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マレーシア

マレーシアは、イスラム過激組織等によるリクルート、資金調達、経由地等に利用されてきたとされ(注41)、1985年には、インドネシア・スハルト大統領政権下での取締りを避け、同国のイスラム過激組織「ダルル・イスラム」(DI)(注42)で活動していたアブ・バカル・バシールらがマレーシアに逃れ、1993年、「ジェマー・イスラミア」(JI)(注43)を設立した。JIは、マレー半島部・ジョホール州に本拠地として寄宿学校「ルクマヌル・ハキム」を設立し、1990年代半ばにかけて、インドネシア人及びマレーシア人の志願者をアフガニスタンやパキスタンの訓練キャンプに派遣していた。また、2000年1月には、首都クアラルンプールに所在するJIメンバーのヤジド・スファアト(注44)の自宅において、米国同時多発テロ事件(2001年9月)実行犯2人を含む「アルカイダ」メンバーによる同テロ事件の謀議が行われた。

このほか、1995年には、マレーシア政府を主要な敵とみなすイスラム過激組織「クンプラン・ムジャヒディン・マレーシア」(KMM)(注45)が設立され、マレー半島部・クランタン州のイスラム学校を拠点に、テロ計画立案やリクルートを行っていた。

なお、JIについては、当局に活動を禁止され、2002年までに多くの活動家が予防的拘束を可能とする国内保安法(2012年廃止)によって拘束され(注46)、KMMも、2001年から2002年に摘発を受けて壊滅状態となった。

その後、マレーシアでは2014年以降、「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)等の過激組織に関与した容疑のある者の摘発が続いたが、2016年6月、マレー半島部・セランゴール州プチョンの飲食店に手りゅう弾が投てきされる事件(8人負傷)が発生した。同事件については、シリアに渡航したマレーシア人ISILメンバーのムハンマド・ワンディが犯行への関与を認めており、政府は、同国で初めてのISILに関連したテロと発表した。その後、当局は各種テロ対策関連法(注47)を適用して積極的に摘発を推進している(注48)。しかし、2019年12月及び2020年1月には、マレーシアの政治指導者等を脅迫する内容の「マレーシアのISILからのメッセージ」と題する動画がSNS上に投稿されるなどしている。

一方、ボルネオ島北部では、サバ州沖において、フィリピン南部・スールー州を拠点とする「アブ・サヤフ・グループ」(ASG)(注49)(「ASGスールー」)が関与した船員の誘拐や船舶襲撃事件が発生しており、2021年5月には、同州沖における船員の誘拐に関与したとして「ASGスールー」幹部らを含む8人が逮捕された。

このほか、マレーシアでは、ミャンマーから避難しているベンガル系イスラム教徒(いわゆるロヒンギャ)(注50)が、「ハワラ」と呼ばれる送金手段を用いてミャンマーの「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)(注51)に送金する事案が発生しており、2019年6月、ARSAの資金調達活動を行っていた容疑でロヒンギャの男が逮捕された。さらに、当局は、2019年10月、スリランカのタミル人過激組織「タミル・イーラム解放の虎」(LTTE)(注52)の復活支援活動を行ったとして、連立与党(当時)の一翼を担う「民主行動党」(DAP)所属の州議会議員2人を含む計12人を逮捕した(注53)

近年、マレーシアで発生した主なテロ関連事案は下表(当庁作成)のとおりである。

【主なテロ関連事案(2020年以降)】

年月日 場 所 概 要
20. 1.16 サバ州沖  武装集団が、サバ州領海域で漁をしていたインドネシア人漁師8人を誘拐。その後、3人は解放、5人はフィリピン南部・スールー州に連れ去り(うち1人は、同年9月に発生したフィリピン国軍とASGとの衝突時に死亡)
20. 1.31 マレーシア国内  不法滞在容疑で既に逮捕されていたインドネシア人の男が、テロ関連物資を所持していたとしてテロ関連罪で起訴
21. 5. 8 サバ州  サバ州沖における複数の誘拐事件に関与した容疑のある「ASGスールー」幹部らを含む8人が逮捕
21. 5.17 サバ州  当局との銃撃戦により、スールー州からサバ州へ逃亡していたASGメンバー5人が死亡

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