少年矯正を考える有識者会議 第4回議事概要
矯正局メニュー
1 日時:平成22年4月21日(水)午後1時30分から午後5時7分まで
2 場所:法務省20階第1会議室
3 出席者
(座 長)岩井宜子(専修大学法科大学院教授)
(座長代理)広田照幸(日本大学文理学部教授)
(委 員)石附 敦(京都光華女子大学大学院人間関係学研究科長・教授)
市川宏伸(東京都立小児総合医療センター顧問)
影山秀人(弁護士)
川﨑道子(元中央更生保護審査会委員)
徳地昭男(元武蔵野学院長)
廣瀬健二(立教大学大学院法務研究科教授)
本田恵子(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)
毛利甚八(作家)
(敬称略,委員は五十音順)
(法務省)尾﨑道明矯正局長,澤田健一官房審議官(矯正局担当)ほか
4 議題
(1)配布資料説明
(2)少年院における矯正教育のあゆみ(矯正局説明)
(3)少年院における矯正教育の在り方について(意見交換)
5 会議経過
(1)事務局から,配布資料について説明を行った。
(2)矯正局から,少年院における矯正教育の沿革について,別紙【PDF】に基づき説明を行った。
(3)少年院における矯正教育の在り方として,以下アないしエの各項目について意見交換を行った(会議には,門脇小田原少年院長及び金子榛名女子学園長が同席した。)。主な意見は,以下のとおりであった(順不同)。
ア 少年院における矯正教育の目的,内容及び方法について
・しっかりと枠組みを作って行う指導と,後見的・内発的な指導をバランスよく行うことが必要。
・効果的な教育を行うためには,何よりも教官と少年との信頼関係構築が必要。
・子どもには成長発達権があり,少年院の矯正教育には,それをサポートするという側面がある。
・人権教育を行う必要がある。なお,自己の存在,他者の存在を認めることなど,人権に関する基本的態度は,少年院内における対人関係の中で身に付けるものである。
・社会の変化に伴って,個別の教育が重要とされており,矯正教育も個人への働き掛けをより重要視すべき。
・被害者の視点,しょく罪意識,罪を償うといった意識を持たせることも大切である。
・非行を行った少年は,自分の力や保護者の指導でも立ち直れないため,国による介入がなされている。十数年かけて形成された問題を1年や2年で直そうとするのは非常に難しいことであり,一定の限界があることも認識すべき。
・同年代の少年と同じような知識や能力を身に付けさせることが必要。そのためには,訓練により外枠から身に付けさせることも重要。
・矯正教育を行う前提として,少年が落ち着いて話を聞く土壌,更生的風土を作るために規律秩序を維持することは必要。しかし,規律秩序の維持そのものが自己目的化してしまうことは問題である。
・入院前や出院後の指導と少年院での矯正教育との有機的なつながりこそが必要。
・集団の安定を図る更生的風土作りが重要であり,それを作る技術を高めることが必要。
イ 生活指導の在り方について
・資質上の問題等を踏まえた上で,集団指導と個別指導のバランスをとることは重要。
・集団指導と個別指導は対立するものではない。集団の中で個に応じた指導をすることが大切。
・法務教官と少年の信頼関係構築が大切であり,そのためには,特に入院時の導入期間における少年の資質の把握や指導が重要となるのではないか。
・生活指導の目的は,規範の内面化とセルフコントロールである。
・個別指導を充実させるためには,処遇プログラムの開発のほか,教官の人的手当ても必要。また,面接技術など教官の専門性を一層向上させるべき。
・(今後の施設の建築に当たっては)単独室の比率を高めるなど,個別指導が行いやすい環境作りに努めるべき。
・資質上の問題を抱える少年の指導に当たっては,限界設定を明確にしないといけない。専門的治療が必要か,日常の範囲の指導を行うべきかを含め,適切な処遇を行うためにも,スーパーヴァイザーの登用が必要ではないか。
・発達障害等の少年の指導には,個別的な工夫,専門的に訓練を受けたスタッフの配置も必要。
・少年の資質,非行傾向別の処遇プログラムの見直し,構築をしたほうがよい。
・個別指導を増やすと,専門性の高い職員の確保が必要となる。また,処遇に時間のかかる少年に対する医療等の専門的なケアも必要になる。
・資質上の問題を抱える少年への適切な対応のため,一般少年院でも精神医療の充実を図るべき。
ウ 職業補導の在り方について
・社会に戻ってから職業生活を継続できるためには,基本的な生活習慣,対人関係能力を身に付けさせることも重要。
・職業補導種目では,社会のニーズに合った種目を取り入れ,企業の協力を得るなど,内容の充実を図るべき。
・企業の社員教育の場を提供するという趣旨で,外部から講師,指導員を招へいするのもよい。
・院外の職場に積極的に少年を外出させるなどして,社会資源も有効活用する。
・職業補導を通じて,少年に達成感や成功体験を与えることも重要。
エ 教科教育の在り方について
・少年院全般で基礎学力向上のための指導を強化すべき。そのため,外部の人材を積極的に活用すべき。
・高等学校卒業程度認定試験をより積極的に活用すべき。
・教科の学習を通じて,少年に達成感や成功体験を与えることも重要。
6 今後の日程
次回は,5月19日(水)開催予定とし,引き続き,少年院における矯正教育及び処遇体制の在り方について議論することとされた。
―速報のため,事後修正の可能性あり―
(文責 事務局)
- 別紙[PDF:98KB]
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