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Q&A形式の解説資料(民法編)

父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議において、Q&A形式の解説資料(民法編)を作成しました(令和7年6月30日取りまとめ、令和7年8月27日改訂)。

目次

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1 親の責務等(新民法第817条の12)
Q1-1 特定の事項について父母と子の意見が異なる場合には、父母は、「その子の人格を尊重」する観点から、子の意見と異なる行為をすることができないのか。
 
Q1-2 父母が子に対して負う「自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養」する義務(生活保持義務)はいつまで負うのか。
 
2 父母相互の人格尊重・協力義務(新民法第817条の12関係)
Q2-1 どのような行為が父母相互の人格尊重・協力義務に違反するか。
 
Q2-2 単独親権者が、DVや虐待からの避難のために子とともに転居する場合であっても、他方の親に無断で子の住居を変更した場合には、父母相互の人格尊重・協力義務に違反することになるのか。
 
Q2-3 子が被災した場合における子の安否や、子が病気になった際の体調等について、別居親から同居親に対して子の状況を問い合わせたにもかかわらず、これに応答しない場合には、父母相互の人格尊重・協力義務に違反するか。
 
Q2-4 父母間にDVがあった場合や、父母の一方から子に対する虐待があった場合等でも、父母は協力して子を養育しなければならないのか。
 
Q2-5 暴言等が父母相互の人格尊重・協力義務に違反すると評価されるかどうかは、どのような事情を考慮して判断されるか。
 
Q2-6 父母双方が親権者である場合において、子連れ別居が父母相互の人格尊重・協力義務に違反すると評価されるかどうかは、どのような事情を考慮して判断されるか。
 
Q2-7 父母の一方が父母相互の人格尊重・協力義務等に違反した場合にはどのような効果が生ずるか。
 
3 家庭裁判所が親権者の指定又は変更についての判断をする際の考慮要素(新民法第819条関係)
Q3-1 新民法第819条第7項は、父母双方を親権者とするか、その一方を親権者とするかについて、いずれかを原則とし、他方を例外として定めているのか。父母の一方を親権者とする旨の判断よりも、双方を親権者とする判断の方が認められやすいのか。
 
Q3-2 父母の双方を親権者とした場合には、子は父母双方の家を行ったり来たりして養育されることとなるのか。父母の双方を親権者とすることは、親子交流の頻度、養育費の額等に影響するのか。
 
Q3-3 子が複数いる場合、単独親権か共同親権か、単独親権の場合に親権者を父母のいずれとするかは子ごとに決めることになるのか。裁判離婚の場合にも、子ごとに判断されることになるのか。
 
Q3-4 離婚後の父母双方を親権者とすべきかその一方を親権者とすべきかについて、いずれの当事者も厳密な証明に至らず、裁判官が判断に迷った際には、どのような判断をすべきか(新民法第819条第7項各号の事由の有無は、いずれの当事者が立証責任を負わせる趣旨か。)。
 
Q3-5 家庭裁判所が離婚後の親権者の指定又は変更の裁判をするに当たり、当事者の意見や子の意見は考慮されるか。
 
Q3-6  DV・虐待のケースでは、必ず単独親権の定めをすることになるのか。新民法第819条第7項の第1号及び第2号のいずれにも該当しない場合であっても、裁判所が単独親権の定めをすることはできるか。
 
Q3-7 父母間にDVがあるために裁判所が必ず単独親権の定めをしなければならない場合とは、身体的DVがある場合に限られるのか。
 
Q3-8 新民法第819条第7項各号の父又は母が子の心身に害悪を及ぼす「おそれ」や、父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受ける「おそれ」の有無は、どのように判断するのか。
 
Q3-9 DVや虐待を理由として単独親権の定めを求めるためには、医師による診断書等の客観的証拠が必ず必要か。
 
Q3-10 改正法において、父母の合意がない場合においても裁判所が父母双方を親権者とすることができることとされたのはなぜか。高葛藤のケースや、父母の一方が相手方と「関わりたくない」「口も聞きたくない」などの感情的な主張をしたケースにおいては、単独親権の定めがされることとなるか。
 
Q3-11 父母の合意がないにもかかわらず離婚後の父母双方を親権者とすることが子の利益のため望ましい場合としては、どのような場合が考えられるか。
 
Q3-12 高葛藤であるケースにおいて、どのような場合に「父母が共同して親権を行うことが困難」と認められるか。
 
Q3-13 親権者の変更の申立ては、どのような場合に認められるのか。また、その際に、どのような事情が考慮されるか。
 
Q3-14 協議、審判・調停によって離婚後共同親権となったが、その後に、子がそれ以前の虐待の事実を述べたり、一方の親が自身のDVの被害を話せるようになったりした場合には、単独親権者とする親権者変更の申立てをすることができるか。
 
Q3-15 改正法の施行前に離婚をした父母は、父母の双方を親権者とすることができるか。
 
Q3-16 DV等を背景として、協議離婚において不適正な過程による合意によって親権者の定めがされた場合には、どのように対応するのか。
 
Q3-17 別居親が、一定の収入があるにもかかわらず理由なく長年にわたって養育費の支払をしてこなかったような場合でも、共同親権への変更の申立てをした際に、そのような変更の申立ては認められるか。
 
Q3-18 離婚後に共同親権と定めたものの、別居親が養育費の支払をしない場合には、同居親の単独親権への親権者変更の申立ては認められるか。
 
Q3-19 濫用的な親権者変更の申立てがされた場合には、どのような対応がされるか。
 
4 親権の行使方法等(新民法第824条の2関係)
Q4-1 新民法第824条の2は、父母の婚姻中と離婚後の双方に適用されるのか。また、婚姻中の父母双方が親権者である場合と、離婚後の父母双方が親権者である場合とで、親権の行使方法は異なるのか。
 
Q4-2 新民法第824条の2が新設されたことにより、旧民法の下でこれまでは父母の一方が単独で親権を行うことができたものについても、これからは父母双方が親権を共同して行わなければならなくなるのか。
 
Q4-3 新民法第824条の2において、「親権は、父母が共同して行う」と定めている趣旨は、子のための契約の締結等の親権行使の際に、父母双方の署名・押印を必須とする趣旨か。
 
Q4-4 共同で親権を行使すべき事柄について、相手方に連絡をしたにもかかわらず、返事がない場合にはどうすればよいのか。
 
Q4-5 共同親権下において、新民法824条の2第1項又は第2項の例外事由がないにもかかわらず、一方の親が他方に無断で、子を代理した場合には、その代理の効果は子に帰属するか。
 
Q4-6 共同で親権を行使すべき事柄について、父母の共同の意思決定を経ることなく、父母の一方が単独で親権行使をした場合には、親権行使の相手方は何らかの法的責任を負うことはあるか、あるとすればどのような場合にどのような理由に基づくものか。
 
Q4-7 新民法第824条の2第1項第3号(急迫の事情)や同条2項(日常行為)によって単独で親権を行使することができるのは、現に子を監護している親のみか。
 
Q4-8 父母が双方で行うべき親権行使(子の転居等)を、新民法第824条の2第1項の例外事由がないにもかかわらず、一方の親が他方に無断で行った場合にはどうなるのか。
 
Q4-9 「子の利益のため急迫の事情があるとき」とはどのような場合か。
 
Q4-10 「監護及び教育に関する日常の行為」とは何か。
 
Q4-11 「監護及び教育に関する日常の行為」を単独ですることができるのは、親権者のうち子と同居する者に限られるか。
 
Q4-12 子の日々の身の回りの世話は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。
 
Q4-13 子と同居する父母の一方が日常的な行為に係る親権行使をした後に、子と別居する他方が当該行為と矛盾する行為をすることは、どのように評価されるか。
 
Q4-14 子の居所に関する判断(転居等)は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。また、その判断が「子の利益のため急迫の事情があるとき」に該当するのはどのような場合か。
 
Q4-15 子の旅行に関する判断は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。
 
Q4-16 学校教育に関してはどのようなものが「監護及び教育に関する日常の行為」に該当し、どのようなものが該当しないか。
 
Q4-17 学校教育に関してはどのような場合が「子の利益のため急迫の事情があるとき」に該当するか。
 
Q4-18 学校教育における「監護及び教育に関する日常の行為」について、それぞれの親権者から矛盾する内容の意思を示された場合、学校はどのように対応すべきか(例えば、修学旅行等の学校行事への参加に同居親が賛成して、別居親が反対しているという状況では、子は学校行事に参加することができないのか。)。
 
Q4-19 学校教育における「監護及び教育に関する日常の行為」に該当しない行為について、それぞれの親権者から矛盾する意思を示された場合には、学校はどのように対応すべきか。
 
Q4-20 親権を持つ別居親から運動会や卒業式等の学校行事への参加の希望を受けた場合、学校はどのように対応すべきか。
 
Q4-21 子の習い事に関する判断は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。
 
Q4-22 子の宗教教育に関する判断は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。
 
Q4-23 子の就職に関する判断は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。
 
Q4-24 子の財産管理に関する判断は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。
 
Q4-25 子の氏の変更や養子縁組に関する判断は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。
 
Q4-26 「監護及び教育に関する日常の行為」(子の学習塾、アルバイト等)に関し、父母の意見に食い違いが大きい場合には、どのような対応をとればよいのか。父母の一方が単独で親権を行使した後、他方の親が事後的に不当に矛盾する行為をとり続けるような場合には、どのように対処すればよいのか。
 
Q4-27 新民法第824条の2第3項により家庭裁判所が親権行使者を定めることができる「特定の事項」とは何か。
 
Q4-28 民法第824条の2第3項の親権行使者の指定は、家庭裁判所の調停・審判以外によってもすることはできるか。
 
Q4-29 「監護の分掌」とは何か。
 
Q4-30 「監護の分掌」と親子交流とは何が違うのか。「監護の分掌」の定めをした場合には、養育費について現行法とは異なる扱いがされるのか。
 
Q4-31 父母双方が親権者であるかその一方が親権者であるかや、特定事項に係る親権行使者が定められているか及びそれが父母のいずれであるかは、公的な文書に記録されるのか。また、親権行使の受け手となる学校や病院等は、誰が親権者であるかをどのように把握すべきか。
 
Q4-32 子の監護をすべき者や監護の分掌の定めの有無・内容は、公的な文書に記録されるのか。また、親権行使の受け手となる学校や病院等はその定めの有無・内容をどのように把握すべきか。
 
5 その他
Q5-1 各種施設を親子交流の場としたい旨の希望があった場合には、当該施設の管理者はどのように対応すべきか。父母の協議において、親子交流の場所を当該施設と定めた場合には、当該施設の管理者は親子交流の実施場所を必ず提供する必要があるか。
 
Q5-2 共同親権下にある子について、父母の一方が再婚した相手と子とで養子縁組をさせるにはどうしたらよいか。養子縁組が成立した場合には、親権関係はどうなるのか。
 

Q&A

1 親の責務等(新民法第817条の12)
 
Q1-1

 特定の事項について父母と子の意見が異なる場合には、父母は、「その子の人格を尊重」する観点から、子の意見と異なる行為をすることができないのか。


 「子の人格を尊重」することは、父母が子の養育に当たって常に子の意向に沿う行為をすることではない。父母は「子の年齢及び発達の程度に配慮」し、子の利益の観点から必要な場合には、子の意向に反する監護に係る行為をすることができるし、子が自らの利益に反することが明らかなことをしようとするときには、その意向に反してでも制止する義務を負うこともある。ただし、その際には、子に対して、なぜ父母がそのような判断をするのかを伝えることが子の人格尊重の観点から望ましいこともあると考えられる。


Q1-2

 父母が子に対して負う「自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養」する義務(生活保持義務)はいつまで負うのか。


 新民法第817条の12は、父母が生活保持義務を負うべき「子」の範囲を未成年の子に限定していないことから、その範囲は解釈に委ねられている。なお、現行法下では、大学生である成年の子については、未成年の子と同水準の養育費の支払いを命ずる裁判例もあったところであるが、改正法はこのような従前の解釈に直ちに影響を与えるものではない。


2 父母相互の人格尊重・協力義務(新民法第817条の12関係)
 
Q2-1

 どのような行為が父母相互の人格尊重・協力義務に違反するか。


 どのような場合に父母相互の人格尊重・協力義務に違反したと評価されるかは、個別具体的な事情に即して判断されるべきであるが、一般論としては、次の各場合等には、個別具体的な事情によっては、父母相互の人格尊重・協力義務に違反すると評価される場合がある。
○ 暴行、脅迫、暴言等の相手方の心身に悪影響を及ぼす言動や誹謗中傷、濫訴等をする場合
○ 親権者の一方による養育に対して、他の一方が不当な干渉をする場合
○ 父母双方が親権者である場合において、その一方が何ら理由なく他方に無断で子の居所を変更するなどする場合
○ 父母の協議や家庭裁判所の調停・審判により親子交流についての定めがされたものの、父母の一方が特段の理由なくこれを履行しない場合
○ 父母の一方が、養育費や親子交流など、子の養育に関する事項についての協議を理由なく一方的に拒否する場合
○ 子の面前で他方の親の誹謗中傷等する場合
○ 父母の一方が、正当な理由なく、子の監護に関する裁判所の判断に従わない場合


Q2-2

 単独親権者が、DVや虐待からの避難のために子とともに転居する場合であっても、他方の親に無断で子の住居を変更した場合には、父母相互の人格尊重・協力義務に違反することになるのか。


 単独親権者が子の居所指定権を行使する場合でも、他方の親に対する人格尊重・協力義務に配慮する必要がある。しかし、DVや児童虐待から避難する必要がある場合には、他方の親に無断で子を転居させたとしても、それらの義務に違反するものではない。また、人格尊重・協力義務に違反するか否かについては、例えば、親権変更に関して主張された場合には、個別具体的な事情に基づいて総合的に判断されるべきものであり、改正法は、当事者の一方に対して何らかの立証責任を負わせているわけではない。したがって、そのような場面では、無断で子を転居させた場合に、DVや児童虐待の事実を立証しない限り、人格尊重・協力義務違反に当たると判断されるというものではないし、DVに関しては、加害者、被害者の双方がDVの認識を欠いている場合があることも勘案した上で、適切な判断がされることになると考えている。


Q2-3

 子が被災した場合における子の安否や、子が病気になった際の体調等について、別居親から同居親に対して子の状況を問い合わせたにもかかわらず、これに応答しない場合には、父母相互の人格尊重・協力義務に違反するか。


 別居親にとっても、被災時の子の安否や、子の健康状態に関する情報は重要である。したがって、父母相互の人格尊重・協力義務の観点からは、適切な情報提供も重要である。
 もっとも、この場合には、別居親についても、人格尊重・協力義務の観点から、被災時や子が病気の時には様々な事情のために同居親が直ちに返答することが困難な状況にあることも少なくないことを想定した対応が求められることになる。


Q2-4

 父母間にDVがあった場合や、父母の一方から子に対する虐待があった場合等でも、父母は協力して子を養育しなければならないのか。


 新民法817条の12は、人格尊重・協力義務を負う父母に文言上例外を設けていない。もっとも、DV、虐待等の事案における加害行為を行った親については、父母相互の人格尊重・協力義務、子の人格尊重義務に反しているといえ、そのような親との協力についてはおのずと限界がある。本条は、そのように父母が共同して親権を行使することが困難な場合にまで、できない協力を無理に強要するものではない。


Q2-5

 暴言等が父母相互の人格尊重・協力義務に違反すると評価されるかどうかは、どのような事情を考慮して判断されるか。


 父母の一方の言動については、その父母の日頃のコミュニケーションの在り方、関係性の在り方、そのニュアンス、言動をした理由や背景事情等の様々な事情を踏まえて評価されるべきである。例えば、父母の一方が、他方に対し、繰り返し、誹謗中傷や人格を否定するような言動をしている場合には、父母が共同して親権を行うことを困難とさせるような父母相互の人格尊重・協力義務違反があると評価され得る。
 また、父母の一方が、SNSなどを通じて不特定多数の者に対し、他方が犯罪者であると一方的に主張する行為は、父母相互の人格尊重・協力義務に違反し得る行為である。


Q2-6

 父母双方が親権者である場合において、子連れ別居が父母相互の人格尊重・協力義務に違反すると評価されるかどうかは、どのような事情を考慮して判断されるか。


 父母双方が親権者である場合において、その一方が何ら理由なく他方に無断で子の居所を変更するなどの行為をしたときは、個別具体的な事情によっては、父母相互の人格尊重・協力義務に違反すると評価される場合がある。この判断において考慮されるべき事情としては、当該行為の動機や経緯、別居前後の協議の有無や内容、子の年齢や子の意向のほか、従前の父母と子との関係や父と母との関係など、様々な事情が考えられる。
 DVからの避難のような急迫の事情があるときは、子を連れて転居等をすること自体がそれらの義務に違反することはない。人格尊重・協力義務に違反するか否かについては、例えば、親権変更に関して主張された場合には、個別具体的な事情に基づいて総合的に判断されるべきものであり、改正法は、当事者の一方に対して何らかの立証責任を負わせているわけではない。したがって、そのような場面では、無断で子こどもを転居させた場合に、DVや児童虐待の事実を立証しない限り、人格尊重・協力義務違反に当たると判断されるというものではないし、DVに関しては、加害者、被害者の双方がDVの認識を欠いている場合があることも勘案した上で、適切な判断がされることになると考えている。


Q2-7

 父母の一方が父母相互の人格尊重・協力義務等に違反した場合にはどのような効果が生ずるか。


 父母の一方が父母相互の人格尊重・協力義務等に違反した場合には、親権者の指定又は変更の審判、親権喪失又は親権停止の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性がある。


3 家庭裁判所が親権者の指定又は変更についての判断をする際の考慮要素(新民法第819条関係)
 
Q3-1

 新民法第819条第7項は、父母双方を親権者とするか、その一方を親権者とするかについて、いずれかを原則とし、他方を例外として定めているのか。父母の一方を親権者とする旨の判断よりも、双方を親権者とする判断の方が認められやすいのか。


 この法改正は、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが、子の利益の観点から重要であるとの理念に基づくものである。したがって、離婚後の親権者を父母双方とするか、その一方とするかについては、個別具体的な事情に即して、子の利益の観点から最善の判断をすべきであり、新民法第819条も、このような考え方に沿ったものである。
 離婚後の親権者を父母双方とするか、その一方とするかについては、個別具体的な事情によって判断されるものであるので、どちらが認められやすいということは一概にはいえないものと考えられる。


Q3-2

 父母の双方を親権者とした場合には、子は父母双方の家を行ったり来たりして養育されることとなるのか。父母の双方を親権者とすることは、親子交流の頻度、養育費の額等に影響するのか。


 父母の双方が親権を行使することとなった場合であっても、具体的な監護のあり方については別途、子の利益を最も優先して、協議等によって取決めをすることとなる。
 監護を分掌して子が双方の家で養育されることも、基本的に父母の一方の家で養育されることもあり得るが、いずれにしても、子の利益を最も優先して考慮して定めることとなる。また、親子交流や養育費の額についても、別途、同様に子の利益の観点から定められることとなる。


Q3-3

 子が複数いる場合、単独親権か共同親権か、単独親権の場合に親権者を父母のいずれとするかは子ごとに決めることになるのか。裁判離婚の場合にも、子ごとに判断されることになるのか。


 協議離婚と裁判離婚のいずれの場合であっても、夫婦の間に複数の未成年の子がいるときは、子ごとに親権者を決めることとなる。この場合には、それぞれの子ごとに、その子の利益の観点から判断されることとなるが、きょうだいを別々の養育環境に置くことが適切かという点も、その際の考慮要素となり得る。


Q3-4

 離婚後の父母双方を親権者とすべきかその一方を親権者とすべきかについて、いずれの当事者も厳密な証明に至らず、裁判官が判断に迷った際には、どのような判断をすべきか(新民法第819条第7項各号の事由の有無は、いずれの当事者が立証責任を負わせる趣旨か。)。


 新民法第819条第7項の規定は、当事者の一方に各考慮要素についての立証責任を負わせる趣旨のものではない。同項は、双方当事者とも自らの主張する事実を証明するに至らない場合について、裁判所がいずれの当事者の主張を採用すべきかについてのルールを定めるものではなく、裁判所は、子の利益の観点から最善の判断をすることが求められる。


Q3-5

 家庭裁判所が離婚後の親権者の指定又は変更の裁判をするに当たり、当事者の意見や子の意見は考慮されるか。


 新民法第819条第7項では、家庭裁判所が離婚後の親権者の指定又は変更の裁判をするに当たり、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないこととしている。これは、当事者の意見を考慮することや、子が意見を表明した場合にはその意見を適切な形で考慮することを含むものである。


Q3-6

 DV・虐待のケースでは、必ず単独親権の定めをすることになるのか。新民法第819条第7項の第1号及び第2号のいずれにも該当しない場合であっても、裁判所が単独親権の定めをすることはできるか。


 新民法第819条第7項第1号の「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき」又は同項第2号の「父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、(親権者の指定等についての)協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難と認められるとき」には、裁判所は、父母の一方を親権者と定めなければならない。同項第1号及び第2号は例示であるため、これに該当しない場合でも、裁判所は、「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」は、単独親権者としなければならない。また、このような事情がない場合でも、裁判所は、子の利益のため、単独親権の定めをすることができる。


Q3-7

 父母間にDVがあるために裁判所が必ず単独親権の定めをしなければならない場合とは、身体的DVがある場合に限られるのか。


 新民法第819条第7項第2号は、父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無のほか、父母間に協議が調わない理由その他の事情を考慮して、「父母が共同して親権を行うことが困難と認められるとき」に、裁判所が必ず単独親権としなければならないこととしている。したがって、身体的DVだけでなく、精神的DV、経済的DV、性的DV等によって、父母が互いに話し合うことができない状態にある場合等、親権の共同行使が困難な場合も、この要件に当てはまることがあると考えられる。


Q3-8

 新民法第819条第7項各号の父又は母が子の心身に害悪を及ぼす「おそれ」や、父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受ける「おそれ」の有無は、どのように判断するのか。


 新民法第819条第7項第1号にいう父又は母が子の心身に害悪を及ぼす「おそれ」や、第2号にいう父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受ける「おそれ」とは、具体的な状況に照らし、そのような害悪や暴力等を及ぼす可能性があることを意味する。この「おそれ」については、裁判所において、個別の事案ごとに、それを基礎付ける方向の事実とそれを否定する方向の事実とが総合的に考慮されて判断される。
 父母の一方が過去に虐待やDVをしたという事実は、今後の虐待等の「おそれ」を基礎付ける方向の重要な事実と認められ、それらの「おそれ」が肯定される方向に傾く大きな考慮要素となる。


Q3-9

 DVや虐待を理由として単独親権の定めを求めるためには、医師による診断書等の客観的証拠が必ず必要か。


 新民法第819条第7項各号の「おそれ」の判断においては、個別の事案ごとに、それを基礎づける方向の事実とそれを否定する方向の事実とが総合的に考慮されることとなり、医師の診断書のような、過去にDVや虐待があったことを裏付ける客観的な証拠の有無に限らず、諸般の状況が考慮されることになる。
 他方で、当事者が虐待やDVを主張したとしても、その主張が認められず、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情が考慮された結果として、父母の双方を親権者と定められることもあり得る。


Q3-10

 改正法において、父母の合意がない場合においても裁判所が父母双方を親権者とすることができることとされたのはなぜか。高葛藤のケースや、父母の一方が相手方と「関わりたくない」「口も聞きたくない」などの感情的な主張をしたケースにおいては、単独親権の定めがされることとなるか。


 離婚後の親権者の定めについて父母の協議が調わない場合に、裁判所が、離婚後の親権者を父母双方とするかその一方とするかは、個別具体的な事情に即して、子の利益の観点から最善の判断をすべきである。父母の協議が調わない理由には様々なものが考えられるから、合意がないことのみをもって父母双方を親権者とすることを一律に許さないのは、かえって子の利益に反する結果となりかねない。そのため、新民法第819条第7項は、裁判所は、単独親権とするか共同親権とするかの判断に当たっては、子の利益のため、父母と子の関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮して実質的・総合的に判断すべきこととしている。この際には、父母の協議が調わない理由等の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であるかという観点からも検討されることとなる。
 また、裁判所の調停手続においては、父母の葛藤を低下させ、子の利益に目を向けてもらうための取組も実施されていると承知しており、高葛藤であったり、容易に合意ができない状態にあったりした父母であっても、調停手続の過程で感情的な対立が解消され、親権の共同行使をすることができる関係を築くことができるようになるケースもあり得ると想定される。そのため、父母の合意が調わないために裁判所における親権者指定の調停等の申立てがされた場合に、当初の段階から父母双方を親権者とする選択肢を一切除外するのではなく、子の利益の観点から最善の選択がされるよう、当事者の合意形成に向けた運用をすることは望ましいと考えられる。
 他方で、父母が高葛藤であるケースにおいては、家庭裁判所における調停手続を経てもなお父母間の感情的な対立が大きく、父母が親権を共同して行うことが困難であると認められることがあると考えられるが、新民法第819条第7項は、そのようなケースにおいて裁判所が親権の共同行使を強制することを意図するものではなく、父母の協議が調わない理由等の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときには、必ず単独親権としなければならないとしている。


Q3-11

 父母の合意がないにもかかわらず離婚後の父母双方を親権者とすることが子の利益のため望ましい場合としては、どのような場合が考えられるか。


 父母の合意がなくても父母双方を親権者とすることが子の利益のために望ましい例としては、次のようなケースが該当し得る。
○ 同居親と子との関係が必ずしも良好ではないために、別居親が親権者としてその養育に関与することによって子の精神的な安定が図られるケース
○ 同居親による子の養育に不安があり、関係機関による支援・関与に加え、別居親の関与があった方が子の利益にかなうケース
○ 父母間の感情的な問題と、親子関係とを切り分けることができる父母のケース
○ 支援団体等を活用して子の養育について協力することを受け入れることができるケース
○ 当初は高葛藤であったり、容易に合意ができない状態にあったりしたが、調停手続の過程等で感情的な対立が解消され、親権の共同行使をすることができる関係を築くことができるようになったケース


Q3-12

 高葛藤であるケースにおいて、どのような場合に「父母が共同して親権を行うことが困難」と認められるか。


 父母間に協議が調わない理由等の事情を考慮し、およそ共同して子の養育に関する意思決定を行うことが困難であるとみられる場合には、「父母が共同して親権を行うことが困難と認められるとき」に当たる。例えば、父母の一方が他の一方に対して、誹謗中傷や人格を否定する言動を繰り返しているような場合には、「父母が共同して親権を行うことが困難」な場合に該当し得る。
 他方で、父母間に感情的な対立があったとしても、相互の人格を尊重し、子の養育のために最低限のやり取りが可能であるというケースもあり得る。そのような場合には、「父母が共同して親権を行うことが困難」とまではいえず、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮し、父母の双方を親権者と定めるとの判断もあり得る。


Q3-13

 親権者の変更の申立ては、どのような場合に認められるのか。また、その際に、どのような事情が考慮されるか。


 子又はその親族は親権者変更の申立てをすることができ、その申立ては子の利益のため必要がある場合に認められる。裁判所の判断に当たっては、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。父母の一方が子の養育に関する責任をこれまで十分に果たしてきたかや、父母相互の人格尊重・協力義務を遵守してきたかも、考慮要素の一つであると考えられる。


Q3-14

 協議、審判・調停によって離婚後共同親権となったが、その後に、子がそれ以前の虐待の事実を述べたり、一方の親が自身のDVの被害を話せるようになったりした場合には、単独親権者とする親権者変更の申立てをすることができるか。


 親権者の変更の申立ては、子の利益のため必要がある場合に認められ、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情が考慮されることとなる。一度親権者を定めていた場合であっても、新たに前回親権者を定めた時より前の重要な事情が判明したときには、そのような事情も考慮され得る。


Q3-15

 改正法の施行前に離婚をした父母は、父母の双方を親権者とすることができるか。


 改正法施行後は、それまでに離婚している父母も、父母の双方を親権者とすることを含む親権者の変更の申立てをすることができ、裁判所は、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮して判断することとなる。
 その際には、個別具体的な事情に即して、父母の一方が子の養育に関する責任をこれまで十分に果たしてきたかや、父母相互の人格尊重・協力義務を遵守してきたかも考慮要素の一つとなると考えられる。


Q3-16

 DV等を背景として、協議離婚において不適正な過程による合意によって親権者の定めがされた場合には、どのように対応するのか。


 協議離婚の際に、DV等を背景とする不適正な過程による合意によって親権者の定めがされた場合には、子にとって不利益となるおそれがあるため、それを是正する必要がある。新民法第819条第8項は、親権者の変更の裁判において、家庭裁判所が父母の協議の経過その他の事情を考慮すべきことを明確化することとしている。この協議の経過を考慮するに当たっては、父母の一方から他方への暴力等の有無、調停又はADRの利用の有無等の事情をも勘案するものとされている。
 加えて、同条第7項は、親権者変更の場合においても、DV等の事情により父母が共同して親権を行うことが困難である場合には、必ず単独親権としなければならないこととしている。


Q3-17

 別居親が、一定の収入があるにもかかわらず理由なく長年にわたって養育費の支払をしてこなかったような場合でも、共同親権への変更の申立てをした際に、そのような変更の申立ては認められるか。


 親権者変更の判断において、親権者変更を求める親が養育費の支払のような子の養育に関する責任をこれまで十分に果たしてきたかは、重要な考慮要素の一つであると考えられる。したがって、別居親が本来であれば支払うべき養育費の支払を長期間にわたって合理的な理由もなく怠っていたという事情は、共同親権への親権者変更が認められない方向に大きく働く事情であると考えられる。


Q3-18

 離婚後に共同親権と定めたものの、別居親が養育費の支払をしない場合には、同居親の単独親権への親権者変更の申立ては認められるか。


 離婚後に共同親権と定めたものの、別居親が養育費の支払をしない場合には、養育費の支払がされなくなった事情によっては、同居親の単独親権に変更することが相当であるとの判断がされる場合もあると考えられる。


Q3-19

 濫用的な親権者変更の申立てがされた場合には、どのような対応がされるか。


 現行の家事事件手続法によれば、家事調停については、不当な目的でみだりに調停の申立てがされた場合には、調停手続をしないことによって事件を終了させることができるとされている。また、家事審判についても、家事審判の申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときは、その申立書の写しを相手方に送付しないことができるとされている。親権者変更について濫用的な申立てがされた場合にも、こうした対応が可能である。


4 親権の行使方法等(新民法第824条の2関係)
 
Q4-1

 新民法第824条の2は、父母の婚姻中と離婚後の双方に適用されるのか。また、婚姻中の父母双方が親権者である場合と、離婚後の父母双方が親権者である場合とで、親権の行使方法は異なるのか。


 新民法第824条の2は、父母の婚姻中と離婚後の双方に適用される。また、同条は、親権の行使方法について、婚姻中の父母双方が親権者である場合と、離婚後の父母双方が親権者である場合とで、異なる取扱いを要求しているものではない。


Q4-2

 新民法第824条の2が新設されたことにより、旧民法の下でこれまでは父母の一方が単独で親権を行うことができたものについても、これからは父母双方が親権を共同して行わなければならなくなるのか。


 旧民法は、父母双方が親権者である場合の親権の行使方法について、父母が共同して親権を行うことを定めていたが、親権の単独行使が可能な範囲が解釈に委ねられており、その範囲が不明確であった。
 新民法第824条の2は、旧民法の解釈を明確化する趣旨で、父母双方が親権者である場合であってもその一方による親権の単独行使が可能である範囲を規定するものである。そのため、父母双方が親権者である場合において、旧民法の下での解釈によって親権の単独行使が可能であったものについて、新民法第824条の2の新設によって、その単独行使が可能な範囲が制限されるものではない。


Q4-3

 新民法第824条の2において、「親権は、父母が共同して行う」と定めている趣旨は、子のための契約の締結等の親権行使の際に、父母双方の署名・押印を必須とする趣旨か。


 新民法第824条の2が親権を「父母が共同して行う」と定める趣旨は、旧民法の解釈と同様に、身上監護や財産管理等の親権行使が、父母の共同の意思で決定されることをいう。父母の共同の意思での決定には、父母の共同の名義によって親権の行使をした場合のみならず、例えば、父母の一方が、他方の同意を得て、単独名義で親権の行使をする場合も含まれるところであり、後者の場合の他方の親権者の同意は、黙示的なものでもよい。そのため、子のための契約の締結等の親権行使の際に、父母双方の署名・押印が必須となるわけではない。
 旧民法の下では、実務上、契約書等への父母の一方の署名押印をもって他方の黙示的な同意を推定するものとして取り扱われることもあったが、新民法第824条の2は、このような実務的な取扱いを変更することを求めるものではない。


Q4-4

 共同で親権を行使すべき事柄について、相手方に連絡をしたにもかかわらず、返事がない場合にはどうすればよいのか。


 共同で親権を行使すべき事柄について、他方の親に対して協議を求めたにもかかわらず、協議を求めた事柄の性質や、父母間の関係等に照らして相当な期間内に、反応がなかったり、特定の態度を示さなかったりするような場合には、相手方から黙示的な同意があったと評価することができる場面も多いと考えられる。
 なお、子の利益のために急迫の事情がある場合には、単独で親権を行使することができる(新民法第824条の2第1項第3号)。


Q4-5

 共同親権下において、新民法824条の2第1項又は第2項の例外事由がないにもかかわらず、一方の親が他方に無断で、子を代理した場合には、その代理の効果は子に帰属するか。


 親権の共同行使を要する場面において、父母の一方が他方に無断で子の代理権を行使した場合には、無権代理としてその代理の効果は子に帰属しない。もっとも、父母の一方が、父母の「共同の名義」で子の代理権を行使した場合には、相手方が悪意でない限り、代理の効力は妨げられない(民法第825条)。
 これに対し、「単独の名義」で子の代理権を行使した場合には、相手方は民法第825条によっては保護されないが、相手方が父母の一方に権限があると信ずべき正当な理由があるときは、民法第110条によって保護される。


Q4-6

 共同で親権を行使すべき事柄について、父母の共同の意思決定を経ることなく、父母の一方が単独で親権行使をした場合には、親権行使の相手方は何らかの法的責任を負うことはあるか、あるとすればどのような場合にどのような理由に基づくものか。


 一般論として、親権行使の相手方は、必ずしも親権や監護権に関する情報を知り得る立場にはないから、父母の一方が単独で親権行使をした場合に、何らかの法的責任を負うことは多くないと考えられるが、親権や監護権に関する情報を知っていた場合における不法行為責任の成否については、個別具体的な事情に基づき総合的に判断されるものである。


Q4-7

 新民法第824条の2第1項第3号(急迫の事情)や同条2項(日常行為)によって単独で親権を行使することができるのは、現に子を監護している親のみか。


 新民法第824条の2第1項第3号(急迫の事情)や同条2項(日常行為)によって単独で親権行使をすることができる親に限定はない。もっとも、特に急迫の事情がある場面については、適時の親権行使を要する事柄であるから、現に子を監護している親が行使する場面が多いと考えられる。


Q4-8

 父母が双方で行うべき親権行使(子の転居等)を、新民法第824条の2第1項の例外事由がないにもかかわらず、一方の親が他方に無断で行った場合にはどうなるのか。


 共同で行使すべき親権を相手方に無断で行使した場合には、その経緯や態様によっては、親権者の指定、変更の審判や親権喪失、親権停止の審判等において考慮される可能性がある。また、他方の親権に対する侵害の程度によっては、損害賠償義務等が生ずることもあり得る。


Q4-9

 「子の利益のため急迫の事情があるとき」とはどのような場合か。


 新民法第824条の2は、父母双方が親権者であるときは、親権は父母が共同して行うこととした上で、子の利益のため急迫の事情があるときは、親権の単独行使が可能であるとしている。
 「子の利益のため急迫の事情があるとき」とは、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては、適時に親権を行使することができず、その結果として、子の利益を害するおそれがあるような場合をいう。個別具体の状況によるが、例えば、
○ DVや虐待からの避難(子の転居などを含む)をする必要がある場合
 ※ 現にDVや虐待の被害にあっているときやその直後のみに限られず、加害行為が現に行われていない間も、急迫の事情が認められる状態が継続し得る。
○ 子に緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合
○ 入学試験の結果発表後に入学手続きの期限が迫っているような場合
などである。
 急迫の事情があるときに当たるかどうかの判断においては、その子が置かれた状況や父母の意見対立の状況等、様々な事情が考慮される。DVや虐待から避難中であるといった事情もその考慮要素になり得る。
 父母間の深刻な意見対立等により、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時の親権行使ができないというような事情があるような場合も、急迫の事情があるときに当たり得る。


Q4-10

 「監護及び教育に関する日常の行為」とは何か。


 新民法第824条の2は、父母双方が親権者であるときは、親権は父母が共同して行うこととした上で、監護及び教育に関する日常の行為については、親権の単独行使が可能であるとしている。
 「監護及び教育に関する日常の行為」とは、日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で、子に対して重大な影響を与えないものを指している。


Q4-11

 「監護及び教育に関する日常の行為」を単独ですることができるのは、親権者のうち子と同居する者に限られるか。


 日常の行為に係る親権の単独行使を認めることとした趣旨は、実際に目の前で子を世話している親が困ることがないように、日常的な事項については単独でできるようにするものである。
 新民法第824条の2第2項は、日常の行為の行為主体を子と同居する親に制限していないが、その趣旨は、子と別居する親権者についても、例えば親子交流の機会のように実際に子の世話をすることがあり、そのような場合に別居の親権者が単独で日常の行為に係る親権行使をすることも想定されるためである。


Q4-12

 子の日々の身の回りの世話は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。


 子の食事や服装、髪の色、人付き合いなどのように、日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で、子に対して重大な影響を与えないものは、「日常の行為」に該当する。もっとも、こうした事項についても、子に対して重大な影響を与えるようなものであれば日常の行為には該当しない。


Q4-13

 子と同居する父母の一方が日常的な行為に係る親権行使をした後に、子と別居する他方が当該行為と矛盾する行為をすることは、どのように評価されるか。


 親権の行使に当たっては、父母の相互の人格尊重・協力義務、子の人格尊重義務に加え、親権は子の利益のために行使しなければならないこと等に配慮する必要がある。したがって、同居親が親権行使をした後に、別居親がこれと矛盾するような親権行使をした場合には、それにより子が被る不利益の内容及び程度や、その矛盾するような親権行使の目的などの諸般の事情に照らし、別居親による親権の行使が権利の濫用として許されない場合があり得る。


Q4-14

 子の居所に関する判断(転居等)は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。また、その判断が「子の利益のため急迫の事情があるとき」に該当するのはどのような場合か。


 子の転居は、その移動距離にかかわらず、通常は子の生活に重大な影響を与え得るため、同一学区内の転居も含めて、基本的には日常の行為には該当しない。
 他方で、DVや虐待からの避難が必要である場合には、「急迫の事情」があるときに当たる。また、この「DVや虐待」は殴る・蹴る等の身体的な暴力を伴うものに限られない。
 このような急迫の事情が認められるのは、現にDVや虐待の被害に遭っているときやその直後のみに限られず、加害行為が現に行われていない間も、急迫の事情が認められる状態が継続し得る。
 DVや虐待からの避難という事情がない場合、例えば同居親の国内転勤等に伴って子を転居させる場合に、「子の利益のため急迫の事情があるとき」といえるかは、転勤が決まった後の父母間の協議状況や別居親が子の転居に同意しない理由等の個別の事情を踏まえて判断されることとなる。


Q4-15

 子の旅行に関する判断は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。


 通常の期間で、観光等を目的とする旅行については、基本的に「日常の行為」に当たると考えられる。
 海外旅行については、同行者の有無、その目的、期間等が様々であると考えられるが、例えば、短期間の観光目的での海外旅行は、通常は「日常の行為」に当たると考えられる。


Q4-16

 学校教育に関してはどのようなものが「監護及び教育に関する日常の行為」に該当し、どのようなものが該当しないか。


 「監護及び教育に関する日常の行為」とは、日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で、子に対して重大な影響を与えないものを指す。
【該当すると考えられるものの例】
○ 就学時の健康診断の受診
○ 学校給食に係る手続(給食費の納付、アレルギーに係る連絡等)
○ 出欠の連絡、個々の教育活動(宿泊活動、水泳授業、その他の学校行事等)への参加の同意の意思表示
○ 学校が行う教育相談への対応(家庭訪問、三者面談への出席等)、子の学校生活に関する照会
【該当しないと考えられるものの例】
○ 入学、退学、転学、留学、休学等手続(願書の提出、初年度や毎年の授業料の納付、退学に関する申請等)
○ 就学校変更の申立て、就学校に関する意見聴取への応答、区域外就学の手続
○ 特別支援学校への就学に関する意見聴取への応答
○ 就学義務の猶予・免除に関する申請
○ 出席停止の命令に関する意見聴取への応答
○ 長期間の交換留学制度、ホームステイ制度への参加


Q4-17

 学校教育に関してはどのような場合が「子の利益のため急迫の事情があるとき」に該当するか。


 例えば、以下のような手続の期限が間近に迫り、父母間の協議や家庭裁判所の手続を経ていては、適時に親権を行使することができず、その結果として、子の利益を害するおそれがあるような場合は、「子の利益のため急迫の事情があるとき」に該当すると考えられる。ただし、具体的な場面における「子の利益のため急迫の事情があるとき」に当たるかどうかの判断においては、個別具体的な事情が考慮される必要がある。
○ 入学手続(願書の提出、授業料の納付等)
○ 特別支援学校への就学に関する意見聴取への応答
○ 出席停止の命令に関する意見聴取への応答


Q4-18

 学校教育における「監護及び教育に関する日常の行為」について、それぞれの親権者から矛盾する内容の意思を示された場合、学校はどのように対応すべきか(例えば、修学旅行等の学校行事への参加に同居親が賛成して、別居親が反対しているという状況では、子は学校行事に参加することができないのか。)。


 修学旅行を含めた子の学校行事への参加に関する判断は、通常は「日常の行為」に該当すると考えられるため、父母双方が親権者である場合であっても、同居親は、単独でその決定をすることができる。もっとも、親権者双方から矛盾した内容の意思が示された場合、親権者相互の人格尊重・協力義務の観点及び子の利益の観点から協議をすることが望ましいとされていることを踏まえ、学校は親権者に事実関係を確認し、親権者の協議の結果に基づいて対応することが望ましい。なお、最終的に親権者双方の協議を経ても考えが異なる場合には、学校は「日常の行為」に該当するものは同居親が単独でその決定をすることができるとされていることを踏まえて対応する。


Q4-19

 学校教育における「監護及び教育に関する日常の行為」に該当しない行為について、それぞれの親権者から矛盾する意思を示された場合には、学校はどのように対応すべきか。


 父母が共同して親権を行使すべき事項について、学校において、父母の意見が異なっていることを認識している場合には、有効な親権行使がないものとして取り扱わざるを得ない。したがって、学校の対応としては、まずは特定事項に関する親権行使者の指定の審判等の方法を教示することなどが考えられる。
 他方で、親権行使がされるべき期限が迫っている状況下において子の意思が父母の一方と一致している等の個々の事情を考慮して、父母の一方が即時に単独で親権行使をすることについて「子の利益のため急迫な事情がある」といえる場合には、当該親の親権行使を有効なものと扱うことができる。


Q4-20

 親権を持つ別居親から運動会や卒業式等の学校行事への参加の希望を受けた場合、学校はどのように対応すべきか。


 運動会や卒業式等、学校が児童生徒の保護者に参加を呼びかけた学校行事について、親権者として事前に申し出ている者から参加希望があった際には、基本的に、学校はその親権者の参加を認めることができる。
 一方、学校が同居親から事前に別居親の参加の制限に関する申し出を受けた場合であって、その内容がそれ以前に親権者から申し出られている協議結果と異なっている場合や、親権者間の協議結果が学校に対して申し出られていない場合には、学校は、親権者間で協議し、その結果を学校に報告することを求めることが考えられる。
 また、学校には親権者間の協議の内容の是非を判断する権限が無いということを念頭に、別居親の学校行事への参加については、親権者が、事前に協議を行い、学校や教育委員会等に対してあらかじめ申し出ることが、学校における円滑な対応に資すると考えられる。
 なお、運動会や卒業式等の学校が保護者に参加を求めているものに参加する行為は、通常は「監護及び教育に関する日常の行為」に該当すると考えられるため、父母双方が親権者である場合であっても、各親権者は単独で自己の参加に関する判断を行うことができる。ただし、父母が学校行事の現場で高葛藤状態にあり、その参加が学校行事の運営に混乱を来す可能性が高いといった理由がある場合などには、学校は、学校管理の観点から、行事参加を制限するといった対応をとることも考えられる。


Q4-21

 子の習い事に関する判断は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。


 子の習い事に関する判断は、通常は、「日常の行為」に該当する。


Q4-22

 子の宗教教育に関する判断は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。


 宗教教育については、日常的な礼儀作法に関するものから子の進路に影響するものまで様々なものがあると考えられるが、例えば、日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で、子に対して重大な影響を与えないものは、「日常の行為」に該当する。


Q4-23

 子の就職に関する判断は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。


 高校生が放課後にアルバイトをするような場合は、「日常の行為」に該当する。
 長期間勤務する会社への就職の許可などのように、子に対して重大な影響を与え得るものは、「日常の行為」に該当しない。


Q4-24

 子の財産管理に関する判断は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。


 財産管理は、監護又は教育に関する行為ではない。


Q4-25

 子の氏の変更や養子縁組に関する判断は、「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するか。


 子の氏の変更や養子縁組に関する判断は、子の身分関係に関する行為であり、監護又は教育に関する行為に該当しない。


Q4-26

 「監護及び教育に関する日常の行為」(子の学習塾、アルバイト等)に関し、父母の意見に食い違いが大きい場合には、どのような対応をとればよいのか。父母の一方が単独で親権を行使した後、他方の親が事後的に不当に矛盾する行為をとり続けるような場合には、どのように対処すればよいのか。


 日常的な事柄については、いずれの父母も、単独で親権を行使することができ、これにはアルバイト就労についての許可も含まれる。もっとも、これらの事柄について父母の考えが異なる場合には、父母は、相互の人格尊重・協力義務の観点及び子の利益の観点から、協議をすることが望ましい。また、他方が親権を行使した後でこれと矛盾する親権行使をした場合には、子の利益の観点から、権利の濫用と判断されることもあると考えられる。
 父母間の対立が激しく、解決が困難な場合には、最終的には、監護者指定、親権者変更の調停・審判等によって解決することになり、その審理においては、申立てに至る経過等も考慮されることとなるものと考えられる。


Q4-27

 新民法第824条の2第3項により家庭裁判所が親権行使者を定めることができる「特定の事項」とは何か。


 新民法824条の2第3項は、「特定の事項」に係る親権の行使について、家庭裁判所が当該事項に係る親権の行使を父母の一方が単独ですることができる旨を定めることができることとしている。この「特定の事項」は、同条の規定により父母が共同して親権を行うべき事項を意味している。「監護及び教育に関する日常の行為」に関する事項や、「子の利益のため急迫の事情があるとき」の親権行使の対象となる事項は、「特定の事項」には該当しない。


Q4-28

 民法第824条の2第3項の親権行使者の指定は、家庭裁判所の調停・審判以外によってもすることはできるか。


 民法第824条の2第3項の親権行使者の指定は、家庭裁判所の審判等によってされるものであり、私的文書で同項の指定をすることは想定されていない。
 ただし、通常の取引の場面では、共同親権下の子について、父母間で当該子の親権行使を父母の一方が専ら行うことを事実上合意している場合には、当該親が他方親の同意を得た上で共同名義によって代理行為等を行うことができるし、単独名義で代理行為等をすることもできると考えられる。
 他方で、例えば、裁判手続の場面では、裁判手続の安定性の観点から別途検討されることとなり、例えば、少なくとも裁判を開始する行為(訴訟提起、家事審判の申立て等)については、共同親権者双方の名義で行うか、家庭裁判所の審判等によって当該裁判手続に係る親権行使者の指定を受けた父又は母が行う必要があるものと考えられる。


Q4-29

 「監護の分掌」とは何か。


 監護の分掌とは、子の監護を父母が分担することであり、例えば、子の監護を担当する期間を分担することや、監護に関する事項の一部(例えば教育に関する事項など)を父母の一方に委ねることがこれに該当する。新民法第766条第1項は、離婚時に父母の協議により養育計画の作成ができることを明らかにするため、離婚時に父母の協議により定める事項として監護の分掌を明記した。


Q4-30

 「監護の分掌」と親子交流とは何が違うのか。「監護の分掌」の定めをした場合には、養育費について現行法とは異なる扱いがされるのか。


 「監護の分掌」とは、交流にとどまらず、具体的な監護の内容について話し合い、定めるものである。養育費は、子の具体的な状況に応じて子の利益の観点から適切に定められるべきものであり、その点については改正法施行後も変更はない。


Q4-31

 父母双方が親権者であるかその一方が親権者であるかや、特定事項に係る親権行使者が定められているか及びそれが父母のいずれであるかは、公的な文書に記録されるのか。また、親権行使の受け手となる学校や病院等は、誰が親権者であるかをどのように把握すべきか。


 父母の離婚後の子の親権者については、子の戸籍に記録される(なお、住民基本台帳には記録されない。)。他方で、特定事項に係る親権行使者が定められた場合でも、そのことは戸籍に記載されないが、家庭裁判所の調停・審判で定められた場合には、その調停調書・審判書にその内容が記載されることとなる。
 親権行使の受け手側が子の親権者が誰であるかを判断する方法については、民法に特段の規定はなく、これまでの実務でも、個別具体的な事案に即して、父母の申告等に基づいて適切に判断されていた。改正法はこれまでの実務的な取扱いを変更することを求めるものではない。ただし、学校や教育委員会等は親権や監護権に関する情報を知り得る立場にないことから、親権者が学校等に対してこれらの事実関係等を申告することが望ましいと考えられる。
 また、子が学校に在学している期間中に親権者の指定変更や、特定事項に係る親権行使者の定めがあった場合には、学校や教育委員会等がその事実を把握するために、親権者が学校等に対してその旨の申告等をすることが望ましいと考えられる。


Q4-32

 子の監護をすべき者や監護の分掌の定めの有無・内容は、公的な文書に記録されるのか。また、親権行使の受け手となる学校や病院等はその定めの有無・内容をどのように把握すべきか。


 子の監護をすべき者や監護の分掌の定めの有無・内容は、戸籍には記録されない。父母間の協議による定めについては特に公的な文書は作成されないが(公正証書を作成することは可能である。)、家庭裁判所の調停・審判によって子の監護をすべき者や監護の分掌の定めがされた場合には、その調停調書・審判書にその内容が記載されることとなる。
 親権行使の受け手側が子の監護をすべき者や監護の分掌の定めの有無・内容を把握する方法については、民法に特段の規定はなく、個別具体的な事案に即して、父母の申告等に基づいて適切に判断する必要がある。この点について、改正法はこれまでの実務的な取扱いを変更することを求めるものではない。ただし、学校や教育委員会等は親権や監護権に関する情報を知り得る立場にないことから、親権者が学校等に対してこれらの事実関係等を申告することが望ましいと考えられる。
 また、子が学校に在学している期間中に子の監護をすべき者や監護の分掌の定めがあった場合には、学校や教育委員会等がその事実を把握するために、親権者が学校等に対してその旨の申告等をすることが望ましいと考えられる。


5 その他
 
Q5-1

 各種施設を親子交流の場としたい旨の希望があった場合には、当該施設の管理者はどのように対応すべきか。父母の協議において、親子交流の場所を当該施設と定めた場合には、当該施設の管理者は親子交流の実施場所を必ず提供する必要があるか。


 父母間の協議は当該施設の管理者を法的に拘束するものではないため、父母間の協議において親子交流の場所が定められた場合であっても、当該施設等を親子交流の場所として提供するかどうかは、当該施設等の管理者において、個別の事案ごとに施設管理等の観点から、適切に判断されるものである。
 他方で、父母又はその代理人においては、各種施設において親子交流を円滑に行うために、あらかじめ当該施設の管理者へ父母間の協議の状況等を説明し、かつ施設の利用条件・開館日時等を確認し、その範囲内で利用することが適切である。


Q5-2

 共同親権下にある子について、父母の一方が再婚した相手と子とで養子縁組をさせるにはどうしたらよいか。養子縁組が成立した場合には、親権関係はどうなるのか。


 15歳未満の子を養子とする縁組については、親権者が子に代わって承諾(代諾)することとされており、共同親権の場合には父母が共同で代諾する必要がある。父母の一方が縁組に反対している場合には、代諾について、新民法第824条の2第3項の特定の事項に係る親権行使者を定める審判を申し立てることが考えられるが、家庭裁判所は、代諾については子の利益のために特に必要がある場合に限り同項の審判をすることができることとされている(新民法第797条第4項)。
 父母の一方の配偶者と養子縁組が成立した場合には、養親とその配偶者である実親が共同親権者となり、他方の実親は親権者ではなくなる(新民法第818条第3項)。