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(動産譲渡登記)Q&A


 

 

Question

Q1.動産譲渡登記を利用するメリットは、どのようなものですか。

 

Q2.倉庫内の在庫商品について動産譲渡登記をした後、当該倉庫から在庫商品の一部が搬出された場合には、当該商品に動産譲渡登記の効力は及ばないのですか。

 

Q3.動産譲渡登記がされた譲渡の目的物である動産が更に二重譲渡された場合には、後行する譲受人は、当該動産を即時取得することができますか。

 

Q4.先取特権の目的である動産の譲渡について動産譲渡登記がされた場合には、先取特権者と当該動産の譲受人との法律関係は、どうなるのですか。

 

Q5.質権の目的である動産の譲渡について動産譲渡登記がされた場合には、質権者と当該動産の譲受人との法律関係は、どうなるのですか。

 

Q6.自動車等のように登録・登記制度が別個に存在する動産の譲渡についても、動産譲渡登記をすることはできますか。

 

Q7.海上に存する船倉内の漁獲物について譲渡担保を設定した場合にも、動産譲渡登記をすることはできますか。

 

Q8.投資事業有限責任組合の組合財産として動産を譲り受けたので、その動産譲渡について動産譲渡登記を申請しようと考えていますが、その場合の申請書への記載及び電磁的記録媒体に記録すべき申請人である譲受人の表示は、どのようにすればよいのですか。

 

Q9.動産譲渡登記の申請において、電磁的記録媒体に記録すべき申請データに軽微な誤りがある場合には、補正(修正したデータの再登録)をすることはできますか。

 

Q10.登記した動産の保管場所を変更した場合や譲渡人又は譲受人の商号・本店等が変更になった場合には、変更の登記をすることはできますか。

 

Q11.動産譲渡登記を完了した後に、当該登記の対象である動産に誤りがあったことを発見した場合には、どのようにしたらよいですか。

 

Q12.登記事項概要証明書と概要記録事項証明書には、どのような違いがあるのですか。

 

Q13.動産譲渡登記の存続期間は、原則10年とされ、「特別の事由」がある場合には、10年を超えることができるとされていますが、「特別の事由」がある場合とは、どのような場合ですか。

Answer

 

Q1. 動産譲渡登記を利用するメリットは、どのようなものですか。

 A1.  
 動産譲渡の対抗要件は、動産の引渡し(民法第178条)によっても備えることができますが、譲渡人に目的動産の利用を認める譲渡担保の場合には、占有改定の方法により引渡しをすることにならざるを得ません。
 しかしながら、この占有改定は、第三者からみて外形上その存在が判然としないため、後日、動産を取得する者が現れて、占有改定の有無、先後をめぐって紛争を生じるおそれがあります。
 国の公示制度である動産譲渡登記を利用して対抗要件を具備することにより、こうした紛争を未然に防止することができるほか、仮に紛争になった場合でも、対抗要件を具備していることの立証が容易になると考えられます。

 

Q2. 倉庫内の在庫商品について動産譲渡登記をした後、当該倉庫から在庫商品の一部が搬出された場合には、当該商品に動産譲渡登記の効力は及ばないのですか。

 A2.  
 倉庫内の在庫商品について動産譲渡登記をする場合には、譲渡の対象となる動産を特定するために、「動産の種類」及び「保管場所の所在地」を登記事項として記録するほか、有益事項として倉庫の名称等を記録することができます。
 動産譲渡登記の効力は、原則として、当該動産がそれらの記載事項により特定された範囲内にある限りにおいて、及ぶこととなります。通常の営業の範囲内で搬出された動産には、動産譲渡登記の効力は及ばないものと考えられます。

 

Q3. 動産譲渡登記がされた譲渡の目的物である動産が更に二重譲渡された場合には、後行する譲受人は、当該動産を即時取得することができますか。

 A3.
 動産譲渡登記がされた譲渡の目的たる動産の後行の譲受人(動産譲渡登記上の譲渡人からの買主等)について即時取得が認められるかどうかは、当該譲受人が登記の有無を調査していない場合に過失があるかどうか、すなわち、当該譲受人に登記の有無を調査する義務が認められるかどうかに関わりますので、事案に応じた裁判所の判断に委ねられることとなります。
 一般論としては、倉庫内の在庫商品等のような集合動産に譲渡担保が設定され、動産譲渡登記がされた場合には、譲渡人がその通常の営業の範囲において商品等を処分する権限を有するのが一般的ですので、当該譲受人は、商品等の所有権を承継取得することとなります。また、個別動産についても、通常は取引の迅速性が要請されること、一般に買主が売主に登記事項証明書の提示を強制する立場にないことからすると、譲受人に登記の調査義務が認められることはなく、当該譲受人が登記の有無を調査しなかったとしても、即時取得(民法第192条)が認められると考えられます。
 もっとも、金融機関が譲り受ける場合などには、登記の有無を調査しなかったときは、譲受人としてすべき注意義務を尽くしたとは言い難いものとして、即時取得が認められないこともあり得ると考えられます。また、例えば、相当に高額な機械設備等、一定の動産について、活発に譲渡担保の目的として利用され、その際には動産譲渡登記がされているという取引慣行が形成されている場合には、譲受人が登記の有無を調査せずにその動産を譲り受けたときは、注意義務を尽くしたことにはならないとして、過失が認定され、即時取得が認められないこともあると考えられます。

 

Q4. 先取特権の目的である動産の譲渡について動産譲渡登記がされた場合には、先取特権者と当該動産の譲受人との法律関係は、どうなるのですか。

 A4.
 動産の先取特権(民法第311条)を有する者は、特定の動産から優先弁済を受けることができます(同法第303条)が、債務者がその目的である動産を第三取得者に引き渡した後は、先取特権を行使することができません(同法第333条)。これは、動産の第三取得者は、譲渡について対抗要件を具備したときは、先取特権者に対して動産の取得を主張することができる地位にあるため、先取特権の追及力が第三取得者との関係では制限されるからです。動産譲渡登記がされたときは、動産の引渡しがあったものとみなされて対抗要件を具備することとなりますから、動産譲渡登記がされた動産は、動産の先取特権の対象とはならないこととなると考えられます。

 

Q5. 質権の目的である動産の譲渡について動産譲渡登記がされた場合には、質権者と当該動産の譲受人との法律関係は、どうなるのですか。

 A5.
 質権は、その目的となる動産が債権者に引き渡されることが効力発生要件とされており(民法第344条)、質権者が当該動産を継続して占有することが対抗要件とされています(同法第352条)。したがって、質権の目的である動産の譲渡について動産譲渡登記がされたとしても、質権の対抗要件具備が常に先行することとなるため、質権者が占有を継続している限り、質権者が譲受人に優先することとなります。
 これに対して、動産の所有権が譲受人に譲渡され、当該動産について動産譲渡登記がされた後に、譲渡の目的物である動産について譲渡人が質権を設定したとしても、質権設定者である譲渡人は処分権限を喪失していることから、質権設定契約において質権者とされた者が質権を即時取得しない限り、動産の譲受人が優先することとなります。

 

Q6. 自動車等のように登録・登記制度が別個に存在する動産の譲渡についても、動産譲渡登記をすることはできますか。

 A6.  
 自動車、船舶、小型船舶、航空機等のように特別法によって民法の対抗要件とは別に所有権の得喪に関する対抗要件が設けられている動産のうち、既に特別法による登録等がされたものの譲渡については、動産譲渡登記の対象とはなりません。
 上記以外にも無記名債権は、動産とみなされます(民法第86条第3項)が、解釈上、証券の交付が対抗要件ではなく、譲渡の効力発生要件とされており、物権変動に関する民法の意思主義の例外をなしていることから、その譲渡は、動産譲渡登記の対象とはなりません。
 また、株券も、株式を表章する有価証券の性質に反しない限り、動産としての取扱いを受けると解されていますが、やはり、その交付が譲渡の効力発生要件とされていることから、動産譲渡登記の対象とはなりません。

 

Q7. 海上に存する船倉内の漁獲物について譲渡担保を設定した場合にも、動産譲渡登記をすることはできますか。

 A7.  
 譲渡の目的物である動産をその所在によって特定する場合には、
 a 動産の種類、
 b 動産の保管場所の所在地
が必要的登記事項とされており、ここにいう「動産の保管場所の所在地」については、譲渡に係る動産を具体的に特定することができるよう、保管場所の地番又は住居表示番号までを記録する取扱いとされています。
 ところで、船倉内の漁獲物や養殖場の魚について譲渡した場合には、目的動産の保管場所の所在地として地番や住居表示番号を記録することはできませんが、例えば、動産の保管場所として船舶の名称や養殖場の名称等を記載するなどにより、譲渡に係る動産の特定に問題がないと認められる場合には、登記をすることができるものと考えられます。

 

Q8. 投資事業有限責任組合の組合財産として動産を譲り受けたので、その動産譲渡について動産譲渡登記を申請しようと考えていますが、その場合の申請書への記載及び電磁的記録媒体に記録すべき申請人である譲受人の表示は、どのようにすればよいのですか。

 A8.
 投資事業有限責任組合契約に関する法律第2条第2項に規定する投資事業有限責任組合は、法人格を有せず、私法上の権利義務の主体となることはありませんので、当該組合が登記名義人となることはできません。したがって、譲受人としての表示については、当該動産の共有者である組合員全員を表示するか、組合員からの受託者としての地位において一部の業務執行者の名義によって、動産譲渡登記を申請することとなります。
 ただし、動産譲渡登記においては、動産譲渡登記申請に当たって提出する申請データとして作成する「登記共通事項ファイル(COMMON.xml)」中の「備考」欄(「動産個別事項ファイル(MOVABLES.xml)」中の「備考」欄ではないので、注意してください。)に、動産譲渡を特定するために有益な事項を記録することができ、当該事項は動産譲渡登記ファイルに記録され、登記事項証明書及び登記事項概要証明書にも記載されます。そこで、この有益事項として、例えば、「本件動産は、譲受人△△及び□□が組合員である○○投資事業有限責任組合(事務所:東京都千代田区丸の内○丁目○番○号)の組合財産として譲り受けた共有動産である。」、あるいは、「譲受人△△は○○投資事業有限責任組合(事務所:東京都千代田区丸の内○丁目○番○号)の無限責任組合員であり、同組合が組合財産として譲り受けた動産につき、組合員からの受託により同譲受人の名義で登記するものである。」等と記録して、動産譲渡登記を申請することができます。

 

Q9. 動産譲渡登記の申請において、電磁的記録媒体に記録すべき申請データに軽微な誤りがある場合には、補正(修正したデータの再登録)をすることはできますか。

 A9.
 動産譲渡登記の申請をする場合には、登記すべき事項(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第7条第2項第1号から第6号までに定める事項)を法務省令で定める構造の電磁的記録媒体に記録して提出する必要があります(動産・債権譲渡登記令第7条第1項)。
 動産譲渡登記所に提出された電磁的記録媒体に記録された事項を動産譲渡登記ファイルに記録するには、当該電磁的記録媒体を用いてしなければならないため、その内容に誤りがあったとしても、他に却下事由(本店・商号が添付書面と合致しない等)がない場合には、そのまま動産譲渡登記ファイルに記録されることとなります。また、仮に申請データに誤りがあることに登記官が気付いたとしても、登記官自らがデータを修正することはできません。
 このように、動産譲渡登記の申請においては、申請データを補正することができません。
 なお、提出された申請データに誤りがあった場合において、取下書が添付されているときには、一旦当該登記申請を取り下げ、これを修正した上で、再度申請していただくこととなります。また、郵送による申請の場合において、同様に取下書が添付されている場合には、動産譲渡登記所において当該申請の取下げの手続をした後、申請人に登記申請書及び電磁的記録媒体を返送しますので、申請人において申請データを修正し、再度申請をしていただくこととなります。
 以上を御理解いただき、作成された申請データについては、法務省ホームページで公開している申請データチェックツールにより事前にチェックするとともに、データの内容を印刷するなどして、入力内容を確認した上で、誤りのないように提出していただきますようお願いします。

 

Q10. 登記した動産の保管場所を変更した場合や譲渡人又は譲受人の商号・本店等が変更になった場合には、変更の登記をすることはできますか。

 A10.
 登記が完了した後に登記事項に変更が生じたり、登記事項に誤りがあった場合であっても、変更の登記や登記の更正をすることはできません。
 また、譲渡人又は譲受人の一方又は双方の商号・名称又は本店・主たる事務所(譲受人が自然人の場合には、氏名又は住所)に変更が生じたり、誤りがあった場合であっても、変更の登記や登記の更正をすることはできません。なお、譲渡人の商号・名称の変更の登記又は本店・主たる事務所の移転の登記がされたときは、その譲渡人の登記事項概要ファイルの記録が連動して変更されます(動産・債権譲渡登記規則第7条)。
 なお、動産譲渡登記の後に、譲渡人又は譲受人の商号・名称又は本店・主たる事務所(譲受人が自然人の場合には、氏名又は住所)に変更が生じ、その後、延長登記又は抹消登記を申請する場合には、変更を証する証明書(履歴事項全部証明書等)を添付して申請をする必要があります(動産・債権譲渡登記規則第13条第1項第4号)。

 

 

Q11. 動産譲渡登記を完了した後に、当該登記の対象である動産に誤りがあったことを発見した場合には、どのようにしたらよいですか。

 A11.
 動産譲渡登記については、登記した事項に誤りがあった場合であっても、その登記の更正をすることはできません。登記後に誤りを発見した場合には、動産譲渡登記をすべきであった動産を対象とする登記を新たに申請するほかありません。
 また、対象である動産を誤った動産譲渡登記については、実体関係を欠くものであり、無効な登記となりますので、動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第10条第1項第1号に規定する「譲渡が効力を生じないこと」に準じて、抹消登記の申請をすることができると考えられます。
 この場合の抹消登記の登記原因は、「錯誤」とし、登記原因年月日を記載しないこととして差し支えないものと考えられます。

 

Q12. 登記事項概要証明書と概要記録事項証明書には、どのような違いがあるのですか。

 A12.
 動産譲渡登記の概要事項を証明したものとして、動産譲渡登記所で発行する「登記事項概要証明書」と、譲渡人の本店(主たる事務所)を管轄する登記所等で交付する「概要記録事項証明書」の2つがあり、いずれも、譲渡に係る動産は記載されておらず、誰でも請求することができるという共通点があります。
 主な違いとしては、以下のようなものが挙げられます。  
 a  (記載内容)
    記載内容について、「登記事項概要証明書」には、登記原因及びその日付、登記の存続期間が記載されますが、「概要記録事項証明書」には、これらの事項は記載されません。  
  b  (譲渡人の商号本店)   
    「概要記録事項証明書」は動産譲渡登記事項概要ファイルが商業・法人登記簿の記録とリンクしているため、商業・法人登記において、譲渡人の商号変更や本店移転の登記がされた場合には、これに連動して記載内容が変更されます。  
     一方、動産譲渡登記所で交付する「登記事項概要証明書」については、商業・法人登記において、譲渡人の商号変更や本店移転の登記がされても、記載記載内容は、変更されません。  
 c  (交付時期)   
   「登記事項概要証明書」は、動産譲渡登記が完了した後、直ちに交付を受けることができますが、「概要記録事項証明書」は、動産譲渡登記が完了した後、動産譲渡登記所から譲渡人の本店等所在地を管轄する登記所に対して動産譲渡登記事項概要ファイルに記録すべき事項が通知され、これに基づいて同ファイルへの記録がされた後に交付を受けることができます。  
    なお、「概要記録事項証明書」は、譲渡人の本店等所在地を管轄している登記所でなくても、不動産登記又は商業・法人登記を取り扱っている登記所であれば、いずれの登記所に対しても請求することができます。

 

Q13. 動産譲渡登記の存続期間は、原則10年とされ、「特別の事由」がある場合には、10年を超えることができるとされていますが、「特別の事由」がある場合とは、どのような場合ですか。

 A13.
  動産譲渡登記の存続期間については、実務上、動産の譲渡担保契約が5年から10年までの範囲内で見直しが行われることが一般的であることなどを考慮し、原則として10年を超えることができないと規定されています。  
 しかし、譲渡担保契約に係る被担保債権の償還期間について10年を超える定めをする場合など、取引によっては、動産譲渡登記について10年を超える存続期間を定めることが必要な場合があり得ます。このような場合には、「特別の事由」があるものとして、10年を超えて存続期間を設定することができます。  
 10年を超える存続期間を定めるには、「特別の事由があることを証する書面」として、譲渡担保契約書等の添付が必要となります。ただし、譲渡担保契約書と金銭消費貸借契約書が別個に作成されており、譲渡担保契約書に被担保債権の償還期間が明記されていない場合には、当該金銭消費貸借契約書の提出も必要となります。  
  ※ 単に、債権保全のため、当事者間で法定の存続期間を超える合意をした場合は「特別の事由」には当たりません。