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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会(第302回)議事要旨

1 日時
  令和3年9月30日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
10件 10件 0件 0件
 
3 意見その他
(1)信書の受信を差し止めた措置の取消しを求める再審査の申請について,「法務省意見相当」との結論に至ったが,1名の委員から以下のとおり意見が付された。
  本件信書の受信差止めの処分についての適否・当否については,判断を留保する。
本件差止めに係る信書は,競馬投票の結果を知らせる内容の弁護士からの信書 であるところ,それが道徳的に好ましいかどうかということと,受刑者の外部交通の権利の保障とは混同されるべきではない。
国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール)規則3も,拘禁刑は移動の自由の剥奪という事実故に犯罪者に苦痛を与えるものであり,その状態に加えて固有の苦痛を増大させてはならない旨を規定している。被拘禁者の自由の制限は,基本的には,そのような移動の自由の剥奪に伴う合理的な範囲内のものにすべきである。競馬はギャンブルとはいえ公認されたものであり,受刑者だからといって当然に罪悪視され,禁止されるべきものとはいえない。当該受刑者の個別処遇として,それを制限するのが合理的か否かによって判断すべきものと考える。
本件で信書の受信を差し止める理由として法務省意見が挙げるのは,申請人が「ギャンブルに傾倒することとなり,その矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある」というものであるが,それ自体がごく抽象的なものであるほか,本件前後の申請人の馬券購入の頻度は明らかではない。
 そして,具体的説明としては,(1)本件受信に前後して申請人の矯正処遇の目標が変更されたこと,(2)投稿活動に熱中する受刑者に対する投稿の差止めの前例があることが挙げられたところ,(1)の変更の経緯には申請人の悪質な行為があったようではあるが,競馬の投票参加の問題との関連性は不明であり,かつ,変更後の処遇目標の「被害者や遺族の心情に思いを寄せ」る等の心の持ち方を理由とする自由の制限は,際限なく広がる危険性がある。また,(2)は事案を異にするほか,投稿活動への「熱中」を否定的に評価すべきかの基本的な問題もある。
(2)有形力の行使を違法又は不当とする事実の申告について「法務省意見相当(有形力の行使に違法又は不当な点は認められない。)との結論に至ったが,1名の委員から以下のとおり意見が付された。
本件ひげそりのための有形力の行使の適否・当否については,判断を留保する。
法60条1項は,「受刑者には,法務省令で定めるところにより,調髪及びひげそりを行わせる。」とあり,規則26条4項は,「受刑者が調髪又はひげそりを行わないことを希望する場合において,その宗教,・・・その他の事情を考慮して相当と認めるときは,調髪又はひげそりを行わせないものとする。」と規定している。
 これらの規定は,一定の場合以外に,受刑者に調髪・ひげそりを義務付けるものではある。しかしこれらの規定は,それ以上に,職員が有形力を行使して調髪・ひげそりを強制すること(直接強制)まで認めたものとは解し難いと考える。
 法60条の規定は,刑事施設の長が調髪・ひげそりの結果を実現させる権限や責務を規定するものとはなっていないし,直接強制を認める場合に通常規定される合理性及び均衡性に関する規定もない。そして法の委任を受けた規則26条4項は,諸事情を考慮して調髪・ひげそりを行わせないことも規定している。また,調髪・ひげそりは,バリカンや(電気)カミソリなどの道具を使用し,その強制的実施が身体に傷害を及ぼす危険を否定できない性格のものであることも,考慮されるべきである。
本件法務省の意見は,法60条1項により申告人の意思に反してひげそりを行うことは適法な措置であるとし,それとは別に法77条1項を適用することにより,ひげそりの職務の執行を妨げる行為を抑止するための有形力の行使は適法であるというものである。しかし,意思に反するひげそりの実施とその妨害の抑止行為は一体のものである。
  そして本来,本人の自由意思に委ねられるべき行為について,その結果の実現のための職務の執行行為に対して抵抗がなされた場合に,法77条1項の適用として有形力の行使による結果の実現を認めるならば,結局は直接強制を認めることと同じ結果になってしまう。したがって,少なくともその結果の実現が本人の自由意思にかかわる性格を有する調髪・ひげそりについては,このような解釈適用は許されないと考える。
 なお,調髪・ひげそりの拒否の継続によって,医療衛生上の問題が生ずるような場合には,医療上の措置(法60条・62条)として調髪・ひげそりを直接に強制することは否定されない。
本件については,申告人は令和元年11月以降ひげそりを自ら行おうとせず,1か月に1回ほどの頻度で,職員によるひげそりの強制的な実施がなされてきている。しかし,職員がひげそりを行おうとするに際しての抵抗はさほど強いものではなく,毎回の抵抗も同様のパターンの繰り返しになっている。すなわち,申告人のひげそりの拒否が,真意に基づくものかどうかも疑わしい。
 したがってまた,毎回配膳室まで連行して強制的なひげそりを行うことの合理性,必要性も,疑問を感じざるをえない。むしろ,ひげそり自体を直接強制することはせずに申告人本人の意思に委ね,必要ならば上記医療上の措置として,時機を見て強制的な措置を行うという選択を検討してよいのではないかと思われる。そしてそれが,法の本来の趣旨に適合するのではないであろうか。