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新司法試験調査会在り方検討グループ(第1回)議事録

(司法試験管理委員会庶務担当)
1  日時
平成15年3月24日(月)16:00~18:20

2  場所
法務省大臣官房人事課会議室

3  出席者
(委員)
磯村保,小津博司,柏木昇,釜田泰介,鈴木健太,中川英彦,宮川光治
(敬称略)
 
(司法試験管理委員会庶務担当(法務省大臣官房人事課))
横田希代子人事課付,伊藤光治試験管理官

4  議題
(1)  在り方検討グループ設置の趣旨等について
(2)  主査・副主査の選出
(3)  議事録の作成・公表の取扱い
(4)  今後の検討の進め方について
(5)  次回以降における具体的な検討の進め方

5  配布資料
資料1  第1回新司法試験の在り方検討グループの進行について
資料2  新司法試験実施に係る研究調査会の設置について
資料3  新司法試験の在り方検討グループ等の設置について
資料4  新司法試験実施に係る研究調査会(概念図)
資料5  新司法試験実施に係る研究調査会名簿
資料6  新司法試験実施に係る研究調査会(第1回)議事録(未定稿)
資料7  新司法試験実施に係る研究調査会スケジュール
資料8  新司法試験・研究調査会日程等一覧
資料9  新司法試験調査会各科目別ワーキンググループ議事概要
資料10  司法制度改革審議会意見書-21世紀の日本を支える司法制度(司法試験関係部分抜粋)
資料11  法曹養成検討会 新司法試験の在り方について(意見の整理)(司法試験関係部分抜粋)

6  議事

(1)  在り方検討グループ設置の趣旨等について
【横田人事課付】本日はお忙しい中,お集まりいただきありがとうございます。在り方検討グループの庶務を担当させていただきます官房人事課課付の横田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。本日は人事課長が参りまして御挨拶申し上げるべきところではございますけれども,別の用で出ておりますので,私から御説明等させていただきます。
(配布資料1~11の確認後,資料に沿って説明)

(2)  主査・副主査の選出
【横田人事課付】この在り方検討グループにおきましてどのように議論を進めていただくかということですが,司会役のような形で主査,あるいはその代理として副主査を御選出されるかについて御意見を伺いたいと思っておりますが,いかがでしょうか。

【宮川委員】司会役がいないと進まないと思います。

【小津委員】やはり司会役はどなたかにお願いしたい。他の所でも法曹三者でない方がやっておられるようですし,もし法曹三者以外の方でお引き受けいただければありがたいのですが。(一同了承)

【磯村委員】研究者のメンバーということであれば,釜田先生にお願いできればいいのではないかと思います。(拍手)

【釜田委員】御指名でございますので,議事進行役ということで進めさせていただきたいと思います。そもそもこれだけの少ない人数の会合でございますので,御懇談いただければそれでいいわけでございますが,よろしくお願いいたします。
 本来なら,東京御在住の柏木先生が主査に一番御適任だと個人的には思いますが,柏木先生は検討会の座長もお務めになっておりますので,もしお許しいただければ,柏木先生に副主査といいますか,何かございましたときに私の代わりを務めていただければと。

【柏木委員】釜田先生が所用で御欠席されるような場合にはお手伝いさせていただきたいと思います。

(3)  議事録の作成・公表の取扱い
【釜田委員】それでは,進行表に従いまして少し議事を進めさせていただきたいと思います。3番目に挙がっておりますが,議事録の作成・公表の件をお諮りさせていただきたいと思います。2月19日の第1回目の全体会合では,7名全員そろうことができなかった関係上,本会議の議事録の作成・公表については,本日,全員出席の下でもう一度お諮りをするということになったと伺っております。いかがでございましょうか。

【小津委員】前回,この議事録の議論について「顕名で公開するべきではないか」という御意見が出ましたときに,私の方から「出席者が少ないので決定は次回に回したらどうか」と申し上げた経緯がございます。私は顕名での公開に反対ではございませんので,皆さんがそういう御意見であればそれで結構でございます。

【釜田委員】特に問題がないようでしたら,全体会議の議事録の扱いと同様に,原則的に顕名・公開をした上で,公表することにより試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある事項については,ここでお諮りして非公開にするということで,その都度それをお諮りするということでよろしいでしょうか。(一同了承)それではそのようにさせていただきます。
 それから,この会合へのオブザーバーとしての出席の申出を受けていると伺っております。御紹介願えますか。

【横田人事課付】司法研修所,日本弁護士連合会,法科大学院協会設立準備会からそれぞれオブザーバーとして,丸山所付,椛島弁護士,酒巻教授がお見えになっていらっしゃいますが,これらのオブザーバーの方の御出席の件について御許可願えればと存じます。

【釜田委員】今,御紹介いただきました御三方がオブザーバーとして会合の成り行きをお伺いしたいというお申出でございますがいかがでしょうか。

【磯村委員】酒巻さんは今日は恐らく代理ということで,井上正仁先生が御出席ということだろうと思います。

【釜田委員】今,御紹介いただきました御三方は常時そのお方がいらっしゃるわけではないのですか。

【横田人事課付】その団体からどなたかおいでになるということで,必ずしも固定されたメンバーではないと伺っております。

【釜田委員】いかがでございましょうか。(一同了承)では,どうぞ御出席いただきたいと思います。ありがとうございました。

(4)  今後の検討の進め方について
【釜田委員】それでは,4点目の今後の検討の進め方でございますが,まず,検討時期・スケジュールについて,庶務担当から御説明いただけますか。

【横田人事課付】検討スケジュールについて御説明させていただきます。お配りしております「新司法試験実施に係る研究調査会スケジュール」(資料7)を御覧ください。この資料の要旨は,研究調査の結果を報告することが司法試験管理委員会が決定した設置要綱に決められておりますので,最終報告を12月に行うこと,また,その前に意見募集を行う必要があること,そのためにはその前に中間報告を行うことになるというスケジュールです。
 中間報告の取りまとめが具体的にいつ頃になるかははっきりと決められておりませんが,大体8月頃を予定しております。概ねこのような研究調査会スケジュールとして先日の全体会では御了承いただいたところでございます。
 このスケジュールの枠内で,6月までにこの在り方検討グループの会合の日程が何日取れるかという問題と,論点をどのように振り分けていくかという問題がリンクするのではないかと思います。そこで,皆様方の御都合のよろしい日程が限られていることから,何回ぐらい会合を設けていただけるかを御調整いただければと思います。

(協議の結果,以下のとおり,6月までの開催日時が決定)
第2回 4月17日(木)15:30~17:30
第3回 5月 7日(水)10:00~12:00
第4回 5月22日(木)13:30~17:30
第5回 6月12日(木)15:30~17:30
第6回 6月26日(木)13:30~17:30

【釜田委員】科目別ワーキンググループの委員の方々との意見交換を持つ必要が出てくると思います。この持ち方についてでございますが,今の会合日を充てるということはできませんので,どこかの段階で出席可能な先生方で意見交換をしていただくということになると思いますが,それも日程を決めておいた方がよろしいですか。

【横田人事課付】科目別ワーキンググループの方の日程も調整する必要がございます。

【釜田委員】向こうの進み具合もありますからね。

【横田人事課付】全科目と意見交換するのか,刑事系だけとか,民事系だけとか。また,ワーキンググループの主査なり出て来られる方の御予定もございますので。

【釜田委員】そうですね。少しこちらの会合を進めてからその点を検討いたしましょうか。ちょっと頭においていただきたいと思います。

【宮川委員】4のイの法科大学院関係者等に関するヒアリングについては検討しなくてよろしいでしょうか。

【釜田委員】これは中間報告が出た後,いろいろと意見を聴くというスケジュール,この中に入っているのですか。

【横田人事課付】いいえ,中間報告後のパブリックコメントとは違った趣旨でして,例えば参考人の形で,いろいろな法科大学院関係者等をお呼びするということでございまして,あるいは,マスコミの方から意見を伺うというような在り方もあるのかと思っております。

【釜田委員】そうしますと,この会合においでいただくということを想定しているのですね。

【横田人事課付】はい。ただ,日程が詰まっておりますので,あくまでもヒアリングの御要望があればということを前提に考えております。

【宮川委員】どのようにやるかは,4月17日ぐらいまでに考えておくこととして,5月22日に午後全部予定した日があります。この日にヒアリングをするということでも良いかと思います。

【小津委員】予定を立てるという意味では早めの方がよろしいかと思いますけれども,少し我々の中で議論をいたしまして,それを踏まえてそれが必要かどうか,必要だとしたらどのような方にどのようなことについて伺う必要があるかということが出てくるようにも思います。それが一つと,ヒアリングということではないと思いますが,特に私自身は,法科大学院の方がどういう準備状況であるのか,準備状況等については知らない立場でございまして,その辺りの所をどのようにしてどなたから情報をいただきながらここで検討するのかという面もあるなと思っております。

【中川委員】試験の在り方と法科大学院のカリキュラムというのは密接に関係するような気がいたします。どっちがどっちを制約するということはなくてですね。だから,どういうカリキュラムでどういう教育をされようとしているのか頭の中に少し入れておきませんと,試験の内容だけを概念的に作ったってあまり意味がないと思います。むしろ,ワーキンググループよりも法科大学院の方が何をしようとしているのかを十分お聴きする方が意味があるような気がいたします。

【柏木委員】今,各大学がカリキュラムを作っているところだと思います。カリキュラムの取りまとめは,確か法科大学院協会設立準備会でもやっていないのではないでしょうか。

【中川委員】私の聞いているところでは,設置申請は6月に出されるので,それまでには,文部科学省で一応どの大学が何を考えているかというのが大体分かるはずですから,その後の方が時期的には良いですね。それはかなり重要だと思います。

【柏木委員】ただ,スケジュールでいくと6月はこのグループの検討会の最後になってしまいますから。

【中川委員】間に合わないですね。

【宮川委員】法学教室の3月号を読んでいましたら,早稲田大学,中央大学,その他の大学がそれぞれ自分の大学のカリキュラムの内容,どういうふうに教育をしていくのかその方法論を含めて簡潔ではありますが報告されていました。ですからかなり具体的に作業は進んでいるなと思います。今の段階でもいくつかの大学のしかるべき担当者の方々に教育の内容・方法論についてどんなことをイメージしているのかお話いただきたいという要望をすれば,かなり資料もどっさりと御用意されてレポートしていただけるのではないかと思います。

【鈴木委員】特定の大学をいくつか選んでという形になりますかね。

【宮川委員】そんなにたくさんでなくても良いと思いますが。

【磯村委員】文科省は,この3月に,国立大学に対して法科大学院の設置計画に関する資料の提出を求めました。したがって,カリキュラムの内容や授業担当者について状況を把握しています。私立大学も,6月末の設置認可申請に向けて最終的な準備をしている段階にあると思われますし,カリキュラム等の準備ができていなければ,今からでは間に合わないと思います。ただ,どういう大学をサンプルに選ぶかによって得られるイメージも違ってくるという危険性があって,どの大学の計画を代表的なものと見るかは難しいところがありますね。公表の仕方についても,検討状況を積極的に公表する大学もあれば,情報を明らかにしない大学もありますので,公表していないから検討は進んでいないということではないと思います。
 ヒアリング対象として,例えば,国立大学で一つ,私立大学で一つ,公立大学で一つ程度聞くと,それなりのイメージをつかまえることができるかもしれませんが,大規模校と小規模校とでは中身が大分違うでしょうし,そういう点も考慮する必要はあると思います。

【宮川委員】法科大学院の教育の成果を確認するという試験だという位置付けですから,むしろできるだけ早くお聞きした方が良いのではないでしょうか。

【磯村委員】二つの面があると思うのですが,小津委員がおっしゃったように何をこちらが聞きたいかという観点から考えると,時期を後にする方が良くて,法科大学院を作ろうとしているところがどういうことを考えているのかということをまず知る必要があるという点からすれば時期を早くするというように,両方あると思うのです。
 ただ,こちらの議論がある程度詰められてきた段階で聞きたいことがあれば,またそのときに考えるということで,先ほど中川委員がおっしゃったように,各法科大学院のカリキュラムについてのイメージをある程度共有しないと,新司法試験の在り方も検討できないという面があるので,5月に一回ヒアリングをし,必要ならば6月にさらにヒアリングをすることも考えられるかもしれません。

【釜田委員】5月22日あたりに第1回目として設定した方がよろしいですかね。時間も少し余裕がありますから。22日に何らかの形で法科大学院の教育内容についてお聞きするということを予定いたしましょう。それまでに今のような準備をしていただきましょうか。資料的にどの辺りからどういうのをお聞きすれば良いのか。4月と5月に2回会合がございますので,その辺でお話いただく中で具体的なイメージも出てくると思いますので。その辺を含めて次回の会合でいろいろとお聞かせいただけたらと思います。

【宮川委員】4月17日には,どの大学に来ていただいてどのような内容のことをお話いただくかということを確定して連絡しなければなりませんね。17日に事務局案を出していただいて。

【横田人事課付】実は司法試験管理委員会の方は法科大学院の方と全く接触しておりませんで,これから接触を始めます。国立大学,私立大学,公立大学から,大規模校,小規模校を取り混ぜて3,4校でございましょうか。ここら辺りがいいのではないかという御希望はございませんでしょうか。

【小津委員】3つ4つくらいでいろいろな観点でという以上の議論がこの場では難しいのではないかと思います。

【中川委員】田中先生(法科大学院協会設立準備会・事務局長)に相談されたらいかがですか。

【磯村委員】3月27日に法科大学院協会設立準備会の総会がございますので,田中先生に御相談をして,事務局の方に御連絡をするということでいかがでしょうか。ただ,このメンバーの所属する大学に対するヒアリングは適当ではなく,それ以外で選ぶということになるかと思います。

【横田人事課付】それでは4月17日までに事務局案をお示しすることにいたします。

【磯村委員】大学は4つくらいというイメージでよろしいでしょうか。一つ15分説明いただいても1時間かかりますので,それぐらいでしょうか。

【小津委員】全体の状況は設置認可申請が出れば我々は知り得るようになるのですか。

【磯村委員】中間報告を作る日程からすると,スケジュール的に間に合わないですね。

【小津委員】最終報告もございますので,どこかの段階では全体はこうなのだなということも我々は承知しておく必要があるかなと思います。それが可能な段階になって何か資料のような形で入手できるのでしょうか。

【磯村委員】恐らく7月,8月に審査ということになると思いますが,その段階で設置認可申請に関する情報が法務省に提供されるということはないのではないでしょうか。

【小津委員】そうすると本当に確定するのは認可後ですね。

【横田人事課付】設置認可の資料を認可前に見せていただくということはなかなか難しいと思います。

【磯村委員】大学に任意に協力をしていただいて,こういうカリキュラムで考えているという資料を出していただくしかないのではないかと思います。法務省でも,法科大学院開設支援法務・検察連絡協議会事務局は多くの大学とコンタクトを持っておられるのではないですか。

(5)  次回以降における具体的な検討の進め方
【釜田委員】先ほど御説明がありました2月19日の司法試験管理委員会決定の2の(1)に在り方検討グループが検討すべき事項が挙がっております。5項目が挙げられているわけですが,具体的には1から4が示されているわけです。これをどのように具体的に検討していくかですが,いかがでしょうか。

【磯村委員】少し前提の質問をさせていただきたいのですが,例えば法曹養成検討会で新司法試験の在り方について意見の整理がなされておりますが,これがどの程度「既判力」を,拘束力をもったものなのか,それとも独自に考えることができるのか。例えば民事系科目,公法系科目,刑事系科目という単位が所与の前提となっているイメージがありますが,それはそもそもそうなのかといった議論はここでやるのでしょうか。あるいは研究調査会の全体会議の議論なんでしょうか。

【横田人事課付】公法系科目,民事系科目,刑事系科目というのは司法試験法に規定されておりますので,所与の前提ということになります。ただ,法曹養成検討会で一応議論が到達した部分につきましては,なるべく議論の到達点から発展する形で議論を進めていただきたいというのが司法試験管理委員会の元々の考え方であろうと思います。
 もちろん,法曹養成検討会では,おおよそいずれの論点についても今後の検討を要するという意見の整理をされておりますので,法曹養成検討会で何かが決まってしまったという部分はありません。ですから,司法試験法の改正法に書き込まれたもの以外は,まだすべてオープンに議論していただいて良い状況ではないかと理解しております。

【釜田委員】特にイ,ウでしょうか。具体的には出題の在り方というものが問われているわけでございますが,それはまた相互にアとエとも関係してくるし,恐らくどの論点について御議論いただきましてもまたアに帰るということがありますでしょうし,その都度どこかに力点を置くということになるとは思いますが,アからエはいつでも相互に関連させながら御意見をいただくというような形になるような気もいたしますが,いかがでしょうか。ただ,日程は先ほど確認いたしましたように,非常に限られたものでございますので,一応アからエについて順次やりながら,他の項目についてもその都度御意見を賜るという形になるのでしょうか。

【鈴木委員】科目別のワーキンググループが先行しておりまして,そこでかなり「在り方グループで」という投げかけがされているものがございますね。例えば融合問題をどの程度取り入れるか,理想的に言えば入った方が良いのでしょうけど,実施上の困難から見るとどうしても入れろというのは困難じゃないかとかですね。それに関係して言えば,そういうことも本来,公法系,民事系,刑事系,それぞれが考えればいいのか,やはりそういう方式みたいなものは全部統一した方が良いのか。あるいは,微妙な問題としては,各科目の比率といいますか,特に短答に関しては民事系のワーキンググループでは,民事系はもう少し問題数は多くても良いのではないかとかですね,その辺になると各科目のワーキンググループでは考えられない。いきなりちょっと具体的な話になってしまいましたが,抽象論はある意味で決まっているところがありますよね,改革審の意見書とか,司法試験法自体に書き込まれているわけですから。むしろ,在り方グループとしてはそういう各科目の分科会ではなかなか決し得ない問題を各科目別ワーキンググループの検討結果を踏まえながら拾い上げていくことが必要なのかなという気がします。

【小津委員】そういう意味では新司法試験において選抜すべき法曹像というのは大変大事な問題だとは思うのですが,司法制度改革審議会の意見書あるいは司法試験法等にこの選抜すべき法曹像に関してどういうことが書いてあるのかということを確認をして,特にこれじゃ足りないからこういうことを議論しなければ先に進められないではないかということがあれば別ですけれども,それを一応確認した上で,今鈴木委員が言われたような具体的な問題を考えながらまた必要があれば議論した方がよろしいのではないかと思います。
 また,科目別ワーキンググループからいろいろと直接話を伺うということも必要だと思いますが,既にいろいろと話が現在進行形で出ているのだろうと思いますので,科目別ワーキンググループの方でこういうことは在り方検討グループで検討していただかないと先に進められないと言っておられる声をなるべくたくさん聞かせていただいて,それを全部我々でやるかどうかは別として,そうすると我々のやるべきことが大分具体的にイメージされてくる気がいたします。

【中川委員】私も賛成です。全く予備知識ゼロなものですから。司法試験について元々どういう議論があって,何が論点になったんだということを一遍どなたかにきちっとお話伺いたいですね。本来読めばいいのですが,時間がないものですから。

【磯村委員】もう一点は,このグループと各科目のワーキンググループの関係で,先ほど事務局から対等の関係であるというお話があったのですが,こちらにいったんフィードバックするということではなくて,ワーキンググループとしても,個々の論点についてこう考えるということをそれぞれ議論していただいて,それとこちらの検討とが一致する場合もあれば一致しない場合もあるということではないでしょうか。
 例えば,公法系のワーキンググループでは融合問題で行くべきだという意見があり,他方,民事系ワーキンググループでは融合問題は出題範囲を限定することになるので,融合問題の出題にこだわる必要はないと考える場合もあり得るわけで,各グループでそれぞれ意見を出し,この在り方検討グループでも議論するというように,議論が競合することはある程度避けられないと思います。こちらに1回ボールを渡していただいて,科目別ワーキンググループに投げ返すというようなやり方では,恐らく時間が足りなくなりますので,それぞれ同時並行的に検討を進めるのが良いのではないかと思いますが。

【柏木委員】アの新司法試験において選抜すべき法曹像というのはもう司法制度改革審議会の意見書で出ていますね。それは,「豊かな人間性や感受性,幅広い教養と専門的知識,柔軟な思考力」うんぬんとだれも反対できないことが書いてある。理想的法曹像としてはこれ以上一歩も出ません。アメリカでも適性試験を考えるときに選抜すべき理想的な法曹像を考えてそれにプラスになるような適性試験を考えようとしたのですけれども,こういう抽象的なもの以上に一歩も出ない。というのは,実際に働いている弁護士さんというのは千差万別であり,どの弁護士さんが立派な弁護士さんかということについて意見の一致がない。結局,適性試験は何をやったかというと,ロースクールの1年次,2年次との成績の相関関係を高める,これに徹しているんですね。ここでも理想的な法曹像をいくら議論したって改革審議会の意見書以上のものは出ないと思うんです。ですからアはごく軽く審議会の意見書を確認するだけにして,イウ以下の具体的なことを議論する方が実りが多いのではないかという気がします。

【宮川委員】アについては,おっしゃるとおり司法制度改革審議会意見書が呈示している法曹像というものがあって,それが選抜すべき法曹像であると言えると思うのですが,ただ,司法試験法に定められた試験科目と試験方法で,このような法曹像が備えるべき資質をトータルに把握するということができるのかというと,そこはペーパーテストですからなかなかそういうものをトータルに測る試験というのは設計し難いと思いますね。しかし,この法曹像から外れたような方向に行ってはいけないわけですから,ペーパーテストで測ることができる能力は一部には止まるけれども,その一部分がこの法曹像に合致したものでなければいけないということについて少し整理をしてみる必要があると思います。
 この意見書の中には「幅広い教養と専門的知識,柔軟な思考力」という表現がありますが,そういう幅広い専門的知識,柔軟な思考力というのは,ペーパーテストでも確かめ得ると思います。問題の組立方いかんでは。それから更にこの意見書の表現では,「それを批判的に検討し,また,発展させていく創造的な思考力,あるいは事実に即して具体的な法的問題を解決していくため必要な法的分析能力や法的議論の能力」,こういった表現がありますが,こういったこともペーパーテストであっても確かめ得るのではないか。大体今のようなことを確かめるような,測るようなそういう試験を構想していくということなんじゃないかと思うんですが。

【柏木委員】今の宮川委員の意見に大賛成で,まず検討すべきはどういう資質が測れるのかということの仕分けをしないと,何となく司法試験で,審議会意見書のすべての資質が測れるんだという誤解が生まれやすいのではないかと思うのです。司法試験はあくまで一部の資質しか測れないんだということをはっきりさせるというのは結構意義があることなんじゃないかという気がするんですが。

【中川委員】つまり,資質に関するものとスキルに関するものとがあるんですよね。スキルに関するものというのは割合ペーパーテストとかでテストしやすいと思うんですね。非常に多様な価値観を持っているのかどうかとか,公明正大な人かどうかとか,あるいは柔軟性があるかないかとかは,資質に関する部分ですから割合難しいですよね。しかし,最も大切なのは資質に関する部分だと思うんですね。これをどうやってスクリーニングをかけるのか。これは教育の過程の方が大切なのかとも思いますけれども,しかし,テストの中でできるだけできるようにすべきだと。
 そうすると,やっぱり,さっきちょっと磯村先生が言われて,僕もそうだなあと思うのは,インタビュー(口述試験)の議論がこの議論の中でありましたよね。賛否両論があって,結局はやらないんだということになったみたいだけど,本当にそれで良いのか。やっぱり資質の評価というのはフェイストゥーフェイスで話す以外ないわけですからね。人数の問題とか手間とかいろいろあるのでしょうけど,どうかなという感じは少しいたしますね。

【鈴木委員】あまり司法試験にすべてを期待すると,かえってプロセスとしての養成に反してしまうんですね。基本的には法科大学院における成績評価とか修了認定にまず重点を置いていただく。その上で,司法修習を経て法曹になるにはこの程度のことが必要ですよと,それを司法試験でチェックするということでないといけないんじゃないかなという気がいたしますが。

【磯村委員】今,御指摘になられた点は全く大賛成で,要するに従来の司法試験というのは合格者数があらかじめほぼ決められた選抜試験だったのですが,新司法試験は,基本的発想として,法科大学院でちゃんと修了認定を受けた者は合格するレベルに達しており,例外的に,良くない者を落としていくというものであり,基本的には,修了認定がなされれば十分な教育プロセスを経たと認められるというところに重点が置かれるべきものだと思います。そういう意味で資格試験としての性格をより明確にするべきなんだろうと思います。
 そうすると,それと関連するやっかいな問題ですが,合格者数の設定の仕方が非常に重要となります。研修所のキャパシティの問題もあるのですが,外枠が決まっていると落とさないといけないということになり,発想としてはそうではないんだというのが,新しい司法試験の在り方なんだろうと思うんです。この問題は項目としては「オ」の「その他新司法試験の在り方に関する事項」に入るのですが,合格者の人数という問題は独立した項目として挙げるべき論点なのかなという気がしております。

【宮川委員】司法研修所の収容能力をボトルネックにしないというコンセンサスはもうできているのではないでしょうか。

【磯村委員】もちろんそうなんですが,例えば平成22年ころに3,000人という数字が出ているのですが,その数字そのものが単なる目標値以上の意味を持つおそれがあります。重要なのは合格するべきレベルに達しているかどうかであり,固定的な数字ではなく,例えば今年は2,000人合格したが,その翌年は1,800人しか合格しないということもあり得るように思います。本当にそういう議論で一貫しているのか,ちょっとはっきりしないのではないでしょうか。

【宮川委員】年によってブレが生じるのは仕方がないことで,そのブレに対応できるような修習システムを考えていこうということも大体一致しているのではないでしょうか。

【小津委員】恐らく制度が安定的に運用されるようになれば,それほど極端に毎年人数が違うということはないんだろうと思います。スタートのときにどんな感じでやるのかというのは大変難しい問題だなと思います。

【磯村委員】特に気になっておりますのが,これもこの検討グループのマターを少し超えるものなのかもしれませんが,法科大学院の修了者が出た後も現行司法試験が一定期間存続することとの関係で,その合格枠がどうなるかということが明らかではありません。志願者数の変化を見ながら,それとの関係で決めるということかもしれませんが,現行司法試験の合格者数が減少することがあらかじめ明らかになっていれば,みんな法科大学院に進学するということになると思いますし,逆に,現在の合格者数をあまり減らさないということになると,現行司法試験を目指す方が授業料もかからなくていいということになって,志願者数もあまり減らないということにもなります。これについては,在り方検討グループでも,少なくとも問題点としては考えておく必要があると思いますが。

【柏木委員】私も磯村委員の意見に大賛成で,そもそも資格試験であるべきものが実態として選抜試験となっているのは,やはり数字の一人歩きだと思います。これをやっぱり論じないわけにはいかないだろうという気がします。

【鈴木委員】少なくとも現行司法試験の合格者というのは,今の受験生にとってはかなりの指針になりますよね。端的に言えば,来年ロースクールに入るかどうか。今年の春に四年生になる人が,今年の司法試験に失敗したというときにどうするかというときに,どのくらいの人数になるかというのが分からないというのもあれかなあということを時々雑談的に話しておりますが。

【中川委員】僕はよく分かりませんけど,一つのおそれみたいなものを感じるのは,新しい試験の内容が非常にパターン化されて,それに引きずられて全国の法科大学院の教育内容がパターン化されてしまう。それは余り意味のない話なんですよね。それぞれの大学がそれぞれの工夫と努力でいろいろな違う人を育ててほしいというのが一方であるわけですよね。それが試験の内容で影響を受けましてパターン化されると,これは恐ろしい話で,予備校とか予備試験の方に行っちゃうとかですね。だから,それを防ぐにはどうしたら良いかというのは難しいなと思いますね。

【磯村委員】法科大学院の第三者評価については,どういう基準で行うべきかについて議論がなされていますが,要するに教育プロセスがちゃんとしているかどうかというのは試験だけで測ることはできないという割り切りをせざるを得ないと思うんですね。そうすると,どうやって単位を認定し,どうやって修了認定しているのか等について,第三者評価機関が適正にチェックするという制度の構築を同時に進めていく必要があり,そうでないと,プロセス重視といいながら,結局,点による選抜の繰り返しになってしまうというのは御懸念のとおりですし,第三者評価の在り方は法科大学院にとっては最も重要な点なのではないかと思います。新司法試験の合格率というのは,良くできる学生を集めれば高くなるというのは当然で,高い合格率が教育の質を保障するとはいえないと思うのですね。

【釜田委員】アメリカでも司法試験そのものを存続させるかどうかというような議論,ロースクールでの教育結果を測れるのかどうか,測れないものであれば,現在の試験に取って代わるようなものがあるのではないかというような議論があるやに伺っているのですが,いかがですか。

【柏木委員】私はちょっと聞いておりませんけれども,多分ニューヨークとかカリフォルニアとかああいう所で司法試験は無くならないだろうと思います。ただ,ノースダコタだとかニューハンプシャーとか田舎になりますとあまり希望者もいないから,例えばロースクールを卒業すればそのまま資格を認めるというような所も確か一州くらいはあったんじゃないかという気がしますけれども,それは大勢から見ればほとんど少数ですね。ただ,アメリカは,例えばアイビーリーグのロースクールであればほとんど全員が司法試験に合格するということは分かり切っているので,例えばイエール大ではほとんど司法試験の準備になるような講義はしない。で,イエールに入るような学生であれば3か月くらい予備校に通えばみんな合格しちゃうというところですから,どうも余り参考にならないんじゃないかと思います。日本でも,例えばトップ20くらいのロースクールを出れば9割くらい合格するというのであれば自由な教育ができるんだろうと思いますね。ですから,アメリカの状況というのはあまり参考にならないのではないかと思います。
 ただ,今私が申し上げたこともちょっと予測が付かないこともありまして,例えば2010年に3,000人が司法試験に合格する。で,今ロースクールが何校できるのかということはだれも分からないわけですね。これが,例えば30校で定員が1学年3,500人くらいになってしまったというと9割が合格するわけですから,そうしますと,割と緩やかな,自由な教育をやって特色を出しても皆さんそれについてくるという状況になるだろうと思います。だから何校できるか本当に今のところ皆目見当が付かないというところが悩みですね。それとさっき磯村先生がおっしゃった3,000という数字が一人歩きしていると。これを取り外すことができれば正にまた自由な教育ができるということになるんだろうと思いますけれども。

【釜田委員】私は司法試験に何年かかかわっておりまして,いつでも感じるのは,今の司法試験は研修所の入学試験という感じなんですね。研修所の先生方と一緒にお仕事をしていますと,研修所の先生方はやっぱり自分らが受け入れる学生の質というものを測ろうというその,まあ入試ですね,我々は送り出す方ですから頑張って行きなさいというような押し出す方が強くなるんですが,やっぱり最終のところが学校のようなものを保っていると,どうしてもそこへの,何と言いますかね,先ほど選抜とおっしゃっていますが入試という性質が無くならないんでしょうかね。どうなんでしょうかね。今度の新司法試験と研修所の関係ですね。

【鈴木委員】研修所の教育も,法科大学院との有機的連携ということで,今のままではなくて変わっていきますが,しかし,修習に耐えられるかと言ったらおかしいですが,基礎的な力はやはり身に付けてもらいたいという意識はあると思うんですよね。ちょっと抽象的な表現ですが。まだ新修習自体がどうなるかということもはっきりしていないものですから。従前とはもちろん違うわけで,端的に申しますと,いわゆる新修習では前期修習的なものはなくなってしまう。いきなり実務修習をすると。逆に言えばそれに応じられるだけの能力は身に付けてほしいし,やはり司法試験というのはそれの一つのチェックを果たすのではないかなという気がいたします。

【宮川委員】新しい制度の下ではいきなり分野別修習に入ってしまうわけですよね。しかもその分野別修習というのが,民事裁判,刑事裁判,検察,弁護で各二か月という短い期間であると。その後に総合修習,集合修習が予定されておりますが,そういう分野別の実務修習に入って修習の効果を上げることができるというレベルには達していてほしいということかと思うんですよね。

【小津委員】先ほど御指摘がございましたが,3,000という数が一人歩きしないように十分注意しなければならないと思います。宮川先生がおっしゃられたような人たちがみんなで頑張れば,特に法科大学院が一生懸命頑張れば,3,000人ぐらいは出るであろう,あるいはそのような教育システムにするべきであるというふうに審議会は言っておられるのだろうと思うわけですね。そういう意味では,一人歩きしてはいけませんけれども,3,000という数字を審議会で出したということを念頭に置いて,さて本当に3,000人そういう人たちがいるだろうか,あるいは,もっと多いか,とかいうようなことを考える。いわば一つのメルクマールとして3,000という数を大いに意識しながらこれから議論が展開されるのだろうなという気がしております。

【磯村委員】今日は論点をいろいろ出すということだと思いますので,仮に3,000という数字を前提としたときに,現行司法試験の合格者枠が例えば仮に1,000人残るとすると2,000人になってしまう。そうすると仮に4,000人で全国の法科大学院の総定員となったときには,単純に言うと2分の1しか合格しないと,そういう数字であるということは意識する必要があるのではないかなあと思います。それと少し別の問題で,ある事例を与えたときに,どういう論点をどの程度つかまえているか,論点積み上げ方式で採点し,得点分布を調整するという方法を続ける限り,知識偏重型,論点発見型の勉強というのは是正できないのではないかと思います。法科大学院における教育と従来の学部教育との重要な相違は,事実そのものが所与の前提とならず,揺らぎがあるというところだと思われます。従来の事例問題というのは,こういう事実があるときにどうなるかということを回答させるもので,一種のチャート式発想ですが,それによらずにどういう問題が出せるかということを個別的なグループで検討いただくと同時に,そういう問題の在り方を考えるというのは非常に大事なのかなと思います。試験ですべての能力を問うことはできないというのはそのとおりだと思いますが,しかし,そういう問題の工夫をしていくという方向で議論しないと,結局試験自体は従来と変わらないことになってしまうように思うんですね。

【中川委員】私も本当にそうだと思いますね。重箱の隅をつつくようなものをですね,要するに知識を問うのではなくて,考え方を問うというか,あるいは総合判断の能力といいますか。

【小津委員】従来の司法試験に対する批判というのはいろいろな角度からあるわけですけれども,細かい知識を問い過ぎているという批判,それから,それと矛盾しないのかもしれませんけれども,特に最近の短答式試験がパズルみたいではないかとか,クイズみたいという批判,それぞれ意識しなければいけない批判だろうと思いますね。ただ,私は知識ということについては,ある大学の先生が,法律というのはきちんとした知識がないとその先の展開ができないものであり,もし司法試験で知識を問わなくなってしまうと,それが大学での教育等に悪い影響を与えはしないかと心配されておられたことが印象に残っています。それも全くもっともだなという気もいたしますので,確かに重箱の隅をつつくようなとか行き過ぎたとかいう形容詞を付ければ私も賛成なのですけれども,いわゆる知識を問うからいけない問題だということには必ずしもならないなのではないかなという気がしています。

【中川委員】そりゃそうです。知恵というかな,知恵というのは知識をどう使うかというのが知恵だと。知識があるというのはこれはもう前提ですね。最小限の基礎知識は持っているというのは前提として,それをどう応用できるかという知恵の方を問うていくという感じかなというふうに思いますよね。これ,だけど試験は非常に難しいですよね。知識を問う試験は簡単ですけれども。

【鈴木委員】小津さんがおっしゃったように,思考能力がもちろん大事なんですけれども,やはり法律論である以上前提の基礎知識というのはある程度必要だと。ただ,それはあまりにも細かくなっても良くない。一方で私の聞いているところによりますと,塾なんかだと,例えば親族相続なんかは出ても1,2題だから勉強しないと。そういうような教育をしていると。それでは困るわけですよね。親族相続の知識が必要ではないということではなく,必要なのに出ない,出ても大して題数が出ないというところは時間をかけるのは無駄だから切り捨てると,そういうところにむしろ問題があるのじゃないかなと思います。
 そういう意味では新司法試験についても短答と論文があるわけで,その辺の機能を分けると,短答ではある程度基礎的なということであまり細かなものはあれですけれども基礎的な知識を見ると,で,論文の方で思考能力とか分析能力を見るという,抽象的に言えばそういうことが考えられるのではないかなという気がします。ただ,これも言うは易くてという面があるので,実際はどうするかというと困る面もございますが。

【宮川委員】司法試験法自体が,短答式と論文式で試す能力というのを分けている。この司法試験法の第3条では短答式による筆記試験は「専門的な法律知識及び法的な推論の能力を有するかどうかを判定することを目的とする」としている。他方,論文式による筆記試験は「専門的な学識並びに法的な分析,構成及び論述の能力を有するかどうかを判定することを目的とする」という書き方になっていますから,司法試験法自体が,最初に言いましたように短答式試験と論文試験で試そうとする能力については,本当は截然と分けられるものではないですが,何を狙うのかという点については分けられている。
 今度は短答式試験の科目の範囲がぐんと広くなって,商法も行政法も両訴訟法も入るわけですね。今までのように,憲法,民法,刑法,20問ずつ,3時間30分でやるということとは違って,もっとこう広いオールラウンドの法律知識を求められると。知識とは何かということについて法曹養成検討会で議論がされているくだりを読みましたけれども,そこで言っている知識というのは丸暗記で対応できるようなものではない,体系的な,ネットワーク的な,関連付けて物事を考えられるような知識であると。血となり肉となっているものだという表現をされている検討委員がおられましたけれども,そういう知識を試す短答式試験をどうやったら構成できるのかということは,我々の検討課題の一つなのではないかと思いますね。
 今までは,対象とする範囲が限定されていたこともあって,細かな問題になっている嫌いがないでもなかったわけですが,今度はバーンと広がったわけですから,平易で基礎的な知識,それも,いろいろなことと関連付けた知識を,あまり難しい形でなくて相当量の数を出して,その知識を確認していく,そういう問題の設計はできるのではないかなと思います。

【柏木委員】知識量を試すのではなくて,ものの考え方を試す試験というのはそんなに難しいことではないのです。それは試験に何でも持ち込み可としてしまうのです。そうしますと記憶を試す問題というのは出せないわけです。そうしますと,こんどは問題を作るのがすごく難しくなる。難しくなると同時に採点が難しくなる。採点が非常に主観的になります。採点をやってて自分は何をやっているんだろうなということが非常に疑問になってくるんですね。例えば授業に1回も出ていない奴も,人のノートを見てちゃんとある程度答えが書けるわけですね。答案を見ただけじゃ私の授業に出ているか分からないわけです。結局,最後にたどり着いたのは,私が話したこと,それをしっかり自分の頭の中に入れてそれを論理的に再構成する能力を試しているんじゃないかと思ったのです。それも一つの資質だと思うんですけれどもね,果たしてそれだけを試していいかという問題,それからもう一つの問題は点数の付け方が非常に主観になってしまうことです。例えば,客観性を高めようとして,解答の論点1,2,3と分けて,その論点の中にまた枝番をつけてこれができたら何点と配分しようと思ったらうまくいきませんでした。たとえば,大体についてものすごくよく書いてある。一つのことについて山が外れたのか全然書いていない。そうするとものすごく全体の点数が悪くなってしまう。ですから,これは後から主観でアジャストしました。アジャストすることによって多分いい点数の付け方ができたと思うのですが。でも客観的に点数を付けようとすると今の司法試験のやり方にならざるを得ない。多分何人かの先生でやると論点式が不公平が出ないやり方なんだろうと思います。だから,問題の作り方と同時に採点の仕方まで考えないと良い問題ができないんじゃないかと,そこら辺に難しさがある。
 それから,お手本がないんですね。アメリカの司法試験は全くの知識試験のようです。私は受けたことがないんですけれども,この間あるロースクールに行って日本の今の司法制度改革の話をして,「今の日本の司法試験というのはこういうことをやっているんだ」で,「詰め込み教育で予備校が盛んなんだ」と言ったら,側にいた教授が「お前達も今やっていないけれども,卒業してから3か月くらいクラムスクールという予備校に通ってそれをやるんだよ」と言っていましたから,やっぱりアメリカも司法試験は知識量だけを試す試験をやっているんですね。ですから,お手本がないというところがまた非常に難しいところなんだと思います。

【宮川委員】アメリカの司法試験の中でもパフォーマンステストが試みられていて,必ずしも知識一辺倒ではない。それと,今回の試験科目にはなっていませんが,法曹倫理の科目などは,知識ではなくて考えさせる問題が作られているように感じますけれども。

【中川委員】私たちは企業法務で,柏木さんもそうですけれども,人間を育てた経験からいって,非常に強調していたのはリーガルマインドということなんですよね。リーガルマインドを育てると。ところがですね,何がリーガルマインドだというのはよく分からないんだけど,俗に言えば要するに目の付け所と言うんですかね。これは人によってというよりか持って生まれたものというのがあるんですよね。ある一つの問題を与えられたときに,ピンポイントで一番の核心へ来る人と,ぐるぐる回る,いつまで経ってもという人がいるんですよね。これはある訓練によってそれができるようになるわけですけれども,やはり,そういうリーガルマインドを確認するというか,抽象的にはそういうことなんでしょうけど。これは知識とは直接関係ないんですよね。最小のものは持っていないといけないんだけど,勘みたいなものなんですかね。

【柏木委員】難しいのはそれが事前に分からないということと,どうやったってその能力が磨かれない人がいるということですよね。

【中川委員】やっぱり一種の分析総合能力なんですかね。

【柏木委員】それは,2,3年やらせてみないと適性は分からないというところがあるのではないでしょうか。

【釜田委員】ロースクール以前の小さい時からの教育の在り方と関係はないのですか。

【中川委員】それは大いにあるのではないかと思いますよね。いわゆる詰め込み式の知識教育ではリーガルマインドは育たないのではないかと。やはりいろんなテーゼがあればアンチテーゼを比較してどっちが良いのかと。あるいは価値観の違いですね。これをいつも心に置いて,この価値だけが絶対ではない,別にもっと正しいと言われるものがあるんだということとか。あるいは,僕なんかいつも言っていましたが,歴史とか宗教とか芸術を勉強しろと,そうしないといいリーガルマンにはなれないよと。これは真実とは何かということなんですよね,結局。
 だから,そういうものすごく幅の広いものの中から,リーガルマインドというのは生まれるんだと思いますけれども。それを今度テストということになると,結局,大学にそこら辺はある程度,授業を信頼してやっていただくしかないなという感じをどうしても持ちますね。

【磯村委員】各ワーキンググループで短答式の出題方針等々についても議論をしていただいている所もあるようなんですが,これは議事概要以上の記録というのは全くないんですか。そこでの議論のメモでもあると大変参考になるのではないかという気もするんですけど。

【横田人事課付】中間報告のための原稿的なメモは,次第に蓄積されていくとは思いますけれども。例えば,短答式試験の出題の在り方について,各科目別ワーキンググループで検討しているのは,例えば,択一式なのかショートアンサー式なのかとか,そういう非常に細かい技術的なことも検討していただいているようです。もちろんどういう能力を判定するのかを考えなければ議論できないことではあるのですけれども,科目別ワーキンググループでは,敢えて細かい技術的な方向を議論されているようです。

【宮川委員】この在り方グループでも,短答式の方法,択一なのかショートアンサーを含めるのか,あるいは穴の中に単語を入れるような穴埋め式の問題をするのか,どういう方法が適切なのかということについては議論して意見をまとめるのでしょうね。

【横田人事課付】もちろん科目別ワーキンググループと議論の重複があっても良いということで,司法試験管理委員会は考えておられると思います。

【宮川委員】今日は,いろいろなことを出し合って今後の議論の資料にするという会だと思いますが,今後の検討の進め方について,アからオのことについて,それぞれ分担して検討すべき事項を出してみると,ペーパーを出し合うということをやらないと先に進まないんじゃないかなという気がするんですけど。

【釜田委員】今のはいかがでしょうか。分担をしてある程度たたき台のようなものを出していく。

【宮川委員】ですから,検討すべき項目を挙げると。例えば,短答式試験は択一式,ショートアンサーあるいは穴埋め方式,その他どういう方法によるべきかとか,時間数はどの程度で,何問くらいで,そして各分野についてどのように問題数を振り分けるのか。こういう論点を洗いざらい出してみる必要があるんじゃないかと思います。

【釜田委員】今日は全体にわたりましてどういう問題があるのかということをいろいろな角度からお出しいただきました。今度は,記録を元にいたしまして,討議すべき論点を抽出することができると思います。その上で,いくつかに分けて集中的に御意見を賜ろうと思いますが,取りあえず,今日配りました中ではイから具体的に入った方が良いという感じでしょうか。そういうふうに私は感じたのですが。もちろんそれは常にアの法曹像というものがそこに付いて回るわけですが,アは先ほどおっしゃっていただきましたように,既に審議会,検討会等でもかなり出ておりますので,それを踏まえた上で議論を深めていただくことになりますが。今日のお話の中でもイないしウにわたる具体的な御意見も出ておりましたので,次回の進め方ですが,4月の会合では焦点をイに絞ってやらせていただくと,そういう形を取らせていただいた方がよろしゅうございますか。どうでしょうかね。どこかに焦点を当てればおのずからその周辺にお話も及んでいく感じも受けたのですが。

【小津委員】先ほど宮川委員の方から,例えば短答式ということでいくつか言われました。それは一つ一つもっともだと思いますが,短答式をどうするかというのはとっかかりとしては議論しやすいテーマだという感じがしないわけでもありませんので,そういう意味では釜田先生がおっしゃったように,短答式がどういうものであるべきかというところから議論するというのは一つの具体的なやり方として結構ではないかと思います。

【宮川委員】ただ,イウエで議論すべきことがどういうことがあるのかという項目の全体像を早く出した方が良いかなと思うんですね。その上でまずイから入っていくことは良いと思うのですが。イウエを分担してペーパーを出すというのはどうでしょうか。

【小津委員】あるいはそれぞれ思い付くことをメモに書いて,例えば釜田先生なり庶務担当に渡して整理してもらってはいかがでしょうか。

( 庶務担当で論点整理を行うことで合意。また,アの論点について議論に沿って事務局が「まとめ」を作成すること,議論の参考に供するため前年度の短答式試験問題を各委員に配布することを説明)

【横田人事課付】それから,先ほど磯村先生からお話のありました合格者数の問題ですが,選択科目の決定の問題とともに,司法試験管理委員会でも,今後検討していかなければならない事項と考えております。しかし,司法試験管理委員会が,新試験調査会に対して,研究調査事項として委嘱しているのは,新司法試験の実施に関する事項であり,選択科目の問題と合格者数の問題はそれに入っておりません。したがって,在り方検討グループのアからオの研究調査事項の中には,選択科目や合格者数の問題は含まれておりません。ただし,合格者数の問題がどういう人間を試験で採っていくべきかということを議論する上で切り離せない事項であるということであれば,議題にしていただいて結構だと思います。

【中川委員】選択科目はどういう関係になるんですか,試験と。要するに選択科目も試験科目の中に入ってくるのですか。

【横田人事課付】論文式試験の中に1科目入ることになってきます。

【中川委員】その選択科目が何かというのが決まっていないわけですか。

【横田人事課付】決まっておりません。その中から1科目を選択して論文式試験を受けるということです。

( 庶務担当から配布資料11の法曹養成検討会の「新司法試験の在り方について(意見の整理)」(司法試験関係部分抜粋)に基づき説明)

【釜田委員】本日予定させていただきました時間が参りましたので,今日はこの辺りで閉じさせていただきたいと思います。

【磯村委員】「宿題」の提出期限はいつごろでしょうか。

【鈴木委員】イからエについて,各自が論点と思うものを列挙してみると。オのその他もあれば。

【磯村委員】ワーキンググループについては,合否判定方法の基準等が検討事項ですが,在り方検討グループにはこれは挙がっていないんですけれども,合否判定の基準はどうするのかというのは,恐らく全体の問題なんだろうと思います。例えば,細かい点数を積み上げる方式にするのか,ABCDで大きく分けていくか等,そういうものは在り方検討グループでも検討する事項であり,もし,アからオの中でどこかと言えば,オに入るのかなという感じですが。

【横田人事課付】あるいは,例えば,短答式と論文式をどういうふうに総合的に評価した結果合否判定するのかという意味で,エの総合評価の在り方の論点として整理することも可能かと考えます。

【磯村委員】短答式は正解か正解でないかという発想の出題の仕方にいずれにしてもならざるを得ないのかと思いますが,取り分け論文試験についてどういう配点の仕方をするかとかいう検討項目がいるのかなという感じですね。ですから,出題の在り方というのに含めて読むことももちろんあると思うのですけれども。

【宮川委員】司法試験法第2条第2項「司法試験の合格者の判定は,短答式による筆記試験の合格に必要な成績を得た者につき,短答式による筆記試験及び論文式による筆記試験の成績を総合して行うものとする。」の読み方ですけど,短答式による筆記試験の合格に必要な成績を得られなかった者については,論文式による筆記試験の評価をしなくても良いということになるのでしょうね。それから,その後ですが,「短答式による筆記試験及び論文式による筆記試験の成績を総合して行うものとする」となっているわけで,論文式による筆記試験の成績を評価した後,両方を点数で合算するということを,この総合してという文章は考えているのでしょうか。そうだとすれば,点数を付けないということはあり得ないということになってしまうわけですよね。そうではなくて,総合してということは何らかの形で,総合してという言葉の射程範囲をざっと広くしてその射程範囲に何らかの形で入ってくれば良いということであれば。

【磯村委員】点数を付けるということであればもちろんそうなんでしょうけれども,例えば24点,25点という付け方をするのか,AからDまで4段階に分けて,例えばAは4点,Dは1点というようにして,その合計点と短答式の点数とを一定の算式で合計するというような方法も総合評価ですよね。だから,単に従来のような論文式の採点方式かそれ以外の採点方式かについては,例え点数化するとしてもいろいろバリエーションがあるかなと思うのですけれども。

【宮川委員】総合評価をするということは,1科目でもある水準に達していなかったらその者は合格しないという,合格させないということではなくて,他で頑張っていれば,総合評価の中で救われることもあるということを考えているのでしょうか。

【鈴木委員】それは別問題ではないですかね。総合評価,一応足し算をするけれども,1科目でもあまりひどい点の者はアウトにするということはできるわけですよね。そこは,また今後の問題で,総合評価というのは,短答で足切りにしちゃって後は論文だけの点で見るというのではなくて,比率は別としても,足し算的な思考をすると。ただ,どういう足し算をするか,そのまま点数を加算するのか,やはり比重を置いて,例えば短答をやるのだけれども,その数値の半分にするとかですね,そういうのはまた別に考えられることではないかという気がします。

【宮川委員】もちろん比重は論文式の方を大きくすることかと思うのですが,この第2条2項というのは,足し算をして最終的に合否を決めるということを想定しているのですかね。

【横田人事課付】そうだとは思います。まず,短答式である程度のラインに達したものだけ論文式試験の採点をすることができるというのが前段で,その後に,論文式試験の成績だけで評価をするのではなくて,短答式の点数も加味して評価することもできる,後段の「成績を総合して行う」というのはそういう意味であると理解しております。

【宮川委員】常にすべてについて加味しなければいけないということではないということでしょうか。

【横田人事課付】正にそこがここの研究調査会で御議論いただくことだと思います。

【宮川委員】そこのところを我々が決められるのかということで関心があったものですから。

【鈴木委員】ただ,短答を全然評価しないということになりますと,今やっているのを一遍にやっているだけの話になりますよね。時期を分けてやるのを時間がないから一遍にやって,まず短答で足切りしちゃって,後は論文だけの点数で最終合格者を決めるというということで,今と全く同じことになってしまうので,私としてはそうではないんだよという趣旨を言っているのかなと理解したんですが。ただ,比重は全然違う。

【磯村委員】ただ,点数で切るというのはいわゆる足切りとは違うのではないでしょうか。従来の短答式の良くない点は,取りあえず何人で切るというので,それを足切りに使ってはいけないということなんで,仮に100点満点で60点を取れなかった者はそれだけでアウトだという絶対値を定めて,それに満たない者は不合格とするというのは法律の趣旨に合致するのではありませんか。

【横田人事課付】その短答式の評価をあらかじめラインを決めておくのか,それとも,改めて司法試験考査委員で合否判定会議を行うのかも,そこも決まっていない事項でございます。ですから,試験をやってみて合否ラインを決めるのか,つまり,論文試験の採点は非常に負担が重いから何人程度しか採点できないということで合否ラインを決めることもあり得るのか,あるいは,例えば,あらかじめ60点以上取った人は全員論文の採点をするんだと決めておくのかと,いろいろな考えがあり得ると思うのですが,それも決まっていないものと理解しています。

【磯村委員】そうなんですか。足切りに使っていけないというのは,何となくコンセンサスかなと思っていたんですが,そうではないんですか。

【横田人事課付】論文式の適正な採点をするために数量的限界があり得るとの考え方も成り立ち得ると思います。いずれにしても,全員に論文は一応受けさせるわけですので。

【磯村委員】もちろん論文試験を受けさせるわけですが,受けてもおよそ採点してもらえなければ,受けられなかったのと同じなので,採点できる答案枚数がこれだけなので,人数をこれだけ絞らなければいけないというのは絶対的な到達度と全然違う発想で,短答式をそのような目的には使わないというのは何となく前提としていたのですが,そうでもないんですか。

【横田人事課付】そこのところの公のコンセンサスがあるとは言えず,今後の検討課題であると理解しております。

【鈴木委員】実際問題として初回に絶対値を設定するというのはかなり難しいと思うんですよね。この試験で何点以上という絶対値を設定してどのくらいの人が来るかというのを判断するのは難しいかなという気がしますので,実際問題としては,やってみて全体のできがこれくらいでというような感じでやらざるを得ないのかなと,これは理屈の話ではなくて実施の上での問題かもしれませんが。

【中川委員】何で短答式を作ったかということですよね。つまり,足切りをするために作ったのか,それともさっきの議論のように基礎知識的なものを備えているかどうかを試すというので作ったのかね。はっきりしませんよね。しかも同日試験だという以上は,短答式も論文式も全員受けるということですから,そこから見ると足切りではないような気もするしですね。何かちょっとよく分かりませんね。

【小津委員】例えば,今の点につきましても,そういうことが論点であるということをどなたからか出していただいて,可能であれば事務局の方で,その論点についてはこういうことは決まっているのだということを書いてもらって,それに基づいて,いやそれは決まっていないはずだという議論を我々がすれば良いのではないでしょうか。こういうことは決まっているはずだということまで整理していただくと非常にありがたいのですが。決まっているというのはどういう意味かというと,一番はっきりしているのは審議会の意見書にこう書いてあるというような参考になる部分を併せて書いていただくと後の議論に。

( 庶務担当が論点について今までの議論の整理を作成すること,参考として,現行司法試験の具体的実施に関する事項について説明)

【宮川委員】それと科目別ワーキンググループにお出しになっている資料で役立つものがあれば,この前全体委員会で大橋さんから外国の司法試験の状況について法務省で掌握している資料があったら見せてもらいたいという要望がありましたけれども,もしそういうものがあったら我々もいただきたい。

( 庶務担当から,適宜ピックアップして配布する旨を説明)

【中川委員】たくさんにしないでください。

【小津委員】メモを出す期限はいつにしますか。

( 協議の結果,論点メモの提出期限は4月4日までと決定)

【釜田委員】次回は,それを含めまして,特にイの短答式試験に関する御議論を頂だいしたいと思います。