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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会(第308回)議事要旨

1 日時
  令和4年1月20日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
20件 20 0件 0件
 
3 意見その他
(1)信書の発信を禁止した措置の取消しを求める再審査の申請について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
  本件は、申請人が、養子縁組をした養母が当該縁組後に婚姻してその夫となったAに宛てた信書の発信であり、Aは養母の夫として申請人と姻族関係にある親族に当たる。法務省意見は、平成19年5月30日付け矯正局長依命通達「被収容者の外部交通に関する訓令の運用について」の記28に則り、この養母との養子縁組が、民法上無効とは認定できないまでも、真に親子と認められるような関係等を創設しようとする目的意識が希薄であり、刑事施設における外部交通に関する各種規制を潜脱することなどを目的としてなされたものとして、法が親族との外部交通を認める規定を適用する基礎を欠くと判断し、その養親子関係の上に形成された養母の夫と申請人との関係についても同様の理が成り立つと判断しようとするものと理解される。
しかしまず、民法上無効と認定できなくても刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律128条の「親族」として取り扱わなくてもよいということが、同法その他の法律で認められているわけではない。にもかかわらず、通達による運用として同条の「親族」に当たらないとしてしまうことに、基本的な疑問がある。
  さらに、仮に上記通達による取扱いを前提とするとしても、また仮に真に親子関係を創設しようとする目的意識が希薄であるとしても、新たに養子縁組をする自由自体は認めざるをえないであろう。そして本件信書は、申請人とAとの養子縁組を新たにしようとする手続に関する記述や、それに関する同封願がなされているものとみられ、その手続は、同条ただし書の身分上、法律上の用務の処理のためであると解すべき余地がある。
(2)有形力の行使を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当(有形力の行使に違法な点は認められない。)との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   法60条1項は、「受刑者には、法務省令で定めるところにより、調髪及びひげそりを行わせる。」と規定し、規則26条4項は、「受刑者が調髪又はひげそりを行わないことを希望する場合において、その宗教、……その他の事情を考慮して相当と認めるときは、調髪又はひげそりを行わせないものとする。」と規定している。
   これらの規定は、一定の場合以外に、受刑者に調髪・ひげそりを義務付けるものではある。しかしこれらの規定は、それ以上に、職員が有形力を行使して調髪・ひげそりを強制すること(直接強制)まで認めたものとは解し難いと考える。
   法60条の規定は、刑事施設の長が調髪・ひげそりの結果を実現させる権限や責務を規定するものとはなっていないし、直接強制を認める場合に通常規定される合理性及び均衡性に関する規定もない。そして法の委任を受けた規則26条4項は、諸事情を考慮して調髪・ひげそりを行わせないことも規定している。また、調髪・ひげそりは、バリカンや(電気)カミソリなどの道具を使用し、その強制的実施が身体に傷害を及ぼす危険を否定できない性格のものであることも、考慮されるべきである。
本件法務省の意見は、法60条1項により申告人の意思に反してひげそりを行うことは適法な措置であるとし、それとは別に法77条1項を適用することにより、ひげそりの職務の執行を妨げる行為を抑止するための有形力の行使は適法であるというものである。しかし、意思に反するひげそりの実施とその妨害の抑止行為は一体のものである。
   そして本来、本人の自由意思に委ねられるべき行為について、その結果の実現のための職務の執行行為に対して抵抗がなされた場合に、法77条1項の適用として有形力の行使による結果の実現を認めるならば、結局は直接強制を認めることと同じ結果になってしまう。したがって、少なくともその結果の実現が本人の自由意思にかかわる性格を有する調髪・ひげそりについては、このような解釈適用は許されないと考える。
   なお、調髪・ひげそりの拒否の継続によって、医療衛生上の問題が生ずるような場合には、医療上の措置(法60条・62条)として調髪・ひげそりを直接に強制することは否定されない。
本件については、申告人は令和元年11月以降ひげそりを自ら行おうとせず、その後長期にわたって、1か月に1回ほどの頻度で、職員によるひげそりの強制的な実施が繰り返されてきている。しかし、職員がひげそりを行おうとするに際しての抵抗はさほど強いものではなく、毎回の抵抗も同様のパターンの繰り返しになっている。すなわち、申告人のひげそりの拒否が、真意に基づくものかどうかも疑わしい。
   したがってまた、毎回配膳室まで連行して強制的なひげそりを行うことの合理性、必要性も、疑問を感じざるをえない。むしろ、ひげそり自体を直接強制することはせずに申告人本人の意思に委ね、必要ならば上記医療上の措置として、時機を見て強制的な措置を行うという選択を検討してよいのではないかと思われる。そしてそれが、法の本来の趣旨に適合するのではないであろうか。