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人権擁護委員制度の位置付け

 人権擁護委員制度の位置付け
 (1 ) 人権擁護委員制度の今日的意義
 制度発足当初に比べ,社会の進展に伴って人権問題が複雑化し,また,新たな人権課題が生起している今日,人権擁護委員制度には次のような,より積極的な意義を認めることができ,人権委員会を中心とする新たな人権擁護制度の中で,人権擁護委員は一層重要な役割を担っていく必要がある。そのためには,専門性を有する人権擁護委員を確保するための方策をも講じつつ,社会貢献の精神に基づき,熱意を持って人権擁護活動に従事する人権擁護委員を市町村単位で配置するという基本的性格を維持すべきである。
  ○  個人の尊厳に由来する人権は,国や地方公共団体による保障とともに,国民の不断の努力によって保持されるものであり,人権擁護における民間の活動は極めて重要である。人権擁護行政においても,人権擁護委員の参加により,民間人の視点に立ったより柔軟で身近な人権擁護活動の展開が可能となる。また,民間の活動が活発な分野・地域において,連携協力を円滑にする役割も期待される。
  ○  市町村という地域社会の中に配置された委員が,人権啓発,人権相談等に従事することにより,国が全国的・普遍的視野に立って行う人権擁護のための施策を地域社会に広めるとともに,人権救済におけるアンテナ機能を担うことなどにより,地域社会のニーズを把握することが可能となり,これを国の人権擁護のための施策にフィードバックさせることができる。
  ○  人権問題が複雑化し,また,新たな人権課題が生起する中で,特定の人権課題や法律,心理等特定の領域に専門性を有する人権擁護委員が,それぞれの分野で専門性を発揮することにより,人権擁護活動の充実強化が図られる。
 (2 ) 人権擁護委員の果たすべき役割
 人権擁護委員の果たすべき役割については,先の二つの答申において,それぞれ人権啓発及び人権救済との関係で明らかにしたところであるが,以下のとおり整理することができる。
  ○  人権擁護委員は,従来,人権啓発,人権相談及び人権侵害事案の把握を中心に活動してきたが,今後もこれらを基本的な任務として,一層積極的な役割を果たすべきである。
  ○  人権擁護委員が,この基本的任務の下で,その適性や専門性に応じて得意とする分野の活動に重点を置くことを可能とするための方策を講ずる必要がある(4(1)参照)。
  ○  一方,人権救済における調査及び処理に関する人権擁護委員の役割については,従来必ずしも明確でないところがあった。人権救済手続への関与には一定の専門的知識,経験,素養等を必要とすることから,適性を有する人権擁護委員が人権委員会からの個別具体的な要請に応じて行う特別の任務とすべきである。
  ○  人権擁護委員は,その性格に照らし,過料又は罰金で担保された調査権限を行使することはできないものとすべきである。
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