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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会(第293回)議事要旨

刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会
(第293回)議事要旨
1 日時
  令和3年3月18日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
2件 1件 0件 1件
 
 
(1)事案の概要
  刑事施設の職員Aが,連行の指示に従わず,勝手に歩き出すなどした申告人に対して指導を行っていた際,申告人が同職員に向かって右手を挙げてきたところ,同職員が,同行為を制止するのに合理的に必要と判断される範囲を超えて,申告人を仰向けの状態で床に倒すなどして制止した後,非常通報を受けて現場に駆けつけた指揮者Bが,同職員の報告等から,申告人に他人に危害を加えるおそれがあると判断し,申告人を保護室に収容した事案
(2)提言
  申告人がなした法務大臣に対する事実の申告のうち,刑事施設の職員が申告人を保護室に収容した事実(以下「本件保護室収容」という。)について,次の措置を執ることが相当である。
a  本件保護室収容が不当であったことを確認し,その旨を申告人に通知すること。
b  同様の行為の再発を防止するために必要な措置を執ること。
  なお,委員1名により,本件保護室収容が不当ではないとの少数意見が付されている。
(3)提言の理由(要旨)
   当検討会に提出された各資料に基づいて,当検討会が検討した結果は次のとおりである。
ア 本件における他害行為性について
   本件行為が他害行為性を有するものであるかどうかについて検討すると,申告人が職員Aから指導を受けている間,何事かを述べて反抗している事実は認められるものの,「語気荒く」述べた事実は確認できないこと,申告人は大声を発してはおらず,興奮した状況でもなく,その表情からは冷静さもうかがえること,暴行その他の行為に及ぼうとする様子はうかがえないことなどからすると,申告人に他害の意図があったと認めることは困難である。
      また,本件行為の態様は暴力的とは言えず,一般の通常人から見ても,この行為によって危害が発生すると感じる程度のものとは認め難いから, 上記の点と併せて考慮すると,これを他害行為性を有するものと評価することは困難である。
      他害の「おそれ」があったかどうかについて検討すると,本件行為を他害行為性があると評価することが困難である以上,申告人には原則として他害のおそれはないと言うべきであるが,申告人が著しい興奮状態にあるなど,危険な行動に出る可能性があるというような特別な状況であれば,他害のおそれがないとは言い難い。
      そこで,本件においてそのような特別な事情があるかどうかを検討すると,申告人の精神状態が不安定であって,手が付けられないような状態とは認められないこと,申告人は反抗的ではあるものの,冷静さも見て取ることができること,本件行為に続けて何らかの暴力的行為に出る様子もうかがえないことからすると,特別の事情があるとは言えず,他害のおそれがあると認めることは困難である。
    矯正局は,申告人が,ⓐ職員Aの指示に従わず反抗的な態度に終始した  こと,ⓑ何事かを語気荒く放言したこと,ⓒ右手を職員Aの胸部付近に突き出したことをもって職員Aが危害を加えられるおそれがあると判断したというのであるが,ⓑの事実は認定することはできず,ⓒの行為も,その態様からして暴力的なものとは言い難い。加えて,職員Aが,申告人の至近距離で,申告人の耳もとに顔を近づけて,大声で指導していること,申告人に対応している職員が4名であることなどからすると,職員Aが申告人から危害を加えられるおそれを感じていたとは考えられないし,本件行為によって危害を加えられるおそれを感じるに至ったとも考えにくい。
       矯正局は,申告人が保護室連行中にも興奮した様子で大声を発し続けていたことも保護室収容要件として考慮しているが,収容要件の存否は保護室収容を指示した時点を基準とすべきであり,その後の事情を重視すべきではない。まして,本件では,保護室収容を指示する前に職員Aによる違法な有形力の行使が先行しているのであるから,その後申告人が興奮し大声で抗議することは当然の行動と言うべきである。
      また,矯正局は,申告人が,粗暴な反則行為を繰り返してきたこと,保 護室収容歴も多いことなどを挙げて,他害のおそれがあるとするものである。しかし,これらの事情は,他害のおそれの存在を多少なりと推認させるものではあるとしても,あくまでも過去の事情にすぎない。
イ 本件における指揮者の判断について
    矯正局は,指揮者に対する「本職に向かって右手を挙げてきたので制止しました」との職員Aの報告には虚偽や誇張はないこと,指揮者は現場において迅速に判断する必要があることを挙げているが,職員Aの「本職に向かって右手を挙げてきた」との報告は,前述の申告人の行為様態を正確に表現しているとは認め難いうえ,指揮者の判断が,その程度のわずかな報告に加え,先入観と予断を許しかねない日頃の動静,行状,性向などを考慮してなされているとすれば,それ自体が危険な判断というべきであって相当ではない。保護室収容制度の本質に立ち返り,一見して被収容者が興奮状態にあって手が付けられないような場合は別としても,申告人に対する違法な有形力の行使の後,指揮者が保護室収容を指示した時点でも申告人がそれほどの興奮状態ではなかったと認められる本件においては,一旦取調室に同行して収容要件の存否を確認することも可能であったと思われる。
  これらの事情を考慮すると,指揮者の判断がやむをえないものであったとは認め難い。
ウ  まとめ
  当検討会は,以上の検討結果から本件保護室収容を不当と判断するものであるが,職員Aの言動が申告人の行為を誘発していると評価できることも上記の判断に至った重要な事情である。職員Aは申告人よりも年齢は若く体格も良いこと,申告人の至近距離で不適切な言葉を発していること,顔を近づけて申告人の耳もとで大声でしゃべっていること,申告人が本件行為に及ぶや否や申告人を床に投げていることなどの事情からすると,職員Aは,申告人が自分の指示に従わないことから,申告人よりも興奮してしまった結果,申告人の行為を誘発していると評価することができる。
   なお,本件では保護室収容要件が存在するとは認め難いことを考慮すると,本件保護室収容を違法とする余地もないとは言えない。しかし,本件では,保護室収容要件が存在するとも認め難い反面,存在しないとも断言できないこと,違法の概念については見解が多岐にわたるところでもあることから,不当との判断に至ったものである。
エ 再発防止の必要性について
   保護室収容案件は各刑事施設において相当多数発生していること,現場  においては迅速に保護室収容要件を判断しなければならないこと,その判断に当たっては現場の職員によるごく簡単な報告と被収容者の日頃の行状,懲罰歴,保護室収容歴などが考慮されているだけであるのが実情と思われ,そうだとすれば,今後,本件と同様の事案が発生する可能性は少なからずあると推測される。
それを防止するためには,研修その他の再発防止策を執る必要がある。
(4)少数意見
   本件保護室収容は,不適切とはいえるが不当とまでは言えない。職員Aの 申告人に対する指導は不適切であると考えるが,報告を受けた指揮者が保護室収容を指揮したことは,現場の状況と申告人の過去を考慮するとやむをえなかったと考えられる。