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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会 (第338回)議事要旨

1 日時
  令和5年11月16日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
20件 19件 1件 0件
 
3 意見その他
(1)有形力の行使及び保護室への収容を違法又は不当とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件の保護室への収容の適否、当否については、判断を留保する。
   保護室については、旧監獄法時代には法律上の規定がなく、「保護房」と称され、その濫用事例が度々問題になっていた。行刑改革会議提言(平成15年12月22日行刑改革会議)においても、「保護房への収容は、受刑者の心身に与える影響が大きいことから、その運用については、特に慎重な取扱いが求められていたところであるが、一連の名古屋刑務所事案を契機として、保護房への収容及び収容後の取扱いに適切さを欠く事例が散見されることが顕在化するに至った」として、「保護房収容の適正さを確保するため、収容の要件及び手続等については、明確に法定すべきであり、その要件の認定については厳格に行うように努めるべきである。」とされたところである。そして、『逐条解説刑事収容施設法(第3版)』(361頁)においても、「被収容者の精神状態が著しく不安定であって、手がつけられないような場合に限る趣旨で、「刑事施設の規律及び秩序を維持するため特に必要があるとき」と規定されたものである」と解説されている。なお、「行刑改革会議提言についての日弁連の意見」(平成16年2月1日日本弁護士連合会)は、「保護房収容者の多くは精神疾患に罹患していることや精神が不安定になっているものが多いことから、これに対しては、保安的対応ではなく、対話に基づく医療的対応を基本とする方向に実務を改善すべきである」と述べている。
   このような立法事実や立法趣旨に照らすと、事実の再申告がなされる事案の中に、保護室収容要件該当性に疑問があり、安易に収容指示がなされているのではないかと思われる事案に、まま遭遇する。本件の申告人に対する保護室収容の近接した3つの事案とも、統括や監督当直者が居室に駆け付けたときは居室中央に座っているなどして、大声はやんでおり、表情が険しいなどから精神状態が著しく不安定であると判断したというものであって、客観的に「手がつけられないような状態」とは言いにくい。ただ、申告人が静穏阻害等の反則行為を非常に頻繁に繰り返している実情があることなどを勘案する必要はあろうかと思われ、本件保護室収容の適否、当否についての意見は留保するものである。
   しかし、上記立法趣旨がなおざりにされ、安易な保護室収容がなされる傾向がないかどうか、個別の検討を怠らないことの必要性を改めて指摘しておきたい。
(2)有形力の行使及び保護室への収容を違法又は不当とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件は、静穏室に収容されていた申告人が、同室の扉を強く繰り返し蹴り、又は強く蹴り続けたため、法79条1項2号ハに規定する刑事施設の設備等を損壊するおそれがあるときに該当するとの理由で保護室に収容された事案であり、頑丈な静穏室の扉であっても、強く繰り返し蹴ることで建付けが悪くなるなど損壊のおそれが生じ得ることは理解できる。したがって、結論として法務省意見に異議を述べるものではない。
   ただし、静穏室の扉が損壊するおそれがあるとすれば、相当な強度で繰り返し蹴る行為がなされた場合であると思われ、本件の申告人の行為がこれに該当すると判断するに足りる資料がやや乏しいとの感を否めない(根拠資料においては、蹴った衝撃で扉が激しく震動する、との状況が報告されている程度である。)。特に、申告人は扉を蹴るという行為を長期間続けてきているところ、居室において扉を蹴る場合に同号イの騒音を発するときに該当するとして保護室収容が繰り返されてきた経緯があり、本件以外は、その前後を通じて扉を蹴る行為に対して同号ハに該当するとして保護室に収容されたことはないとのことであり、また、本件の場合が特に蹴り方が強かったとの事情が仮にあったとしても、そのことを認定するに足りる的確な資料は見当たらない。繰り返される同様の行為に対して、それにより生じる影響の差異を基に判断を変更する場合には、その根拠事実を明確にすることが望まれる。