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少年矯正を考える有識者会議 第6回議事概要

1 日時:平成22年6月2日(水)午後2時45分から午後5時35分まで

(東京少年鑑別所施設視察後開催)

2 場所:東京少年鑑別所会議室

 

3 出席者

(委員,敬称略)

(座  長)岩井宜子(専修大学法科大学院教授)

(座長代理)広田照幸(日本大学文理学部教授)

(委  員)影山秀人(弁護士)

川﨑道子(元中央更生保護審査会委員)

徳地昭男(元武蔵野学院長)

廣瀬健二(立教大学大学院法務研究科教授)

本田恵子(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)

毛利甚八(作家)

                        (敬称略,委員は五十音順)

(法務省)

尾﨑道明矯正局長,西田博矯正局総務課長ほか

 

4 議題

(1)配布資料の説明

(2)現職少年鑑別所職員からのヒアリング

(3)矯正教育の実効を高めるための少年鑑別所の鑑別機能の充実強化につい

て(意見交換)

 

5 会議経過

(1)事務局から配布資料の説明を行った。

(2)水戸少年鑑別所,宇都宮少年鑑別所及び東京少年鑑別所で勤務している職員5名(法務技官(医師)1名,法務教官2名,法務技官(心理)2名)からヒアリングを行った。主な質疑応答は,以下のとおりであった(順不同)。

(問)勤務していて困難なことは何か。

(答)収容される少年の年齢が幅広く,問題の深刻さもそれぞれ異なり,また,法的地位も異なるなど,その属性が様々であることから,個別の配慮が必要となる。

(答)入所する少年に関する事前情報が乏しく,処遇の導入に当たり細心の注意が必要である。また,対人関係をうまく結べない少年が増えているように感じられ,鑑別上の難しさがある。

  (答)対人関係をうまく結べない少年,社会的な絆の乏しい少年が増えているように感じられる。また,薬物依存の少年に対する投薬についても難しさを感じる。

(答)女性職員が少なく,女子少年の処遇を実施する上で困難がある。

(答)常勤医師が配置されていないため,緊急時の医療的判断・対応に苦慮している。また,少年の保護に万全を期すため,保護室等を備える必要がある。

(問)収容期間が長くなる少年(例えば,観護措置の特別更新がなされた少年)に対し,処遇上工夫していること,苦労していることは何か。

(答)収容期間が長くなることで,少年によっては不満やストレスを高める者もおり,その都度個別の対応が必要になってくるため,その分,労力がかかる。

 (問)少年が荒れたりすることはあるのか。また,そのような場合に秩序を維持するためにはどうするのか。

  (答)例えば,運動時に自己顕示的な振る舞いをする少年や,居室で窓越しに話しをしたり,ふざけたりする少年もいる。そうした少年には必要に応じて個別に注意している。

(問)少年鑑別所には,少年院のような謹慎などの処分はないのか。

(答)少年鑑別所には,少年院のような謹慎等を定めた懲戒規定はない。規律違反をする少年に対しては,手を掛けて根気強く対応するしかない。

 (問)心理の法務技官として,少年院の教育に関与したい気持ちはあるか。

  (答)もっと少年院との連携を強化すべきであると思うし,少年院の処遇プログラムに関与する機会があった方がよいと思う。

 (問)少年院に法務技官(心理)は配置されないのか。少年院送致の判定を行

う上でも,少年院の実情を知っている技官がいた方が良いのではないか。

  (答)少年院から,少年鑑別所が少年院の実情を知らないという不満を聞くこともあるので,もっと実情を知ることは大事だと思う。また,現行の処遇課程の枠組では,鑑別判定や処遇課程の選択に迷うことも多く,処遇課程についての再検討も必要だと思う。

 (問)少年院に足りないものは何か。

(答)医療少年院に送致するほどではないが,繊細なトラウマを抱えており,心理的ケアが必要な少年については,現行制度上は一般少年院に送らざるを得ない。

(問)少年を適当な少年院に振り分ける側としては,どのような少年院がある

と良いか。

  (答)自助的グループを活用した処遇を実施することは良いと思う。

 (問)年少少年に対して,処遇上工夫していることは何か。

(答)年少少年の場合は,当該少年の担当者を複数にしており,運動,入浴,園芸等,個別的な配慮を行っている。

(問)少年院の法務教官として,継続的な処遇を行いたいと思うことはあるか。          

少年院と少年鑑別所とで法務教官の人事異動はあるのか。

  (答)確かに,少年院での勤務をしてみたいと思うが,少年鑑別所は入所する少年が多様であるなど,少年鑑別所の教官としてのやりがいもある。

  (答)人事交流は比較的活発であるとは思う。

 (問)少年鑑別所と少年院との連携上の問題は何か。

  (答)再鑑別等の連携に関する業務に割くための人的及び時間的余裕がないこと,担当者レベルでの少年の処遇に関する意見交換の機会が少ないこと,そもそも,お互い意見交換をすることに遠慮があることなどではないか。

(3)矯正教育の実効を高めるための少年鑑別所の鑑別機能の充実強化について  意見交換を行った(会議には,新潟少年鑑別所長及び静岡少年鑑別所長が同席した。)。主な意見は,以下のとおりであった(順不同)。

    少年鑑別所職員が少年院の矯正教育に関与する場合,どこまで関与するのか,その範囲や方法について検討する必要がある。

    少年鑑別所入所のみで(少年院に送致されることなく)帰っていく少年が多いので,立ち直りのきっかけを与えるためにも,少年本人に問題点を伝えることも必要ではないか。

    再鑑別の結果得られた情報についても,少年本人や保護者にフィードバックすることを考えてよいと思われる。

    収容された少年の親に対する助言等も行ってはどうか。

    少年院送致後も必要に応じ,少年鑑別所に少年を一時的に収容し,再鑑別を実施する等の制度を設けるべきである。

    送致先少年院の決定に際し,送致を想定している少年院と少年鑑別所とがより密に情報交換することが必要ではないか。

    少年鑑別所で作成された鑑別結果通知書や処遇指針について,少年院の法務教官に分かりにくい部分があるように思われるので,工夫する必要がある。

    鑑別結果通知書において,少年の問題点を分析することはもちろんであるが,伸長すべき長所も記載した方がよい。

    児童自立支援施設等の関係機関との情報共有の体制を整備すべきではないか。

 

6 今後の日程等

次回は,6月22日(火)開催予定とし,引き続き,少年鑑別所における資質鑑別の在り方について議論し,その後,少年鑑別所における観護処遇の在り方について議論することとされた。

 

  ―速報のため,事後修正の可能性あり―  

(文責 事務局)