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法制度整備支援の現場から

カンボジア長期派遣専門家 伊藤 みずき

民法や民事訴訟法は、私たちの社会の土台となる基本的なルールで、その国にとって、極めて重要な法律です。

カンボジアの民法と民事訴訟法は、日本の法制度整備支援によって起草され、成立したものであることをご存知でしょうか。

1990年代以降、内戦の影響から立ち直ろうとしていたカンボジアでは、近代的な法制度の整備が急務となっていました。そうした中、JICA(国際協力機構)のプロジェクトの下で、日本の専門家とカンボジアの関係者が共に取り組み、日本や諸外国の法制度を参考にしながら、カンボジアの社会や文化に合わせて民法と民事訴訟法が起草され、成立しました。

法を整備するだけでなく、それを運用する人材の育成も欠かせません。日本は、民法や民事訴訟法が成立した後も、関係する法令の整備のほか、裁判官など法律の専門職の人材育成にも力を注いできました。

法務省は、JICAなどの関係機関と連携しながら、長年にわたり、カンボジアの法制度整備支援を行ってきました。2022年からは、JICAのプロジェクトとして、裁判官・検察官を養成する教育機関の支援を実施し、現役の教官や将来教官となる若手裁判官らと共に、教材の作成やカリキュラムの検討をはじめとする現地での活動や、日本での研修などを通じて、教官の能力向上や裁判官・検察官養成校の教育の質の向上を目指す取組を行っています。現地で活動しているのは、法務省から派遣されている私(検察官出身)や、裁判官出身であるJICA長期派遣専門家です。

先日、カンボジアの司法大臣とお会いする機会がありました。その際、日本の長年の支援に対し、「日本は、法律ができた後にすぐにカンボジアを去るようなことはせず、その法律を運用することができる人材を育成する支援も継続してくれている。とても信頼しており、感謝している。」という言葉をいただきました。カンボジアで日々活動していると、カンボジアの皆さんからの日本に対する信頼が非常に厚いことを感じます。このような信頼関係は、短期間で得られるものではなく、これまで長きにわたって、カンボジアとの協力を続けてきたからこそ構築できたものだと思います。これまで先輩たちが積み上げてきた協力と信頼の歴史をつないでいけるよう、これからも一歩一歩着実に現地での取組を続けていきたいと思います。