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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会(第309回)議事要旨


1 日時
  令和4年2月10日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
16件 16 0件 0件
 
3 意見その他
(1)書籍等の閲覧を禁止した措置の取消しを求める再審査の申請について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
  これらの案件に係る各機関誌の閲覧禁止の処分は、違法又は不当として取り消されるべきものと考える。
これらの案件は、刑事被拘禁者からの投稿等を掲載している民間団体発行の機関誌の閲覧を禁止した事案であり、法務省意見は、これら機関誌には「多数の犯罪性のある者の氏名やそれらの者が投稿したと思われる近況等が掲載」されていて、「本来、外部交通が許されない犯罪性のある者の間で脱法的に意思の疎通がなされている事実を踏まえ」ると、申請人がその閲覧により、「犯罪性のある者らとの脱法的な意思疎通の方法を模索することに熱中するなど」、その矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるとするものである。
もとより、機関誌等の個別の閲覧禁止の判断において、本件申請人の固有の資質や処遇における問題性が考慮されるべきことは否定しないが、その閲覧禁止の判断の前提とされている上記の理由については賛同しがたい。すなわち、本件各機関誌はもともと受刑者等「犯罪性のある者」とされる者たちの投稿を掲載し、広報し、情報を共有すること、そして刑事施設の処遇等に問題があればそれらを指摘し、社会化し、意見交換すること等を目的とするものと考えられ、そのような機関誌の存在は、表現の自由の一環として保障されるべきものである。ところが法務省意見のように、このような機関誌を通じての情報共有、意見交換等を受刑者同士等の「外部交通が許されない者同士の脱法的な意思疎通」だというならば、このような機関誌の存在とこれを媒体とする表現の自由を否定することになりかねない。なぜなら、この種の機関誌は基本的に、受刑者等の投稿と閲覧によって成り立っているからである。なお、このような機関誌が、刑事施設の処遇実態等に対する社会的な批判の契機となりうる側面も否定できない。
  そして、そもそも法務省意見が問題にする「外部交通の脱法」という点であるが、「外部交通」とは基本的に、被収容者が信書等によって特定人との間で意思連絡をすることであって、機関誌等の広報媒体によって不特定多数者に対して自己の意見等を発表し、その言論空間で意見交換をするというのは、上記の「外部交通」ではなく、基本的に「表現行為」の問題だと考えられる。したがってそこでは、表現の自由の制限についての厳格な基準が妥当する。しかも、機関誌等への投稿行為は積極的な意見表明等であるから、その内容によっては虚偽、煽動その他放置できない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があるとして個別に制限すべき合理的理由がありうるであろうが、機関誌等の閲覧行為は消極的・受動的な行為であって、しかも機関誌等に投稿された他の被収容者の投稿文も当該他の刑事施設の許可を得て投稿されていると考えられ、その閲覧自体によって矯正処遇の適切な実施に放置できない程度の障害が生ずる蓋然性は、定型的に低いものと考えられる。そしてこのような機関誌等の閲覧も、表現の自由の一環としての知る権利として尊重されなければならないことはいうまでもない。
  そして、このような観点から当該機関誌の内容についてみても、これらを申請人に閲覧させることによって法務省意見のような障害が生ずる蓋然性があるとは考え難い。
(2)発信書の一部抹消及び受刑者作成の文書図画を差し止めた措置の取消しを求める再審査の申請について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   これらの案件の法務省意見の当否・適否については、判断を留保する。
   これらの案件は、申請人が刑事被拘禁者からの投稿等を掲載している民間団体発行の機関誌への投稿をしようと、親族にその原稿の送付等を依頼しようとする発信書の一部抹消(及び文書の差止め)であるが、これらも広報媒体を通じての表現行為であり、その制限は、刑事施設の規律・秩序の維持、受刑者の矯正処遇の適切な実施に、放置することができない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があるか、また必要かつ合理的な範囲にとどまるかどうかを、個別具体的に慎重に判断する必要がある。
   そして、かかる観点からみるとき、申請人が投稿しようとしている複数の原稿の全てが、法務省意見の言うように「申請人の主観に基づき、事実を誇張又はわい曲し、あたかも権力の濫用が日常的に行われているかのような誤解を招きかねない」等と断定できるか、それを理由に各原稿の内容に即して個別に検討することなく、一律に制限の対象にすべきかについては、疑問を持たざるをえない。
   ただ、本件の場合、申請人は、刑事施設側の制限措置を免れるために、真の意図とは異なった説明をしたり、投稿ではないかのように装ったりして、親族を通じてその投稿の意図を実現しようとしているなどの経過も窺われ、かつ、刑事施設側を激しく非難する原稿も含まれていることも併せ考え、本件処分の当否・適否については判断を留保することとする。
(3)発信書の一部を抹消した措置の取消しを求める再審査の申請について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件文書の一部抹消は、違法であるか、少なくとも不当と考える。
   本件は、刑事施設収容中の者や支援者等からの投稿がしばしば掲載されており、刑事施設の運営を批判するものが多いとされる民間団体の機関誌に、申請人が2句の川柳を記載した文書を投稿しようとしたところ、刑事施設の貸与する衣類のサイズに関する刑事施設職員の発言を「無理難題」と批判し皮肉った1句を抹消したものである。
   しかしこれが、法務省意見のように、当該刑事施設の処遇等について、申請人の主観に基づき、事実を誇張又はわい曲し、あたかも権力の濫用が日常的に行われているかのような誤解を招きかねないとし、公刊されれば申請人の考えが社会一般に受容されたとの誤った認識を与えかねず、これにより、刑事施設の規範に対する申請人の反発意識はより強固となり、申請人の問題性を助長するとともに、改善更生への意欲が減退することにつながるから、矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある、とまでいえるかは疑問である。
   すなわち、川柳に記載された当該職員の発言が「事実を誇張又はわい曲」したものといえるかの確証はなく、また、この1句によって「あたかも権力の濫用が日常的に行われているかのような誤解を招く」というほどのものかは社会通念上も疑問であり、したがってまた、この1句が公刊されることにより、申請人が法務省意見のいうような誤った認識を持ったり、その問題性を助長したりして、矯正処遇の適切な実施に支障を生ずる具体的なおそれがあるといえるかは疑問である。
   そして、上記のような機関誌等への投稿は表現の自由の保障に関わるから、その制限は、受刑者の矯正処遇の適切な実施に放置できない程度の障害が生ずる相当のがい然性があるかどうか、また、必要かつ合理的な範囲にとどまるかどうかを、具体的かつ慎重に判断すべきものである。かかる観点から見るとき、この程度の川柳による刑事施設に対する批判をも許容せず禁止することは、表現の自由の制限として過大であり、違法であるか、少なくとも不当と考える。