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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会(第286回)議事要旨


 
 日時
 令和2年10月22日(木)

 

 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当 再調査相当 処理案不相当
10件 10件 0件 0件

 

 意見その他
 懲罰の取消しを求める再審査の申請について,「法務省意見相当」との結論に至ったが,4名の委員から以下のとおり意見が述べられた。
 本件は,申請人が,頭頂部に湿疹ができ備薬のサリチル酸軟膏を処方されていたが,深夜,頭頂部がかゆくなったため許可なく頭頂部に水を掛けて洗髪したことから,水の不正使用の反則行為によって懲罰を科された事案であるところ,懲罰の目的が刑事施設の規律及び秩序の維持であることから,申請人の洗髪行為は許可がない以上反則行為に該当すると言わざるを得ない。
 しかし,懲罰の種類とその程度を決定するにあたっては,事案ごとの諸事情を総合考慮して慎重に行うべきである。本件についていえば,第一に,申請人の頭頂部の湿疹について医師の直接の診察を受けておらず,情報から備薬の処方が指示されていただけであるが,もし,医師の診察を受けていれば,皮膚疾患という現認が重要な疾患故,湿疹の程度や原因も勘案した掻痒抑制効果の強い異なった外用薬が処方され,かゆい場合にはどうすべきかなどの指示が出された可能性があること,第二に,申請人が事前に洗髪の許可を求めていたとしたら深夜の洗髪は避けるように指示されたとしても適切な時間に洗髪することは許可されていた可能性があること,第三に,節水が必要ではあるものの,本件では,同じ水の使用であっても,衣類の洗濯のように大量の水は使用していないし,水をまき散らすような無駄な使用でもないこと,第四に,動機としても同情すべき点があることである。この点,一般的に言って懲罰審査会の審査時間が短時間であること,本件の補佐人の意見も簡略であることからすると,十分な審査が行われたかどうかは疑問の余地がある。
 受刑者であっても個人として尊重されなければならないことは言うまでもない。「国連被拘禁者処遇最低基準規則」(マンデラ・ルールズ)でも「基本原則」の「規則1」において「すべての被拘禁者は,人間として生まれながらの尊厳と価値に対する尊重をもって処遇されなければならない」と定められている。
 この個人の尊厳の理念からすれば,種々の制限下にある受刑者についても,施設の中でただ「生活をしている」というだけにとどまらず,「自分が置かれている環境の中でできるだけ快適に生活する」こと(生活の質,いわゆる「QOL」)が考慮されるべきである。
 このような視点から見てみると,マンデラ・ルールズの「規則18」でも被収容者の身体を清潔に保つために水を支給すべきことが定められているとおり,受刑者も清潔で健康的な生活が保障されるべきであるから,このような受刑者のQOLの維持・向上のための水の使用は可能な限り保障されるべきである。
 処分庁の「受刑者の遵守事項等」22項では水の不正使用を禁止しているが,いかなる場合においても身体や髪を洗うこと,水を用いて拭身することまでを制限しているとすれば行き過ぎの感があり,受刑者のQOLの視点から見てマンデラ・ルールズが定める「最低基準」を満たしているとは言えないのではあるまいか。本件のように,少なくともかゆみやかぶれなどの具体的な症状がある場合には,水を使用して患部の清潔を保つことや拭身することは制限の対象としない等の運用の改善が望まれる。