刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会(第300回)議事要旨
1 日時令和3年8月26日(木)14:00
2 審査件数
検討会付議件数 | 審査結果 | ||
処理案相当 | 再調査相当 | 処理案不相当 | |
10件 | 9件 | 1件 | 0件 |
文書図画の交付を差し止める措置の取消しを求める再審査の申請について,「法務省意見相当」との結論に至ったが,1名の委員から以下のとおり意見が付された。
本件の法務省意見の当否,適否については,判断を留保する。
自らの作品を社会に発表しようとすること,公刊の可能性を求めること自体は,受刑者であっても表現の自由として尊重されるべきものと考えられる。また,自らの経験や知識に基づいて,刑事施設の処遇の実態や社会における犯罪の実態を,他者に伝えようとする行為も,それ自体は否定的に捉えられるべきものではないと考えられる。さらに,その表現の内容が,「主観に基づき事実を誇張したもの」とか「真偽が不明である」とかの評価は,判断する側のバイアスもありうるので,慎重を期する必要がある。
外部の広報媒体に投稿する等の信書や文書図画の発信の制限は,最高裁平成18年3月23日判決(判例時報1929号37頁)からして,表現の自由を保障した憲法21条の規定の趣旨,目的に鑑み,具体的な事情の下で,刑事施設の規律・秩序の維持,受刑者の矯正処遇の適切な実施に「放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があると認められる場合」かどうか,また「必要かつ合理的な範囲にとどまる」かどうかを,慎重に判断すべきであると考える。
したがって,本件法務省意見において,その作品等が公刊されることで,申請人の考えが社会一般に受容されたとの誤った認識を与えかねず,申請人の問題性を助長し,改善更生への意欲が減退することにつながり,その矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある等とする本件文書図画の差止めの理由付けは,上記最高裁判決にいう「放置することのできない」「相当の蓋然性」「必要かつ合理的な範囲」等の要件を満たすものかどうか,なお慎重な検討が必要だと考える。