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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会(第247回)議事要旨


 
 日時
 平成30年5月17日(木)15:00

 

 

 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当 再調査相当 処理案不相当
7件 7件 0件 0件

 

 意見その他
    信書の発信を禁止した措置の取消しを求める再審査の申請について,「法務省意見相当」(申請人の外部交通においては,申請人と養子縁組関係にある本件信書の相手方を刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「法」という。)に規定する親族として取り扱わず,同相手方は,申請人が信書を発受することにより,その矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者であるなどと判断し,法第128条の規定に基づき信書の発信を禁止したことに違法又は不当な点は認められない。)との結論に至ったが,1名の委員から,以下のとおり,意見が示された。
 「本件には次の3つの問題がある。
 第1に,本件は,「被収容者の外部交通に関する訓令の運用について(依命通達)」(以下「通達」という)の記の28の「外部交通の確保が目的であると認められる養子縁組への対応について」を根拠に申請人と信書発受の相手方との養子縁組について法第128条の運用場面においてその効力を否定し,相手方を法第128条の「親族」として取り扱わないこととし,信書の発信を不許可としたものである。
  しかし,行刑改革会議提言の「外部交通の拡大」では,親族との面会の充実や友人・知人との外部交通の重要性が指摘されている。これを受けた法の構造も法第126条で信書の発受を原則として許可するものとし,法第128条では親族を信書の発受禁止の対象から除外している。
  このような行刑改革会議の提言及び法の構造から考えると,法第128条の親族の意義を限定することには疑問がある。しかも,これを通達により,行刑現場の解釈運用によって限定することにはさらに問題がある。
  第2に,戸籍は,親子,夫婦などの身分関係が記載され,戸籍に関する事務は市町村長が管掌する(戸籍法1条1項)とされている。また,民法上は婚姻,養子縁組は届出がなされなければその効力を持たず,それらの解消も原則として届出が必要である。
  このようなことから,戸籍は身分関係を証明するものとして公的な機能を有し,その証明力は極めて高いものとされている。
   そして,養子縁組の無効については,家庭裁判所の当事者の合意に相当する審判又は人事訴訟による判決によらなければ無効とすることはできない。また,判決の効力は一般の民事訴訟とは異なり,対世効を有するとされている。
  このような戸籍の持つ公的機能や縁組を無効とするための厳格な法的構造に照らせば,たとえ養子縁組無効の効果について,受刑者の処遇上好ましからざる者を法第128条の親族から除外することに限定するものであったとしても,また,縁組無効訴訟を確認訴訟だとしたとしても,司法判断の場ではなく,行刑の現場の判断によって養子縁組の効力を法第128条の適用において否定することには疑問がある。
  第3に,信書の発受は表現の自由(知る権利を含む)の一形態として憲法上保障されている。表現の自由は経済的自由に比してより厚く保障されるべきものであるから,それを制限することの正当性は,厳格な審査によらなければならない。
  通達は,養子縁組をしたとしても,一定の場合には「当該外部交通を認めない運用もあり得る」として柔軟な運用を予定しているようにも読める。しかし,他方,養子縁組が無効とまでは認定できないケースについても親族関係を認めず,信書の発受を禁止できる場合があるとしていることは,表現の自由の重要性に鑑み,行きすぎた規制につながるおそれもある。
   これらを考慮すると,行刑現場の運用によって法第128条の適用において養子縁組の効力を否定することについては相当な慎重さが求められるべきであり,現行の運用を継続するにあたっては,通達の恣意的運用を防止するため,養子縁組を認めない具体的事例を示すなど,通達の解釈の在り方を周知すべきである。」