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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会 (第315回)議事要旨

1 日時
  令和4年6月23日(木)14:00
 
2 審査件数
 
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
19件 19件 0件 0件
 
3 意見その他
  有形力の行使を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当(有形力の   行使に違法な点は認められない。)」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
  本件は、これまでの調査検討会で複数回検討した同一受刑者についての同種事案であり、そこで述べた個別意見と同様、本件についても、そのひげそりのための有形力の行使の適否・当否については、判断を留保する。
法60条1項は、「受刑者には、法務省令で定めるところにより、調髪及びひげそりを行わせる。」と規定し、規則26条4項は、「受刑者が調髪又はひげそりを行わないことを希望する場合において、その宗教、……その他の事情を考慮して相当と認めるときは、調髪又はひげそりを行わせないものとする。」と規定している。
  これらの規定は、一定の場合以外に受刑者に調髪・ひげそりを義務付けるものではあるが、それ以上に、職員が有形力を行使して調髪・ひげそりを強制すること(直接強制)まで認めたものとは解し難いと考える。
  法60条の規定は、刑事施設の長が調髪・ひげそりの結果を実現させる権限や責務を規定するものとはなっていないし、直接強制を認める場合に通常規定される合理性及び均衡性に関する規定もない。そして法の委任を受けた規則26条4項は、諸事情を考慮して調髪・ひげそりを行わせないことも規定している。また、調髪・ひげそりは、バリカンや(電気)カミソリなどの道具を使用し、その強制的実施が身体に傷害を及ぼす危険を否定できない性格のものであることも、考慮されるべきである。
本件法務省の意見は、法60条1項により申告人の意思に反してひげそりを行うことは適法な措置であるとし、それとは別に法77条1項を適用することによりひげそりの職務の執行を妨げる行為を抑止するための有形力の行使は適法であるというものであるが、この場合、意思に反するひげそりの実施とその妨害の抑止行為は一体のものであり、法60条の規定の趣旨として直接強制を認めるべきでないとすれば、法77条1項によってもそれは許容されないと解される。
もともと、調髪やひげそりは、個人の人格的自由に関わることがらであり、それゆえ、受刑者以外の被収容者については義務とされず、刑事施設はその便宜を与えることだけが規定されている(法60条4項)。このことと、これを強制的に行う場合の上記危険性も併せ考えれば、実質的にも、法77条1項の適用として有形力の行使による結果の強制的実現は回避されるべきものと思われる。
  もっとも、調髪・ひげそりの拒否の継続によって、医療衛生上の問題が生ずるような場合には、医療上の措置(法62条)として調髪・ひげそりを直接に強制することは是認しうる。