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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会 (第327回)議事要旨

1 日時
  令和5年3月16日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
19件 19件 0件 0件
 
 
3 意見その他
(1)有形力の行使を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
本件の催涙スプレーの使用については、違法との判断までは差し控えるが、不当な有形力の行使と考える。また、催涙スプレーの使用基準の策定を検討されたい。
   本件は、申告人の自傷行為を防止するため、歯ブラシ等の洗面用具を使用時に居室に入れ、使用後は引き上げる取扱いをしていたところ、申告人が洗面等の終了後も歯ブラシを右手に握りしめて提出指示に従わなかったため、監督当直者において、催涙スプレーを使用する旨警告したがこれにも従わなかったことから、申告人に催涙スプレーを噴射して歯ブラシを引き上げたという有形力の行使である。
   催涙スプレーは、法77条1項の被収容者の行為を抑止するため必要な措置を執る場合の警備用具の一つとして規則36条に規定されているものであるが、どういう場合にこれを用いるべきかの使用基準らしきものは、関係訓令等を含めて見当たらない。しかし、催涙スプレーは、少なくとも使用した相手の身体に生理的変化としての侵襲(傷害)を与えるものであり、その使用は慎重になされるべきものであると考える。したがってその使用は、十分な説得はもちろん、少なくとも相手に傷害を生じる危険のない範囲での職員の素手による抑止の措置等を試みてもその抑止が困難であるなど、比例原則に基づき、より侵襲の少ない方法を試みた上で使用されるべきものであろう。
   ところがビデオカメラ映像によると、本件において監督当直者は、これらのより侵襲の少ない方法を試みることなく、また申告人が攻撃的な態度を示して防御の必要があった状況でもないにもかかわらず、催涙スプレー使用の警告後、ほとんど間を置かずスプレーを噴射しており、上記のような比例原則に適合しない不当なものであったといわざるを得ない。安易な催涙スプレーの使用は戒めるべきである。
(2)保護室への収容を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当(有形力の行使に違法な点は認められない。)」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件の保護室収容は、申告人が居室前廊下を水等で汚損したこと及び職員に水を掛けたことから、法79条1項2号ハ(設備等の損壊・汚損のおそれ)及び同号ロ(他害のおそれ)に基づきなされたものであるところ、更新が2回なされて、通算7日間近く収容が継続したものである。
   いうまでもなく保護室への収容は、被収容者の心身に重大な影響を与えるおそれがあることから、その収容要件を充足するとともに、「刑事施設の規律及び秩序を維持するため特に必要であるとき」に限ってなされるべきものであり、更新に当たってもこれらの要件が充足されていることが必要である。
ところが本件において、1回目の更新は、毛布を提出しなかったり語気荒く「やだ」などと述べていて心情が著しく不安定であること、2回目の更新は、トレイを提出しなかったり奇声を発するなど精神的に不安定な状態にあることが理由とされているところ、それが上記損壊・汚損のおそれや他害のおそれの要件を満たすのか、疑問を生じる。そして、保護室収容中止の直前においても、大声で放言し続けている状況で、精神的に不安定な状態自体は改善されていたわけではない。
   したがって、本件について、更新を繰り返して7日間近く保護室収容を継続した措置には疑問がある。
(3)保護室への収容を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件の保護室収容は、申告人がタオルケットを首に巻き付けたり結んだりしていたことが法79条1項1号(自傷のおそれ)に該当し、また、保護室用衣類を損壊したことから同項2号ハ(損壊・汚損のおそれ)に該当するとしてなされたものであるところ、更新が3回なされて、通算8日間以上収容が継続したものである。
   保護室収容について注意すべきこと、更新に当たっても収容要件の充足が必要であること等は、(2)において述べたとおりである。ところが本件において、1回目の更新に際しては保護衣を破こうとする動静があった等損壊・汚損のおそれが認められそうであるが、2回目及び3回目の更新は、保護衣の上下逆さまの着用、放言・無視などの言動から精神的に不安定であることが理由とされており、保護室収容の更新・継続の要件が満たされていたのか、疑問を生ずる。そして精神的に不安定な状態は、保護室収容中止の直前も同様である。
   したがって、本件についても、更新を繰り返して8日間以上保護室収容を継続した措置には疑問がある。