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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会 (第364回)議事要旨

1 日時
  令和7年8月21日(木)14:00
 
2 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当  再調査相当 処理案不相当
14件 14件 0件 0件

3 意見その他
  指名医による診療を不許可とされた措置の取消しを求める再審査の申請について、「法務省意見相当」との結論に至ったが、5名の委員から、以下のとおり意見が付された。
(1)3名の委員から付された意見
   本件は、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「法」という。)第63号第1項による指名医による診療を不許可としたものであるところ、かかる処分に違法又は不当な点はないとする法務省の意見に異論はない。ただし、本件が刑事施設における医療の在り方に係るものであることから、関連して、法第62条及び第63条の運用につき意見を述べる。
   法第63条第1項は、指名医等による診療は刑事施設内において行われるものと規定している。そして、同条第2項は、指名医等(指名医)による診療の方法の確認のため、職員の立会い、指名医に対する質問、診療録の写しその他の資料の提出の求めをする権限を当該刑事施設の長に認めている。これらの規定は、刑事施設における医療は刑事施設の長の責任において実施されるものであるとする立場に基づくものであると解され、この趣旨は、我が国の矯正行政の現状に照らし合理的なものと認められる。
   もっとも、同条の運用に際しては、刑事施設の外にあっては認められている医療機関や医師の選択権が刑事施設内においては被収容者につき制約されていることを踏まえ、刑事施設の長の判断がされることが望ましい。
   その上で、特に、高度な医療を実施する必要のある重篤な疾患にり患している被収容者に関しては、当該者の精神の安定を図る見地からも配慮する必要性が高い。
   例えば、収容施設内の体制では対応は困難である診療を必要とするときに、対応可能な近隣の医療機関での診療が適当である、又は医療環境のより整った刑事施設に移送するのではなく近隣の医療機関における診療が適当である等の判断を指名医等(指名医)が示した場合には、当該判断の妥当性に医学上異論の余地のないときはもちろんのこと、見解の違いはあり得ても医学上の判断としての合理性を否定できないときには、刑事施設の長は、刑事施設の運営に明らかな支障があるケースを除き、指名医の判断を踏まえて施設外の医療機関での診療を実施する方向で検討することが望まれる。このことは、セカンドオピニオンの権利が重要視されつつある社会的趨勢のなかで、刑事施設における被収容者への医療を実施する責任を法によって委ねられている刑事施設の長が、その裁量権を適切に行使する上で考慮すべき要素であるものと考える。
(2)2名の委員から付された意見
   刑事施設での医療(矯正医療)は、法第56条により、社会一般の保健衛生及び医療の基準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとされており、刑事施設の責任において、社会一般と同様に重症度や扱う疾患に基づいて役割分担を行う三層構造(一般施設、医療重点施設、医療専門施設)が確立していることから、高度な医療を要する疾患については、設備が整った医療刑務所等で対応しているものと承知している。
   したがって、刑事施設における医療体制で対応できる傷病に対しては、それを凌駕して指名医による診療が必要であるという合理的な判断がない限り、指名医に委ねることはないものと理解でき、指名医による診療を受けることが被収容者の精神的安寧につながるという理由で、刑事施設での医療供給を停止して、指名医による診療を受けさせるということは、矯正医療の概念に相応しくないと考える。