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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会 (第329回)議事要旨

1 日時
  令和5年5月18日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
24件 24件 0件 0件
 
3 意見その他
(1)書籍等の閲覧を禁止された措置の取消しを求める再審査の申請について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件書籍の閲覧禁止の処分は、少なくとも不当であると考える。
   本件書籍は、いわゆる尼崎連続変死事件について、関係者等の取材を通じて真相を追究したドキュメントであり、著者も一般に知られたノンフィクションライターである。そして、一般に流通し、社会的評価に耐えうる内容を持ったこのような著作物については、受刑者に対しても、これを閲覧する自由は、知る権利の一環としてできるだけ広く保障されるべきものである。
   もちろん、書籍等の閲覧の許否を判断するに当たっては、当該受刑者の性向、行状等の具体的事情の下で、その改善、更生など矯正処遇の適切な実施への影響を検討すべきものであり、特に申請人は、逮捕監禁、強盗致死の罪で受刑中の者で、暴力団所属歴も長いとのことであり、本件書籍の内容との関連を考慮すべきものではある。しかし、書籍等の閲覧の制限は、受刑者の改善、更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性がある場合に、必要かつ合理的な範囲に限って許されるものであり(最高裁大法廷昭和58年6月22日判決、最高裁平成18年3月23日判決参照)、当該書籍が一般に流通し、社会的評価も得ているものである場合には、知る権利の保障の要請が強く働くから、これを閲覧することによってその矯正処遇に具体的にいかなる障害が生ずる蓋然性があると見込まれるのかが、当該申請人の矯正処遇の具体的実態に即して特定されるべきであり、単に申請人の好奇心を無用にかき立てるとか、殺人等の手法を模倣しかねないとかの一般的な可能性の指摘では足りないというべきである。
(2)信書の作成要領を制限した措置の取消しを求める再審査の申請について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件においては、弁護士Aに宛てた信書の内容が不明で、Aに対して同封する本件書面をどうしてくれというのかも判然としないため、本件書面の同封を不許可とする本件措置の当否等を判断することが困難なので、問題点を指摘しておく。
   本件書面は、「2(2)について」、「4(4)について」、「第二弁護士会に送ったこの手紙」などと述べていて、それは申請人が懲戒請求をした弁護士Bや弁護士Cの懲戒手続における主張に対する反論とも理解し得るものであり、また、10枚の本件書面のうち8~9枚は、BやCの非違行為を指摘しようとするものであって、申請人の意図が、Aに対して本件書面を弁護士会に提出することを求めるものであったとすれば、その同封を不許可とした本件措置には問題があったことになろう。
   確かに、本件書面の最後のあたりには、B及びCに対する着手金等の返金を求め、それをもって解決する選択肢の記載があるが、それだけで本件書面が、Aを介してB及びCに伝達を求める通信文だとは言い切れないように思われる。
(3)有形力の行使を違法とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件の催涙スプレーの使用については、違法との判断までは差し控えるが、不当な有形力の行使と考える。また、第327回調査検討会及び第328回調査検討会で意見を述べたとおり、催涙スプレーの使用基準の策定を検討されたい。
   本件は、閉居罰執行中であった申告人が、居室内で、願箋記載のために使用を許可されたボールペンを握りしめて返そうとしなかったため、統括職員が、居室の外から、指示に従わない場合には催涙スプレーを使用する旨予告し、なおもボールペンを提出しようとしない申告人に対し、居室の扉を開けて申告人に対し催涙スプレーを使用してボールペンを放させたという事案である。しかし、ビデオカメラ映像で確認したところによると、統括職員は、居室内に扉を開けて立ち入った後、「放しなさい」と一度指示したものの、その直後に催涙スプレーを使用しており、他に腕をつかむなどしてボールペンを提出させる試みも行っていない。なお、その場にはビデオ撮影者を含めて5人の職員が臨場していたとのことであるから、申告人の身体を把持するなど他の手段方法でボールペンを提出させる可能性はあったと思われる。
   催涙スプレーは、法77条1項の被収容者の行為を抑止するため必要な措置を執る場合の警備用具の一つとして規則36条に規定されているものであるが、どういう場合にこれを用いるべきかの使用基準らしきものは、関係訓令等を含めて見当たらない。しかし、催涙スプレーは、少なくとも使用した相手の身体に生理的変化としての侵襲(傷害)を与えるものであり、その使用は慎重になされるべきものであると考える。したがってその使用は、十分な説得はもちろん、他に可能な抑止措置等を試みてもその抑止が困難であるなど、比例原則に基づき、より侵襲の少ない方法を試みた上で使用されるべきものと考える。