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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会 (第323回)議事要旨

1 日時
  令和4年12月1日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
27件 27件 0件 0件
 
3 意見その他
(1)保護室への収容を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、2名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件事実の再申告は、令和2年10月25日から26日まで全裸で保護室に収容され続け、また、同日朝にシャツ及びパンツを貸与されてからも同日午後に保護室収容が中止されるまで、シャツ及びパンツの状態で放置されたというものであるが、まず、本件に関する視察表その他の記録を見ても、上記申告に係る期間中の保護室における処遇内容について、刑務所側がどのような対処をしたのかが明確ではなく、申告人の申告内容の事実関係を具体的に確認できないということ自体の問題点を指摘しておかなければならない。
   そして保護室等録画書留簿を見る限り、申告人は、同月24日午後零時3分に全裸になり大便を体中に塗っている、同時56分体中大便まみれにもかかわらず丸首シャツ、パンツ、居室衣上下を着衣するなどのことがあった後、同月25日午前9時49分以降全裸でいる様子が認められ、同日午後5時20分毛布2枚を与えられ、毛布にくるまって横がして過ごしたというものの、翌26日朝から午後1時35分に保護室収容中止になるまで着衣の状況についての記載はない。そしてこの間、刑務所側が申告人の身体を洗浄したことがあったとは認められず、また、新たな居室衣を貸与したとも認められない。
   このような事実関係からすると、確かに同年10月24日は土曜日、同月25日は日曜日で対応できる職員が不足していたとの推測はできるものの、また、夜間は毛布が貸与されてはいるものの、少なくとも1昼夜以上、大便を身体に塗りつけた状態で全裸のまま放置する結果になったことは否定できない。そしてそれは申告人本人の行為によるものとはいえ、上記のような状態で申告人を放置したことはいかにも非人道的処遇であると言わざるを得ない。したがって、かかる措置は、少なくとも不当なものと考える。
(2)有形力の行使を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当(有形力の行使に違法な点は認められない。)」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件は、これまでの調査検討会で複数回検討した同一受刑者についての同種事案であり、そこで述べた個別意見と同様、本件についても、そのひげそりのための有形力の行使の適否・当否については、判断を留保する。なお本件において、申告人の抵抗の状況から負傷させるおそれがあると判断し、ひげそりの実施を中止したことは妥当である。
   法60条1項は、「受刑者には、法務省令で定めるところにより、調髪及びひげそりを行わせる。」と規定し、一定の場合以外に受刑者に調髪・ひげそりを義務付けるものではあるが、それ以上に、職員が有形力を行使して調髪・ひげそりを強制すること(直接強制)まで認めたものとは解し難いと考える。
   もともと調髪やひげそりは個人の人格的自由に関わることがらであり、強制になじまない性格を有するほか、バリカンや(電気)カミソリなどの道具を使用するため、その強制的実施が身体に傷害を及ぼす危険を否定できない。
そして法60条の規定は、刑事施設の長が調髪・ひげそりの結果を実現させる権限や責務を規定するものとはなっていないし、直接強制を認める場合に通常規定される合理性及び均衡性に関する規定もない。さらに、法60条の趣旨として意思に反した直接強制を認めるべきでないとすれば、同条とは別に法77条1項を適用し、有形力を行使して結果の強制的実現を図ることも許容されないと解される。
   もっとも、調髪・ひげそりの拒否の継続によって、医療衛生上の問題が生ずるような場合には、医療上の措置(法62条)として調髪・ひげそりを直接に強制することは是認しうる。
(3)保護室への収容を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件保護室への収容は、違法、又は少なくとも不当と考える。本件は、申告人が騒音を発する前から監督当直者が居室前に臨場しており、その指揮の下で起床後の毛布の引上げを申告人の抵抗を排して実施したところ、申告人が居室扉を3回蹴りつけて騒音を発したというものであるが、監督当直者がその行為を制止したところ申告人は騒音を発するのをやめて居室内に座ったという事実が明らかである。それにもかかわらず、監督当直者はそのまま申告人の保護室収容を指揮している。
しかし、保護室収容という措置が、被収容者の心身に重大な影響を与えるおそれのあるものであることに鑑み、被収容者が「刑務官の制止に従わず、大声又は騒音を発するとき」などにおいて、被収容者の精神状態が著しく不安定で、手が付けられないような場合に限る趣旨で、「刑事施設の規律及び秩序を維持するため特に必要があるとき」と規定されたものである(法79条1項2号イ)。そうだとすれば、本件において監督当直者の制止に従って騒音を発することを止めた申告人について、保護室収容要件はなかったと言わなければならない。
   なお、本件保護室収容前後の状況から申告人の精神状態が不安定であったことが認められるとしても、それだけで保護室収容要件が充足されるものでないことは明らかである。また、申告人がこの違法又は不当な保護室収容指揮に抵抗して職員の腕を押しのけるなどの動静があったとして、同号ロに規定する保護室収容要件が存在したとすることにも、その前の保護室収容指揮という先行行為が申告人の抵抗を誘発した側面を否定できず、疑問を禁じ得ない。また少なくとも、それによって同号イを理由とする保護室収容指揮の違法性又は不当性が治癒されたり解消されたりするものではない。