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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会 (第325回)議事要旨

1 日時
  令和5年1月19日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
12件 12件 0件 0件
 
 
3 意見その他
(1)保護室への収容を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、2名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件は、申告人が居室の扉を蹴って騒音を発し続け、保護室に収容された事案であるが、本件において保護室収容という措置が適切であったかどうかについては、疑問も残る。申告人は幼少時から義父による性的虐待等の過酷な生育歴を持ち、既往症としてPTSD、パニック障害、躁うつ病等との診断歴がある。申告人によると、本件当日、受診時に医師から受けた言動によりパニックになって呼吸ができなくなった、その後イライラして居室の扉を蹴ったというのであるが、このように抑制が困難になる状態がその精神疾患に由来し、又は一因となっている可能性も強く考えられる。そして、そのような受刑者に対しては、保護室収容という処遇は慎重に判断し、まずは静穏室への収容という選択もあってよかったように思われる。
   そして、本件を「静穏阻害」として他の反則行為と合わせて申告人に懲罰が科されているが、本件が疾患あるいは疾患に基づく精神状態に由来して、申告人の意思による抑制が困難なものであったとすれば、懲罰をもって処遇することについては、一層の疑問を感じざるを得ない。加えて、本処置が申告人の心身の健康も加味した矯正に正しく効果をあげるものであるか、真摯に熟考すべきであると考えるものである。
(2)有形力の行使及び手錠の使用を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、2名の委員から下記アとおり、1名の委員から下記イのとおり意見が付された。
  ア 本件の有形力の行使及び手錠の使用は、少なくとも不当であったと考える。
    本件は、申告人を保護室に収容中であったところ、「申告人がシャツをけい部に巻き付けて結んだ」ことについて、統括職員がこれを自傷のおそれがあるとして保護室収容要件を追加するとともに、申告人を制止してシャツを引き上げるよう指揮したところ、申告人がこれに激しく抵抗したことから、申告人の顔面に催涙スプレーを噴射した後第二種手錠を使用して制圧したというものである。
    しかし、申告人は首にシャツを巻いた状態で運動していただけで自殺など勘違いである等と主張しているところ、本件のカメラ映像をみても、申告人が首に巻いたシャツを強く締め付けた等の様子までは観取されず、万が一のことを考えたとしても、統括職員の判断と指揮は早計であり、申告人に自殺企図歴がなく、本件の状況の推移の下で申告人が自殺に及ぶ動機も考えにくいと思われることからすれば、いきなり実力の行使を指揮したことは不当であったと考える。その判断を誤らなければ、本件のような大捕物に及ぶことは避けられた可能性がある。また、本件有形力の行使の後、申告人に対して「興奮しているようであるから鎮静剤の注射をする」との処置をしているが、急激な激しい実力行使が行われれば、大きな動揺、パニックが生じるのは当然であり、何故そのようなそのような処置を要することになったのか、そのような事態を惹起してしまった指揮、対応に対して、過剰な対応ではなかったか、真摯に反省すべきところがあるのではないかと考える。
  イ 保護室への入室から制圧までの時間が短いことに疑問が生じる。シャツを首に巻く行為が、直接的に自傷行為につながるとの現場の職員の判断は、第3者が映像を見た限りそのようには思えない。したがって、いきなり制圧に入るのではなく、もう少し時間と回数を掛けて申告人の行動を観察し、その結果をもって制圧に動くべきではなかったのかと思料する。
    手錠等を使用した上で制圧するまでに関しては特に問題ないと思料するが、その後の注射器を使用するまでの一連の流れが適切な措置であったのか疑問が生じる。本来であれば、手錠を使用した後、手錠の使用中に保護室に収容することが第一段階であり、安定剤等の投与は第二段階であることが通常の流れであると思料する。具体的には、手錠を使用した後に一度職員は保護室から退出し、申告人の精神面の変化を一定時間観察した上で、それでも申告人の興奮状態やパニック状態が治まらないようであった場合に医師の判断で医療行為(薬物の投与)を行うといった、2段階に分けた処置が最適だったのではないだろうか。また、興奮状態の対象者に注射を打つことは筋肉の硬直や高血圧等からも身体に害を及ぼす可能性が高く、最悪、ショック死等の懸念が考えられ、社会的問題にも発展する可能性があることから、慎重な対応が望まれると思料する。
    本件有形力の行使が悪かったというより、今後、このような有形力の行使が再び起こらないことを願いたい。
(3)保護室への収容を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件保護室収容は、その収容開始の時点で収容要件を充足していたと言えるか疑問であるとともに、極めて長期にわたる保護室収容の反復・継続自体が尋常ではなく、申告人の受刑者としての姿勢に基本的問題があるにせよ、安易に保護室収容が開始され、反復・継続されていたとの感を禁じ得ない。実力をもっての保護室収容が悪循環と負担増をもたらしているところがあるように思われ、保護室収容の慎重な運用を望むものである。
   本件において、統括職員が申告人の居室前に臨場した後は、申告人の大声は止んでいたものである。保護室収容という措置は、被収容者の心身に重大な影響を与えるおそれのあるものであることから、被収容者が刑務官の制止に従わず、大声又は騒音を発するときなどにおいて、被収容者の精神状態が著しく不安定で手が付けられないような場合に限る趣旨で、「刑事施設の規律及び秩序を維持するため特に必要があるとき」と規定されたものである(法79条1項2号イ)。そして法は、保護室収容については、特に「刑事施設の長の命令」によるべきこと、及びその「命令を待ついとまがないとき」に限って刑務官のその場の判断で収容しうることとしているのであり(法79条1項柱書き及び2項)、統括職員が現場に望んだときに大声が止んでいればその「いとま」もあり得ることになるから、この点からも慎重な判断が求められる。