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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会(第313回)議事要旨

1 日時
  令和4年5月19日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
20件 20件 0件 0件
 
3 意見その他
  有形力の行使を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当(有形力の   行使に違法な点は認められない。)」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
  本件ひげそりのための有形力の行使の適否・当否については、判断を留保する。
法60条1項は、「受刑者には、法務省令で定めるところにより、調髪及びひげそりを行わせる。」と規定し、規則26条4項は、「受刑者が調髪又はひげそりを行わないことを希望する場合において、その宗教、……その他の事情を考慮して相当と認めるときは、調髪又はひげそりを行わせないものとする。」と規定している。
  これらの規定は、一定の場合以外に、受刑者に調髪・ひげそりを義務付けるものではある。しかしこれらの規定は、それ以上に、職員が有形力を行使して調髪・ひげそりを強制すること(直接強制)まで認めたものとは解し難いと考える。
  法60条の規定は、刑事施設の長が調髪・ひげそりの結果を実現させる権限や責務を規定するものとはなっていないし、行政法規が直接強制を認める場合に通常規定される合理性及び均衡性に関する規定もない。そして法の委任を受けた規則26条4項は、諸事情を考慮して調髪・ひげそりを行わせないことも規定している。また、調髪・ひげそりは、バリカンや(電気)カミソリなどの道具を使用し、その強制的実施が身体に傷害を及ぼす危険を否定できない性格のものであることも、考慮されるべきである。
  本件法務省の意見は、法60条1項により申告人の意思に反してひげそりを行うことは適法な措置であるとし、それとは別に法77条1項を適用することにより、ひげそりの職務の執行を妨げる行為を抑止するための有形力の行使は適法であるというものである。しかし、意思に反するひげそりの実施とその妨害の抑止行為は一体のものであり、法60条の規定の趣旨として直接強制を認めるべきでないとすれば、法77条1項によっても許容されないと解される。
もともと、調髪やひげそりは、個人の人格的自由に関わることがらであり、それゆえ、受刑者以外の被収容者については義務とされず、刑事施設はその便宜を与えることだけが規定されている(法60条4項)。
  受刑者については、特に髪型については刑務作業上の危険や特異な髪型の防止など一定の範囲で自由を制約する必要はあろうが、ひげそりについてはそのような要請も相対的に低いと思われる。なお、昼夜居室処遇の場合には、他の作業者との関係での集団的規律の必要性も乏しいであろう。
  そして本来、調髪・ひげそりが個人の人格的自由に関わるものであり、また、これを強制的に行う場合に上記危険性も併せ考えれば、実質的にも、法77条1項の適用として有形力の行使による結果の強制的実現は回避されるべきものと思われる。
  もっとも、調髪・ひげそりの拒否の継続によって、医療衛生上の問題が生ずるような場合には、医療上の措置(法62条)として調髪・ひげそりを直接に強制することは是認しうる。
本件の個別事情からすると、申告人がいつから、なぜひげそりを拒否するようになったのかの経緯が、資料上明らかでない。本件のように激しく抵抗する申告人をむりやり押さえ込んでひげそりを強制する前に、その拒否的態度をコンサルティング等によって緩和する方法が採れなかったのであろうか。本件でひげそりを強制的に実施中、担当職員は「危ないぞ、危ないぞ」と連呼し続けていたが、このような危険を伴う人格的自由の抑圧措置は、他に手段方法がない真にやむを得ない場合に限定されるべきものと考える。