外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律の概要
1 目的
「国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約(国連国家免除条約)」を踏まえ,外国を当事者とする民事裁判手続並びに外国の財産に対する保全処分及び民事執行に関する我が国の裁判権の範囲等について明らかにするために,新たな法律を制定するものです。
2 法律のポイント
○ 外国及びその機関等が,我が国における民事裁判手続並びにその財産に対する保全処分及び民事執行から免除されない場合を明示する。
○ 外国及びその機関等に対する訴状等の送達その他民事の裁判手続の特例を規定する。
○ 外国及びその機関等に対する訴状等の送達その他民事の裁判手続の特例を規定する。
3 Q&A
Q1 どのような場合に,外国等に対して民事裁判をすることができるのですか。
外国等が特定の事項又は事件に関して我が国の民事裁判権に服することに明示的に同意したような場合(第5条から第7条まで)には,外国等に対して民事裁判をすることができます。
また,外国等の明示的な同意がないような場合でも,商業的取引,労働契約,人の死傷又は有体物の滅失等などに関する裁判手続のうち一定のもの(第8条から第16条まで)について,外国等に対して民事裁判をすることができます。
なお,外国等には,連邦国家の州(例えばアメリカ合衆国の州)や外国の中央銀行等が含まれます。
Q2 どのような場合に,外国等の有する財産に対して,保全処分又は民事執行をすることができるのですか。
外国等が明示的に同意した場合(第17条第1項)や,担保を提供したような場合(第17条第2項)には,保全処分又は民事執行をすることが可能です。
また,外国等の明示的な同意がないような場合でも,外国等が日本国内に有する商業用財産等に対して民事執行をすることができます(第18条第1項)。
Q3 この法律は,国連国家免除条約の締約国以外にも適用がありますか。
この法律は,国連国家免除条約に準拠した内容を定めていますが,この法律の適用対象である「外国等」の定義において,同条約の締約国に限ることとはしておりませんので(第2条),同条約の非締約国にも適用されます。
Q4 施行期日はいつですか。
平成22年4月1日から施行されます。
Q5 この法律が施行される前に提起された民事裁判はどうなるのですか。
この法律の規定は,施行前に裁判手続の開始の申立てがあった事件には適用されず,従前の取扱いどおりとなります(附則第2項)。