守ることは,結果として受刑者の矯正を的確に効率よく成立させることに繋がり,施設の環境良化にも役立つ結果となると期待されることであり,これらを勘案の上,行政文書たる診療録(カルテ)の記載の更なる質の向上を期待したい。 ところで,診療録(カルテ)は医師(場合によっては看護師等のメディカルスタッフも)にとっては患者の診療経過を記録する重要な書類であり,医師法の第24条第1項には「医師は,診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」と記されており,同条第2項には「前項の診療録であって,病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは,その病院又は診療所の管理者において,その他の診療に関するものは,その医師において,5年間これを保存しなければならない。」と規定されている。 また,健康保険法の規定に基づく『保険医療機関及び保険医療養担当規則』第8条で「…診療録に療養の給付の担当に関して必要な事項を記載し,これを他の診療録と区別して整備しなければならない。」と自費診療カルテ等と保険診療のカルテを区分することを定めている。記載に関する基本的事項としては,カルテは『診療の都度,医師自らが遅滞なく必要事項の記載を行うこと』,『保険請求の根拠となるものであることを認識し,必要事項の記載を充実するとともに,第三者にも判読できるよう丁寧な記載に努めること』などの指摘を受けているところであり,丁寧な記載と併せ,『記載は必ず黒又は青色のインク又はボールペンを用い』,図示などのための色鉛筆の使用は認められるが,『鉛筆』での記載は認められない。記載内容の『訂正は,修正液等使用することは適当でなく,二重線で抹消する』ことなど,詳細な注意事項が記されている。 一般病院では一人の患者を複数の医師が担当することがあるところ,この場合,『診療録への記載の都度,署名又は記名・捺印するなど,責任の所在を明確にする』必要がある。従って,診療記録(カルテ)の正確な記載は,法に基づく,医師の義務であると言える。   具体的な記載方法や充実度等に関する規定はないが,上記の求められる内容の記載は,大学医学部及び医科大学において,臨床医学教育の基本中の基本として,学部学生のときから相当程度,徹底した記載指導がなされており,また卒業後の初期研修においても基本中の基本として指導医が厳しく指導,チェックする体制になっている。 診療録の記載スタイルについて言及すると,かつては,Disease oriented のスタイル(疾患中心型記載)が指導されていたが,近年ではProblem oriented のスタイル(問題指向型記載)の指導が進んでいる。この中で特にSOAP,すなわちS (Subjective 患者の訴え),O (Objective 診察所見 検査結果),A (Assessment 医師による診断,考察),P (Plan 治療計画)を明らかにすることが重要なこととして指導されている。 時と場合により,診療録(カルテ)は外部の目にさらされることもある大切な行政文書であり,これに堪え得る記載が求められる。患者には在社会時の病院の診療録(カルテ)の開示請求をする権利があり,これらの場合に第三者にも記載内容が理解できることが求められる。大学付属病院や大きな市中病院等では教育病院の意味も含め,「当然の義務」として,診療録(カルテ)の十分な記載が求められ,指導がなされている一方,特に「教育」とは関連しない一般の診療所や施設,あるいは企業や施設等の医療施設,医務室においてまで,このような詳細なものが求められるとすると,実際の業務上(マンパワーや,物理的に時間を確保することも含め),「それは理想論であり,実際にはとても難しい」という意見が生まれることも実情といえるであろう。しかし,診療録(カルテ)が常に外部の目にさらされることもある重要な行政文書であり,更に医師や周囲のメディカルスタッフ自身を守る意味,意義を持った大切な文書であることも事実である。   法務省が管轄する施設における医療施設等においては,受刑者と向き合うという特別な環境,麻薬やシンナー等の乱用により心身の健康が不可逆的に侵襲を受けており,コミュニケーションが十分にとれないような状況,患者が協力的でないなど,通常の診療施設では想像できない,難しい,求める・求めたい医療を成立させることに困難を伴うことがあることは十分に推察される。そういった中で診療録(カルテ)の充実を考えるという課題には,現場の実情,苦悩を十分に理解した上でということも必要ではあるが,逆に特別な環境であるからこそ,医師をはじめとする医療従事者自身を守る意味でも,一定の密度(十分な必要事項の記載と質)を持った記録記載の充実性も重要な課題である。