Q&A形式の解説資料(行政手続・支援編)
目次
1 総論
2 ひとり親家庭支援関係
3 児童扶養手当関係
4 障害者支援関係
5 住民票関係
6 民事法律扶助関係
7 税金(扶養控除)関係
8 学校関係
9 医療費助成関係
10 健康保険関係
11 生活保護関係
12 DV被害者保護・支援関係
Q&A
新民法第824条の2において、「親権は、父母が共同して行う」と定めている趣旨は、子に関する各種の行政手続の申請書等に父母双方の署名・押印を必須とする趣旨か。また、申請書等への父母の一方の署名押印をもって他方の黙示的な同意を推定することは、同条の趣旨に反するか。
子に関する各種の行政手続について、誰がその申請等をすることができるかについては、民法の規定のみによって一義的に定まるものではなく、その行政手続の根拠となる法令等の規定に基づいて検討する必要がある。
新民法第824条の2が親権を「父母が共同して行う」と定める趣旨は、旧民法の解釈と同様に、身上監護や財産管理等の親権行使が、父母の共同の意思で決定されることをいい、その親権行使の際に、父母双方の署名・押印が必須となるわけではない。申請書等への父母の一方の署名押印をもって他方の黙示的な同意を推定することは、同条の趣旨に反しない。
共同親権下にある子については、行政手続の名宛人は父母双方とすべきか。
行政手続を子本人に対して行うべきか、「保護者」等に対して行うべきかは、その行政手続の根拠となる法令等によって定まる。
行政手続を子本人に対して行う場合に、民法上の法定代理人を名宛人にすることができるかはその行政手続の根拠となる法令等の解釈による。なお、民事法上は、一般に代理人が複数いる場合でも、相手方は代理人のうちの一人に対して意思表示をすることができると解されている。
行政手続を「保護者」等に対して行う場合の名宛人については、根拠法令の解釈による。
学校や教育委員会、医療機関等は、親権者同士の意見が食い違っている場合のように、個別・具体的な事案の対応において困った場合には、どこに相談したらよいか。
民法の規律(親権・監護権の帰属、代理による契約締結等、子の監護・教育に関する方針の決定)や、令和6年民法等改正法の内容については、法務省民事局に相談されたい。
個々の行政手続に係る根拠となる法令等の解釈・運用については、その法令等の所管庁に相談されたい。
個別・具体的な事案については、弁護士に相談する等されたい。
2 ひとり親家庭支援関係
離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、ひとり親家庭支援(ひとり親家庭等日常生活支援事業、自立支援教育訓練給付金事業、高等職業訓練促進給付金等事業、ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業、母子父子寡婦福祉資金貸付等)の対象者の取扱いには何か影響が及ぶのか。
ひとり親家庭支援(ひとり親家庭等日常生活支援事業、自立支援教育訓練給付金事業、高等職業訓練促進給付金等事業、ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業、母子父子寡婦福祉資金貸付等)は、母子及び父子並びに寡婦福祉法(昭和39年法律第129号)や各種事業の実施要綱において、親権の有無にかかわらず、配偶者のない者で現に児童を扶養している者等を支援の対象者としており、離婚後の父母双方が親権者である場合でも対象者の取扱いに影響が及ぶものではない。
3 児童扶養手当関係
離婚後の父母双方を親権者と定めた場合、児童扶養手当の支給や所得制限の所得算定に影響が及ぶのか。
児童扶養手当は、民法上の親権や監護者の定めの有無にかかわらず、子を監護している実態があるか否かでその支給対象者を判断していることから、離婚後の父母双方が親権者となった場合にも、子を監護している実態があるか否かで手当の支給対象者を判断する。また、所得制限の所得算定については、受給者本人の所得によることとしているため、離婚後の父母双方が親権者となることにより算定に影響が及ぶものではない。
※ 特別児童扶養手当については「4 障害者支援関係」参照
4 障害者支援関係
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく補装具費の支給について、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合の障害児に係る補装具費の負担上限月額の区分は、当該父母の双方の資力を考慮して判断されることとなるか。
障害児に係る補装具費の負担上限月額の区分は、親権の有無に関わらず、障害児と同一の世帯に属する者が市町村民税非課税か課税かによって決定する。
児童福祉法に基づく障害児通所支援をはじめとする障害児の福祉サービスの利用者負担について、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合の負担上限月額は、当該父母の双方の資力を考慮して判断されることとなるか。
障害児の福祉サービスの利用者負担については、親権の有無に関わらず、障害児と同一の世帯に属する者の所得を考慮してその負担上限月額を決定する。
婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、特別児童扶養手当を受けるための父母の資力要件(収入要件・所得要件等)については、その双方の資力を考慮して判断されることとなるか。
特別児童扶養手当については、親権の有無にかかわらず、障害児を監護している実態があるか否かで、その受給資格を判断し、当該受給資格者の所得を確認して支給されることとなる。
婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、障害児福祉手当を受けるための父母の資力要件(収入要件・所得要件等)については、その双方の資力を考慮して判断されることとなるか。
障害児福祉手当については、親権の有無にかかわらず、受給資格者である障害児の民法上の扶養義務者であって、当該障害児の生計を維持する者の所得を確認して支給されることとなる。
5 住民票関係
離婚後の父母双方を親権者と定めた場合において、未成年の子に関する住民票に係る転入・転出等の届出について、その双方の同意を必要とするのか。
未成年の子に関する住民票に係る転入・転出等に係る届出については、現行の共同親権である婚姻中の場合であっても市区町村において、転入・転出等の事実や、現に届出を行っている者の代理権等(委任状や法定代理権など)を確認してその処理を行っており、その際に、父母双方の同意は求めていない。この取扱いは、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合においても同様である。
住民票に関するDV等支援措置に関し、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合において、DV等を受けたどちらかの父母と同居する子について、別居するもう一方の父母の同意がなくても、支援措置を実施することはできるのか。
住民基本台帳事務においては、DV等の被害者の相手方が、住民票の写し等の交付を不当に利用して、被害者の住所を探索することを防止するDV等支援措置を実施している。DV等を受けたどちらかの父母が、子とともに同一の住所に避難している場合に、もう一方の父母が、DV等を受けた父母の住所を探索する目的で、子の住民票の写しの交付の申出等を行うおそれがあると認められる場合には、当該子についても支援措置を実施することとしている。この支援措置は、婚姻中の父母双方が親権者である場合か、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合かに関わらず、当該DV等を受けた父母の住所を秘匿するために当該子に対する支援措置の必要性が認められる場合には実施することができる。
6 民事法律扶助関係
婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、子が裁判手続における訴訟上の救助や訴訟費用執行免除を受けるための資力要件については、父母双方の資力を考慮して判断されることとなるか。
民事訴訟法及び刑事訴訟法において「親の資力や収入」を考慮する旨の規定はなく、個別具体的な事案において、裁判所が様々な事情を踏まえて判断しているものと承知している。
離婚後の父母双方を親権者と定めた場合、未成年者が民事法律扶助を申し込む際の資力要件は、誰の資力を基準に判断されるのか。
未成年者が民事法律扶助を申し込む場合の資力要件は、親権の帰属にかかわらず、未成年者と同居している家族で、未成年者の生計に貢献していることが明らかな者の資力を基準に判断する。
7 税金(扶養控除)関係
共同親権か単独親権かの違いにより、所得税法における扶養控除の適用に影響があるか。
所得税法においては、扶養親族である子を有する場合について、その子の所得金額が48万円以下(令和7年12月1日以降:58万円以下)であることや、その子と生計を一にしていることなどの一定の要件の下、扶養控除の適用ができることとされている。
この扶養控除の適用に当たって、親権の有無は要件とされていないことから、共同親権か単独親権かの違いが扶養控除の適用に影響を与えることはない。
8 学校関係
就学すべき学校の指定等の事務について、婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、全ての親権者を名宛人とする必要があるか。
就学すべき学校の指定等の後に続く、就学校変更の申立て等の保護者による行為は、「監護及び教育に関する日常の行為」に当たらず、婚姻中の父母双方が親権者である場合や離婚後の父母双方が親権者と定められている場合を含め、全ての親権者の共同の意思によって親権を行使する必要がある行為に当たる。一方で、学校や教育委員会は、親権や監護権に関する情報を知り得る立場になく、また、一般論として、これまでの実務上の取扱いにならい、親権行使に当たり、申請書等への一方の親権者の署名押印をもって他方の黙示的な同意を推定することは、改正法の趣旨に反しないとされていること等を踏まえ、名宛人については、例えば、「○○○○(子供の名前)の保護者」宛てとするなどの工夫が考えられるが、個別具体的な事情を踏まえて、各教育委員会及び学校において適切に判断されるべきものである。
保護者(子に対して親権を行う者)が行うべき、就学校変更の申立て(学校教育法施行令8条)を監護権者が単独で行うことは可能か。
就学校変更の申立ては、「監護及び教育に関する日常の行為」ではないものの、民法第820条に規定する「監護及び教育」に関する事柄である。新民法第824条の3第1項において、監護者(監護をすべき者)は、「監護及び教育」に関して、親権を行う者と同一の権利義務を有し、また、単独ですることができると定められている趣旨を踏まえれば、学校教育法において「保護者(子に対して親権を行う者)」が行うこととされている行為を、監護者が単独で行うことについては差支えない。 また、就学校に関し、監護者として指定されていない親権者と、監護者の意向が異なる場合には、新民法第824条の3第2項の趣旨により、監護者の意向が優先することになる。
なお、学校や教育委員会は、親権や監護権に関する情報を知り得る立場になく、また、これまでの実務においては、同居親に親権や監護権があるものと推定して手続を行ってきたことに鑑みれば、今後も同様の推定の下に各種手続きを進めることは、改正法の趣旨に反するものではない。ただし、保護者等から、監護権、親権に関する事実関係等について申告があった場合には、その申告に基づいて適切に対応されるべきものである 。
就学援助制度について、婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、支援の認定を受ける際に、父母双方の収入を考慮することとなるか。
就学援助は学校教育法第19条に基づき、保護者(親権者)に対して市町村が支援する制度であり、支援対象は、保護者のうち、生活保護法上の「要保護者」と、市町村教育委員会が要保護者に準ずる程度に困窮していると認める「準要保護者」となる。
就学援助の実施主体は市町村であり、認定基準は各市町村において定められているので、詳しくはお住いの市町村教育委員会にご相談いただきたい。
就学援助制度について、婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、支援の認定を受ける際に、父母双方の同意が必要になるのか。
就学援助は学校教育法第19条に基づき、保護者(親権者)に対して市町村が支援する制度である。
就学援助の申請手続きは、支援を受けようとする保護者が、自身に対する支援を受けるために申請手続きを行うものであるため、その申請手続きは子に対する親権の行使にあたらない。このため、婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後に父母双方が親権者である場合にも、父母双方の同意がないと申請できないものではない。
高等学校等就学支援金について、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合、支援の認定においては、父母双方の収入を考慮することとなるか。
高等学校等就学支援金は、高校など(※)の授業料の負担を軽減することを目的としている。多くが未成年である高校生の就学の費用を負担する責任を負うのは主に親権者であると考えられるため、支援の認定において、親権者等の収入に基づいて判定をしている。
このため、離婚後に父母双方が親権者である場合は、親権者が2名であるため、基本的には2名分の収入に基づいて判定を行うが、例外を設けることとする。例外の具体的な内容としては、親権者が2名である場合であっても、その後、DVや児童虐待等により接触すると危害が及ぶ可能性がある場合や、失踪していて連絡が取れない場合等であり、この他にも、支援を必要とする高校生に支援を届けられるように、配慮すべき事項等について検討を進めている。
また、離婚後にどちらか一方が親権者となった場合には、一方の親権者のみの収入に基づいて判定をすることとなる。
なお、これまでも、従来の親権制度において婚姻中で父母双方が親権者である場合は、婚姻中は親権者が2名であるため、基本的には2名分の収入に基づいて就学支援金の判定を行っているが、DVや児童虐待があった場合等の例外を設けており、親権者の状況に応じて柔軟に対応することができるようになっている。
※ 高等学校、特別支援学校(高等部)、高等専門学校(1~3年生)、専修学校(高等課程)など
高校生等奨学給付金について、(1)婚姻中で父母双方が親権者である場合や、(2)離婚後の父母双方を親権者と定めた場合は、給付の認定においては、父母双方の収入を考慮することとなるか。
高校生等奨学給付金は、高校の授業料以外の教育費の負担を軽減することを目的としている。多くが未成年である高校生の就学の費用を負担する責任を負うのは主に親権者であると考えられるため、給付の認定において、親権者等の収入に基づいて判定をしている。令和6年度現在では、高等学校等就学支援金法に規定する保護者等であって、生活保護世帯又は非課税世帯の親権者を対象としており、高等学校等就学支援金制度と同様に、DVや児童虐待があった場合等の例外を設け、親権者の状況に応じて柔軟に対応することができるようになっている。
現在、就学支援金制度との判定方法の統一化に向けた地方からの要望があることや、奨学給付金の対象世帯の拡大について概算要求を行っていることなどから、共同親権の制度が開始するまでに制度に変更が生じる可能性がある。このような状況も踏まえつつ、共同親権の導入後も、支援を必要とする高校生に支援を届けられるように、配慮すべき事項等について引き続き検討を進めている。
高校等専攻科の生徒への修学支援について、離婚後共同親権制度の導入により支援の認定に影響はあるのか。
高校等専攻科の生徒への修学支援は、高等学校専攻科に通う低所得世帯の生徒に対する授業料等の負担を軽減することを目的としている。高等学校専攻科は高校等を卒業した後に入学する教育課程であることから、大学など高等教育段階の修学支援制度に準じた支援の仕組みとしており、かつ、高等学校専攻科の生徒は、一般的には入学時点で成人年齢に達しており、生徒の成人後は親権が消滅することから、生計維持者の収入を考慮して認定を行う仕組みとしている。このため、離婚後共同親権制度の導入により支援の認定に変更が生じることはない。
特別支援教育就学奨励費について、婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には支弁区分の決定の際に、父母双方の収入を考慮することとなるか。
特別支援教育就学奨励費は、教育の機会均等の趣旨に基づき、障害のある幼児児童生徒の就学の特殊事情に鑑み、特別支援学校等に就学する児童等の保護者等の経済的負担を軽減するため、その負担能力の程度に応じて支弁区分を決定し、就学のために必要な経費を支援する制度である。
支弁区分の決定に当たっては、親権者に限らず、親権者の属する世帯全体の収入等を算定の基礎としていることから、父母双方が親権者である場合においても、申請者となる親権者が属する世帯全体の収入等を算定の基礎とし、支弁区分を決定することとなる。
特別支援教育就学奨励費について、婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、支援の認定を受ける際に、父母双方の同意が必要になるのか。
特別支援教育就学奨励費は、特別支援学校等に就学する児童等の親権者を支援する制度である。
特別支援教育就学奨励費の申請手続きは、支援を受けようとする親権者が、自身に対する支援を受けるために申請手続を行うものであるため、その申請手続は子に対する親権の行使にあたらない。このため、婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後に父母双方が親権者である場合にも、父母双方の同意がないと申請できないものではない。
離婚後共同親権制度の導入によって、日本学生支援機構の奨学金制度や高等教育の修学支援新制度における生計維持者の考え方に影響はあるのか。制度導入前は受けることができていた経済的支援が受けられなくなるのではないか。
日本学生支援機構の奨学金制度における家計基準(収入要件)は、「生計維持者」の収入等の状況に基づいて判定することとしており、生計維持者は原則として父母の2名だが、離婚等により父又は母と本人が別生計となっている場合などについては、これまでも、親権の有無にかかわらず、学生等の事情に応じて判定することとしている。このため、離婚後共同親権制度の導入によって制度上の取扱いは変わらない。
※ 「離婚等」には、離婚調停中、DVによる別居中、又は未婚の場合なども含む。
※なお、未成年者が奨学金に申し込むときは、親権者の同意が必要となるが、事情により親権者の同意を得られない場合は、追加書類の提出により申込みを受け付けている。
9 医療費助成関係
婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、小児慢性特定疾病児童への医療費助成における自己負担上限月額の算定はどうなるのか。
小児慢性特定疾病医療費助成制度は、児童福祉法に基づき、医療費の自己負担分の一部について助成を行う制度であり、自己負担上限月額は「支給認定世帯」の所得状況等に応じて決定することとしている。
「支給認定世帯」は、小児慢性特定疾病児童と同じ医療保険の被保険者(※)としていることから、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合であっても、所得を把握する単位に影響はない。
(※)健康保険など国民健康保険以外の医療保険の場合は、当該児童を被扶養者としている被保険者。 国民健康保険の場合は、「住民票上の世帯」内の被保険者全員。
10 健康保険関係
婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合に、健康保険において、その双方が関与して行わなければならない手続きはあるか。
婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合に、健康保険において法令上その双方が関与して行わなければならない手続きはない。
婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、健康保険に加入している父母の子について、子が医療機関等で療養を受ける際の医療費の自己負担は父母双方の資力を考慮して判断されることとなるか。
健康保険の医療費の一部負担割合については、診療等を受ける者の年齢に応じて決まるため、父母双方の資力を考慮して判断されるものではない。
また、高額療養費の自己負担限度額については、父母の離婚後は、子は父母どちらかの被扶養者となることが想定されるが、子の医療費が高額となり高額療養費の対象となる場合には、子を被扶養者として有する方の報酬に基づいて自己負担限度額が決定されることとなるため、父母双方の資力を考慮して判断されるものではない。
婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、国民健康保険においてその双方が関与して行わなければならない手続きがあるか。
国民健康保険法上の手続きについては、婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合に、国民健康保険においてその双方が関与して行わなければならない手続きはない。
婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、国民健康保険における療養の給付、保険料徴収における資力要件(収入要件・所得要件等)については、その父母双方の資力を考慮して判断されることとなるか。
国民健康保険の一部負担金の負担割合、高額療養費等の支給額の区分、保険料額の算定においては、被保険者の年齢や世帯単位の所得・資産額に応じて決まり、親権の有無は算定の上で要件となっていない。
後期高齢者医療制度の被保険者が養子縁組等によって親権を持つこと等により、婚姻中の父母双方が親権者となる場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、後期高齢者医療制度においてその双方が関与して行う手続きがあるか。
後期高齢者医療制度の法令上の手続きについては、婚姻中の父母双方が親権者である場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合に、その双方が関与して行う手続きはない。
後期高齢者医療制度の被保険者が養子縁組等によって親権を持つこと等により、婚姻中の父母双方が親権者となる場合や、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、後期高齢者医療制度における療養の給付、保険料徴収における資力要件(収入要件・所得要件等)については、その父母双方の資力を考慮して判断されることとなるか。
後期高齢者医療制度の一部負担金の負担割合、高額療養費等の自己負担限度額の区分、保険料額の算定においては、被保険者個人やその属する世帯の所得に応じて決まり、親権の有無は算定の上で要件となっていない。
11 生活保護関係
離婚後の父母双方を親権者と定めた場合には、生活保護を受けるための父母の資力要件(収入・資産等)については、その双方の資力を考慮して判断されることとなるか。
生活保護については、父母双方が親権者であるかその一方が親権者であるかにかかわらず、原則として、同一の住居に居住し、生計を一にしている者を同一世帯として認定した上で、当該世帯の収入及び資産等を踏まえて保護の要否及び程度を判断することとなる。
12 DV被害者保護・支援関係
女性支援新法や配偶者暴力防止法に基づき、女性相談支援センター等でDV被害者の一時保護を行う際、被害者の子を同伴児童として保護する場合があるが、今般の改正により、こうしたDV被害者の保護や支援にどのような影響が生じるか。
今般の改正では、
○ 家庭裁判所が親権者を指定する際、虐待等、父又は母が子の心身に有害な影響を及ぼすおそれがあると認められる場合、配偶者へのDVのおそれがあり、父母が共同して親権を行うことが困難と認められる場合等には、必ず単独親権とすること
○ DVや虐待からの避難については親権の単独行使が認められる急迫の事情に該当すること(※加害行為が現に行われているときやその直後のみに限られず、加害行為が現に行われていない間も、急迫の事情が認められる状態が継続し得る。)
○ このDVや虐待に関しては、殴る・蹴る等の身体的な暴力を伴うものに限定されないこと
とされており、DVや虐待のおそれがあるケースに配慮されたものとなっている。
女性相談支援センターや配偶者暴力相談支援センター等の機関が行うDV被害者の保護や支援において、これまでも、共同親権であった婚姻中のDV被害者やその子に対して、一時保護等を含む必要な支援を提供することが行われてきたところであり、今般の改正により、その取扱いに変更が生じるものではない。女性相談支援センター等の機関においては、DV被害者の立場に立って相談に応じ、その相談内容に基づき、DVから保護することが必要であると判断した場合には、上記のとおり、DVや虐待からの避難については親権の単独行使が認められる急迫の事情に該当することとされていることを踏まえ、ためらうことなく一時保護等の必要な支援を行う必要がある。