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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会 (第353回)議事要旨

1 日時
  令和6年10月31日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
16件 13件 3件 0件
 
3 意見その他
(1)信書の発信を制限された措置の取消しを求める再審査の申請について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、1名の委員から以下のとおり意見が付された。
   本件は、申請人から養父Aに宛てた信書の発信につき、Aが「申請人の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者」に該当し、申請人とAとの養子縁組は「外部交通に関する各種規制を潜脱する目的」でなされたものであるとの判断のもと、規制潜脱目的の養子縁組の場合は刑事収容施設法第128条の「親族」に当たらないとする通達の解釈を根拠に、発信を認めなかったものである。
   この点、申請人とAは、数年にわたり刑務所内の同一工場で就業しており、Aの出所後も、AやAの妻との信書の発受を通じた交流が数年にわたり続いていたことに加え、申請人が無期懲役受刑者で、親族とは絶縁関係にあり、自身の死後のことを考えAの養子になりたい旨を関係者に伝えていたことに鑑みれば、申請人とAの間には、刑務所内や信書による交流を通じ、真に養親子関係となることを望む精神的なつながりが醸成されていたようにも思われる。そのようなつながりから養親子となった者同士であれば、自由な外部交通を欲するのは自然なことであり、申請人が、養子縁組をすれば自由に外部交通ができることを意識していたとしても、それをもって「外部交通の規制を潜脱する目的で養子縁組を行った」と断ずることはできない。
  また、一般論として、刑務所内で形成された交友関係を断ち切るべき必要性は理解できるものの、双方が、縁組意思をもって適法に縁組を行った場合には「親族」となるのであり、法第128条は「親族」の範囲を限定していないのであるから、信書の発受は制限されないのが本来である。それにもかかわらず、通達を根拠に親族の範囲を限定し、規制の範囲を広げる取扱いについては、基本的な疑問を禁じ得ない。もとより「縁組意思」や「潜脱する目的」は、一見して明らかなものではなく、運用次第で恣意的あるいは過度に広範な規制に繋がりかねないため、通達による制限を許容するとしても、限定的になされるべきである。少なくとも本件において、Aとの信書の発受を一律に禁じなければ申請人の矯正処遇の適正な実施に支障を生ずるおそれがあるといえるほどの事情は伺われず、仮に信書に矯正処遇上の支障になり得る内容があれば法第129条に基づく制限が可能であることを踏まえても、養父Aとの信書の発受を一律に禁ずる処分庁の取扱いは、矯正処遇上必要な範囲を超えた過度な制限であり、不当と言わざるをえない。
(2)第352回において再調査相当とされた案件のうち1件については、付議を取り下げることが了承された。