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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会(第317回)議事要旨

1 日時
  令和4年7月28日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
18件 18件 0件 0件
 
3 意見その他
(1)書籍等の閲覧を禁止された措置の取消しを求める再審査の申請について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件については、判断を留保する。
   本件書籍は、ごく一般的な販路で、普通の市民が手にするような書籍であり、その内容も資料として提示された10頁分を見る限り、記事のほとんどはすでに社会的に知られた内容をまとめたもののように思われる。このように一般人がごく普通に閲読する書籍の閲覧をも禁止することは、受刑者の読書の自由を大きく制限することになりかねない。
   読書の自由は知る権利の一環として、受刑者についても、その改善・更生に放置できない程度の障害が生じる相当の蓋然性がない限り原則として保障されるべきものであるところ、上記のような本件書籍の性格と内容に照らすならば、その閲覧を許すことが、申請人の矯正処遇の適切な実施に放置できない程度の障害が生じる蓋然性が具体的に示されるべきものと考えるが、本件についてはその判断をするに足りる根拠が十分ではないと考える。
(2)文書図画の交付差し止めの取消しを求める再審査の申請(3件)について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
     本件各件の信書の名宛人が形式上A弁護士個人となっていることから、本件処分については一応やむを得ないものと考えるが、刑事施設の規律・秩序の維持との兼ね合いが必要であることは前提としても、他方で被収容者の居室環境を含めた処遇実態をできるだけ社会に開示すべきでもある。そして、本件に関連して地元弁護士会において監視カメラ付き居室への収容についての人権救済申立事件の調査が行われているとのことであるが、監視カメラ付き居室への収容については、その拘禁感、圧迫感等を指摘して長期化を違法とした裁判例もあり(熊本地裁平成30年5月23日判決、その控訴審福岡高裁平成31年2月21日判決)、人権侵害の契機が存することも否定できないところである。したがって、少なくとも同弁護士会の人権救済申立事件の調査のための監視カメラ付き居室に関する照会に対しては、刑事施設としても可能な限りの対応をすべきものと考える。
(3)有形力の行使を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件については、法務省意見は不相当であり、違法な有形力の行使があったと考える。
   本件は、申告人の反則行為の取調べに当たっていた職員が、申告人が言うには、取調べ用の机の天板を足で蹴って机の角が向かい側に座っていた申告人の左膝にぶつかって打撲傷を負ったとの申立てであり、処分庁の主張では、同職員は反省の情がない申告人の態度に思わず感情的になってその机の天板に両手の平を1回強く突き、机が申告人方向に数センチメートルほど動き、申告人の左手に接触したように見受けられた、というのである。
   なお、このできごとの直後に机が左膝に接触したとの申告人の申出があったかどうかについては両者の言い分が異なるが、翌日(土曜日)に申告人から左膝の写真を撮影してほしいとの申出があったが、対応した職員は休日明けの月曜日に再度申し出るよう指導して写真撮影はしなかったこと、申告人が月曜日に医務診察を受けて全治3日間の膝打撲の診断がなされたこと等の事実に争いはない。
   また、申告人の着座姿勢について、これは動いた机が、申告人が受傷したという左膝内側にぶつかるかどうかの位置関係に関わるが、申告人は脚を開いていたと主張し、処分庁の調査報告書には脚を閉じて両手を膝の上に置いた状態との報告もあるが、両膝を約30センチメートルほど開いて両手を両太腿の上に置いていたとの報告書もある。
   上記の争いのある事実について、どちらの言い分が正当かを判断する的確な資料はないが、少なくとも最低限、当該職員が感情的になって机の天板に両手の平を1回強く突き、机が申告人方向に数センチメートルほど動いたという範囲では、処分庁によって自認されている。そして、この机は資料写真からスチール製のものとみられ、それなりの重量があると思われるところ、相当の強さで突かないと机が動くとは思われず、職員本人が感情的になっていたことも併せ考えれば、当該職員の行為は、机が申告人の身体に仮に触れなかったとしても、相当の気勢を示して机を申告人方向に動かし、接触や傷害を生じさせかねない「有形力の行使」すなわち暴行があったと判断せざるを得ないと思料する。
   なお、法務省意見は、机が申告人の膝に当たった事実は認められないとしているが、上記のとおり申告人の着座姿勢は必ずしも明確ではなく、その着座姿勢及び位置関係によっては机の角が申告人の左膝にぶつかった可能性が全くないとはいえないと思われるし、翌日申告人から左膝の写真を撮影してほしいとの申出があったこと、その後打撲傷の診断もなされていることなどの事情もあり、処分庁の意見も「机が申告人の左膝に接触した可能性は低く」というにとどまるから、「膝に当たった事実は認められ」ないと断定してよいかにも疑問がある。なおまた、処分庁は申告人の上記写真撮影の申出に対応しなかったが、これは明らかな落ち度であり、見方によっては、自己に不利益な証拠を残したくなかったのではないかとの疑念をも招きかねないのであって、この点も極めて遺憾である。
(4) 保護室への収容を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件については、申告人を「他人に危害を加えるおそれ」があるとして、保護室に収容し、約72時間後に中止しているが、申告人について72時間近くに及ぶ保護室収容の継続が必要だったかの当否、適否については、判断を留保する。
   申告人の保護室等録画書留簿や保護室被収容者動静等記録表を見る限り、2日目以降、大声や報知器の連打等の行動はなくなってほぼ安座や横臥が続いている状態であり、2日目の動静として「顔を合わせると立ち上がりぶきみな笑い顔をする」という記録がある程度である。また、3日目に監督当直者として勤務した者の保護室収容を継続したことについての報告書も、「にやつきながら本職の方に近付く」などの動静は報告しているものの、他害のおそれが継続していたかは疑問である。
   申告人は、事実の申告書において自傷他害や大声等もないのに3日間も保護室に収容されたことについて不服を申し立てており、この点についてもしかるべき応答が必要であると思われる。
(5)保護室への収容を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件保護室への収容の是非については、意見を留保する。
   本件においては、申告人が声を発したとして非常ベル通報がなされたが、統括が数名の職員とともに居室前に駆け付けた後は、申告人が制止に従わずに大声や騒音を発していた事実は認めがたく、さらに保護室への連行も抵抗なく行われている。
   そして、保護室への収容は、刑事施設の規律及び秩序を維持するため特に必要があるときであることが要件とされているところ、これは、被収容者の精神状態が著しく不安定であって手が付けられないような場合に限る趣旨と解される。したがって、非常ベル通報がなされた場合であっても、統括等の刑務官が現場に臨場した時点及びその後において、なお制止に従わずに大声や騒音を発しているような状況にない場合に、上記収容要件があるといえるかは極めて疑問である。保護室への収容の被収容者の心身への影響の強さに鑑みると、非常ベル通報がなされた場合であっても、その後の状況においてなお法79条1項2号の要件が存在するかどうかを慎重に判断する運用がなされることを望むものである。