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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会(第263回)議事要旨


 
 日時
 令和元年5月16日(木)15:00

 

 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当 再調査相当 処理案不相当
10件 10件 0件 0件

 

 意見その他
(1)  新聞紙の購入を不許可とされた措置の取消しを求める再審査の申請について,「法務省意見相当」(新聞紙の購入を不許可としたことに違法又は不当な点は認められない。)との結論に至ったが,1名の委員から,「本件は,本検討会第258回の案件と事案が同一であるから繰り返しになるが,次のとおり意見を述べる。処分庁は,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「法」という。)第71条及び刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則(以下「規則」という。)第34条第1項に基づき,被収容者が取得することができる『時事に関する事項を総合して報道する日刊新聞紙』について,処分庁があらかじめ指定している2紙(地方紙1紙,全国紙1紙)から1紙を選択させている。この取扱いは,同項で許容されている制限の最も厳しいものである。法及び規則による制限は本来自由であるべき新聞閲覧の自由に対するやむを得ざるものであること,他の刑事施設の中には3紙の中から1紙の選択を認めているところもあること,処分庁においても上記以外の日刊新聞紙(スポーツ紙)については3紙の中から1紙の選択を認めていること,被収容者の処遇上被収容者が時事に関する情報を得ることはスポーツ情報と同等もしくはそれ以上に重要と考えられること等を考慮すると,『時事に関する事項を総合して報道する日刊新聞紙』の選択の範囲について全国紙をせめてもう1紙加えて3紙とすることが望まれる。」との意見が述べられた。
(2)  静穏室に連行及び収容された際,職員から力ずくで引っ張られるなどして過剰な有形力を行使され,また,職員が同室扉を閉めた際に指を同扉に挟まれ,負傷させられる違法な有形力の行使を受けたとする法務大臣に対する事実の申告について,「法務省意見相当」(身体に対する違法な有形力の行使は認められない。)との結論に至ったが,1名の委員から,「本件は,申告人が静穏室に収容された後,①同室出入口付近の床に座り込み,同室の扉を閉めるのを妨げたために制止された,②制止の後職員らが退室しようとした際,申告人が同室出入口付近に駆け寄り,同室扉を閉めるのを妨げたため再度制止された,③制止の後職員らが順次退室した直後,申告人が起き上がり,職員が閉め始めた同扉に向かって上半身を投げ出すようにして右手を室外に伸ばしたため,申告人の右手が扉に挟まり,右手の指に傷害を負った,という事案である。申告人の負傷が職員による『違法な有形力の行使』にあたるか否かについて,法務省の見解は,扉を閉める行為は事実行為であり,必ずしも権力性の高い行為ではないことに照らしてその過失の有無を検討すべきであるとして,本件においては,職員にとって扉を閉める際の申告人の行為は予見不可能であり,過失はなく,違法な有形力の行使にはあたらないとするものである。しかし,本件では申告人の行為が予見不可能であったとすることはできない。申告人は,前記のとおり,負傷の原因となった③の行為の前にも①及び②のように職員の扉を閉める行為を妨害している。特に②の行為は③の行為と極めて類似している。このように①及び②の行為が先行して存在していることに加え,申告人には精神疾患の診断歴があること,本件の静穏室収容も大声を発していたためであり,精神的に不安定な状態にあったことなどを考慮すると,申告人の③の行為について予見可能性はあったのであり,職員には扉を閉める行為に付随する注意義務違反があったと言うべきである。扉を閉める行為は,扉に手の指を挟んでしまった場合,骨折する危険性も孕むものであること,本件の申告人の右手指の出血量も少量とは言えないことを考慮すれば,当該行為に違法性がないとは言えず,本件は違法な有形力の行使にあたると考える。」との意見が述べられた。
 また,他の1名の委員から,「本事案の被収容者は,そもそも精神障害に罹患していることが確認されており,当日も大声をあげるという逸脱行動があった。静穏室に収容される際に素早く部屋から出ようとするという行動も見られた。また精神状態に影響を与えることがある身体疾患に罹患しており,そのため精神症状を生じうるステロイドの服薬治療を受けている状況下にあった。こうした事情を勘案すると被収容者が閉まろうとする扉に手を入れるという合理性を欠く行動をすることが全く予測不能とはいえない。本事案における被収容者の怪我は被収容者側に主たる責任があるとはいえ,施設側にも限定的ではあれ過失があったと考える。」との意見が述べられた。
(3)  職員から右手の甲を強く握られるなどされる違法な有形力の行使を受けたとする法務大臣に対する事実の申告及び作業中に職員から足をたたかれる違法な有形力の行使を受けたとする法務大臣に対する事実の申告について,いずれも「法務省意見相当」(身体に対する違法な有形力の行使は認められない。)との結論に至ったが,1名の委員から,「両案件とも,「職員より有形力の行使を受けた」との申告によるものである。当該行為の有無についての判断をするに当たり,ビデオカメラによる録画映像はその根拠の一つとなる。しかし,両案件ともビデオカメラによる映像がすでに上書き処理がなされ,当該行為があった思われる日時の映像が残されていなかった。両施設において,ビデオの保存期間は,A案件においては,3週間,B案件に至っては7日間であった。刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「法」という。)は,審査の申請について「措置の告知があった日の翌日から起算して三十日以内にしなければならない」(法第158条第1項)旨定めている。当該案件のようなケースの場合,被収容者にとって自己の主張を裏付ける根拠となる可能性のあるビデオカメラ映像の存否は重要と思われ,したがって,刑務所はビデオ映像記録の保存について,法に基づいた期間の確保に努められたい。」との意見が述べられた。