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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会 (第322回)議事要旨

1 日時
  令和4年11月10日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
30件 30件 0件 0件
 
3 意見その他
(1)書籍等の閲覧を禁止された措置の取消しを求める再審査の申請について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件については、意見を留保する。
   本件書面は、入れ墨・タトゥーの14店の実績・予約方法・値段・アクセス等を記載した、基本的に初心者向けのパンフレットであり、それ自体で「反社会的集団」との関連性を有するものではなく、一般社会においてはインターネット等で容易に入手できるものである。また、入れ墨・タトゥーも、社会的に相当程度受容されてきているといえる。そして、このような情報紙を閲読することも、表現の自由ないし知る権利の一環である。
   もちろん、書籍等の閲読の許否を判断するに当たって、当該受刑者の性向、行状等の具体的事情の下で、その改善、更生など矯正処遇の適切な実施への影響を検討すべきものであり、申請人は暴力団加入歴はないが暴走族への所属歴があり、本格的な入れ墨もしている等の事情も考慮すべきであるが、上記のような本件書面の一般的な性格からすれば、かかる情報を申請人から遮断しなければ、放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があるとまで言えるかは、やはり疑問がある。
(2)書籍等の閲覧を禁止された措置の取消しを求める再審査の申請について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件書籍の閲覧禁止の処分は、違法又は少なくとも不当であると考える。
   本件書籍は、暴力団犯罪に正面から取り組んだ現場指揮官の体験に基づくドキュメントであり、客観的裏付けのある社会性を持った出版物である。そして、一般に流通し、社会的評価に耐えうる内容を持ったこのような著作物については、受刑者に対しても、これを閲読する自由は、知る権利の一環としてできるだけ広く保障されるべきものである。
   もちろん、書籍等の閲読の許否を判断するに当たっては、当該受刑者の性向、行状等の具体的事情の下で、その改善、更生など矯正処遇の適切な実施への影響を検討すべきものであり、申請人は覚醒剤事犯等を繰り返してきた者であって、覚醒剤等の薬物と暴力団との関連を考慮すべきものではある。しかし、書籍等の閲覧の制限は、受刑者の改善、更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性がある場合に、必要かつ合理的な範囲に限って許されるものであり(最高裁大法廷昭和58年6月22日判決、最高裁平成18年3月23日判決参照)、上記のような本件書籍の性格・内容をも含めた具体的事情の下では、本件についてそのようながい然性・必要性・合理性を認めるべき根拠は不明であり、その閲読の禁止は、表現の自由ないし知る権利という基本的人権の優越的性格からして、違法又は少なくとも不当であると考える。
   なお、このような一般に流通し、社会的評価に耐えうる書籍等については、これを当該受刑者から遮断するのではなく、そのような一般的な情報に接した場合に、当該受刑者が受けることがあるべき悪影響を自らコントロールできる資質を身につけさせるような矯正処遇が肝要なのではないかと思われる。刑務所の中でだけ無菌状態に置いても、そのような資質を体得しなければ、社会に復帰してもたちまちその悪影響に染まることになるのではないかと思われるのである。
(3)書籍等の閲覧を禁止された措置の取消しを求める再審査の申請について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件書籍の閲覧禁止の処分は、違法又は少なくとも不当であると考える。
   本件書籍は、社会的に知られている言論人である著者たちによる、社会一般に流通している新書であり、一部に暴力団に関連する記事があるものの、それも含めて、多くのメディアが報道しようとしない事実に目を向け、メディアの潮流を批判しようとするものとして、社会的評価に耐えうる内容を持った出版物であると言える。そして、一般に流通し、社会的評価に耐えうるこのような著作物については、受刑者に対しても、これを閲読する自由は、知る権利の一環としてできるだけ広く保障されるべきものである。
   もちろん、書籍等の閲読の許否を判断するに当たっては、当該受刑者の性向、行状等の具体的事情の下で、その改善、更生など矯正処遇の適切な実施への影響を検討すべきものであり、申請人は覚醒剤事犯等を繰り返してきた者であって、覚醒剤等の薬物と暴力団との関連を考慮すべきものではある。しかし、書籍等の閲覧の制限は、受刑者の改善、更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性がある場合に、必要かつ合理的な範囲に限って許されるものであり(最高裁大法廷昭和58年6月22日判決、最高裁平成18年3月23日判決参照)、上記のような本件書籍の性格・内容をも含めた具体的事情の下では、本件についてそのようながい然性・必要性・合理性を認めるべき根拠は不明であり、その閲読の禁止は、表現の自由ないし知る権利という基本的人権の優越的性格からして、違法又は少なくとも不当であると考える。
   なお、このような一般に流通し、社会的評価に耐えうる書籍等については、これを当該受刑者から遮断するのではなく、そのような一般的な情報に接した場合に、当該受刑者が受けることがあるべき悪影響を自らコントロールできる資質を身につけさせるような矯正処遇が肝要なのではないかと思われる。刑務所の中でだけ無菌状態に置いても、そのような資質を体得しなければ、社会に復帰してもたちまちその悪影響に染まることになるのではないかと思われるのである。
(4)有形力の行使を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当(有形力の行使に違法な点は認められない。)」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件については、次のような疑問があり、意見を留保する。
   本件は、処分庁によれば、申告人がその居室の小机の上に書類を置いて見ていて、作業をしようとしなかったため、居室内に私物等があることが作業を行う上で支障があると判断して私物のない隣室に転室させようとし、その指示に従わない申告人に対して有形力を行使して転室させたというものである。
   申告人が小机の上の書類を見ていたかどうかは争いがあり、それは措くとしても、私物がない環境に置くことが、刑務作業をするようになることに結びつくかどうかについては、社会通念上因果関係がどれほどあるか、作業をさせるために効果が見込まれる手段であるかという点で、相当に疑問である。まして、その転室のために相当強力な有形力を行使して転室させても、申告人に作業をさせるには逆効果なのではなかったかと思われるのである。
   なお、申告人は手指の病気のために命じられた作業はできないと再三説明したと主張し、処分庁はこれを否定しているようであるが、カルテ上も本件の5日後からは手の痛みの訴えが繰り返し出てきて、約2か月後に「バネ指」と診断されていること、命じられた作業も軽作業とはいえ手指による作業であったことも、気になるところである。
(5)有形力の行使を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当(有形力の行使に違法な点は認められない。)」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   この判断そのものには異議はないが、この報告書類において、申告人が疑義を申し立てたこととは別に、「申告人が座位になることを拒否したために、立位によって、看護師Aが申告人の左腕を両手で下方より支えた状態で固定し、看護師Bが採血を行った」とされている。立位での採血という医療の場における尋常でない対応に大きな違和感を感じる。やむを得ない、特殊な事情があった場合、緊急事態の場合に臨機応変の対応があるべきとは思うが、本件において、立位での採血を行う緊急性があったかについては疑義がある。
   採血の方法について、おそらく法律的な規定はないものと思うが、そもそも採血は座位、又は対象者が臥床している状況が通常であるとの常識的認識の下に考えられており、敢えて立位における手技等の注意等を示した教科書的なものはおそらく存在しないと思う。指導書等にはあくまでも座位や臥床状態を前提に注意点が記載されており、座位にて行う場合には用いる椅子には背もたれ等があることが推奨される旨まで記載されているものである。これは痛みや恐怖、ストレス等が引き金となって迷走神経反射を引き起こし、意識低下等によって倒れ、それによって生じる採血中の事故を防ぐための注意事項である。迷走神経反射とは、ストレス、強い疼痛、恐怖、排泄、腹部内臓疾患などによる刺激が迷走神経求心枝を介して、脳幹血管運動中枢を刺激し、心拍数の低下や血管拡張による急激な血圧低下などをきたす生理的反応のことである。
   制度で決められた「健康診断」において、それを受ける権利が受刑者にもあり、その権利を守り、健康を維持するためにも、何とか採血して血液検査をしてあげるものであったとの説明がなされたが、権利を有する受刑者が、そのために必要な手技に必要な安全確保のための姿勢を拒否し、同検査に協力しないのであれば、立位の状態までして、採血する必要があったのかの検証が必要であると考える。万が一、立位という不安定な姿勢で採血を行い、迷走神経反射等が生じて姿勢が崩れ、その結果、採血針が折れたり、外れて大きな出血等に繋がった場合に、この行為には重大な注意義務違反が問われる可能性があるのではと危惧を感じた。
非常に複雑で、難しい環境の中で、担当する医師、看護師の皆さんの御苦労には察しても余りあるものがあると思うが、しかし、それらの方々の立場を守る為にも、医療における常識はきちんと守るべきものであると思う。
   本件において、本申請がなされる過程において、この採血方法に関して関係者内でどの程度の検証や議論がなされたのか、あるいは全くなかったのかも含め、今後の為にも十分な検証と場合によっては関係者の改めての研修、教育が必要な課題ではなかろうかと思うので、本件においては、問題提起をしておきたい。