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国際協力人材育成研修を実施しました

法務総合研究所国際協力部(以下「国際協力部」といいます。)では,平成27年(2015年)11月10日から同月20日までの間,国際協力人材育成研修を実施しました。

研修目的

法務省は,国際協力の一環として,ベトナム社会主義共和国,カンボジア王国,ラオス人民民主共和国,ミャンマー連邦共和国等の開発途上国を対象に,法律起案,法律家養成等を支援する法制度整備支援を実施しており,国際協力部は同支援業務を担当しています。法務・検察職員の中には,法制度整備支援業務に関心があり,国際協力部への配属や支援対象国での勤務に多少なりとも興味がある方はいるかと思いますが,同支援業務は法務・検察における他の仕事とは内容を大きく異にしますので,外部から業務内容を理解することは難しいと思われます。

そこで,国際協力部では,法務・検察の職員を対象に,法制度整備支援の現場を実際に見てもらい,同支援業務に対する理解を深めてもらうことを目的として,平成21年(2009年)より年1回,国際協力人材育成研修を実施しており,今回が7回目となります。

参加者

今回の研修には,全国の検察庁から検事3名及び検察事務官1名が,法務省民事局から局付検事(裁判官出身)1名及び法務事務官1名の合計6名が参加しました。

研修内容

国内研修として2日間,大阪にある国際協力部において,法制度整備支援の概要,支援対象国との支援状況等について講義を実施し,その後,国外研修として6日間,カンボジア王国を訪問し,同支援の現場を実際に見聞しました。

現在カンボジア王国には,独立行政法人国際協力機構(JICA)の長期派遣専門家として,検事(裁判官出身者を含む。)と弁護士の出身者が合計3名派遣されており,司法省,王立司法学院(裁判官・検察官養成校の上位機関),弁護士会,王立法律経済大学の4機関を対象に,法制度整備支援が実施されています。

各長期派遣専門家は各機関ごとにワーキング・グループを開催しており,今回の研修では,4機関全てのワーキング・グループを見学し,それぞれの特徴を実感することができました。

また,今回の研修では,名古屋大学が王立法律経済大学内に設置している日本法教育センターを訪問し,日本法を日本語で学んでいる現地の学生に対し,研修員が日本語で,「名誉毀損」や「間接事実による立証」というテーマで講義を行いました。現地の学生の日本語能力,日本法に対する知識は驚くべきものであり,日々の自己研さんを惜しまない学生の姿に各研修員は感銘を受けていました。

ワーキング・グループ見学の写真

ワーキング・グループ見学の様子

名古屋大学日本法教育センターでの講義の写真

名古屋大学日本法教育センターでの講義の様子

さらに,今回の研修では,1970年代のクメール・ルージュ政権による大量虐殺等の重大犯罪につき同政権幹部の刑事責任を問うために設置されたカンボジア特別法廷を訪問し,同法廷職員から説明を受けるとともに,施設見学を行いました。

カンボジア特別法廷での集合写真

カンボジア特別法廷にて

研修成果

帰国後,研修員からは,「研修を通じ,私は,国際協力という分野が,国境を越え,まさに私が法曹を志した当初からの思いを日々噛み締めながら働くことのできる分野であると確信した。」「現地の学生一人一人が,この国をより良くしたいという強い気持ちを胸に,日々,勉強に励んでいる姿を目の当たりにし,私が法曹を志した初心を思い起こさせてもらった気がする。」などという感想が寄せられるなど,十分な研修成果があげられました。

近い将来,今回の研修員の中から法制度整備支援を担う人材が生まれることが期待されます。

安倍内閣総理大臣が更生保護施設「両全会」を視察されました!

平成27年12月4日(金),安倍総理大臣が更生保護施設「両全会」を視察されました。

安部総理大臣の視察の様子

現職の総理大臣が更生保護施設を視察されるのは,初めてのことです。

今回の視察は,平成26年12月に開催された犯罪対策閣僚会議において,宣言「犯罪に戻らない・戻さない」を決定するなど,政府として刑務所出所者等の再犯防止対策に強力に取り組んでいるところ,総理大臣自ら,その先進的な取組がなされている現場を視察されたものです。

犯罪に戻らない・戻さないバナー

1 「両全会」って?

薬物依存からの回復指導の様子

薬物依存からの回復指導

視察先となった「両全会」は,全国でも数少ない女性専用の更生保護施設です。

刑務所を出た人や保護観察中の人など,刑務所出所者等で,身寄りのない人等を受け入れ,薬物依存からの回復のための指導や,退所後の継続的な支援など,再犯防止のための先進的な取組を行っています。

2 視察の様子

視察当日,安倍総理大臣は,小畑輝海理事長や施設職員と意見交換をされたほか,就職に向けてパソコンの練習をしている入所者に励ましの言葉を掛けられました。

施設職員との意見交換の様子

施設職員との意見交換

視察後,安倍総理大臣は,「両全会」のような先進的な取組を全国に展開していくべきことや,更生保護の大切さ,社会における息の長いケアの大切さについて発言されました。

安部総理大臣の発言の様子

また,同月8日に開催された犯罪対策閣僚会議においては,本視察を踏まえ,安倍総理大臣から,薬物依存者の回復指導には,医療機関との連携の下,息の長い地道な取組が不可欠であり,できるだけ早く全県で医療機関による薬物依存治療を受けられるようにする必要があること,「世界一安全な国,日本」の実現に向け,全力で取り組んでいただきたい旨の指示が全閣僚に対してなされました。

これを受けて,会議後,岩城法務大臣からは,全国の更生保護施設の受入れ機能の強化や,退所後も継続して必要な指導や支援を実施できるような体制の整備,薬物事犯者の地域支援・治療体制の全国的な整備等を進めていく旨の発言がありました。


今回の視察において,安倍総理大臣から,更生保護施設における取組を高く評価していただけたことは,全国の更生保護関係者にとっても大きな励みとなりました。

これらの発言や指示に応じた具体策について,今後,更に検討を進めていくこととなります。