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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会 (第339回)議事要旨

1 日時
  令和5年12月7日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
19件 19件 0件 0件
 
3 意見その他
(1)保護室への収容を違法又は不当とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付され、1名の委員が賛同した。
   申告人を保護室に収容したことに違法又は不当な点があったこと、及びその際に違法な有形力の行使があったことは認められない。もっとも、携帯用ビデオカメラの映像によれば、申告人を保護室に連行した際に申告人はメリヤスを着用していたものの、施設が貸与した上着は着用しておらず、居室から申告人を連れ出す際には、申告人の足元に上着が放置されていた。11月2日は冬季であり、また、屋外に連れ出す必要があったことから、メリヤスを重ね着していたとしても、上着の着用を申告人に指示し、着衣をさせてから連れ出す配慮が望ましかったと思われる。
(2)保護室への収容を違法又は不当とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付され、1名の委員が賛同した。
   申告人を保護室に収容したことに違法又は不当な点があったこと、及び全体として違法な有形力の行使があったことは認められない。もっとも、携帯用ビデオカメラの映像によれば、申告人が頭を持ち上げてビデオカメラに向かって発声を続けるなか、職員の一人が、当該発声を抑止する目的をもって申告人の頭に手のひらを載せ、手のひらを下げることによって頭を下げさせ、ビデオカメラに向かって発声できない状態にしたことが認められる。ビデオカメラに発声し続ける状態を解消し、円滑に保護室への連行を実施する必要が仮に認められるとしても、抑止の手段はより穏当なものであることが望まれるものと考える。
(3)有形力の行使及び保護室への収容を違法又は不当とする事実の申告について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件についての適否・当否については判断を留保する。
   本件においては、少なくとも職員Aが非常ベル通報をする前の時点で、申告人が大声を出していたと認めるに足りる証拠はない。「見とるもんで、あってなるでしょ。」「あ。」という申告人の言葉は、職員Aの視察や問い掛けに対する、自然な反応とみられる。それにもかかわらず職員Aが「静かにせえ」と繰り返した上、非常ベル通報をしたとすれば、それはある種の挑発による言わば「でっち上げ」と考える余地を否定できない。現に非常ベル通報後監督当直者らの現場到着前にも、職員Aは申告人の発声がないのに「大きい声を出すな」等と繰り返しているとみられ、これらも挑発的対応と評価する余地がある。そして、現場に駆け付けた監督当直者は、職員Aの「制止に従わず、大声を発し続けたため、非常ベルを通報しました」との報告に基づいて、そのまま保護室に収容するよう指揮をしているが、監督当直者が駆け付けた後に申告人が大声を発する事実があったとは認められない。
   さらに重ねて指摘すべきは、監督当直者は、申告人が大声を発している状態を現認しているわけではなく、上記のような問題のある職員Aの報告に基づくだけで、それを真に受けて、そのまま保護室収容指揮をしてしまっているとみられることである。保護室収容は、被収容者の心身に強度な影響を与えるおそれがあるため、その精神状態が著しく不安定で「刑事施設の規律及び秩序を維持するため特に必要があるとき」に限って認められるべきものであるから、基本的に、その収容を指揮する責任者が現に大声を発している等の状態を確認し、その収容要件の充足を慎重に判断すべきものである。この点からも、本件における大声を理由とする保護室収容指揮は、違法又は不当であった可能性がある。
   法務省意見は、職員Aが申告人に対して静かにするよう制止した行為の態様は合理性を欠くものとし、上記の大声による保護室への収容指揮は保護室収容要件を満たしていないと判断しつつも、その後、申告人が保護室に連行される途中で職員Bの頭部を右手でたたいた事実が認められ、これは上記の大声による保護室収容とは別の場面、別の行為であると評価して他害のおそれによる保護室収容を適法と判断する。しかし、大声による保護室への収容指揮という、上記のように刑務所側にかなり問題の多い誤った措置がなければ、そもそも保護室への連行という事態は生じなかったものであり、また、この頭部をたたいた行為も誤った保護室収容という措置に対する抵抗、反発に起因し、誘発されたものとみられる。
   そして、一般論としては、法務省意見のように、保護室への連行中に申告人が職員Bの頭部をたたいた行為は別の行為として評価されるべきものであろうが、職員Aの申告人に対する対応が上記のように挑発というべきものであった可能性が否定できず、その職員Aの報告を安易に真に受けて監督当直者が保護室への収容指揮をしたとすれば、刑務所側の責任は相当に大きいものといわなければならない。他方、申告人が職員Bの頭をたたいたという行為は、ヘルメットの上から一度だけの軽度のものとみられ、刑務所側のかなり問題のある保護室への収容措置に誘発されたものとすれば、均衡の原則に照らし、別個の行為と評価しての保護室収容の正当性判断には疑問の余地があると思われる。
   なお、申告人は、職員Aに対する反抗の反則行為調査において、非常ベル通報前に大声を出したと認める供述をしているが、その経緯について、映像記録の検証結果に照らして誤りであることが明らかな職員Aの報告書どおりの供述となっており、その「自白」信用性は疑わしい。